全酒類卸売業免許申請ガイド│免許要件と申請方法をさくっと解説

酒類卸売業免許は、酒類販売業者又は酒類製造者に対して酒類を継続的に販売することが認められる免許であり、販売する酒類の範囲又はその販売方法によってさらに8つの免許に区分されています。
このうち全酒類卸売業免許とは、原則として全ての品目の酒類を卸売することができる免許区分です。
この免許については、卸売販売地域ごとに算定した各免許年度において免許を付与することができる件数(以下、免許可能件数)が限られているなど、そのハードルの高さから、取得することが非常に厳しい免許としても知られています。
そこで本稿では、将来的に全酒類卸売業免許の取得を目指す皆さまに向けて、免許内容や免許要件など、免許取得のために必要となる基礎知識について詳しく解説していきたいと思います。
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全酒類卸売業免許
酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法に基づき、販売場ごとに、その販売場の所在地の所轄税務署長から酒類販売業免許を受ける必要があります。
免許付与が「販売場ごとに」とされていることから、例えば本店で免許を受けている場合であっても、支店で酒類の販売業を行おうとする場合には、支店の所在地の所轄税務署長から新たに免許を受ける必要があることになります。
酒類卸売業免許は、酒類販売業者又は酒類製造者に対して酒類を継続的に販売することができる免許であり、一般の消費者及び料飲店営業者等に対して酒類を販売することはできません。
このうち全酒類卸売業免許は、清酒、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキー、ブランデー及び発泡酒等、種類や銘柄を問わず全ての品目のお酒を卸売することが認められる免許であることから、酒類の卸売業をはじめようとする事業者が、まず検討するのがこの免許区分ではないかと思います。
他方、全酒類卸売業免許には、抽選対象申請期間や免許可能件数という概念があるなど通年で何件でも申請することができる他の免許区分とは異なる独自の制限が設けられているほか、免許要件について10年以上の実務経験が求められていたり、年間卸売数量に100㎘以上という条件が設けられていたりすることから、免許取得までのハードルが極めて高い免許区分となります。
免許可能件数と申請期間
酒類の流通量の偏(かたよ)りは、酒税の安定的な徴収を図る上で好ましいことではないという考え方のもと、全酒類卸売業免許については、地域における酒類の需給を調整するために、免許可能件数が設けられています。
各卸売販売地域(都道府県)における免許可能件数は、毎年9月1日(土日の場合は翌月曜日)に卸売販売地域内の各税務署の掲示板等に公告され、国税庁のホームページ上にも掲載されますが、どの地域についても、極めて狭き門として限定的に開放されているに過ぎないというのが現状です。
★卸売販売地域
卸売販売地域とは、免許年度(9月1日〜翌年8月31日)の免許可能件数を地域的需給調整を行うために設けた都道府県を一単位とする地域を指します。
抽選対象申請期間
基本的には、いつでも申請することができるものとされていますが、抽選対象申請期間は毎年9月1日(土日の場合は翌月曜日)から9月30日(土日の場合は翌月曜日)までの期間とされており、この期間内になされた申請について公開抽選の対象となり、その対象となった申請者から先に審査されることになります。
なお、7月1日(土日の場合は翌月曜日)から8月31 日(土日の場合はその直前の金曜日)までに受理した申請書(法人成り等に伴い提出された申請書、営業の譲受けに伴い提出された申請書及び同一卸売販売地域内での販売場の移転の許可申請書を除く)は、同年9月1日(土日の場合は翌月曜日)に受理したものとして取り扱われます。
公開抽選
公開抽選の対象となる申請書等の件数が免許可能件数を超えない場合を除き、毎年10月中に実施される公開抽選により審査順位が決定し、その順位に従って審査開始通知書が送付されます。
審査開始通知書を受け取った申請者は、通知の日から2週間以内に、審査時提出分の書類を提出します。(後述)
免許の要件
酒類流通の中核を担う酒類卸売業の免許にあって全酒類卸売業の免許の要件は特にハードルが高く、人的要件、場所的要件、経営基礎要件及び受給調整要件のすべてについて、多角的な視点からの審査が行われます。
人的要件
古今東西、お酒は常に犯罪や不正行為といった暗い面がつきまとってきました。酒税の徴収という観点からしても、信頼性や倫理観に欠ける人間を酒類販売業に関与させることは適切ではありません。
このような理由から、酒税法では酒類卸売業の免許を受けようとする者について以下の免許拒否事由を設け、この事由にひとつでも該当する者については、免許を付与しないこととしています。
- 免許を取り消され、又は許可を取り消された日から3年を経過するまでの者
- 酒類販売業者である法人が免許を取り消された場合又は許可を取り消された場合において、それぞれ、その取消しの原因となった事実があった日以前1年内に当該法人の業務を執行する役員であった者で当該法人がその取消処分を受けた日から3年を経過するまでのもの
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人が1・2・7・8に該当する者である場合
- 法人の役員のうちに1・2・7・8に該当する者がある場合
- 1・2・7・8に該当する者を販売場に係る支配人としようとする場合
- 申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けた者である場合
- 免許の申請者が国税若しくは地方税に関する法令、酒類業組合法、アルコール事業法の規定により罰金の刑に処せられ、又は国税通則法、関税法、地方税法の規定により通告処分を受け、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過するまでの者である場合
- 未成年者飲酒禁止法、風営法、暴力団対策法の規定により、又は刑法上の一定の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過するまでの者である場合
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過するまでの者
- 正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとする場合
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合
- 酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため免許を与えることが適当でないと認められる場合
場所的要件
税区分を明確にする必要性から、酒類の販売場を、製造免許を受けている酒類の製造場や、販売業免許を受けている酒類の販売場、酒場、旅館及び料理店等と同一の場所に設けることは認められていません。
また、申請する販売場における営業が、販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていることも求められています。
このような理由から、オープンスペースやフリースペース、オフィスとしての実態がないバーチャルオフィスについては、酒類の販売場として認められません。
販売場の物件が自己所有であるか他人所有(賃貸)であるかは問われませんが、賃貸物件である場合には、賃貸契約書の写しのほか、賃貸人からの使用承諾書も求められます。例え予定販売場が自己所有の物件であったとしても、管理規約が定められたマンションの一室を販売所としようとする場合には、住民や管理組合等の承諾を求められることがあります。
需給調整要件
すでに解説したとおり、全酒類卸売業免許については、酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があることから、卸売販売地域(都道府県)及び免許可能件数が設けられています。
条件緩和の申出時の要件
すでに酒類販売業免許を取得している事業者が、免許されている範囲外の方法により酒類を販売しようとする場合には、「酒類販売業免許の条件緩和申出」の手続きが必要となります。
このうち、すでに一般酒類小売業免許を受けている販売場ににおいて新たに全酒類卸売業を行おうとする際の条件緩和の申出に係る要件は以下のとおりです。
- 酒類販売業免許の取消要件に該当していないこと
- 販売場における年平均販売見込数量(卸売基準数量)が100kl以上であること
- 需給調整要件を満たしていること
経営基礎要件
酒税の徴収上、経営能力に乏しい事業者や、経営状況が安定しない事業者を酒類販売業に関与させることは、中長期的に見て、徴収する酒税が目減りすることにつながりかねないため、好ましいことではありません。
したがって、資産状況、経験、資金及び設備等を総合的に照らし合わせ、一定の経営基礎を持たないものと判断された申請者については、免許を受けることができません。
資産状況等
申請者の資産状況等は、経営状況の安定性を左右するものであるため、免許申請にあたっては、以下の要件をすべてクリアすることが求められています。
- 現に国税又は地方税を滞納していないこと
- 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けていないこと
- 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額を上回っていないこと
- 最終事業年度以前3事業年度の全ての事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じていないこと
- 酒税法等の関係法令に違反し、通告処分を受け、履行していない又は告発されていないこと
- 販売場の申請場所への設置が、建築基準法、都市計画法、農地法、流通業務市街地の整備に関する法律その他の法令又は地方自治体の条例の規定に違反したことにより、店舗の除却又は移転を命じられていないこと
- 申請した販売場において、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかではないこと
- 申請等販売場における年平均販売見込数量(卸売基準数量)が100kl以上であること
経験要件
全酒類卸売業者は、経験その他から判断し、適正に酒類の卸売業を経営するに十分な知識及び能力を有すると認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法人であることが求められています。
具体的に、申請者(法人の場合はその役員)及び販売場の支配人については、以下の経歴を有することが求められています。
- 免許を受けている酒類製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く)の業務に引き続き10年(申請販売場が沖縄県に所在する場合は3年)以上直接従事した者
- 調味食品等の販売業を10年(申請販売場が沖縄県に所在する場合は3年)以上継続して営業している者
- 上記の業務に従事した期間が相互に通算して10年(申請販売場が沖縄県に所在する場合は3年)以上である者
- 酒類業団体の役職員として相当期間継続して勤務した者又は酒類の製造業若しくは販売業の経営者として直接業務に従事した者等で酒類に関する事業及び酒類業界の実情に十分精通していると認められる者
小売業免許や他の卸売業とは異なり、酒類販売管理研修の受講によって実務経験に代えることができるものではなく、実務経験については厳密に経歴を問われることになります。
また、単に従業員として上記の業務に従事していただけでは足りず、個人事業主又は法人役員として、これらの業務に関わっていた経験が必要とされています。
資金設備要件
申請者には、月平均販売見込数量、月平均在庫数量、平均在庫日数、平均売上サイト及び必要な設備等を勘案して全酒類卸売業を経営するに十分と認められる所要資金等を有すること並びに販売見込数量から勘案して適当と認められる店舗、倉庫、器具及び運搬車等の販売施設及び設備を有すること(又は有することが確実と認められること)が求められています。
免許申請手続き
審査開始通知書が送付された後、通知の日から2週間以内に、予定販売場の所在地を管轄する税務署に対し、以下の必要書類を提出します。
- 全酒類卸売業免許申請書
- 次葉1「販売場の敷地の状況」
- 次葉2「建物等の配置図」
- 次葉3「事業の概要」
- 次葉4「収支の見込み」
- 次葉5「所要資金の額及び調達方法」
- 免許要件誓約書
- 定款の写し
- 法人履歴事項証明書
- 履歴書
- 契約書等の写し
- 都道府県税の納税証明書
- 市町村税の納税証明書
- 最終事業年度以前3事業年度の財務諸表
- 登記事項証明書(土地・建物)
- 所要資金の確認書類(通帳のコピー等)
- 全酒類卸売業免許申請書チェック表その1
- 全酒類卸売業免許申請書チェック表その2
申請先は予定販売場の所在地の所轄税務署になりますが、個別具体的な相談は、所在地の所轄税務署を担当する酒類指導官(酒税官)が担当します。また、必要に応じて来署を求められる場合や、現地確認が行われる場合があります。
免許が付与されるまでに税務署側が必要とする期間の目安となる標準処理期間は、提出した書類の補正等が完了するまでの期間を除き、審査を開始してから2か月以内となっています。
なお、免許付与等に際しては、登録免許税(免許1件につき9万円、酒類小売業免許に条件緩和(解除)を付する場合は6万円)を納付し、納付に係る領収証書領収証書提出書に貼付して、指定された期日までに免許先の税務署に提出します。
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