東京都におけるカスタマーハラスメント防止対策推進事業(奨励金)の概要と申請代行について【令和7年8月8日まで】

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客からの暴言、暴力、長時間の拘束、過剰な要求などによって、従業員の就業環境が害される行為を指しますが、従業員の不調や離職につながりやすいことから、企業のみならず社会全体にとって大きな問題として認知されています。

カスハラから大切な従業員を守ることは事業者の責務であると同時に、安心して働ける環境を確保することは、事業全体の生産性を高め、顧客満足度の向上にもつながります。

(公財)東京しごと財団(以下、財団)では、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(以下、条例)で規定する事業者による措置等を速やかに企業等へ浸透させるため、カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの整備に加え、カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組を促進し、働きやすい職場環境整備を推進しています。

具体的に、令和7年4月1日以降に、カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの整備に加え、 カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組を実施した都内中小企業等に対し、 奨励金を支給するという事業が実施されています。

ここではカスタマーハラスメント防止対策推進事業の概要を詳しくお伝えするとともに、便利な申請代行についてもご案内しています。

本稿では、東京都におけるカスタマーハラスメント防止対策推進事業(奨励金)の概要を、それなりのボリュームで解説しています。

最下段には、本奨励金の申請代行プランについての案内がありますので、最後まで閲覧していただければ幸いです。

解説にうんざりされた方は、最下段の問い合わせフォームから、どうぞご遠慮なくヘルプをご申し込みください。笑

奨励事業の概要

令和7年4月1日以降に、カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの作成に加え、カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組を実施した都内中小企業等に対し、財団から奨励金として40万円が支給されます。

【主な取組】

◆カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの作成
◆カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組、以下のいずれかひとつを実施
取組① 録音・録画環境の整備
取組② AIを活用したシステム等の導入
取組③ 外部人材の活用

事業実施期間は、令和7年6月30日(月)から令和8年3月31日(火)までですが、申請受付期間は、令和7年8月8日(金)17時までとされています。

令和7年度の申請受付は年3回、各回それぞれ1,000件が予定されていますが、この予定件数を超えた場合には、受付期間中でも受付が終了されることがあります。

手続きの流れ
手続きの流れ

申請は、一奨励対象事業者につき1回限りとされています。また、別法人格(個人事業主含む)であっても同一代表者からの申請は、同一企業からの申請とみなされます。

対象事業者の要件

奨励金の申請日時点で、以下の要件をすべて満たしている事業者が対象となります。(その他、財団理事長が適当でないと判断した場合は本奨励金の対象外となります。)

  1. 常時雇用する従業員の数が300人以下の企業であること
  2. 都内で事業を営む中小企業等又は個人事業主であること
  3. 東京都政策連携団体の指導監督等に関する要綱に規定する東京都政策連携団体、事業協力団体又は東京都が設立した法人でないこと
  4. 中小企業等の場合は都内に本店登記、または支店の事業所があること
  5. 個人事業主の場合は都内税務署へ開業届を提出していること
  6. 都内の事業所で継続的に1年以上事業を行っていること
  7. 都内の事業所で実質的に事業を行っていること
  8. 都税の未納がないこと
  9. 過去5年間に重大な法令違反等がないこと
  10. 民事再生法、会社更生法、破産法に基づく申立・手続中(再生計画等認可後は除く)、又は私的整理手続中など、事業の継続性について不確実な状況が存在していないこと
  11. 労働関係法令について、一定のを満たしていること
  12. 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業、当該営業に係る「接客業務受託営業」及びこれらに類する事業を行っていないこと
  13. 暴力団員等(東京都暴力団排除条例第22条第3号に規定する暴力団員及び同条第4号に規定する暴力団関係者)、暴力団(同条第22号に規定する暴力団)及び法人その他の団体の代表者、役員又は使用人その他の従業員若しくは構成員が暴力団員等に該当する者でないこと
  14. 本奨励金をすでに受給(受給予定も含む)していないこと

従業員数

常時雇用する労働者とは、以下のいずれかを指し、登録型派遣労働者は除くものをいいます。

  • 期間の定めなく雇用されている労働者
  • 有期雇用の場合、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者
  • 日々雇用契約が更新される労働者でも、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者(※)

(※)雇用契約に更新規定があり1年未満での雇止めの明示がなければ、引き続き雇用されると見込まれます。

企業

企業とは、会社法第2条第1号に定める「会社」又は会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第3条第2号に定める「特例有限会社」又は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第22条又は第163条の規定により成立した法人等をいいます。(弁護士法人、監査法人、行政書士法人、司法書士法人、弁理士法人、社会保険労務士法人、土地家屋調査士法人及び公益法人等、特定非営利活動法人、協同組合等、労働者協同組合並びに個人事業主を含む)

ただし、以下のいずれかを満たすものは「企業」からは除外されます。

  • 構成員相互の親睦、連絡及び意見交換等を主目的とするもの(同窓会、同好会等)
  • 特定団体の構成員又は特定職域の者のみを対象とする福利厚生、相互救済等を主目的とするもの
  • 特定個人の精神的、経済的支援を目的とするもの(後援会等)
  • 法人格のない任意団体、政治団体、宗教団体、運営費の大半を公的機関から得ている法人等

都内要件

都内の事業所で継続的に1年以上事業を行っていることが要件とされていますが、これは申請日時点で1年以上、都内で事業を行っていることを指します。

都内に本社又は事業所を設置してから1年未満の場合は対象外となり、都外での事業期間を合算することもできません。

また、「実質的に事業を行っている」とは、申請時に提出する登記簿謄本や開業届、事業所一覧に記載された都内所在地において、単に建物があることだけではなく、申請書、ホームページ、看板や表札、電話連絡時の状況、営業実態等から総合的に判断して事業活動が行われていることを指します。

都税の納税要件

納付義務があるにもかかわらず、法人事業税及び法人都民税(個人については個人事業税及び個人都民税)の未納付がある場合は申請することができません。

納税は事業年度分(12か月分)の確認を受けますが、1事業年度分の納税証明書が提出できた場合でも、12か月分の納税が確認できない場合は対象外となります。また、法人事業税・個人事業税が非課税又は課税額が0円の場合は、事業実態を確認するための書類を提出します。

重大な法令違反等

以下の重大な法令違反等がある企業等又はこれらの法令違反等の状況が解消されてから5年が経過していない企業等は、申請を行うことができません。

  • 刑事罰、営業停止処分を受けた場合
  • 労働基準監督署により検察官に送致された場合
  • 消費者庁の措置命令があった場合
  • 上記のいずれかと同等以上の法令違反であると判断される場合


また、同一代表者の申請は、別法人格であっても同一企業からの申請とみなされるため、同一代表者の別法人格に重大な法令違反があった場合は、奨励対象事業者となることはできません。

労働関係法令

労働関係法令については、以下すべての要件を満たしていることが求められます。

  • 従業員に支払われる賃金が、就労する地域の最低賃金額(地域別、特定(産業別)最低賃金額)以上であること
  • 固定残業代等の時間当たり金額が時間外労働の割増賃金に違反していないこと、また固定残業時間を超えて残業を行った場合は、その超過分について通常の時間外労働と同様に、割増賃金が追加で支給されていること
  • 法定労働時間を超えて労働者を勤務させる場合は、「時間外・休日労働に関する協定(36協定)」を締結し、遵守していること
  • 労働基準法第39条第7項(年次有給休暇について年5日を取得させる義務)に違反していないこと
  • 労働基準法に定める時間外労働の上限規制を遵守していること(※)
  • 上記以外の労働関係法令について遵守していること
  • 厚生労働大臣の指針に基づき、セクシュアルハラスメント等を防止するための措置をとっていること

(※)原則として時間外労働は、月45時間以内、年360時間以内とされており、臨時的な特別な事情がある場合は、時間外労働・休日労働の合計が月100時間未満、複数月平均80時間(年6か月まで)、時間外労働が年720時間以内となります。(ただし、いずれも特別条項付きの36協定締結が必要)

併給の取扱い

奨励対象事業者が、奨励金の支給事由と同一の事由により支給要件をみたすこととなる他の奨励金等のうち、国又は東京都等が実施するもの(他の団体等に委託して実施するものを含む)を受給する又は受給した場合や、東京都が実施する以下の補助金等を受給する又は受給した場合は、奨励金の併給は認められません。

  • 防犯機器等導入支援補助金(介護現場におけるカスタマーハラスメント対策強化事業)(東京都福祉局高齢者施策推進部)
  • 在宅医療現場における防犯機器等導入支援事業(東京都保健医療局医療政策部)
  • 在宅訪問実施薬局における防犯機器等導入支援事業(東京都保健医療局健康安全部 )

ただし、東京都が実施する上記の補助金等において録音・録画機器以外の防犯ブザー等を選択した場合又は本奨励金の実践的な取組において②「AIを活用したシステム等の導入」若しくは③「外部人材の活用」を実施した場合は、例外的に併給が認められます。

対象となる取組要件

奨励金は取組に対する報奨という性質を有することから、令和7年4月1日以降に、カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの作成(又は改定)に加え、カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組を実施したことが支給の要件となります。

カスタマーハラスメント対策に関するマニュアル

カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルは、下記の「必須項目」をすべて含んだ内容であり、これを社内に周知する必要があります。

  • カスタマーハラスメント対策に関するマニュアル作成の目的(「条例」についての言及、策定の背景や組織的な対応の必要性等)
  • カスタマーハラスメントの定義
  • カスタマーハラスメントに対する基本方針
  • 顧客対応の考え方(心構え、クレーム初期対応、顧客等の権利の尊重等)
  • カスタマーハラスメントへの対応(カスタマーハラスメント判断や対応フロー等)
  • 社内体制整備(相談窓口の設置、研修実施、再発防止の取組等)
  • 企業間取引での対応(カスタマーハラスメント防止の基本姿勢、取引先へのカスタマーハラスメント禁止等)

※章立て(タイトル)だけのマニュアルは不可

カスタマーハラスメントに対する基本方針

「カスタマーハラスメント対策に関するマニュアル」の中で策定されたカスタマーハラスメントに対する基本方針は、令和7年4月1日以降に社内と社外に周知する必要があります。

なお、社外への周知とは、店頭での掲示、自社HPでの掲示、顧客先への周知等が想定されています。

【基本方針に定める要素例】

  • カスタマーハラスメントに対する基本方針を定める目的
  • 企業におけるカスタマーハラスメントの定義
  • 社内におけるカスタマーハラスメントの対応
  • 社外におけるカスタマーハラスメントの対応等

カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組

カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取組として、以下の取組のうちいずれか1つを実施したことが要件となります。なお、申請企業等の親会社・子会社・グループ企業等関連会社等(※)からの購入又はリース等の契約を取組として申請することはできません。

(※)親会社・子会社・グループ企業等関連会社等とは、資本関係のある会社、役員等(これに準ずる者を含む)又は社員を兼任している会社、代表者の三親等以内の親族が経営する会社(個人事業主、法人及び団体等を含む)をいいます。

取組①録音・録画環境の整備
取組①
取組②AIを活用したシステム等の導入
取組②
取組③外部人材の活用
取組③

支給申請

申請は、必要書類をすべて揃えた上で、Jグランツ上の本奨励金申請フォームから提出します。様式が定められているものについては、「令和7年度カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金」の様式を使用した申請でなければ受理はされません。

Jグランツでメンテナンス等が発生する場合に備えて、期日に余裕を持って申請してください。また、電子申請のアクセスが集中した場合、システム障害により申請手続きが滞る可能性があります。

審査

書類に不足や不備があった場合は連絡担当者へ連絡が入り、1週間以内を目処に補正するよう促されます。

書類に不足や不備がなければ正式受領となり審査に入ります。なお、審査の際に必要に応じて、立入りによる調査や募集要項に記載のない書類の提出及び説明を求められる場合があります。

申請事業者情報の変更

申請書類提出後に、企業等の名称、本店所在地、代表者が変更になった場合は、GビズIDの登録情報を変更し、速やかに、「変更届出書(様式第4号)」及び「当該変更の事実が確認できる証明書類(法人登記簿謄本等)」を、Jグランツにある所定の申請フォームから提出します。

申請の撤回

支給要件は満たすものの、書類不備等により申請書類が正式受領されなかった場合、支給申請の撤回手続きにより、再度支給申請することが可能です。なお、支給申請の撤回を行った場合、申請受付期間中であれば再度支給申請することが可能です。

支給申請を撤回する場合は、速やかに、「支給申請撤回届出書(様式第5号)」を提出します。また、支給決定通知受領後に支給申請を撤回する場合は、支給決定通知受領後14日以内に提出します。ただし、不支給決定となった場合は奨励対象外となり、撤回することはできません。

みなし辞退

追加書類の提出期限を過ぎた場合や、申請内容に関する確認又は問い合わせに対して回答しない場合等は、申請を辞退したものとみなされます。

支給・不支給の決定

審査により、支給・不支給が決定され、審査結果がJグランツにて通知されます。支給決定にあたっては、必要に応じて条件を付される場合があります。

なお、いかなる理由があっても決定通知書は再発行されないため、注意して保管するようにしてください。

支給決定後の手続き

支給決定通知を受領後、Jグランツにある所定のフォームから請求申請を行います。奨励金の支払いには、請求申請の受付が完了してから約1か月程度かかります。

また、奨励金の請求時、GビズIDの登録情報(企業名、本店所在地、代表者等)に変更があり、提出された申請書類に関する情報と一致しない事由が発生した場合は、請求は受付けされません。この場合、「申請事業者情報の変更について」に従い、所定の手続きを行います。

支給決定の取り消し、奨励金の返還

以下のいずれかに該当した場合は、支給決定が取り消さることがあります。

  • 偽りその他不正の手段により奨励金の支給を受けたとき、又は受けようとしたとき
  • 奨励金の支給決定の内容又はこれに付した条件、その他法令等に違反したとき
  • カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金支給要綱(以下、要綱)第4条9項に定める暴力団員等の該当者又は関係者であることが判明したとき
  • 申請の要件に該当しない事実が判明したとき
  • 法令又は要綱および理事長の指示に違反したとき

奨励金支給決定が取り消された場合において、既に奨励対象事業者に奨励金が支給されているときは、期限を定めて奨励金を返還するよう求められるほか、別に刑事罰が適用される場合もあるため十分ご注意ください。

提出書類

提出する書類は以下のとおりですが、これらは全て「写し」とし、A4縦(納税証明書等は横向きでも可)で内容が判別できるものをPDF形式で添付します。周知の掲示物や機器の写真についてはjpg形式でも提出可能です。また、申請書類の中に日本語以外の言語がある場合は翻訳文を添付します。

  • 支給申請書(様式第1号)
  • 誓約書(様式第2号)
  • 事業所一覧(様式第1号別紙※記入欄が不足する場合は任意様式可)
  • 会社案内又は会社概要(ホームページの写し等)
  • 商業・法人登記簿謄本(法人)
  • 個人事業の開業・廃業等届出書(個人事業主)
  • 代表者の住民票(個人事業主:記載事項証明書でも可)
  • 直近の水道光熱費の領収書や賃貸借契約書(登記上の本店が都外の場合のみ提出)
  • 納税証明書
  • カスタマーハラスメント対策に関するマニュアル
  • カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルを社内に周知した内容が確認できる書類
  • カスタマーハラスメントに対する基本方針
  • カスタマーハラスメントに対する基本方針を社内と社外に周知した内容が確認できる書類
  • 実践的な取組の内容が確認できる書類
  • その他必要に応じて求める書類

(※)取り消し線での訂正は認められていません。

奨励事業に係る全ての関係書類及び帳簿類は奨励事業の完了した日の属する会計年度の終了後、5年間保存する必要があります。

奨励金請求時の提出物

支給決定通知受領後は、受取口座を確認できる書類として、金融機関名、預金種別、支店名若しくは支店コード、口座番号及び口座名義(フリガナ)が確認できる通帳等のコピーを提出します。なお、法人の場合は、法人名義の口座である必要があります。

カスハラ防止対策奨励金申請サポート

弊所では、個人・法人問わず、都内全域の事業者を対象としてカスタマーハラスメント防止対策推進事業(奨励金)に係る手続きの代行を承(うけたまわ)っております。事務所自体は兵庫県に所在しますが、提携先の都内行政書士法人は、都内における各種補助金等の申請について多くの実績を有します。

また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。カスタマーハラスメント防止対策推進事業(奨励金)に係る手続きでお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

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