工業系用途地域における用途制限について

工業地帯

用途地域とは、都市計画法の地域地区のひとつで、住居、商業及び工業など市街地における用途の混在を防ぐことを目的として各市町村(東京23区の場合は東京都)が決定する地域です。

住居系、商業系及び工業系を合わせて13種類あり、主に建築基準法令の規定による用途の制限が設けられていますが、このうち工業系は主に工場の利便性を高める地域であり、準工業地域、工業地域及び工業専用地域の3地域がこれに該当します。

準工業地域ほとんどの建物は建てることができますが、環境に悪影響をもたらす物品を扱う工場は建てられません。
工業地域どんな工場でも建てられます。住宅や店舗も建てられますが、学校、病院、ホテル等は建てられません。
工業専用地域どんな工場でも建てられますが、住宅、店舗、飲食店等は建てられません。

準工業地域

準工業地域とは、主に環境悪化のおそれのない軽工業の工場やサービス施設が住宅や商業施設とともに混在する昔ながらの職人町や町工場等が立ち並ぶ地域であり、以下のとおり住宅や商店等、多様な用途の建物を建築することができます。

  • 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿
  • 兼用住宅(用途については住宅部分・店舗部分はそれぞれ別個として取り扱われる)
  • 店舗等
  • 事務所等
  • ホテル(ラブホテル類を除く)・旅館
  • マージャン屋、パチンコ屋、射的場等、勝馬投票券発売所、場外車券売場等
  • カラオケボックス等
  • 劇場、映画館、演芸場、観覧場
  • キャバレー、料理店(接待を主とするもの)、ナイトクラブ、ダンスホール等
  • 展示場等
  • 運動施設
  • 公共施設・病院・学校等
  • 自動車車庫
  • 倉庫業を営む倉庫
  • 畜舎
  • 自動車修理場
  • 特定行政庁が用途地域における安全上若しくは防火上の危険の度若しくは衛生上の有害の度が低いと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可したもの
  • 卸売市場、火葬場、と畜場、汚物処理場、ごみ焼却場等)都市計画区域内においては都市計画決定が必要)

(※)その他の建築物附属物 について特記がない限りは単独建築物として取り扱われます

他方、準工業地域においては、以下の用途で使用する建物を建築することができません。

  • 風俗営業に係る公衆浴場等、ヌードスタジオ、のぞき劇場、ストリップ劇場、ラブホテル類、専ら性的な写真・物品等の販売店等
  • 火薬類取締法の火薬類(玩具煙火を除く)の製造を行う工場
  • 消防法で定める危険物の製造を行う工場
  • マッチの製造を行う工場
  • ニトロセルロース製品の製造を行う工場
  • ビスコース製品、アセテートの製造を行う工場
  • 銅アンモニアレーヨンの製造(液化アンモニアガス及び濃度が30%超のアンモニア水のいずれも用いないものを除く)を行う工場
  • 合成染料、その中間物、顔料、塗料の製造(漆又は水性塗料の製造を除く)を行う工場
  • ゴム製品・芳香油の製造(引火性溶剤を用いるもの)を行う工場
  • 擬革紙布・防水紙布の製造(乾燥油・引火性溶剤を用いるもの)を行う工場
  • 木材を原料とする活性炭の製造(水蒸気法によるものを除く)を行う工場
  • 石炭ガス類、コークスの製造を行う工場可燃性ガスの製造(アセチレンガスの製造、又はガス事業法の一般ガス事業又は簡易ガス事業によるものを除く)を行う工場
  • 圧縮ガス又は液化ガスの製造(製氷・冷凍用、自動車のエンジンの燃料用の圧縮天然ガス、又は自動車の燃料電池又はエンジンの燃料用の圧縮水素を法令の基準に適合する設備で製造するものを除く)を行う工場
  • 塩素、臭素、ヨード、硫黄、塩化硫黄、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、苛性カリ、苛性ソーダ、アンモニア水、炭酸カリ、せんたくソーダ、ソーダ灰、さらし粉、次硝酸蒼鉛、亜硫酸塩類、チオ硫酸塩類、砒素化合物、鉛化合物、バリウム化合物、銅化合物、水銀化合物、シヤン化合物、クロールズルホン酸、クロロホルム、四塩化炭素、ホルマリン、ズルホナール、グリセリン、イヒチオールズルホン酸アンモン、酢酸、石炭酸、安息香酸、タンニン酸、アセトアニリド、アスピリン、グアヤコールの製造を行う工場
  • たんぱく質の加水分解による製品の製造を行う工場
  • 油脂の採取、硬化又は加熱加工(化粧品の製造を除く)を行う工場
  • ファクチス、合成樹脂、合成ゴム維の製造を行う工場
  • 合成繊維の製造(法令で指定する物質を原料とするもの、又は法令で指定する工程によるものを除く)を行う工場
  • 肥料の製造を行う工場
  • 製紙(手すき紙の製造を除く)、パルプの製造を行う工場製革、にかわの製造、毛皮若しくは骨の精製を行う工場
  • アスファルトの精製を行う工場
  • アスファルト、コールタール、木タール、石油蒸溜産物又はその残渣を原料とする製造を行う工場
  • セメント、石膏、消石灰、生石灰、カーバイドの製造を行う工場
  • 金属の溶融・精練(ルツボ又は釜を使用し容量が50L以下のもの、又は活字・金属工芸品の製造を除く)を行う工場
  • 炭素・黒鉛製品の製造(炭素粉を原料とするもの)、黒鉛の粉砕を行う工場
  • 金属厚板・形鋼の工作で原動機を使用するはつり作業(グラインダーを用いるものを除く)を行う工場
  • びょう打作業・孔埋作業を伴うものを行う工場
  • 鉄釘類又は鋼球の製造を行う工場金属の圧延(伸線、伸管、ロールを用いる原動機出力総計が4kW超のもの)を行う工場
  • 金属の鍛造(鍛造機を使用するものに限り、スプリングハンマー、スエージングマシン、ロールを使用するものを除く)を行う工場
  • 医薬品の製造(動物の臓器・排泄物を原料とするもの)を行う工場
  • 石綿を含有する製品の製造、粉砕を行う工場
  • 準工業地域における建築基準法法令で定める量を超える危険物の貯蔵・処理を行う工場

工業地域

工業地域とは、主に工業の業務の利便の増進を図る地域であり、規制なく工場を建築することができることから住宅街に適してはいませんが、以下のとおり、住宅や商業施設も建築することが可能です。

  • 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿
  • 兼用住宅(用途については住宅部分・店舗部分はそれぞれ別個として取り扱われる)
  • 店舗等(10000m²以下)
  • 事務所等
  • マージャン屋、ぱちんこ屋、射的場等、勝馬投票券発売所、場外車券売場等(10000㎡以下)
  • カラオケボックス等(10000㎡以下)
  • 展示場等(10000㎡以下)
  • 運動施設
  • 図書館等
  • 美術館、博物館等
  • 巡査派出所、公衆電話所、郵便局
  • 神社、寺院、教会等
  • 公衆浴場(風俗営業を除く)、診療所、保育所等
  • 老人ホーム、身体障害者福祉ホーム等
  • 老人福祉センター、児童厚生施設等
  • 自動車教習所
  • 近隣公園内の公衆便所及び休憩所、路線バスの停留所の上家
  • 自治体の支部・支所
  • 税務署、警察署、保健所、消防署等
  • 電気通信、電気、ガス、液化石油ガス、水道、下水道、都市高速鉄道、熱供給の各事業のための施設
  • 自動車車庫
  • 倉庫業を営む倉庫
  • 畜舎
  • 工場
  • 特定行政庁が用途地域における工業の利便上又は公益上必要と認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可したもの
  • 卸売市場、火葬場、と畜場、汚物処理場、ごみ焼却場等(都市計画区域内においては都市計画決定が必要)

(※)その他の建築物附属物 について特記がない限りは単独建築物として取り扱われます

他方、工業地域においては、以下の用途で使用する建物を建築することができません。

  • ホテル・旅館
  • 劇場、映画館、演芸場、観覧場
  • キャバレー、料理店(接待を主とするもの)、ナイトクラブ、ダンスホール等
  • 風俗営業に係る公衆浴場等、ヌードスタジオ、のぞき劇場、ストリップ劇場、ラブホテル類、専ら性的な写真・物品等の販売店等
  • 幼稚園、小学校、中学校、高等学校
  • 大学、高等専門学校、専修学校等 – ×病院

工業専用地域

工場専用地域とは、工業の業務の利便の増進を図る地域であり、工業地域よりさらに工業に特化した地域です。原則として住宅を建設することができないため、この地域に住むことはできません。

具体的に工場専用地域において建築することが可能な建物の用途は以下のとおりです。

  • 物品販売店舗及び飲食店以外の店舗等(10000㎡以下)
  • 事務所等
  • カラオケボックス等(10000㎡以下)
  • 展示場等(10000㎡以下)
  • 運動施設(特記がない限り)
  • 巡査派出所、公衆電話所、郵便局
  • 神社、寺院、教会等
  • 公衆浴場(風俗営業を除く)、診療所、保育所等
  • 老人福祉センター、児童厚生施設等
  • 自動車教習所
  • 近隣公園内の公衆便所及び休憩所、路線バスの停留所の上家
  • 自治体の支部・支所
  • 税務署、警察署、保健所、消防署等
  • 電気通信、電気、ガス、液化石油ガス、水道、下水道、都市高速鉄道、熱供給の各事業のための施設
  • 自動車車庫
  • 倉庫業を営む倉庫
  • 畜舎
  • 工場
  • 特定行政庁が用途地域における工業の利便を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可したもの
  • 卸売市場、火葬場、と畜場、汚物処理場、ごみ焼却場等(都市計画区域内においては都市計画決定が必要)

(※)その他の建築物附属物 について特記がない限りは単独建築物として取り扱われます

工業専用地域においては、前述した住宅のほか、以下の用途で使用する建物を建築することができません。

  • 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿
  • 兼用住宅
  • 物品販売店舗、飲食店
  • ホテル・旅館
  • マージャン屋、ぱちんこ屋、射的場等、勝馬投票券発売所、場外車券売場等
  • 劇場、映画館、演芸場、観覧場
  • キャバレー、料理店(接待を主とするもの)、ナイトクラブ、ダンスホール等
  • 風俗営業に係る公衆浴場等、ヌードスタジオ、のぞき劇場、ストリップ劇場、ラブホテル類、専ら性的な写真・物品等の販売店等
  • ボウリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場等
  • 幼稚園、小学校、中学校、高等学校
  • 大学、高等専門学校、専修学校等
  • 図書館等
  • 美術館、博物館等
  • 病院
  • 老人ホーム、身体障害者福祉ホーム等

まとめ

弊所は行政書士事務所として各種許認可申請を請け負いますが、事業をはじめようとして事務所や店舗等のテナントを決定する場合において、用途地域がネックになることが多々あります。

また、賃貸料が安いからといって契約した物件の所在する用途地域では目的の事業が禁止されていたなんてことも珍しくありません。

用途地域については各市町村のサイト上に都市計画図が公開されていますので、テナント等を賃借して事業をはじめようとするときは、事前にそのテナントが所在する用途地域についてしっかりと確認するようにしましょう。

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