ビール卸売業免許申請ガイド│免許要件と申請方法をさくっと解説

カラフルなビール瓶

酒税法では、酒税の安定的な賦課徴収に資するため、酒類の製造及び販売業等について免許制を採用し、国税庁の監督の下、酒類流通のルールを定めています。

酒類卸売業免許は、酒類販売業者又は酒類製造者に対して酒類を継続的に販売することが認められる免許であり、このうちビール卸売業免許とは、その名のとおりビールを卸売することができる免許区分です。

酒類の中でも特に人気の高いビールを卸売りすることができる免許であるため、免許としても人気の高いビール卸売業免許ですが、卸売販売地域ごとに算定した各免許年度において免許を付与することができる件数(以下、免許可能件数)が限られているなど、そのハードルの高さから、取得することが厳しい免許としても知られています。

そこで本稿では、これからビール卸売業免許の取得を目指す皆さまに向けて、免許内容や免許要件など、免許取得のために必要となる基礎知識について詳しく解説していきたいと思います。

ビール卸売業免許

酒類の販売業をしようとするときは、販売場ごとに、その販売場の所在地を管轄する税務署長から酒類販売業免許を受ける必要があります。

ここで言う「販売場ごとに」とは、例えば、本店で免許を受けている場合であっても、支店で酒類の販売業を行おうとする場合には、支店の所在地を管轄する税務署長から新たに免許を受ける必要があるということです。

酒類販売業免許のうち、ビール卸売業免許とは、国産・外国産を問わず、ビール全般を卸売するための免許です。類似した酒類に「発泡酒」や、いわゆる「第三のビール」と呼ばれるリキュール又はその他の醸造酒がありますが、これらは「洋酒」に区分されているため、ビール卸売業免許では取り扱うことができません。

ビール卸売業免許には、全酒類卸売業免許と同様に、抽選対象申請期間や免許可能件数といった概念があるなど、通年で何件でも申請することができる他の免許区分にはない独自の制限が設けられています。

また、免許要件の中には、実務経験が10年以上必要であったり、年間卸売数量が50㎘以上必要であったりという要件もあり、免許取得までのハードルをすべてクリアするまでの道のりは、意外にも困難なものになります。

このような性質の申請ですから、弊所にご相談をいただいた際も、免許の可否については少し慎重に受け答えをせざるをえないというのが実情です。

酒類卸売業免許は、酒類販売業者又は酒類製造者に対し酒類を継続的に販売することができる免許であり、一般の消費者及び料飲店営業者等に対して酒類を販売することはできません。

免許可能件数と申請期間

免許可能件数は、地域における酒類の需給を調整するために設けられた全酒類及びビール卸売業免許独自の規制であり、酒類流通量の偏りを是正し、酒税の安定的な徴収に資するための制度です。

卸売販売地域とは、免許年度(9月1日〜翌年8月31日)における免許可能件数を設ける都道府県を一単位とする地域を指しますが、各卸売販売地域(都道府県)における免許可能件数は、毎年9月1日(土日の場合は翌月曜日)に卸売販売地域内の各税務署の掲示板等に公告されるとともに、国税庁ホームページに掲載されます。

抽選対象申請期間

基本的に、申請そのものについては、いつでもこれを行うことができますが、審査については、抽選対象申請期間に提出され、かつ公開抽選の対象となった申請書から優先的に行われます。

抽選対象申請期間は、毎年9月1日(土日の場合は翌月曜日)から9月30日(土日の場合は翌月曜日)までの期間とされており、この期間内になされた申請が公開抽選の対象となります。

なお、7月1日(土日の場合は翌月曜日)から8月31 日(土日の場合はその直前の金曜日)までに受理した申請書(法人成り等に伴い提出された申請書、営業の譲受けに伴い提出された申請書及び同一卸売販売地域内での販売場の移転の許可申請書を除く)は、同年9月1日(土日の場合は翌月曜日)に受理したものとして取り扱われます。

公開抽選

審査順位については、10月中に実施される公開抽選の結果により決定し、その審査順位に従って審査開始通知書が送付されます。

審査開始通知書が送付された申請者は、その通知の日から2週間以内に審査時提出分の書類を提出します。

なお、公開抽選の対象となる申請書等の件数が免許可能件数を超えない場合には、公開抽選が実施されないことがあります。

免許の要件

酒類流通の中核を担う酒類卸売業の免許を取得するためには、小売販売免許以上に厳しい要件をクリアする必要があります。

特にビール卸売業免許については全酒類卸売業免許に次いで取得要件のハードルが高く、人的要件場所的要件経営基礎要件及び受給調整要件のすべてについて、もれなくその要件を満たすことが求められています。

人的要件

酒税の適切な徴収という観点から、信頼性や倫理観に欠ける人間を酒類販売業に関与させることは好ましいことではありません。

このような理由から、酒税法では酒類販売免許を受けようとする者について以下の欠格事由を設け、この事由にひとつでも該当する者については、免許を付与しないこととしています。

  1. 免許を取り消され、又は許可を取り消された日から3年を経過するまでの者
  2. 酒類販売業者である法人が免許を取り消された場合又は許可を取り消された場合において、それぞれ、その取消しの原因となった事実があった日以前1年内に当該法人の業務を執行する役員であった者で当該法人がその取消処分を受けた日から3年を経過するまでのもの
  3. 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人が1・2・7・8に該当する者である場合
  4. 法人の役員のうちに1・2・7・8に該当する者がある場合
  5. 1・2・7・8に該当する者を販売場に係る支配人としようとする場合
  6. 申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けた者である場合
  7. 免許の申請者が国税若しくは地方税に関する法令、酒類業組合法、アルコール事業法の規定により罰金の刑に処せられ、又は国税通則法、関税法、地方税法の規定により通告処分を受け、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過するまでの者である場合
  8. 未成年者飲酒禁止法、風営法、暴力団対策法の規定により、又は刑法上の一定の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過するまでの者である場合
  9. 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過するまでの者
  10. 正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとする場合
  11. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合
  12. 酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため免許を与えることが適当でないと認められる場合

場所的要件

税区分を明確にする必要性から、酒類の販売場を、製造免許を受けている酒類の製造場や、販売業免許を受けている酒類の販売場、酒場、旅館又は料理店等と同一の場所に設けることはできません。

また、申請販売場における営業が、販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていることも求められています。

このような理由から、オープンスペースやフリースペース及びオフィスとしての実態がないバーチャルオフィスについては、販売場として認められません。

なお、販売場の物件が自己所有であるか他人所有(賃貸)であるかは問われませんが、賃貸物件である場合には、賃貸契約書の写しのほか、賃貸人からの使用承諾書も求められます。

たとえ自己所有の物件であったとしても、管理規約が定められたマンションの一室を販売所としようとする場合には、住民や管理組合の承諾を求められることがあります。

受給調整要件

すでに説明したとおり、「全酒類卸売業免許」と「ビール卸売業免許」については、酒税の保全上、酒類の需給の均衡を維持する必要があることから、地域的需給調整を行うための卸売販売地域が設けられています。

条件緩和の申出時の要件

すでに酒類小売業免許を受けている販売場が、同一の販売場において新たに卸売を行おうとするときは、以下の基準を満たすことを要件として、その免許について、条件緩和の申出を行います。

  • 酒類販売業免許の取消要件に該当していないこと
  • 販売場における年平均販売見込数量(卸売基準数量)が50kl以上であること
  • 需給調整要件を満たしていること

経営基礎要件

経営能力に乏しい事業者に酒類の販売を任せていると、中長期的には徴収する酒税が目減りすることにつながるため、経営状況が安定しない事業者を酒類販売業に関与させることは好ましくありません。

したがって、資産状況、経験、資金および設備等を総合的に照らし合わせ、一定の経営基礎を持たないものと判断された申請者については、免許を受けることができません。

資産状況等

申請者の資産状況等に係る要件は、以下のとおりです。

  1. 現に国税又は地方税を滞納していないこと
  2. 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けていないこと
  3. 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額を上回っていないこと
  4. 最終事業年度以前3事業年度の全ての事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じていないこと
  5. 酒税法等の関係法令に違反し、通告処分を受け、履行していない又は告発されていないこと
  6. 販売場の申請場所への設置が、建築基準法、都市計画法、農地法、流通業務市街地の整備に関する法律その他の法令又は地方自治体の条例の規定に違反したことにより、店舗の除却又は移転を命じられていないこと
  7. 申請した販売場において、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかではないこと
  8. 申請等販売場における年平均販売見込数量(卸売基準数量)が50kl以上であること

経験要件

申請者は、経験その他から判断し、適正に酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力を有すると認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法人であることが求められています。

具体的には、以下のいずれかに該当する経験が求められますが、小売業免許とは異なり、酒類販売管理研修の受講によって実務経験に代えることができず厳密に経歴を問われることが多く、また、単に従業員として業務に従事していただけでは足りず、個人事業主又は法人役員として、これらの業務に主体的に関わっていたという事実が必要になります。

  1. 免許を受けている酒類製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く)の業務に引き続き10年(申請販売場が沖縄県に所在する場合は3年)以上直接従事した者
  2. 調味食品等の販売業を10年(申請販売場が沖縄県に所在する場合は3年)以上継続して営業している者
  3. 上記の業務に従事した期間が相互に通算して10年(申請販売場が沖縄県に所在する場合は3年)以上である者
  4. 酒類業団体の役職員として相当期間継続して勤務した者又は酒類の製造業若しくは販売業の経営者として直接業務に従事した者等で酒類に関する事業及び酒類業界の実情に十分精通していると認められる者

資金設備要件

申請者には、酒類を継続的に販売するために必要な資金、販売施設及び設備を有していること(又は必要な資金を有し、免許を付与するまでに販売施設及び設備を有することが確実と認められること)を求められています。

通常は、必要資金、販売施設及び設備のすべてについて、酒類小売販売免許で要求されるものよりも大き目のスケールが求められ、ビールを大量に取り扱うことを想定した相応しい規模の計画が求められます。

免許申請手続き

公開抽選により決定した審査開始通知書が送付された後、通知の日から2週間以内に、以下の書類を予定販売場の所在地を管轄する税務署に対して提出することにより申請を行います。

審査は原則として提出した書類に基づき実施されますが、必要に応じて、来署を求められる場合や現地確認が行われる場合があります。

なお、申請先は予定販売場の所在地を管轄する税務署ですが、個別具体的な相談や事前協議は、所在地の所轄税務署を担当する酒類指導官(酒税官)が担当します。

免許までに必要な期間の目安となる標準処理期間は、提出した書類の補正等が完了するまでの期間を除き、審査を開始してから2か月以内となっています。

また、免許付与等に際しては、登録免許税として、免許1件につき9万円(酒類小売業免許を条件緩和する場合は6万円)を納付し、その領収証書を領収証書提出書に貼付して、指定された期日までに税務署に提出する必要があります。

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