風俗店・風俗営業とは│開業と許可取得のための基礎知識
世間一般の「風俗店」に対するイメージとは異なり、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)という法律において定められる「風俗営業」は、実は皆さまの身近に存在する営業形態です。
時折「風営法違反の容疑で摘発」という見出しを報道番組やネット記事で目にする機会があることからもお察しいただけるとおり、風営法は非常に取締りの厳しい法律として知られています。
その一方で、摘発事例の中には、恐らくそれほど悪意はなかったであろう、すなわち、それが違反であることを認識していなかったのではないかと思わせるような事案も散見されます。
とはいえルールはルールなので、「知らなかった」で警察を納得させることはできません。これは路上で信号無視をしておきながら、「赤信号を見落としていただけだから勘弁して」という理屈が通らないことと同様です。
そこで本稿では、風営法で規制の対象とされている「風俗営業」の全体像をざっくりと紹介するとともに、個々の営業形態および注意すべき点について解説していきたいと思います。実際に風俗営業に携わろうとされている方や、既に携わりながらもあまり気にしていなかった方は、特にしっかりと確認するようにしてください。
目 次
風俗営業とは
風俗営業とは、善良の風俗と清浄な風俗環境、及び少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのあるものとして、風営法において具体的に定められている5つの営業形態のことを指します。
一般的な用法での「風俗」は、どちらかといえばピンク系性風俗店のイメージがありますが、風営法上の風俗営業は、以下で説明するとおり、キャバクラ(1号営業)、雀荘、パチンコ店(4号営業)、ゲームセンター、アミューズメントバー(5号営業)といった案外身近な営業形態のことを指します。
なお、ピンク系の性風俗店については、同じく風営法において「性風俗関連特殊営業」という別の営業形態としてカテゴライズされています。本稿でも軽く触れてはいますが、より詳しくはリンク先の各記事内でご確認ください。
風俗営業の営業形態
風営法第2条1項1号から5号では、風俗営業の5形態を定義しています。これらの形態に当てはまる営業は風俗営業に該当し、その業務の適正化を図るため、営業時間や営業区域等を制限するなどの規制が行われます。なお、警察機関や行政書士は、該当する条項の「○号」の部分を取って「○号営業」と呼称しています。
1号営業
キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業は、1号営業として風俗営業に該当します。
風俗営業の中でも、唯一「接待」が許容されている営業形態であり、「社交飲食店」や「接待飲食店」と表記されることがあります。
2号営業
喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、営業所内の照度を10ルクス以下として営むものは、2号営業として風俗営業に該当します。
10ルクスとは、おおむね「上映中の映画館」くらいの明るさとされており、これよりも暗い灯りで営業するバーやクラブ等の飲食店は、「低照度飲食店」として風営法の規制対象になります。
3号営業
喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5㎡以下である客席を設けて営むものは、3号営業として風俗営業に該当します。
カップル喫茶のような飲食店を想定したものですが、「設備を設けて客に飲食をさせる営業」「他から見通すことが困難」「広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの」の要件を満たす営業であれば、マンガ喫茶やインターネットカフェも、「区画席飲食店」として風俗営業に該当する可能性があります。
4号営業
マージャン屋、パチンコ店その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業は、4号営業として風俗営業に該当します。
賭博は公営ギャンブルを除き禁止されていますが、これらの営業はギャンブルの対象となるおそれがあることから、風営法の規制対象とされています。
パチンコ店では、一定のルールのもと景品を提供することが認められていますが、マージャン屋では、勝敗の結果に応じて賞品を提供することは一切禁止されています。
5号営業
スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗その他これに類する区画された施設において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業は、5号営業として風俗営業に該当します。
ゲームセンターやカジノバーを想定した規制ですが、すべての遊技設備が規制の対象とされているわけではなく、対象は国家公安委員会規則で定められたものに限定されています。
性風俗関連特殊営業
性風俗関連特殊営業とは、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業及び無店舗型電話異性紹介営業を総称するいわゆるピンク系の性風俗営業のことを指します。
店舗型性風俗
店舗を設け、その店舗内で性的サービスを提供する営業です。これらに該当する営業は、風営法や各自治体の条例において最も厳しい規制が適用されます。
1号営業
浴場業の施設として個室を設け、その個室において異性の客に接触する役務を提供する営業のことを指します。俗にソープランドと呼ばれる施設のことですが、浴場業であるため、公衆浴場の営業許可を受けていることが前提になります。
2号営業
個室を設け、その個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業のことを指します。施設が浴場でない点でソープランドとは異なり、おもに店舗型ファッションヘルスがこれに該当します。
3号営業
専ら性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場として政令で定めるものを経営する営業のことを指します。個室ビデオ店、のぞき部屋、ストリップ劇場などが該当します。
4号営業
専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業のことを指します。ラブホテル、レンタルルーム、モーテルなどがこれに該当します。
5号営業
専ら性的好奇心をそそる写真又はビデオテープ等を販売し、又は貸し付ける営業のことを指します。俗にいうアダルトグッズショップがこちらに該当します。
6号営業
店舗を設けて、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、店舗内においてその者が異性の姿態若しくはその画像を見てした面会の申込みをその異性に取り次ぐこと、又は店舗内に設けた個室若しくはこれに類する施設において異性と面会する機会を提供することにより異性を紹介する営業のことを指します。出会い喫茶やハプニングバーがこちらに該当します。
無店舗型性風俗
店舗を設けることなく、人を派遣し性的サービスを提供し、又は通信手段を用いて性的好奇心をそそる物品を販売等する営業を、無店舗型性風俗と総称しています。
1号営業
人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むものを指します。
俗にデリバリーヘルス(デリヘル)と呼ばれる営業がこれに該当しますが、店舗型性風俗のほとんどが新規開業を禁止されている現状において、最もポピュラーな性風俗営業となります。
2号営業
電話その他の国家公安委員会規則で定める方法による客の依頼を受けて、専ら性的好奇心をそそる写真などの物品を販売し、又は貸し付ける営業で、当該物品を配達し、又は配達させることにより営むもののことを指します。アダルトビデオやアダルトグッズの通信販売営業等がこれに該当します。
映像送信型性風俗特殊営業
専ら性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達すること(放送又は有線放送に該当するものを除く)により営むものを指します。アダルトサイトの運営や、アダルトライブチャットの配信業がこれに該当します。
店舗型電話異性紹介営業
店舗を設けて、専ら面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際(会話を含む)を希望する者に対し、会話(伝言のやり取りを含むものとし、音声によるものに限る)の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて当該店舗内に立ち入らせた他の一方の者に取り次ぐことによつて営むもの(その一方の者が当該営業に従事する者である場合におけるものを含む)を指します。入店型のテレフォンクラブ(テレクラ)がこれに該当します。
無店舗型電話異性紹介営業
専ら面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて他の一方の者に取り次ぐことによって営むもの(その一方の者が当該営業に従事する者である場合におけるものを含むものとし、前項に該当するものを除く)を指します。ツーショットダイヤル、携帯電話を利用したテレフォンクラブなどがこれに該当します。
特定遊興飲食店営業
特定遊興飲食店営業とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に酒類を提供して飲食をさせる営業であって、午前6時後翌日の午前0時前の時間においてのみ営むもの以外のものをいいます。風俗営業とは異なるため、風俗営業に該当する営業については、ここから除外されています。
- 設備を設けて
- 客に遊興をさせ
- 深夜0時以降にお酒を提供する
- 風俗営業に該当しない営業
上記4つの条件にすべて当てはまる営業が特定遊興飲食店営業として区分され、風営法の適用を受けて許可を取得すべき営業形態となります。これらの条件を満たすナイトクラブ、DJバー・ライブハウス・ショーパブ等がこちらに該当します。
注意すべき点
風俗営業を営むに当たっては、風営法のほか、条例等による厳しい規制が適用されます。特に注意すべき点を以下に記載しますので、しっかりと確認するようにしてください。
接待の有無について
風営法において接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されています。キャストがお酌をしたり談笑する行為がこれに該当しますが、デュエットやカラオケの合いの手等も接待に該当します。
接待を提供する飲食店(社交飲食店)は、風俗営業の1号営業にあたるため、許可なく接待を提供することはできません。
店内の明るさについて
飲食店等の施設では、それぞれ以下のとおり照度に関する規制が設けられています。このうち店内の照明を10ルクス以下(上映前の映画館くらいの明るさ)にして営業する飲食店は、接待を提供しない場合であっても、風俗営業の2号営業(低照度飲食店)に該当します。
飲食店の施設 | 50ルクス超 |
飲食店の客室 | 10ルクス超 |
深夜酒類提供飲食店の客室 | 20ルクス超 |
区画席飲食店営業の客室 | 10ルクス超 |
雀荘又はパチンコ店の客室 | 10ルクス超 |
特定遊興飲食店営業の客室 | 10ルクス超 |
社交飲食店又は低照度飲食店の客室 | 5ルクス超 |
客室の広さについて
客室を設けて営業を行う風俗営業には、それぞれ以下のとおり床面積について規制が設けられています。また、5㎡以下の区画された小さな客席を設けて飲食を提供するスタイルの飲食店は、3号営業(区画席飲食店)に該当する場合があるので注意が必要になります。
飲食店内に設置する個室全般 | 5㎡以下は風俗営業に該当する |
深夜酒類提供飲食店の店内に設置する個室 | 9.5㎡未満の個室は使用不可 |
接待飲食店又は低照度飲食店のの店内に設置する個室 | 16.5㎡未満の個室は使用不可 |
雀荘又はパチンコ店の客室 | 16.5㎡未満の個室は使用不可 |
特定遊興飲食店営業の客室 | 1室につき33㎡以上とすること |
ダーツやゲーム機などの設置について
店内にダーツやゲーム機などを設置して遊技を提供する営業は、風俗営業の5号営業に該当する可能性があります。ただし、すべてのアミューズメント設備が風営法の規制対象になるわけではなく、また、規制の対象となる場合であっても風俗営業の許可が不要となるケースがあるため、営業をはじめる際は、どのような規制があるのかについて、しっかりと確認するようにしてください。
深夜営業について
風俗営業者は、原則として、午前0時から午前6時までの深夜帯において、その営業を営むことができません。ただし、各自治体は、その条例により、地域や業種を定めて営業時間を短縮し、もしくは延長することができます。
深夜営業禁止の規制を逃れるために、風俗営業ではないかのように装って深夜営業を行うグレーゾーン上のお店も存在しますが、警察の目は厳しく、発覚の際には無許可営業として厳しい罰則が科されるため、しっかりと線引をして、適正な営業を心がけるようにしてください。
禁止される行為
風俗営業者は深夜営業が禁止されるほか、以下の行為が禁止されています。
- 名義貸しの禁止
- 客引きをすること
- 客引きのため、道路その他公共の場所で人の身辺に立ちふさがり又はつきまとうこと
- 営業所で18歳未満の者に客の接待をさせ又は客の相手となってダンスをさせること
- 営業所で午後10時から翌日の日出時までの時間において18歳未満の者を客に接待させること
- 18歳未満の者を客として立ち入らせること
- 営業所で20歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること(20歳未満の客が持参した酒類やたばこを飲んだり吸ったりさせることも含む)
マージャン店、パチンコ店及びゲームセンター等営業については、上記の禁止行為のほか、以下の行為が禁止されています。
- 遊技の結果に応じて商品を提供すること(パチンコ店を除く)
- 現金又は有価証券を商品として提供すること(パチンコ)
- 遊技の用に供する玉・メダルその他遊技球を営業所外に持ち出させること
- 遊技の用に供する玉・メダルその他遊技球の保管証明書を客に発行すること
営業場所の制限
風俗営業は、地域の風紀に悪影響を及ぼすおそれのあるものとして、営業場所について制限が設けられています。この制限については、風営法以上に各自治体の条例によるものが大きいため、規制内容は、各自治体により異なります。
選択した物件の場所によってはそもそも風俗営業を営むことができないことがあるので、営業場所に関する規制については、物件を探す段階で必ず確認するようにしてください。
用途地域
風俗営業を営むことができるのは、住宅街には馴染まない地域に限定されているため、その営業所は、原則として以下の用途地域に限り、設置することが認められています。
- 商業地域、近隣商業地域
- 工業地域、準工業地域、工業専用地域
保全対象施設
各自治体の条例では、風俗営業の営業所から有害な影響を受けないよう一定の保護を受けるべき施設を保全対象施設として定めています。風俗営業の営業所は、上記の用途地域内であって、かつ、保全対象施設から一定以上離れていることが求められています。
以下の施設が代表例ですが、保全対象施設の種類や制限される距離については、各自治体で異なります。
- 学校、図書館、児童福祉施設
- 病院、入院施設のある診療所 など
風俗営業許可
風俗営業を営もうとする者は、営業所の所在地を管轄する警察署を経由して申請し、都道府県公安委員会から営業許可を受ける必要があります。
また、性風俗関連特殊営業を営もうとする者は、営業所の所在地を管轄する警察署を経由し、都道府県公安委員会に対して届出を行う必要があります。
まとめ
風俗営業は案外身近に存在する営業形態でありながら、営業場所や営業時間等について、多くの制限を受ける営業形態でもあります。そのため規制を免れようとして実態を偽りながら営業を行う営業者が後を立たず、警察機関とのイタチごっこが繰り返されている状態にあります。
風俗営業に該当しない営業形態を含めて、特有のメリット・デメリットが存在するため、営業形態を選択するにあたっては、メリット・デメリットを熟慮して、じっくりと検討するようにしましょう。
弊所では、関西圏を中心に全国各地で風俗営業の許可申請をサポートしています。風俗営業であれば、社交飲食店、雀荘、パチンコ店、ゲームセンター、アミューズメントカジノ等の業種は問いません。性風俗関連特殊営業のほか、特定遊興飲食店も守備範囲です。
また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」を標榜するため、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。風俗営業許可取得等、風営法関連の手続きでお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。