ポーカー台やスロットマシンを設置するバーの注意点について

令和7年6月28日に風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、法)が改正施行されて以降、風俗営業の無許可営業に対する取締りが活発化しています。
法改正の主目的はいわゆる悪質ホストクラブに対する規制の強化ですが、無許可営業に係る規制は「風俗営業」全体に及んでいるため、接待飲食営業に限らず、低照度飲食店、区画席飲食店、まあじゃん屋、ぱちんこ屋及びゲームセンター等営業について無許可営業を行った場合でも、大幅に強化された罰則の適用を受けることになります。
そのため店舗内にポーカー台やスロットマシン等の遊技設備を備えるバーについても、風俗営業の許可を取得していなければ、原則として無許可営業として罰則が適用されてしまいます。
法改正による風俗営業の一大転換期を迎えていますが、すでにバーを営んでいる方、これからバーを営もうとされる方、あるいは類似する営業を営んでいる方は、営業上の注意点や今後の展望についてしっかりと確認するようにしてください。
目 次
風俗営業とは
風俗営業と言えば、ほとんどの方がアダルトな雰囲気が漂うピンク系のお店をイメージするのではないかと思いますが、風営法では、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するために規制を行う必要がある営業を風俗営業として定義しているため、一般的な認識との間に少しずれが生じているように思います。
風俗営業は下表のとおり1号営業から5号営業の5形態に区分されており、ゲームセンターやアミューズメントカジノのように射幸心をそそる恐れのある遊技を提供する施設については、風営法第2条第1項5号の規定により「5号営業」に区分されています。
1号営業 | キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業 | キャバクラ、ラウンジ、ホストクラブ |
2号営業 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計った営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの | 低照度飲食店 |
3号営業 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの | 区画席飲食店 |
4号営業 | まあじゃん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業 | 雀荘、ぱちんこ店 |
5号営業 | スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業 | ゲームセンター、アミューズメント施設 |
射幸心とは、幸運や偶然によって思いがけない利益を得ることを期待する心理を言いますが、射幸心をそそる恐れのある遊技を提供することは、賭博等の違法行為を誘発したり、ひいては未成年者が犯罪に巻き込まれたりするおそれがあることから、規制対象として警察の監督下に置くことにより、営業の適正化を図ることが風営法の狙いです。
規制対象となる遊技設備
風営法第2条第5号では、スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業を規制の対象としています。
法令の条文にありがちなまどろっこしい文章ですが、風営法施行規則及び警察庁の通達においては、「テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの」を、具体的に以下のとおり例示しています。
- スロットマシンその他遊技の結果がメダルその他これに類する物の数量により表示される構造を有する遊技設備
- テレビゲーム機(勝敗を争うことを目的とする遊技をさせる機能を有するもの又は遊技の結果が数字、文字その他の記号によりブラウン管、液晶等の表示装置上に表示される機能を有するものに限るものとし、射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く)
- フリッパーゲーム機
- 遊技の結果が数字、文字その他の記号又は物品により表示される遊技の用に供する遊技設備(人の身体の力を表示する遊技の用に供するものその他射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く)
- ルーレット台、トランプ及びトランプ台その他ルーレット遊技又はトランプ遊技に類する遊技の用に供する遊技設備
したがって、スロットマシン、テレビゲーム機、フリッパーゲーム機、ダーツ(デジタルダーツを除く)、ルーレット台、トランプ及びトランプ台等を店舗内に設置するバーは風俗営業に該当し、営業をしようとするときは、公安委員会(警察)からの許可が必要となります。
規制対象外となる遊技設備
上記のラインナップ上にない遊技設備については、原則として風営法の規制対象からは除外されています。
また、遊技の結果が定量的に表れ、又は遊技の結果が勝負として表れる遊技設備であっても、単に人の物理的力を表示するもの等(パンチングマシン、投球速度計測ゲーム機等)については、「射幸心をそそる遊技の用に供されないことが明らかなもの」として規制対象からは除外されています。
その他、生年月日、血液型、自己の性格等を入力して遊技する占い機のように、同一の条件の下に繰り返し遊技したとしても結果に変わりがない遊技設備についても、「射幸心をそそる遊技の用に供されないことが明らかなもの」として風営法の規制対象からは除外されています。
なお、風営法を運用して実際に取締りを行う警察庁の通達によれば、運動競技又は運動競技の練習の用に供されている実態が認められる遊技設備(バッティングセンター等)については、営業者により、遊技設備が本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技の用に供されないために必要な措置が適切に講じられていると認められる場合には、現時点で規制対象としない取扱いとされており、①実物に類似する運転席や操縦席が設けられていて「ドライブゲーム」、「飛行機操縦ゲーム」その他これに類する疑似体験を行わせるゲーム機(戦闘により倒した敵の数を競うもの等、運転や操縦以外の結果が数字等により表示されるものを除く)及び②機械式等のモグラ叩き機についても、当面、規制の対象としないという取扱いがなされています。
デジタルダーツマシン等
デジタルダーツマシンとシミュレーションゴルフを設置する営業所については、かつて風俗営業の許可が必要とされていた時期がありましたが、平成30年9月21日付の警視庁通達により、①従業員が目視できること又はモニターで遊技設備の状況が確認できること、及び②ダーツマシンやシミュレーションゴルフ以外の遊技設備を設置しないことの両方の条件を満たすものについては、しばらくの間、風俗営業許可を受けることなくこれを営業することができるようになっています。
10%ルールと実務上の適用
大きなレストラン等の店舗の片隅にポツンと1台の遊技設備を設置するゲームコーナーのように、店舗内において占めるゲームセンター等営業としての外形的独立性が著しく小さいものについては、法的規制の必要性が小さいことから、風俗営業の許可が不要となる場合があります。
具体的には、遊技設備設置部分を含む店舗の1フロアの客の用に供される部分(客室)の床面積に対して客の遊技の用に供される部分(店舗でない区画された部分も含む)の床面積が占める割合が10%を超えない場合には、当面の間、許可を受けることなく営業することができます。
★10%ルールが適用される営業所
客室床面積(※¹)×0.10≧遊技の用に供される部分の床面積(※²)
(※¹)営業所全体の床面積ではなく、調理場やトイレ等を除いた客室の床面積です。
(※²)遊技設備設置部分の床面積は、客の占めるスペース、遊技設備の種類等を勘案し、遊技設備の直接占める面積のおおむね3倍として計算します。ただし、1台の遊技設備の直接占める面積の3倍が1.5㎡に満たないときは、当該遊技設備に係る床面積は1.5㎡として計算します。
ただし、実際に計算してみると分かりますが、バーのようにそこまで広くない店舗においてこのメリットを受けようとするのはあまり現実的ではなく、せいぜいスロットマシン1台2台が何とか収まれば御の字です。
ポーカーテーブルは1台でもそれなりに広い遊技スペースを必要とするので、その10倍の客室床面積を有する物件はそもそも探すのも難しいのではないかと思います。
なお、ディーラーを店側が用意する場合は、10%ルールが適用されようがされまいが、風俗営業の許可が必要となります。
また、10%ルールによる例外的取扱いはあくまでも「風俗営業許可は必要ない」という趣旨であって、10%ルールが適用されるからといって風俗営業であることに変わりはないため、10%ルールが適用される店舗の営業者は、風俗営業者に適用される風営法の規制からは逃れることができません。
無許可営業等に対する罰則の強化
改正法では、旧法において2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金又はこれの併科とされていた以下の違反行為に係る法定刑が、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又はこれの併科に引き上げられました。
また、法人の代表者又は代理人、使用人その他の従業者が、上記の違反行為をしたときのその法人に対する罰金の上限額についても、200万円から3億円へと大幅に引き上げられました。
- 風俗営業の無許可営業
- 風俗営業の許可等の不正取得
- 風俗営業の名義貸し
- 風俗営業又は店舗型性風俗特殊営業若しくは無店舗型性風俗特殊営業に係る営業停止命令等違反
- 店舗型性風俗特殊営業又は無店舗型性風俗特殊営業の禁止区域・地域における営業
無許可営業等に対する罰則については、低照度飲食店、区画席飲食店、まあじゃん屋、ぱちんこ屋及びゲームセンター等営業等、「風俗営業」と言われるすべての営業形態に及びます。
許可を得ず、あまり深く考えず店舗内にゲームマシンを設置しついるバーについても「ゲームセンター等営業」(5号営業)の無許可営業と解釈されるので、十分にご留意ください。。
風俗営業許可申請サポート
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