飲食店営業許可申請丨飲食店開業ガイド

食品衛生法では、食品を取り扱う営業(32業種)について許可制を採用し、種別ごとに基準を設けて食品による衛生上の危害発生の防止を図っています。
このうち「食品を調理し、又は施設を設けて客に飲食させる営業」を飲食店営業とし、これに該当する営業については都道府県知事等による許可を受ける必要がある旨が定められています。
飲食店営業については、コンプライアンス遵守意識の高まりから法改正が行われるごとに許可基準は相応に厳格化しているように感じています。また、地域ごとに許可基準の解釈や手続きの方法について取扱いが異なることもこの申請の特長です。
そこで本稿では、これから飲食店の開業を目指す皆さまに向けて、飲食店を営業するために必要となる資格や手続きについて詳しく解説していきたいと思います。
目 次
飲食店営業とは
冒頭で記述したとおり、飲食店営業とは「食品を調理し、又は施設を設けて客に飲食させる営業」をいいます。これには街の食堂やレストラン等飲食物を提供する実店舗における営業のほか、デリバリーのみを提供するタイプのものも含まれます。
旧食品衛生法では酒類以外の飲み物又は茶菓(クッキーやビスケット)のみを客に提供する営業を喫茶店営業として別に区分していましたが、現在は撤廃され、どのような内容であれ飲食物を提供する営業はすべて飲食店営業に統合されています。
食品衛生法による業種区分
飲食店営業を含む以下の32業種については、その営業を開始するにあたり業種ごとに営業許可を取得する必要がありますが、営業形態によっては複数の営業許可が必要となる場合があります。
飲食店を営もうとするときは、営業予定地(出店地)を管轄する保健所に対して申請を行い、都道府県知事(又は市区町村長)から営業許可を受ける必要があります。
飲食店営業、調理機能を有する自動販売機により食品を調理し調理された食品を販売する営業、菓子製造業、アイスクリーム類製造業、乳処理業、特別牛乳搾取処理業、乳製品製造業集乳業、食肉処理業食肉販売業、食肉製品製造業、魚介類販売業、魚介類競り売り営業、食品の放射線照射業、清涼飲料水製造業、氷雪製造業、食用油脂製造業、みそ又はしょうゆ製造業、酒類製造業、豆腐製造業、納豆製造業、麺類製造業、そうざい製造業、複合型そうざい製造業、添加物製造業、水産製品製造業、液卵製造業、冷凍食品製造業、複合型冷凍食品製造業、漬物製造業、密封包装食品製造業、食品の小分け業、乳類販売業、氷雪販売業
飲食店営業許可
飲食店営業をはじめようとするときは、営業所所在地を管轄する保健所に対して申請し、都道府県知事又は市町村長から営業許可を受ける必要があります。
この営業許可の有効期間は5年間とされており、有効期間経過後も引き続き飲食店営業をしようとするときは、有効期間が満了する日の1か月前までに更新申請を行う必要があります。
なお、町内会が開催する祭りや学園祭等のように臨時で食品を提供するような場合であっても営業許可や届出が必要になるケースがあります。
必要資格
飲食店営業に際し、調理を行うための直接的な資格は必要ありませんが、その営業所には食品衛生責任者資格を有する者を食品衛生責任者として選任する必要があります。
また、消防法令に基づき、防火管理者資格を有する者を防火管理者として営業所に選任する義務が生ずることがあります。
食品衛生責任者
食品衛生責任者の資格は、各都道府県の食品衛生協会が開催する講習を受講すれば誰でも取得することができます。
中には調理師や栄養士の資格が必要であるように思われている方もいらっしゃいますが、これらの資格は必須ではなく、この講習が免除される条件となっています。
食品衛生協会が開催する講習は、食品衛生学、衛生法規及び公衆衛生について座学(約6時間)により実施されます。(受講料は1万円程)
防火管理者
消防法令上の収容人数(従業員含む)が30名以上の飲食店では防火管理者を設置する必要があります。(収容人数30名未満の場合は不要)
防火管理者資格は日本防火・防災協会が開催する講習を受講することで取得することができます。営業所の延べ面積が300㎡以上の場合は甲種講習(2日で約10時間、受講料は7,500円)、延べ面積300㎡未満の場合は乙種講習(1日約5時間、受講料は6,500円)を受講します。
手続きの流れ
飲食店営業を開始するまでに必要となる手続きの流れはおおむね以下のとおりです。
①物件の選定
②事前相談及び準備
③申請の準備
④申請書類等の提出
⑤食品衛生監視員による施設調査
⑥許可書の交付
⑦営業開始
①物件の選定
まずは飲食店営業を行う施設の物件を選定します。基本的に場所を選ばず開業することができますが、都市計画法に基づき指定された「用途地域」のうち、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中層住居専用地域、第二種中層住居専用地域及び田園住居地域では飲食店の店舗について以下のような制限が設けられています。
それほど厳しい規制ではありませんが、物件選定の際はその場所の「用途地域」についてしっかりと確認を行うようにしてください。
| 第一種低層住居専用地域 | 店舗や事務所を兼ねた住宅であって非住宅部分が50㎡以下かつ建築物の延べ床面積の2分の1未満のものに限る |
| 第二種低層住居専用地域 | 150㎡以下かつ店舗部が2階以下にあるものに限る |
| 第一種中層住居専用地域 | 500㎡以下かつ店舗部が2階以下にあるものに限る |
| 第二種中層住居専用地域 | 1500㎡以下かつ店舗部が2階以下にあるものに限る |
| 田園住居地域 | 150㎡以下かつ店舗部が2階以下にあるものに限る (その地域で生産された農産物を使用する場合は、500㎡かつ店舗部が2階以下のものまで可) |
また、後述する「深夜酒類提供飲食店」や「風俗営業」に該当する飲食店についてはさらに厳しい場所規制が設けられているため、これらの営業との兼業を検討しているときは、より厳しい「深夜酒類提供飲食店」や「風俗営業」に係る場所規制を念頭に物件を選定するようにしてください。
★用途地域
用途地域とは、都市計画法上の地域地区のひとつで、住居、商業及び工業など市街地における用途の混在を防ぐことを目的として各市町村(東京23区の場合は東京都)が決定する地域です。
住居系、商業系及び工業系を合わせて13種類あり、主に建築基準法令の規定による用途の制限が設けられています。
②事前相談及び準備
施設の工事着工前に、施設平面図(機器配置を含む)等を保健所の担当窓口に持参して施設の構造基準等について説明を受けます。
多くの自治体でこの手続きは必須ではありませんが、行政書士等の専門家を経由することなく申請する場合は規制内容を知るためにも事前相談を経ることをお薦めします。
③申請の準備
すでに資格を保有している場合を除き、食品衛生責任者講習を受講します。 多くの自治体では必ずしも申請時点において食品衛生責任者の資格に係る書類を添付する必要はありませんが、必要書類であることは変わりないため、できる限り早く受講するようにしてください。
★水質検査成績書の提出
飲食店営業の施設で水道水以外の水(井戸水や貯水槽の水等の)を使用する場合は水質検査成績書を提出する必要があります。
高層ビルの上階にあるレストランなどでは貯水槽の水を供給している場合が多いため、この手続きが必要となる場合があります。
なお、水質検査は1年ごとに必要となるため、水質検査成績書は交付後1年未満のものを提出します。
④申請書類等の提出
営業許可の申請は、以下の書類を保健所の担当窓口に対して提出することにより行います。
- 食品営業許可申請書
- 営業施設の大要
- 施設の平面図及び付近案内図
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(原本)
- ふぐ処理師の免許証の写し(ふぐ処理を行う施設の場合)
- 発行後6カ月以内の登記簿謄本の原本(法人)
(※)自治体によってこれらとは異なる書類を求められることがあります。
書類に不備がないことが確認された後申請手数料(16,000〜2,000円)を納付することにより受理の状態になります。
この後に施設調査があることを踏まえて少なくとも開店2週間前までには申請を済ませるようにしましょう。
⑤食品衛生監視員による施設調査
都道府県又は市町村の食品衛生監視員が現地に訪れて施設の構造基準基準(後述)に適合するか否かについての確認を行います。
調査の結果適合するものとされたときは営業許可が下りますが、不適である場合には再調査が行われ、改善が確認されるまで営業することはできません。
⑥許可書の交付
施設基準等に適合していることが確認された後、約1〜2週間ほどで営業許可書が交付されます。
⑦その他の手続き
バーやスナックであれば深夜酒類提供飲食店営業や風俗営業にも該当する可能性があるため、これらの営業を始めようとするときはそれぞれ届出(深夜酒類提供飲食店営業)と許可申請(風俗営業)を行う必要があります。
建物の全部又は一部を使用するときは、実際に店舗の使用を開始する7日前までに営業所所在地を管轄する消防署に対して防火対象物使用開始届を提出する必要があります。
その他個人事業で開業する場合には、事業開始から1ヶ月以内に、出店地もしくは住所地を管轄する税務署に対して開業届を提出する必要があります。
許可の基準
飲食店営業の営業所ごとに食品衛生責任者を配置する必要があることは先に記述したとおりですが、営業所の施設設備についても定められた構造基準にすべて適合させる必要があります。
施設設備の構造基準
飲食店営業に使用する施設や設備については以下の基準にすべて適合させる必要があります。
このうち特に指摘されやすいのが従業員用の手洗いについてであり、令和3年6月1日の法改正以降は、手洗いに設置する蛇口はレバー式やセンサー式のように掌を使用することなく水を止めることができる構造でなければ許可が下りないようになっています。
- 客席と調理場とを完全に区画すること
- 調理場の壁・天井は隙間がなく平滑で掃除しやすい構造であること
- 壁は床から1m以上耐水性の材質であること
- 調理場の床は耐水性材質で排水が良好であること
- 調理場・トイレには手洗い器を設け、消毒設備を備え付けること
- 調理場には原則として2槽以上のシンクを備え付けること
- 従業員用の手洗いは原則として調理場に設け、蛇口はレバー式やセンサー式にして掌を使用することなく水を止めることができる構造であること
- シンクのうち食器洗い用のものに使用する蛇口からは温水が出る構造のものであること(自治体による)
- 食品を保存するために、十分な大きさを有する冷蔵設備を設けること
- 温度計を冷蔵庫・冷凍庫等に備えること
- グラス・食器等を十分に収納できる扉つきの戸棚を備えること
- 食器等の器具を殺菌するための消毒設備を設けること(熱湯・蒸気など)
- ゴミ箱はふた付きで汚液が漏れない材質の容器で用意すること
- 開閉する窓には網戸、排水口には金剛網などを付けてねずみや虫が侵入しないような設備にすること
- 飲用水を供給できること
欠格要件
施設設備の構造基準を満たしていたとしても、申請者が次のいずれかに該当する場合は、飲食店を営業する者として不適格であるものとみなされ、営業許可を受けることができません。
- 食品衛生上の許可を取り消され、その取消の日から起算して2年を経過しない場合
- 食品衛生法または同法に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない場合
深夜酒類提供飲食店営業
飲食店営業のうち酒類をメインに提供する飲食店が深夜0時を過ぎて営業をしようとするときは、営業所所在地を管轄する警察署に対し、深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出する必要があります。
これはバーやパブのように酒類をメインに提供するお店が深夜に及ぶ営業を行う場合に必要となる手続きであって、たとえばラーメン店のように主食となる飲食物を提供する飲食店が深夜0時を過ぎてビールを提供するようなケースではこの届出を必要としません。
ただし、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)では原則として以下の用途地域において深夜酒類提供飲食店営業を行うことが禁止されているため、当初から深夜酒類提供飲食店営業を検討しているときは特に用途地域には注意するようにしてください。
- 第1種低層住居専用地域
- 第2種低層住居専用地域
- 第1種中高層住居専用地域
- 第2種中高層住居専用地域
- 第1種住居地域
- 第2種住居地域
- 準住居地域
風俗営業(社交飲食店)
キャバクラやホストクラブのように接待行為を伴う飲食店営業(社交飲食店)については、風俗営業として公安委員会(警察)から飲食店営業許可とは別個の許可を受ける必要があります。
特に風営法が改正された令和7年6月28日以降は警察の目も厳しくなっているため、無許可営業は絶対に避けるようにしてください。
また、風俗営業の営業所に係る場所規制は深夜酒類提供飲食店営業に係るものよりもさらに厳しくなっているため物件選びは相当慎重に行う必要があります。
許可後の手続き
飲食店営業許可の有効期間は5年間とされているため、継続して飲食店営業を営もうとすると5年ごとに許可を更新する必要があります。
許可更新の申請については、有効期間が満了する1か月前までに、新規許可申請時に提出したものと同様の書類(一部省略なものあり)を保健所に提出することにより行います。
また、以下の事項について変更が生じたとき又は休業若しくは廃業したときは、保健所に対して営業変更等届書及び添付書類を提出してこれを届け出るする必要があります。
なお、個人から法人への許可の変更はもとより、営業所の構造に係る大幅な変更や大規模な増改築があった場合には、変更届ではなく新たに営業許可を申請する必要があります。
| 変更のあった事項 | 添付書類 |
|---|---|
| 個人の自宅住所や氏名の変更 | 戸籍抄本の原本(発行から6カ月以内) |
| 法人の本店所在地、代表者、又は商号等 | 発行後6カ月以内の登記簿謄本の原本 |
| 営業所の名称の変更 | ― |
| 設備の大要の変更 | 変更部分を明示した図面等 |
| 食品衛生責任者の変更 | その資格を証明するもの |
| 休業したとき | ― |
飲食店営業許可申請サポート
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