酒類製造者の発行する証明書の取得方法│国産酒の通信販売に必要となる課税移出数量証明書とは

課税移出数量証明書

インターネット、チラシ、カタログ等によってお酒の通信販売を行うためには、所轄の税務署に申請し、通信販売酒類小売業免許を取得する必要があります。

この免許を取得することにより、全国規模でお酒の通信販売を展開することができるようになるわけですが、実は通信販売によって販売することができる国産酒については、原則として、特定製造者の製造・販売した酒類でなければならないという制限が課されています。

そこで本稿では、国産酒を通信販売する上で、取り扱う酒類が「通信販売の対象となる国産酒」であることを証明するために必要となる課税移出数量証明書の取得方法について、国産酒の制限が課されている背景とともに詳しく解説していきたいと思います。

通信販売酒類小売業の制限

通信販売酒類小売業免許を取得して、通信販売により販売することができる酒類は、以下の範囲のものに限定されています。

  1. 品目ごとの年間課税移出数量(製造して課税されるお酒の総量)が、すべて3,000kl未満である製造者(特定製造者)が製造、販売する国産酒
  2. (製造委託者が所在する)地方の特産品等を原料として、特定製造者以外の製造者に製造委託する酒類であり、かつ、製造委託者ごとの年間製造委託数量の合計が 3,000kl未満である酒類
  3. 輸入酒(酒類の品目・数量の制限なし)

酒税法第10条第11号においては、酒税の保全上、酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合には、通信販売酒類小売業免許を与えないという定めがあります。

この条文を解釈した国税庁の通達によれば、地域的または全国的に酒類の需要の均衡を破り、その販売の面に混乱をきたし、販売業者の経営の基礎を危うくし、酒税の保全に悪影響を及ぼすと認められる場合には、新たに酒類の販売業免許を付与しないものとされています。

さらに砕けた表現をすると、「生産量の多い国産酒ばかりたくさん売れても困るよね?生産量の少ない地ビールや国産ワインにもスポットを当てて、国産酒の需要と供給のバランスを維持しましょう。そうすれば、大メーカーも中小事業者もハッピーになれるし、税金(酒税)だってしっかり納めてもらえるよね!」というのが、この規制の本旨です。

このため、小売業者についても、「酒類の仕入れや販売を適正な方法により行うことが出来るかどうか」「販売に際して価格や品質などが適正に保たれるかどうか」といった基準が重要になります。

課税移出数量証明書とは

課税移出数量とは、酒類製造者の事業所(酒蔵)から1年間に出荷された酒類の数量をいいます。

なら「年間出荷量」でよくない?

酒税法では、酒類製造者から移出された時、要するに出荷される時点で酒税の納税義務が発生し、移出数量又は移出価格に応じて、酒類製造者が税金を納める仕組みを採用しています。このため、「酒税が課される」という点を重要視し、酒税に対する意識を高めるために、「出荷量」ではなく「課税移出数量」と表現しているという事情があります。

課税移出数量証明書

通信販売で販売することができる国産酒は、品目ごとの年間課税移出数量が、すべて3,000kl未満である特定製造者が製造又は販売する国産酒に限定されています。したがって、スーパーや酒屋さんでよく見かけるようなメジャーなメーカーのお酒は、通信販売では取り扱うことができません。

すなわち課税移出数量証明書とは、通信販売により販売することができるお酒であることを証明するための書類と言い換えても良いでしょう。

なお、卸業者から酒類を仕入れる場合であっても、製造元の証明書は、必ず添付する必要があります。

課税移出数量証明書サンプル
課税移出数量証明書

通信販売が可能になる酒類

ここからは、通信販売酒類小売業免許を取得することで、通信販売により販売することができるようになるお酒について、さらに具体的に解説していきます。

例えば、A酒造の製造する清酒を通信販売で販売しようとする場合は、A酒造から年間課税移出数量が3,000kℓ未満である証明書を取得します。

その際、A酒造が複数の品目1を製造していた場合には、A酒蔵が製造する品目すべてについて、通信販売により販売することができるようになります。

つまり、A酒蔵が清酒のほかにも、リキュールや果実酒を製造している場合は、結果的にA酒蔵が製造するリキュールや果実酒についても、通信販売をすることができるようになるという仕組みです。

  1. 品目とは、個別の商品銘柄のことではなく、酒税法上の17品目の分類のことです。 ↩︎

また、製造しているすべての品目において3,000kl未満であることが要求されます。例えば、焼酎とワインの製造元であるB酒造について、焼酎の年間課税移出数量が3,000kℓ未満であっても、ワインの年間課税移出数量が3,000kℓを超えている場合、B酒造が製造するお酒は、焼酎であれワインであれ通信販売をすることができません。

なお、免許取得後は証明書の交付を受けた製造元以外が製造するお酒も、通信販売により販売することが可能です。例えばA酒造から証明書の交付を受けている場合、C酒造から証明書の交付を受けていない状態であっても、C酒造が製造するお酒も販売することができます。ただし、当然ながらC酒造についても、年間課税移出数量が3,000kℓ未満であることが前提になります。

課税移出数量証明書の取得方法

次に、具体的にどのような方法で課税移出数量証明書を取得するのかについて確認していきましょう。

製造元に直接問い合わせる

ずばり、酒蔵に直接掛け合います!

え?そんな知り合いいないよ。いたらそもそもインターネットで検索しないし。

実際に、製造元とのつながりがない場合は、免許の取得にかなり苦労することが予想されます。

製造元からすれば、免許取得前のよく分からない事業者から証明書の発行を依頼されたとしても、将来的に自社と取引をしてくれる保証もないので証明書を発行するメリットは特にありません。そもそも製造元には依頼に応じる義務があるわけでもないですから、門前払いを受けることも予想されます。

ただし、酒蔵から直接仕入れを行う場合は、その商談の過程において証明書を発行してくれることがあります。

そのためには、しっかりとした事業計画や免許の取得見込みの程度、なによりもその製造元のお酒に対する熱意などを伝えることが肝心です。

闇雲に営業することはお薦めしませんが、メジャーなメーカーではない特定の酒蔵やその酒蔵の製造するお酒に対する熱意があるのであれば、効果的な方法であるように思います。

卸問屋に問い合わせる

販売するお酒は、「酒類卸売業免許」を取得している卸売業者から仕入れることになるので、卸売業者が直接の取引先となることが多いと思います。

その商談の過程において、これから免許と証明書を取得しようとする旨を伝えることで、証明書の取得にも協力してもらえることがあります。

ただし、卸業者が証明書を発行するわけではなく、また、御業者にも取引することができる酒蔵と、取引することができない酒蔵があるため、酒蔵や取り扱う酒類によっては、卸業者であっても対応が難しいことがあります。

このため特定の酒蔵やお酒を販売しようとする際には、交渉する卸業者がその酒蔵と取引を行っているかどうかもしっかりと確認するようにしましょう。

まとめ

国産酒の需給調整は、一般層からすればなかなか理解しにくい制度です。お酒の通信販売を行う際は、この規制がひとつのハードルとなっていることは間違いありませんが、酒税という税金に関わる事業である以上は、従わざるをえない事項でもあります。

どのような事業であっても、事前にしっかりと事業計画を練り込むことが重要です。まずは今いちどお酒や周辺知識に関する理解を深め、つど点検をしつつ計画を進めるようにしましょう。

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