都市計画法上の用途地域と用途制限について

用途地域とは、都市計画法の地域地区のひとつで、住居、商業及び工業など市街地における用途の混在を防ぐことを目的として各市町村(東京23区の場合は東京都)が決定する地域です。
住居系、商業系及び工業系を合わせて13種類あり、主に建築基準法令の規定による用途の制限が設けられています。

市街化区域では必ず用途地域を定めていますが、市街化調整区域では原則として用途地域は定められていません。また、非線引き区域又は準都市計画区域には、用途地域を定めることができます。
市街化区域 | 既に市街地を形成している区域や、今後10年以内に優先的に市街化を図るべき区域 | 用途地域あり |
市街化調整区域 | 市街化を抑制する区域 | 原則として用途地域なし |
非線引き区域 | 区域区分が定められていない都市計画区域 | 用途地域は任意 |
準都市計画区域 | 都市計画区域外で、将来的に市街化が進行すると見込まれる区域 | 用途地域は任意 |
住居系
住居系は地域内の住環境が優先されている用途地域であり、下表の8地域が該当します。これらのうちいずれかに指定された区域では、基本的に大きな工場や商業施設を建設することはできません。
第一種低層住居専用地域 | 低層の戸建てや集合住宅が建てられます。また、店舗や事務所を兼ねた住宅で、非住宅部分が50㎡以下かつ建築物の延べ床面積の2分の1未満のものも建てることができます。 |
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第二種低層住居専用地域 | 低層住宅に加え、150㎡以下の小規模な専門店舗が建てられます。 |
第一種中高層住居 専用地域 | 低層住宅に加え、中高層の住宅も建てられます。住宅の他に、病院、大学や500㎡以下の店舗等も建てることもできます。 |
第二種中高層住居 専用地域 | 住宅に加え、1,500㎡以下の店舗、事務所等が建てられます。 |
第一種住居地域 | 3,000㎡以下の店舗、事務所、ホテル等を建てることができますが、パチンコ店や大きな工場等は建てられません。 |
第二種住居地域 | 10,000㎡以下の店舗、事務所、パチンコ店、カラオケボックス等を建てることができます。 |
準住居地域 | 規模の大きな車庫や150㎡以下の自動車修理工場など、多くの建物が建てられます。 |
田園住居地域 | 都市部における貴重な田園風景とそれがもたらす周辺の良好な低層住宅の環境を守る地域です。小中学校のほか、その地域で生産された農産物を使用する場合は500㎡までの店舗、それ以外は150㎡までの店舗が建てられます。 |
商業系
商業地域及び近隣商業地域の2地域が商業系に該当し、主に住民がショッピングやレクリエーション等に利用する商業施設等が立ち並びます。
近隣商業地域 | 日常的に利用する店舗や事務所などが建てられます。住宅や店舗のほかに小規模な工場も建てられます。 |
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商業地域 | 銀行、映画館、店舗、事務所など商業のためのほとんどの建物が建てられます。住宅や小規模な工場も建てられます。 |
工業系
工業系の用途地域は、主に工場の利便性を高める地域であり、準工業地域、工業地域及び工業専用地域の3地域がこれに該当します。
準工業地域 | ほとんどの建物は建てることができますが、環境に悪影響をもたらす物品を扱う工場は建てられません。 |
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工業地域 | どんな工場でも建てられます。住宅や店舗も建てられますが、学校、病院、ホテル等は建てられません。 |
工業専用地域 | どんな工場でも建てられますが、住宅、店舗、飲食店等は建てられません。 |
まとめ
弊所は行政書士事務所として各種許認可申請を請け負いますが、事業をはじめようとして事務所や店舗等のテナントを決定する場合において、用途地域がネックになることが多々あります。
また、賃貸料が安いからといって契約した物件の所在する用途地域では目的の事業が禁止されていたなんてことも珍しくありません。
用途地域については各市町村のサイト上に都市計画図が公開されていますので、テナント等を賃借して事業をはじめようとするときは、事前にそのテナントが所在する用途地域についてしっかりと確認するようにしましょう。