アミューズメントバー開業ガイド│マジックバーやカジノバーに必要な許可とは
世の中には趣向を凝らしたさまざまなコンセプトを持つバーが存在し、美味しいお酒とともに、われわれ酒呑みの五感を楽しませてくれています。
行政書士としてもバーの開業に数多く関与させていただきましたが、近年特に隆盛なのがアミューズメント施設とパブとを一体化させたようなアミューズメントバー型のお店です。
これらのお店を開業するにあたっては、飲食店としてだけではなく風俗営業としての営業許可を取得する必要性があるなど、線引きが曖昧(あいまい)で難しい飲食店の世界にあって、特に法的知識が問われます。
そこで本稿では、マジックバーやカジノバーに代表されるアミューズメントバーを開業しようとする際に必要となる許可に関して、知っておくべき法的知識について詳しく解説していきたいと思います。
アミューズメントバーとは
アミューズメントバーといっても何らかの法令でしっかりと定義づけされているわけではなく、アミューズメント施設の機能を併せ持つ飲食店を便宜上このように呼称しているだけです。
そもそもアミューズメントという単語自体がさまざまな意味を持つ概念であることから、タイトルにあるマジックバーやカジノバーのほかにも、ゴルフや卓球をプレイすることができる「スポーツバー」、アニメやゲームの世界とコラボした「コラボバー」、小動物と触れ合うことができる「アニマルバー」、謎解きを楽しめる「探偵バー」といったコンセプトを持ったお店も現実に存在しています。
逆に言えば発想ひとつで世界観が無限に広がっていくのも、アミューズメントバーの魅力のひとつではないかと思います。
これらのお店が飲食店であることについては誰も疑いを差し挟む余地はありませんが、冒頭でお伝えしているとおり、問題となるのは風俗営業との兼ね合いの部分ではないかと思います。
風俗営業とは
風俗営業と言えば、ほとんどの方がアダルトな雰囲気が漂うピンク系のお店をイメージするのではないかと思います。ところが風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)では、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するために規制を行う必要があるものを風俗営業として規制しています。
このうち風営法第2条第5号では、射幸心をそそる恐れのある遊技を提供する施設を、ゲームセンター等営業(5号営業)として区分し、風俗営業の一形態であることを明示しています。
射幸心とは、幸運や偶然によって思いがけない利益を得ることを期待する心理を言いますが、この射幸心をそそる恐れのある遊技を提供することは、賭博等の違法行為を誘発したり、未成年者が犯罪に巻き込まれたりするおそれがあることから、これらの遊技を提供する施設を規制対象として警察の監督下に置くことにより、営業の適正化を図ることが風営法の狙いというわけです。
1号営業 | キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業 | キャバクラ、ラウンジ、ホストクラブ |
2号営業 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計った営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの | 低照度飲食店 |
3号営業 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの | 区画席飲食店 |
4号営業 | まあじゃん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業 | 雀荘、ぱちんこ店 |
5号営業 | スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業 | ゲームセンター、アミューズメント施設 |
風俗営業は上表のとおり1号営業から5号営業の5形體に区分されていますが、アミューズメントバーであって、射幸心をそそる恐れのある遊技を提供する施設については、風営法第2条第1項5号の規定により、「5号営業」に該当することになります。
重要なポイント
風営法と風俗営業についてざっくりと確認していただいたところで、ここでは重要なポイントについてさらに掘り下げていくことにしましょう。
射幸心をそそるおそれのある遊技
射幸心をそそるおそれのある遊技を施設内で提供する場合には、風営法で言うところの5号営業の許可を受ける必要があることは既に説明したとおりです。基本的にはゲームセンターのような施設を想定した規制ではありますが、アミューズメントカジノ施設にもこちらが適用されることがあります。
遊技であればどのようなものでも風営法の規制対象となるわけではなく、あくまでも「射幸心をそそるおそれのある遊技」として風営法および国家公安委員会規則(風営法施行規則)に列挙されている遊技を提供しているかどうかが重要なポイントになります。
スロットマシン・メダルゲーム
いかにもギャンブル的要素の多いゲーム設備ですが、スロットマシン又はメダルゲーム機は風営法において「射幸心をそそるおそれのある遊技」として明示されているため、これらの設備を設置するアミューズメントバーについては、風俗営業の許可が必要になります。
ビデオゲーム
ビデオゲームもスロットマシンやメダルゲーム機と並んで風営法において明示されているため、これを設置するアミューズメントバーについては、風俗営業の許可が必要になります。
また、「ファミコンバー」のように家庭用ゲーム機を設置する場合にも風俗営業許可が必要になりますが、さらに気をつけていただきたいのは、著作権法との兼ね合いです。
実は過去に著作権を持つゲームメーカーの許可を得ることなく不特定多数の客に対して家庭用ゲームソフトをプレイさせたとして著作権法違反による摘発を受けた事例が複数件ありました。
メーカーの許可を得ることは、風俗営業の許可を得ること以上に困難です。一見するとお手軽で集客しやすそうな「ファミコンバー」ですが、メーカーと深い信頼関係にあるなど、特別なケース以外では避けた方が無難でしょう。
カードゲーム
バカラやポーカーといえばギャンブルの王道であり、風営法施行規則においてトランプ台が規制対象となる設備であることが明示されているため、トランプを使用した競技を客に興じさせる場合には風俗営業の許可が必要になります。
花札やサイコロを使用するゲームについても風俗営業の許可が必要となりますが、その他のカードゲームやボードゲームが規制対象となるのか否かについては、ゲームの性質などで個別に判断されることになります。
ビリヤード・ボウリング
ビリヤードやボウリングについては、健全な屋内スポーツの範疇として、風営法の適用は受けません。同様の理由により、バッティングセンターについても風営法は適用されません。
デジタルダーツ・シミュレーションゴルフ
デジタルダーツとシミュレーションゴルフは、かつて風俗営業の規制対象とされていた時期がありましたが、平成30年9月21日付の警視庁通達により、以下の条件を満たすものについては規制の対象外とされました。
- 従業員が目視できること又はモニターで遊技設備の状況が確認できること
- ダーツマシンやシミュレーションゴルフ以外の遊技設備を設置しないこと
10%ルール
ショッピングモールやホテルなどの一角にゲームコーナーが設けられているところをご覧になったことがある方は多いと思います。このようなゲームコーナーでは「10%ルール」というルールを利用して、風俗営業の許可を受けることなく営業をしていることがほとんどです。
前述した風俗営業の許可を必要とする設備であっても、ゲームコーナーの床面積(ゲーム機の設置面積の3倍で計算)が、客席床面積(1フロア)の10%を越えなければ、風俗営業の許可を取得する必要はありません。
これはバーであっても同様で、例えば店舗の隅っこにポツンと1台スロットマシンが設置されているような場合、スロットマシンの専有面積(×3)が客席床面積の10%以内であるならば、風俗営業の許可は不要ということになります。
接待の有無
風営法では接待行為を「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義し、これを提供する飲食店を「1号営業」に区分して規制を行っています。要するに接待行為を同時に提供するアミューズメントバーであれば、別に「1号営業」の許可を取得する必要性が生ずることがあります。
そもそも定義が抽象的すぎて分かりにくいのですが、接待とは何もキレイなお姉さんが水割りを作ったり親しげに話しかけたりすることのみを言うわけではありません。アミューズメントバーの特性に合わせた具体例をあげて以下で考察していくことにしましょう。
ショウ等
特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、歌舞音曲、ダンス、ショウ等を見せ、又は聞かせる行為
マジックバーで例えるのであれば、ディナーショウのように不特定多数の客に対し、同時にマジックを披露する行為は接待には該当しません。ただし、客室や各テーブルを個別に回ってマジックを披露することは、接待行為に該当してしまう可能性があることになります。
遊戯等
客とともに、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為
既に説明したとおり、デジタルダーツはルールを守って設置さえしていれば風営法の適用は受けません。ただし、これはあくまでも客が自らダーツに興じる場合であって、従業員が客と対戦しようとする場合は、接待行為に該当してしまう可能性があることになります。
遊興について
遊興とは、読んで字のごとく「遊び興じること」をいいます。具体的には、クラブ、ダーツバー、スポーツバー、ライブハウス、生バンド演奏、ショーパブ等が該当しますが、これらはあくまでも一例であって、この他にも遊び興じることは、すべて遊興に該当する可能性があります。
これらの遊興を提供する飲食店であって以下の条件をすべて満たすものについては、特定遊興飲食店として都道府県公安委員会の許可を受ける必要があります。
- 設備を設けていること
- 客に遊興をさせること
- 客に酒類を提供すること
- 深夜(午前0時から午前6時まで)に営業すること
この規制は飲酒と遊興による享楽的な雰囲気により客が深夜まで騒ぎ立てる等のトラブルを発生させないようにするためのものですが、特定遊興飲食店と風俗営業とを同時に同一の場所で営業することは認められていません。
なお、警察庁公式サイト(外部サイト)において特定遊興飲食店の該当非該当をチェックできるページがあるので、営業しようとする形體が特定遊興飲食店に該当するかどうかを確認するための参考としてお役立てください。
必要となる許可
いきなりですがここで問題です。
トランプ台を設置しディーラーを配置して客にポーカーを興じさせるバーを営業するために必要となる許可は何でしょうか?
(そもそも飲食店なんだから飲食店の営業許可は必要やな。トランプ台を設置してポーカーを興じさせるわけだから、5号営業の許可も必要になりそう。ん?待てよ。あ、客と一緒に遊戯に興じるのだからコレは接待に該当するのかも?ここはやっぱり1号営業の許可?)
正解は「警察本部判断による」です。
たとえば大阪府でアミューズメントカジノを運営する場合、客同士が自発的に遊興するような形態でもない限り、1号営業と5号営業の両方の許可を取得するよう求められることがあります。
一方兵庫県においては、区分の異なる風俗営業を同時に兼業することを回避するよう指針を定めており、アミューズメントカジノであれば5号営業の許可のみを取得するよう指導されます。
また、区分の異なる風俗営業を同時に兼業することを認めている都道府県であっても、指導内容は「どんなサービスを」「どんな形態で」「いつまで(営業時間)」提供するのかによって異なります。
まぁせっかく両方を取得することができるのであれば、バニーガールを配置して、一緒にゲームを楽しんでもらうようなスタイルのお店にしてしまうことも選択肢としてはありだと思います。
加えて、両立可能な営業形態と、両立させることができない営業形態があるという点にも注意しましょう。
上の例でいえば、都道府県ごとに取扱いが異なるものの、1号営業と5号営業のように異なる風俗営業間において営業形態を両立させることは可能です。
他方、風俗営業と深夜営業、もしくは風俗営業と特定遊興飲食店営業とを両立させることはできません。風営法では風俗営業者の深夜営業を明確に禁止しているため、届出や許可を受けることによって深夜営業を行うことができてしまうようなスキームは、この規制の主旨に反することになるからです。
以前、京都府において風俗営業許可と深夜営業とを合法的に両立させているお店があると又聞きの又聞きくらいで聞いたことがありますが、深夜0時を境に従業員や客を総入れ替えして完全に営業を分断するなど、かなり特殊なケースであるならばワンチャン両立もありうるのかな?とは思います。
ただ実際問題は不可能に近いですし、その分手続きやその後の取締りも厳しくなることは間違いないので、ワンチャン狙いをお薦めすることはまったくできません。笑
未成年者の入店はOK?
ゲームセンターであれば、条例による規制はあるものの、日中は小中学生でも入店することが可能です。ただし、社交飲食店(1号営業)としても営業を行っているタイプのバーであれば、必然的にそのお店は「18歳未満入店禁止店」となります。
お酒を提供するしないに関わらず、純粋なゲームセンターという形態のお店でもない限り、ここは「18歳未満入店禁止」にした方が無難であるように思います。
まとめ
本稿中に記述のないタイプのバーでは、例えば「アニマルバー」であれば「動物取扱業」、「シガーバー」であれば「たばこ小売業」の許可が必要となります。結局のところ、どのようなサービスを、いつどこでどのくらい提供するのかを具体的にイメージすることが重要です。
弊所は風俗営業に関する手続きに関与する機会が多く、アミューズメント施設の開業についても、同業他社より数多くの経験を積んできたという自負があります。兵庫大阪の近畿圏内はもちろんのこと、全国各地で風俗営業許可申請を取り扱った実績も豊富に有します。そのためご依頼をいただいた際は、面倒な事前調査から、警察署との協議、書類の作成と収集、実査の立会いに至るまでを含めて、しっかりまるっと迅速にサポートさせていただいています。
下記の報酬は市場価格を反映したものですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。風俗営業許可の取得でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
1号営業許可 | 154,000円~ |
5号営業許可 | 165,000円〜 |
飲食店営業許可 | 38,500円 |
アミューズメントバー開業フルサポート(上記すべて) | 187,000円〜 |
特定遊興飲食店営業許可 | 176,000円~ |
深夜営業届出 | 77,000円~ |
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