一般酒類小売業免許申請ガイド【申請様式と記載例あり】

酒屋の店頭

酒類を販売しようとするときは、酒類販売業免許を取得する必要がありますが、このうち一般酒類小売業免許は、お酒をおもに店頭において小売するために必要となる免許区分です。

最もポピュラーかつスタンダードな免許とは言え、酒類販売業の免許申請はいずれも複雑なものばかりで、特に申請書類の作成は、この手続きに慣れていなければ、行政書士ですら煩(わずら)わしさを覚える作業となります。

そこで本稿では、これから酒類の小売を始めようとお考えの皆さまに向けて、一般酒類小売業に関する基礎知識と免許申請時の手続方法について、実際に作成した申請書類を提示しながら詳しく解説していきたいと思います。

酒類小売業免許の種別

小売とは、物流のゴールであるエンドユーザー(最終消費者)に対して、直接的に物品を販売する営業形態をいいます。

酒類流通においては、エンドユーザーたる一般消費者及び飲食店に対して酒類を販売する営業が酒類小売業に該当します。

酒類の流通構造

酒類小売業の免許には、ほかにも「通信販売酒類小売業免許」と「特殊酒類小売業免許」という2つの区分が設けられていますが、これを大雑把に区分すれば、酒類を店頭(対面)で小売するために必要となる免許が一般酒類小売業免許、酒類を通信販売方式(インターネット、チラシ、カタログ等)で小売するために必要となる免許が通信販売酒類小売業免許という区分けになります。

(※)特殊酒類小売業免許については申請事例が少なく極めてレアな免許のため本稿では割愛しています。

区分内容
一般酒類小売業免許有店舗・無店舗とも全酒類の小売りが可能
通信販売酒類小売業免許インターネット、チラシ、カタログによる通信販売
輸入酒は販売無制限
国産酒は大手の酒類は取扱い不可 (3,000kl制限)
特殊酒類小売業免許酒類の消費者等の特別の必要に応ずるための免許

一般酒類小売業免許の内容

酒屋のイラスト

通信販売酒類小売業免許の場合、小売することのできる酒類は「輸入酒」又は「年間生産量がすべて3,000kl未満である製造者が製造若しくは販売する国産酒」に限定されますが、一般酒類小売業免許にはこのような制限は設けられていません。

したがって、国内メジャー企業の製造するビールや清酒を小売するためには、原則として、一般酒類小売業免許を取得して店頭販売を行うほか手段は存在しません。

また、通信販売酒類小売業免許は、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象とした通信販売を行う際に取得する免許区分であるため、逆に一の都道府県の消費者等のみを対象として通信販売による小売を行う場合には、一般酒類小売業免許の方を取得する必要があります。

これはたとえば、兵庫県内に営業所を構える小売業者が、兵庫県内の消費者等を対象として通信販売を行う場合には、通信販売酒類小売業免許ではなく一般酒類小売業免許が必要になるということです。

上記の取扱いを踏まえるならば、一の都道府県の消費者等のみを対象とした通信販売のみを取り扱う無店舗での営業も可能ということになります。

ただし、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許とは、「酒類小売業」というカテゴリーを同じくする免許であるため、両免許を同時に取得することも可能とされています。

実際弊所においても、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許とを同時に申請するケースは多くあり、むしろインターネットが発達した現代では、両方を取得することがスタンダードであるように感じています。

なお、他の酒類販売業者に対して酒類を販売する場合には、「酒類卸売業免許」を取得する必要があるため、酒類を仕入れる際には、小売業者からは購入することはできず、必ず酒類卸売業免許を取得している者(又は酒類製造者)から購入することになります。

★一般酒類小売業免許のまとめ
  • 全酒類(国内メジャー企業が製造する酒類を含む)を小売することができる
  • 一の都道府県の消費者等のみを対象とした通信販売を行うことができる
  • 原則は店頭販売だが条件付で無店舗営業も可能
  • 小売業者間の取引は認められない

免許の要件

申請すれば誰もが簡単に免許を取得することができるわけではなく、免許を取得するためには、人的要件場所的要件及び経営基礎要件(資産等要件、経験要件、資金設備要件)という多角的な視点から審査が行われ、そのすべてについて、もれなく要件をクリアすることが求められています。

人的要件

酒税の適切な徴収という観点から、信頼性や倫理観に欠ける人間を酒類販売業に関与させることは好ましいことではありません。

このような理由から、酒税法では酒類販売免許を受けようとする者について以下の欠格事由を設け、この事由にひとつでも該当する者については、免許を付与しないこととしています。

  1. 免許を取り消され、又は許可を取り消された日から3年を経過するまでの者
  2. 酒類販売業者である法人が免許を取り消された場合又は許可を取り消された場合において、それぞれ、その取消しの原因となった事実があった日以前1年内に当該法人の業務を執行する役員であった者で当該法人がその取消処分を受けた日から3年を経過するまでのもの
  3. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人が1・2・7・8に該当する者である場合
  4. 法人の役員のうちに1・2・7・8に該当する者がある場合
  5. 1・2・7・8に該当する者を販売場に係る支配人としようとする場合
  6. 申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けた者である場合
  7. 免許の申請者が国税若しくは地方税に関する法令、酒類業組合法、アルコール事業法の規定により罰金の刑に処せられ、又は国税通則法、関税法、地方税法の規定により通告処分を受け、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過するまでの者である場合
  8. 未成年者飲酒禁止法、風営法、暴力団対策法の規定により、又は刑法上の一定の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過するまでの者である場合
  9. 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過するまでの者
  10. 正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとする場合
  11. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合
  12. 酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため免許を与えることが適当でないと認められる場合

場所的要件

税区分を明確にする必要性から、酒類の販売場を、製造免許を受けている酒類の製造場や、販売業免許を受けている酒類の販売場、酒場、旅館又は料理店等と同一の場所に設けることはできません。

また、申請販売場における営業が、販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていることも求められています。

経営基礎要件

経営能力に乏しい事業者に酒類の販売を任せていると、中長期的には徴収する酒税が目減りすることにつながるため、経営状況が安定しない事業者を酒類販売業に関与させることは好ましくありません。

したがって、資産状況、経験、資金および設備等を総合的に照らし合わせ、一定の経営基礎を持たないものと判断された申請者については、免許を受けることができません。

資産等要件

申請者の資産状況等については、次の各項目に「該当しない」ことが要件とされています。

  1. 現に国税又は地方税を滞納している場合
  2. 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている場合
  3. 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額を上回っている場合
  4. 最終事業年度以前3事業年度の全ての事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じている場合
  5. 酒税法等の関係法令に違反し、通告処分を受け、履行していない場合又は告発されている場合
  6. 販売場の申請場所への設置が、建築基準法、都市計画法、農地法、流通業務市街地の整備に関する法律その他の法令又は地方自治体の条例の規定に違反しており、店舗の除却又は移転を命じられている場合
  7. 申請酒類小売販売場において、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかであると見込まれる場合

★資本等の額

資本等の額は、ざっくりと言えば会社が保有する財産のことですが、具体的には、資本金、資本剰余金及び利益剰余金の合計額から繰越利益剰余金を控除した額をいいます。

資本等の額=資本金+資本剰余金+利益剰余金の合計額−繰越利益剰余金

たとえば資本金500万円の法人において、直近決算の貸借対照表上の繰越損失が500万円を上回っている場合や、直近の3期連続で100万円を超える赤字が発生している場合は資産等要件を満たしていないことになります。

経験要件

申請者は、以下の経験その他から判断し、適正に酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力を有すると認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法人であることが求められています。

  1. 免許を受けている酒類製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く)の業務に引き続き3年以上直接従事した者
  2. 調味食品等の販売業を3年以上継続して営業している者
  3. 上記の業務に従事した期間が相互に通算して3年以上である者
  4. 酒類業団体の役職員として相当期間継続して勤務した者又は酒類の製造業若しくは販売業の経営者として直接業務に従事した者等で酒類に関する事業及び酒類業界の実情に十分精通していると認められる者

酒類販売管理研修

上記の従事経験や経営経験を満たせない場合には、その他の業での経営経験に加えて、「酒類販売管理研修」の受講の有無等から、知識及び能力を審査することになります。

実態として申請者等が経歴を満たしているケースはあまり多くなく、どの道免許取得後には研修を受講した「酒類販売管理者」を選任する必要があることから、酒類販売管理研修の受講は事実上必須の手続きとなります。

資金設備要件

申請者には、酒類を継続的に販売するために必要な資金、販売施設及び設備を有していること(又は必要な資金を有し、免許を付与するまでに販売施設及び設備を有することが確実と認められること)を求められています。

運転資金の具体的な金額は、展開しようとする事業の規模により異なりますが、免許申請時には、具体的な運転資金に関する事業計画を提出するよう求められているため、少なくとも仕入値と売値については、当初からしっかりと把握するようにしてください。

酒類販売業免許の条件緩和

すでに通信販売酒類小売業免許を受けている者が、新たに店舗での酒類小売業を始めようとするときは、「酒類販売業免許の条件緩和申出書」を提出し、付されている条件について、緩和等の措置を受ける必要があります。

免許申請手続きの流れ

免許申請の大まかな流れは下図のとおりですが、申請先は法人等の本店所在地を管轄する税務署に対してではなく、開業予定地を管轄する税務署となります。

例えば、芦屋市に本店を置く法人が尼崎市内で開業を予定している場合は、芦屋税務署ではなく、尼崎税務署に対して申請を行います。

酒類販売業免許申請の手続きの流れ

★酒類指導官(酒税官)

酒類指導官は、申請、審査および相談を担当する専門の行政官です。すべての税務署に常駐しているわけではなく、地域担当の複数の所轄税務署を取りまとめている税務署に常駐しています。

例えば尼崎市内で開業しようとする場合の申請先は尼崎税務署になりますが、相談窓口となる酒税官はお隣りの西宮税務署に常駐しています。

免許申請に必要となる書類

免許申請は、窓口となる税務署に対して、以下の書類を提出することにより行います。

  • 酒類販売業免許申請書
  • 次葉1〜6
  • 免許要件誓約書
  • 複数申請等一覧表(複数店舗での同時申請の場合)
  • 免許申請チェック表
  • 履歴事項全部証明書(法人の場合)
  • 履歴書(申請者、役員全員)
  • 全部事項証明書(販売場の土地・建物)
  • 賃貸借契約書(賃貸物件等の場合)
  • 決算報告書(最終事業年度以前3事業年度分)
  • 都道府県税の納税証明書
  • 市町村税の納税証明書
  • 酒類販売管理研修受講証のコピー
  • 通帳のコピー又は残高証明書など所要資金を証明する書類

書類作成方法

ここからは、具体的な書類作成方法について記述していきます。なお、申請様式は国税庁のサイトからダウンロードすることができますが、以下の該当リンクからもダウンロード(Word)することができます。

酒類販売業免許申請書 申請内容の基本情報
次葉1販売場の近隣周辺の見取図
次葉2販売場内のレイアウト図
次葉3販売場の設備状況
次葉4収支の見込み
次葉5所要資金の額、調達方法
次葉6酒類販売の管理に関する取組計画
免許申請チェック表
免許要件誓約書
複数申請等一覧表(Excel)複数店舗での同時申請の場合

酒類販売業免許申請書

酒類販売業免許申請書は、提出書類の頭の部分であり、申請者や申請販売場等の基本的な情報を記載していきます。

住所や所在地を記入する際は正確な表記が求められるため、たとえば個人の住所であれば住民票の記載通りに、法人の住所であれば法人履歴事項全部証明書の記載通りに記載する必要があります。

酒類販売業免許申請書

法人履歴事項全部証明書に記載されている住所が「○○町△丁目□番地の☓☓と記載されているものを「○○町△−□−☓☓」と省略して記載してはいけません。

個人申請者の住所住民票の記載通り
法人申請者の住所法人履歴事項全部証明書の記載通り
販売場の地番建物履歴事項全部証明書(底地すべてをもれなく記載)
販売場の住居表示市町村が定める住居表示通り(○○町△丁目□番地の☓☓)

記入する文字数の関係上、欄に入り切らない場合は、「別添のとおり」と記載して別紙を作成しても構いません。

申請の理由

次葉1(販売場の敷地の状況)

次葉1では、販売場の敷地の状況として、販売場周辺の位置図を記載します。

申請販売場については、で囲むなどして分かりやすく表示し、周辺の状況が伝わりにくい場合には、下欄スペースに詳細な図面を記載しても構いません。

次葉1

次葉2(建物等の配置図) 

次葉2の建物等の配置図には、売場の位置、陳列場所の表示、区分の表示、標識の掲示場所及び設備(パソコン、レジ、什器等)を分かりやすく明示して落とし込みます。

次葉2

次葉3(事業の概要)

敷地の面積については底地となるすべての土地の全部事項証明書に記載された数値を合計したものを記載し、建物の面積については建物の全部事項証明書に記載された数値をそのまま記載します。

また、次葉2で明示したパソコン、レジ、什器等の設備についても、しっかりもれなく記載するようにしましょう。

次葉3

次葉4(収支の見込み)

所轄税務署や担当官な違いによって対応がまちまちですが、資金に余裕がないにもかかわらず無理な計画を立てると、経営基礎要件を満たさないものとして免許を取得することができなくなるため、年間の収支見込みについては、実際に行おうとする小売の規模を、前年度の事業実績や決算書等を参考にしながら見積もります。

あくまでも予定であることから、後からこれを変更することは可能ですが、無理めな計画や事実と大幅に異なる計画を立てても受け付けてはもらえません。

また、「酒類小売業免許」のみを有する事業者から酒類を仕入れたり販売先に指定することはできないため、仕入先の欄には、「酒類卸売業免許」を有する卸売業者を事前に定めて記入します。

次葉4

次葉5(所要資金の額及び調達方法) 

次葉5では、所要資金や調達方法について、次葉4との間で食い違いが生じないように気をつけながら、「どんぶり勘定」にならないよう記載していきます。

所要資金の額については、仕入、設備投資費用及び予定販売量等の計画から、矛盾なく相応しい金額を準備していることが求められます。

また、実際に所要資金を準備することができる証明資料として預金通帳の残高ページのコピー等を添付することが求められます。

次葉5

次葉6(酒類の販売管理の方法)

次葉6では、酒類の販売管理の方法について記載します。なお、酒類販売業を営業するためには、販売場ごとに、過去3年以内に酒類販売管理研修を受講した「酒類販売管理者」と、酒類販売管理者に次ぐ立場である責任者を選任する必要があります。

(※)厳密には、必ずしも酒類販売管理者に次ぐ立場である責任者を選任する必要はありませんが、実務面においては、選任していた方が無難です。

次葉6_1
次葉6_2

免許申請書チェック表

免許申請書チェック表は、必要書類の確認用として使用するほか、他の書類と一緒に添付する必要があります。

免許要件誓約書

免許要件誓約書は、申請者が欠格要件に該当しないことについて誓約する書面です。

法人であって役員が複数人いる場合には、代表者が役員を代表して誓約し、下欄には役員全員の氏名を記名します。

誓約書_1
誓約書_2
誓約書_3

履歴書

履歴書は、申請者及び役員全員の分を添付します。特に指定された様式はなく、市販されているものでも構いませんが、最低限、職歴(できれば担当部署まで)をすべて確認することができるよう記載してください。

履歴書

酒類に関する免許取得サポート

弊所は、関西圏を中心に、全国各地において年間300件以上の申請に携わります。酒類に関する手続きについては、より難易度の高い製造免許を含めてコンスタントに発注があり、着々と対応エリアを拡大しています。

また、弊所では「話しの分かる行政書士事務所」を標榜し、迅速、格安での対応をお約束しています。経験豊富で迅速であるからこそ工期を短縮することができるため、格安料金での対応が実現可能となっています。酒類販売免許申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

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