酒類販売業免許|お酒を売るときに必要な資格・要件・手続方法・申請区分を詳しく解説

お酒を扱う事業と聞くと、他の物販と同じように気軽に始められるものだとイメージされる方が少なくありません。しかし実際のところ、酒類の販売はそれほど簡単に参入できる業種ではありません。お酒の流通は酒税という国の重要な財源に直結する事業であるため、誰もが自由に販売できる状態を許してしまうと、酒税の徴収そのものが不安定になってしまうおそれがあります。
こうした事情から、酒税法では酒類販売業について「免許制」が採用されており、事業を始めるにあたって一定のハードルが設けられています。免許制という言葉を聞いてなんとなく厳しそうだと感じる方は多いと思いますが、実際に求められる要件は、人的な適格性から経営基盤の安定性まで多岐にわたっており、思っている以上にしっかりとした準備が必要になります。
本稿では、これから酒類販売業への参入を検討している方に向けて、酒類販売業とはそもそも何を指すのか、どのような免許区分があるのか、そして免許を取得するためにクリアすべき要件や申請の流れについて、順を追って解説していきます。細かい要件が多い分野ではありますが、全体像をつかんでおくことで、開業準備の見通しが立てやすくなるはずです。
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目 次
酒類販売業とは
酒類販売業とは、営業形態を問わず、酒類に該当する飲料を継続して販売する営業を指します。自ら酒類を仕入れて販売する場合はもちろん、酒類を代理で販売する代理業や、売買の媒介を行う媒介業もこの酒類販売業に含まれます。酒類の定義についても法律上明確に定められており、常温(15度)において100mlのうち1ml以上のエチルアルコールを含む液体が酒類として扱われます。
継続して販売する営業であることが前提となっているため、ガレージセールやインターネットオークションのような形態であっても、繰り返し酒類を出品して販売するのであれば酒類販売業に該当します。
一方で、飲用目的で購入した酒類のうち家庭で不要になったものを一度だけ出品するようなケースは、通常継続的な販売とはいえないため、酒類販売業には該当しません。なお、ビール券のような有価証券は酒類そのものではないため、これらを販売する行為自体には販売業免許は必要ありません。
酒類提供飲食店との違い
酒類を提供する営業という点では、飲食店と酒類販売店に違いはないように見えますが、両者を分けるポイントは酒類の提供方法にあります。
飲食店では通常、樽やボトルの栓を抜いた状態で酒類を提供するのに対し、酒屋やコンビニエンスストアでは缶ビールなどが未開栓のまま売られています。つまり、「酒類を開栓して提供しているか、未開栓のまま提供しているか」によって、飲食店営業と酒類販売業のどちらに該当するかが決まる仕組みです。
飲食店が在庫のビールを瓶ごと未開栓で販売しようとする場合には酒類販売業免許が、逆に酒類販売店が店内で飲食を提供しようとする場合には飲食店営業許可が、それぞれ別途必要になります。
なお、飲食店営業と酒類販売業の兼業は、両事業で使用するスペースが明確に区画割りされている等の事情がある場合に限り例外的に認められることがあるほかは、原則として禁止されています。
酒類の流通構造
日本国内における酒類の流通は、製造者と消費者の間に卸売業者を挟む伝統的な構造を維持しています。酒類製造者が製造した酒類は、まず酒類卸売業者の手元に渡り、卸売業者から各小売店へと販売され、その小売店から一般消費者や飲食店といったエンドユーザーへ届けられるという流れです。
エンドユーザーを除き、この流通に関わるすべての事業者は、それぞれの営業形態に応じた免許を受けている必要があります。

酒類販売業免許
酒類の販売業を営もうとする場合は、酒税法に基づき、販売場ごとにその所在地を所轄する税務署長から酒類販売業免許を受けることになります。「販売場ごと」という点がポイントで、本店で免許を受けていても、支店で新たに酒類の販売を行おうとする場合には、支店の所在地を所轄する税務署長からあらためて免許を受ける必要があります。
免許区分は大きく分けて、酒類販売業者や酒類製造者に対する販売を行う卸売業免許と、飲食店や一般消費者に対する販売を行う小売業免許の2種類が用意されています。
卸売業免許にはすべての酒類を卸売できる全酒類卸売業免許のほか、ビール卸売業免許や洋酒卸売業免許のように取扱品目を限定したものなど、複数の区分が設けられています。小売業免許についても、有店舗・無店舗を問わず全酒類を取り扱える一般酒類小売業免許と、インターネットやカタログによる通信販売を行う通信販売酒類小売業免許に大別されます。
このほか、祭りや物産展のように一定期間だけ酒類を販売する場合には、期限付酒類小売業免許という区分も用意されており、事業の形態に応じて適切な免許区分を選ぶことが最初のステップになります。

| 大区分 | 小区分 | 内容 |
|---|---|---|
| 酒類卸売業免許 | 全酒類卸売業免許 | すべての酒類が卸売可能 |
| ビール卸売業免許 | ビールを卸売する免許 | |
| 洋酒卸売業免許 | ワイン、ウイスキー、スピリッツ、発泡酒、リキュールなどを卸売する免 | |
| 輸出入酒類卸売業免許 | 自社輸出入の酒類を卸売する免許 | |
| 店頭販売酒類卸売業免許 | 自己の会員である酒類販売業者に対し、店頭で直接引き渡す方法による卸売をする免許 | |
| 協同組合員間酒類卸売業免許 | 加入している事業協同組合の他の組合員を対象に酒類を卸売する免許 | |
| 自己商標卸売業免許 | オリジナルブランド(自社が開発した商標や銘柄)の酒類を卸売する免許 | |
| 酒類小売業免許 | 一般酒類小売業免許 | 有店舗・無店舗とも全酒類の小売りが可能 |
| 通信販売酒類小売業免許 | インターネット、チラシ、カタログによる通信販売 輸入酒は販売無制限、国産酒は大手の酒類は取扱い不可 (3,000kl制限) | |
| 特殊酒類小売業免許 | 酒類の消費者等の特別の必要に応ずるための免許 |
期限付酒類小売業免許
物産展や祭りなどの会場で、開催期間中に臨時で酒類を販売(持ち帰り用などのボトル・缶販売)する場合は、「期限付酒類小売業免許」を取得する必要があります。ただし、この免許を申請できるのは、すでに酒類製造者または酒類販売業者の資格を持つ方に限られます。
一方で、酒税法の規定により、その場で飲酒させる行為(酒場や料理店など)は販売業免許の対象外となっています。そのため、祭りの会場でビールをコップに注いでその場で提供する(コップ酒・グラス提供)ような場合は、そもそも販売業免許は必要ありません。
なお、催事の期間中に酒類を販売する日数が10日以内であるなど、一定の要件を満たす場合は、簡易な届出による期限付酒類小売業免許の適用(届出期限付酒類小売業免許)を受けることができます。
酒類販売業免許の4つの要件
酒類販売業免許は、申請すれば誰でも簡単に取得できるものではなく、人的要件、場所的要件、経営基礎要件、需給調整要件という4つの要件をすべて満たすことが求められます。
いずれも一見地味な要件に思えるかもしれませんが、実務上は申請者がつまずきやすいポイントが数多く含まれています。
★酒類販売業免許の4つの要件
- 人的要件
- 場所的要件
- 経営基礎要件
- 需給調整要件
人的要件
お酒の流通には、古くから犯罪や不正行為といった問題がつきまとってきました。国税の重要財源である「酒税」を適正かつ確実に徴収するためには、信頼性や倫理観に欠ける人物を業界に関与させないことが極めて重要です。
このため酒税法の規定は、免許の申請者に対して詳細な「欠格事由」を設け、これらに一つでも該当する場合は免許が一切交付されないという、厳しい建て付けになっています。
項目数自体は多いものの、要するに「一定の重大な法令違反歴や不誠実な行為がない、健全な経営主体であること」を確認するための要件だと理解しておくと、全体像をつかみやすくなります。
- 免許を取り消され、又は許可を取り消された日から3年を経過するまでの者
- 酒類販売業者である法人が免許を取り消された場合又は許可を取り消された場合において、それぞれ、その取消しの原因となった事実があった日以前1年内に当該法人の業務を執行する役員であった者で当該法人がその取消処分を受けた日から3年を経過するまでのもの
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人が1・2・7・8に該当する者である場合
- 法人の役員のうちに1・2・7・8に該当する者がある場合
- 1・2・7・8に該当する者を販売場に係る支配人としようとする場合
- 申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けた者である場合
- 免許の申請者が国税若しくは地方税に関する法令、酒類業組合法、アルコール事業法の規定により罰金の刑に処せられ、又は国税通則法、関税法、地方税法の規定により通告処分を受け、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過するまでの者である場合
- 未成年者飲酒禁止法、風営法、暴力団対策法の規定により、又は刑法上の一定の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過するまでの者である場合
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過するまでの者
- 正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとする場合
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合
- 酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため免許を与えることが適当でないと認められる場合
場所的要件
税区分を明確にする必要性から、酒類の販売場は他の製造場、販売店、あるいは飲食店と同一の場所に設けることができません。
売場については区画割りがされていること、代金決済の独立性が保たれていること、他の営業主体との区分が明確であることが求められており、単に同じ建物内にあるというだけでは足りず、実質的に独立した営業スペースとして認識される状態であることが必要とされています。
物件の所有形態
物件の所有形態については、自己所有か賃貸かは問われませんが、賃貸物件を販売場とする場合には賃貸借契約書の写しに加えて、賃貸人からの使用承諾書の提出が求められます。また、管理規約が定められているマンションの一室を販売場としようとする場合には、たとえ自己所有の物件であっても、住民や管理組合からの承諾を求められることがあります。
販売場の物件が自己所有であるか他人所有(賃貸)であるかは問われません。ただし、賃貸物件である場合には賃貸契約書の写しのほか、賃貸人からの使用承諾書も求められます。また、管理規約が定められたマンションの一室を販売所としようとする際には、例え自己所有の物件であっても、住民や管理組合の承諾を求められる場合があります。
レンタルオフィス・バーチャルオフィス
レンタルオフィスについては、壁などにより明確に区分された専用スペースであり、かつ独立性が保たれていれば、販売場として認められる可能性があります。ただし、誰でも利用できるオープンスペースやフリースペースは販売場として認められません。
また、登記上の住所のみを置き、実際の事務所としての実態を伴わないバーチャルオフィスについても、販売場としては認められない点に注意が必要です。
物件選びの段階でこの要件を見落としてしまうと、後になって販売場自体を変更せざるを得なくなるケースもあるため、契約前の確認が欠かせません。さらに、承諾関係の書類は取得に時間がかかることも多いため、物件選定の段階から並行して準備を進めておくと安心です。
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需給調整要件
需給調整要件は、通信販売小売業免許で取り扱うことができる国産酒について、年間生産量がすべて3,000kl未満である製造者が製造・販売するものに限定するという、一般にはあまり知られていない制限です。通信販売小売業免許で国産酒を取り扱う際には、製造者から「年間生産量がすべて3,000kl未満である」旨の証明書を発行してもらう必要があります。
この制限が設けられている背景には、生産量が多く競争力の強い大手ビールメーカー等に、通信販売という強力な販売チャネルまで与えてしまうと、地道に酒造りを続ける零細な製造業者が太刀打ちできなくなってしまうという配慮があります。要するに需給調整要件は、生産量の少ない地ビールや国産ワインの製造者にもスポットを当て、国内メーカー間の需給バランスを保つために設けられている措置だといえます。
なお、この制限が課されるのはあくまで国産酒に限られており、輸入酒についてはこうした生産量の制限が設けられていないため、年間生産量にかかわらず全銘柄を通信販売で取り扱うことができます。また、一般酒類小売業免許はもとより全酒類の取扱いが可能な免許であるため、通信販売を行わない事業形態であれば、この需給調整要件そのものが問題になる場面はありません。
経営基礎要件
経営基礎要件は、資産状況、経験、資金・設備という3つの観点から、申請者に一定の経営基盤が備わっているかどうかを審査するものです。経営能力に乏しい事業者に酒類の販売を任せてしまうと、中長期的には酒税の徴収そのものが目減りしてしまうおそれがあるため、財務面と経験面の両方から適格性が確認される仕組みになっています。
資産状況・経験・資金設備のいずれも、開業直前になって急ごしらえで整えられるものではありません。特に資産状況や経験は過去の実績がそのまま反映される項目であるため、免許取得を見据えた段階から、できる限り早めに準備を進めておくことが結果的に一番の近道になります。
★経営基礎要件
- 資産状況
- 経験(経歴および知識)
- 資金、設備
資産状況等
資産状況などの確認にあたっては、以下の「消極的要件(=該当してはならない条件)」が定められており、そのすべてに「該当しないこと」が免許付与の前提となります。
- 現に国税又は地方税を滞納している場合
- 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている場合
- 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額を上回っている場合
- 最終事業年度以前3事業年度の全ての事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じている場合
- 酒税法等の関係法令に違反し、通告処分を受け、履行していない場合又は告発されている場合
- 販売場の申請場所への設置が、建築基準法、都市計画法、農地法、流通業務市街地の整備に関する法律その他の法令又は地方自治体の条例の規定に違反しており、店舗の除却又は移転を命じられている場合
- 申請酒類小売販売場において、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかであると見込まれる場合
このうち、「資本等の額」という表現は分かりにくく感じられがちですが、ざっくり言えば会社が保有する財産のことであり、具体的には資本金・資本剰余金・利益剰余金の合計額から繰越利益剰余金を控除した金額を指します。
たとえば資本金500万円の会社で、最終事業年度の貸借対照表上の繰越損失が500万円を上回っている場合には、この時点で先ほどの繰越損失に関する項目に抵触してしまいます。同様に、3期連続で資本等の額の20%を超える赤字(資本等の額500万円の会社であれば、3期連続で100万円を超える赤字)が出ている場合にも、欠損に関する項目に抵触することになります。
こうした数字は決算書の貸借対照表を見れば確認できるものですが、単年度の決算書だけを見ていても気づきにくい場合があります。特に3事業年度分の推移をあわせて確認する必要がある項目については、直近の決算だけでなく過去数期分をさかのぼって数字を並べておくことで、自社が要件を満たしているかどうかをより正確に把握できます。
経験要件
経験要件では、「経験その他から判断し、適正に酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力を有すると認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法人であること」が求められます。
免許区分によって必要とされる経歴の中身は異なりますが、酒類小売業を例に取ると、申請者(法人の場合はその役員)及び販売場の支配人に求められる経歴は次のとおりです。
- 免許を受けている酒類製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く)の業務に引き続き3年以上直接従事した者
- 調味食品等の販売業を3年以上継続して営業している者
- 上記の業務に従事した期間が相互に通算して3年以上である者
- 酒類業団体の役職員として相当期間継続して勤務した者又は酒類の製造業若しくは販売業の経営者として直接業務に従事した者等で酒類に関する事業及び酒類業界の実情に十分精通していると認められる者
実際のところ、申請者がこうした経歴をそのまま満たしているケースはあまり多くありません。その場合は、他業種での経営経験に加えて「酒類販売管理研修」を受講しているかどうかから、知識及び能力が審査されることになります。免許取得後にはいずれにせよ研修を修了した酒類販売管理者を販売場ごとに選任する必要があるため、経歴の有無にかかわらず、早い段階で研修を受講しておくことを一貫しておすすめしています。
ただし、酒類卸売業免許のうち全酒類卸売業免許やビール卸売業免許については、酒類販売管理研修の受講で補える範囲を超えて、酒類の製造・販売業務への10年以上の直接従事経験(経営者であれば5年以上)が原則として必要とされており、小売業免許の3年要件よりもハードルが大きく上がります。卸売業免許を目指す場合には、区分ごとに求められる経験年数を早い段階で確認しておくことが重要になります。
資金設備要件
資金設備要件は、「酒類を継続的に販売するために必要な資金、販売施設及び設備を有していること、又は必要な資金を有し免許を付与するまでに販売施設及び設備を有することが確実と認められること」を求めるものです。
事業を営むうえで運転資金は不可欠ですが、具体的にどの程度の金額が必要になるかは、展開しようとする事業の規模によって大きく異なります。
免許申請の際には、具体的な運転資金に関する事業計画の提出が求められるため、少なくとも仕入値と売値についてはあらかじめ自分自身でしっかりと把握しておく必要があります。仕入先との取引条件や、想定する販売数量、資金繰りの見通しなどをあらかじめ整理しておくことで、事業計画書の説得力も高まり、酒類指導官との協議もスムーズに進みやすくなります。
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免許申請の手続き
免許申請は、法人の本店所在地ではなく、実際に開業を予定している販売場の所在地を管轄する税務署に対して行います。たとえば芦屋市に本店を置く法人が尼崎市内で開業を予定している場合、申請先は芦屋税務署ではなく尼崎税務署になります。
手続きの大まかな流れは以下のとおりですが、申請そのものについては、e-Taxを利用してオンラインで行うことも可能です。

事前協議
申請にあたって欠かせないのが、酒類指導官(酒税官)との事前協議です。この事前協議は必須の手続きというよりも相談に出向く感覚に近いものですが、省略していきなり申請すると書類の不備が増え、事業開始が後ろ倒しになりがちです。専門のベテラン行政書士でもない限りは、必ず踏んでおきたい手続きです。
酒類指導官は申請・審査・相談を担当する専門の行政官ですが、すべての税務署に常駐しているわけではなく、地域を取りまとめている特定の税務署に配置されています。たとえば尼崎市内で開業しようとする場合、申請先そのものは尼崎税務署ですが、相談窓口となる酒類指導官は隣接する西宮税務署に常駐しています。
担当者によって求められる書類の細部が異なることもありますが、これは申請件数をこなしている以上、ある程度仕方のないこととして受け止めるべき部分だと感じています。
標準処理期間
標準処理期間とは、行政官庁が定める免許審査に要する日数の目安のことで、酒類販売業免許の場合はおおむね2か月とされています。ただしこれはあくまで目安であり、申請内容や税務署の状況によって前後することがあります。当然ながら、この審査期間中に酒類の販売を開始することはできません。
登録免許税
免許が確定すると、税務署から指定された免許交付日までの間に登録免許税を納付します。登録免許税は販売場ごとに上限額が設けられており、小売業免許は同一販売場につき30,000円、卸売業免許は同一販売場につき90,000円が上限です。このため、同一の販売場で一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許を同時に取得しても、納める登録免許税は30,000円のままで済みます。
一方、既に小売業免許を取得している販売場で新たに卸売業免許を追加する場合には、上限額との差額である60,000円を追加で納付することになります。なお、登録免許税は申請時ではなく免許確定後の支払いとなるため、万が一免許が下りなかった場合には、登録免許税の負担自体も生じません。
免許通知・酒類販売業免許通知書
審査が終わると、酒類指導官から審査終了の連絡があり、あわせて「酒類販売業免許に伴う登録免許税の納付通知書」により登録免許税の納付が通知されます。この通知に基づいて税務署又は金融機関で登録免許税を納付し、その領収証書を「登録免許税の領収証書提出書」に添付して提出すると、ようやく「酒類販売業免許通知書」が交付されます。
「免状」や「免許証」といった呼び方をされることもありますが、実態は表彰状のような分厚くて立派なものではなく、再生紙で作られた薄っぺらな2枚綴りの書面にすぎません。
交付方法は税務署によって窓口での手渡しの場合と郵送の場合があり、見た目があまりに質素なため、受け取った際にどれが通知書なのか分からず、事務所に問い合わせが来ることもあるほどです。
見た目こそ地味ですが、この通知書がなければお酒の販売業を営んでいることを証明する手段がなくなってしまいます。紛失した場合、通知書そのものの再発行はしてもらえず、代わりに税務署へ「証明書交付申請書」を提出して別途証明書を発行してもらう必要があるため、質素な紙だからといって粗末に扱わず、大切に保管しておくべき書類です。
酒類販売管理者選任届
小売業免許の場合、免許通知書の交付後は販売場ごとに酒類販売管理研修を受講した「酒類販売管理者」を選任し、選任日から2週間以内に「酒類販売管理者選任届出書」を所轄の税務署に提出する必要があります。実務上はこの届出を免許交付と同時に行うケースが多く、事前に管理者候補を決めて研修も済ませておくことで、通知書の交付日にまとめて手続きを終えられます。
この届出を怠ると罰金の対象にもなるため、免許通知書を受け取ったら速やかに提出すべき手続きです。もっとも、この選任義務は小売業免許に限られたものであり、卸売業免許のみを取得する場合には酒類販売管理者の選任自体が不要になります。
なお、酒類販売業免許には有効期間という概念がないため、一度免許を取得すれば、その後に更新手続きを行う必要はありません。
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免許申請に必要となる書類
酒類販売業許可申請は、以下の書類を提出することにより行います。なお、法人で申請する場合、定款の事業目的の中に「酒税法に基づく酒類販売業」等の文言が入っている必要があります。
- 酒類販売業免許申請書
- 次葉1〜6
- 免許要件誓約書
- 複数申請等一覧表(複数店舗での同時申請の場合)
- 免許申請チェック表
- 定款の写し(法人の場合)
- 履歴書(申請者、役員全員)
- 全部事項証明書(販売場の土地・建物)
- 賃貸借契約書(賃貸物件等の場合)
- 建物を販売場として使用することの承諾書(賃貸物件等の場合)
- 決算報告書(最終事業年度以前3事業年度分)
- 都道府県税の納税証明書
- 市町村税の納税証明書
- 酒類販売管理研修受講証のコピー
- 通帳のコピー又は残高証明書など所要資金を証明する書類
★納税証明書
免許基準のひとつである「申請者が過去2年以内に国税又は地方税の滞納処分を受けていないこと」を証明するために添付する書類が納税証明書です。酒類販売免許の申請時に添付する必要があるのは都道府県税と市区町村税の全税目について「現に未納の税額がないこと」及び「2年以内に滞納処分を受けたことがないこと」が記載されている納税証明書に限られます。
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免許取得後の義務
永久ライセンスではありますが、酒類販売業免許の取得後も、酒類の仕入れ・販売について帳簿に記帳する義務や、毎年4月末までに「酒類の販売数量等報告書」を提出する義務など、継続的に果たしていくべき実務がいくつも発生します。特に報告書は、その年に販売実績が全くなかった場合でも提出自体は必要になる点に注意が必要です。
また、小売業免許を取得した場合は、販売場ごとに酒類販売管理者を選任し、3年ごとに研修を受け直させる義務も続きます。住所や役員など免許通知書の記載事項に変更があった際には「異動申告書」を、販売場そのものを移転する際には別途「販売場移転許可申請」を提出する必要があり、変更の内容によって手続きが異なる点も押さえておきたいポイントです。
これらの義務の詳細については、以下の記事で具体的な期限や手続きの流れをまとめていますので、あわせてご参照ください。
Q. 個人で酒類販売業免許を取得することはできますか。
A. 可能です。免許は個人・法人を問わず申請できますが、法人の場合は定款の事業目的に「酒類の販売」に関する文言が入っていることが必要です。個人の場合でも人的要件・場所的要件・経営基礎要件はすべて同様に審査されます。
Q. 自宅の一室を販売場にすることはできますか。
A. 区画割りや独立性など場所的要件を満たせば可能な場合もありますが、居住スペースと明確に区分されていないと認められません。またマンションの場合は管理規約で営業が禁止されていないか、管理組合の承諾が得られるかも事前に確認しておく必要があります。
Q. 酒類の販売経験が全くない場合、免許は取れませんか。
A. 経験がなくても取得できる可能性はあります。その場合は他業種での経営経験に加えて「酒類販売管理研修」を受講しているかどうかから、知識や能力が総合的に判断されます。ただし全酒類卸売業免許やビール卸売業免許のように、10年以上の実務経験がほぼ必須とされる区分もあるため、免許の種類によって扱いが異なります。
Q. 免許取得までにどれくらいの期間がかかりますか。
A. 標準処理期間はおおむね2か月とされていますが、これはあくまで目安であり、事前協議や書類の準備状況によって前後します。酒類指導官との事前協議を省略すると書類の不備が増えやすく、結果的に開業時期が後ろ倒しになることもあるため、早めの準備が望ましいです。
Q. 一度取得した免許は更新が必要ですか。
A. 不要です。酒類販売業免許には更新期限が設けられていないため、一度取得すれば継続して事業を営むことができます。ただし、免許取消しの事由に該当するような法令違反があった場合は話が別です。
Q. 通信販売で国産の大手メーカーのビールを扱うことはできますか。
A. 需給調整要件により、通信販売小売業免許で扱える国産酒は年間生産量がすべて3,000kl未満の製造者が製造・販売するものに限られます。大手メーカーの主力商品の多くはこの基準を超えているため、通信販売では取り扱えません。なお、この制限は国産酒のみが対象で、輸入酒には生産量の制限がありません。
Q. 関西以外でも対応可能ですか。
A. 可能です。酒類販売業免許の申請自体は開業予定地を管轄する税務署に対して行うものであるため、全国どこであっても対応できます。
Q. 事務所まで直接足を運ぶ必要はありますか。
A. 必須ではありません。書類のやり取りはメールや郵送で完結できるため、遠方の方でも来所いただかずに申請まで進めることが可能です。ただし、物件の状況を直接確認した方がスムーズなケースもあるため、必要に応じてご相談ください。
Q. 依頼してから免許取得まで、実際どれくらいの期間を見ておけばよいですか。
A. 事前協議や必要書類の準備期間を含めると、標準処理期間の2か月に加えて1〜2か月程度の余裕を見ておくのが現実的です。書類に不備がなく事前協議もスムーズに進めば、この期間より短縮できることもあります。
まとめ
酒類販売業免許は、人的要件・場所的要件・経営基礎要件・需給調整要件という4つの要件をすべて満たし、そのうえで税務署への申請・審査・登録免許税の納付・届出という一連の手続きを経てはじめて取得できる、決して簡単な免許ではありません。特に酒類指導官との事前協議を省略してしまうと、書類の不備によって審査が長引き、結果として開業時期そのものが後ろ倒しになるリスクが高まります。
申請書に記載する事業計画についても、全体として矛盾がないか、実現可能なものであるかといった点が酒類指導官によって細かく審査されます。必要書類の種類も多く、法人か個人か、卸売か小売かによって求められる中身が変わってくるため、慣れないまま自力で進めようとすると、思わぬところで足踏みしてしまうことも少なくありません。
弊所では、酒類販売業免許の申請について、事業計画の整理や必要書類の作成から、酒類指導官との事前協議、申請後のフォローまで一貫してサポートしています。お酒を扱う事業を始めたいけれど何から手をつければよいか分からないという段階でも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。
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