ボードゲームカフェ(バー)開業ガイド│必要となる営業許可と風営法との関係について
世の中には、ただ単に飲食を提供するだけではなく、様々なコンセプトを掲げ、趣向を凝らしたサービスを提供する飲食店がたくさん存在しています。ポーカーバーやカジノバー等はその代表格ですが、時折ご相談いただくのが、ボードゲームを楽しめる「ボードゲームカフェ(バー)」についてです。
ポーカーバーやカジノバー等は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)において、ゲームセンター等営業として、5つある風俗営業のひとつに数えられており、営業をはじめようとする際には、公安委員会(警察署)から許可を受ける必要があります。
このことをよくご存じの方であれば、類似する営業形態であるボードゲームカフェについても、何かしら特別な営業許可が必要になるのではないかと思われるのは当然でしょう。
そこで本稿では、年間3桁の飲食店をサポートする行政書士が、ボードゲームカフェ(バー)を開業して営業するために必要とされる許可や手続きについて、詳しく解説していきたいと思います。
目 次
ボードゲームカフェと手続き
言わずもがなというところですが、施設を設けて飲食物を提供するのであれば、まずは飲食店営業許可を取得することが大前提となります。
手続きとしてはそれほど難しいものではありませんが、少なくとも厨房のシンクのうちひとつは、レバー式若しくはセンサー式でなければ許可は下りません。
深夜酒類提供飲食店営業
風営法では、原則として深夜0時から早朝6時までの時間帯を深夜帯とし、この時間帯に営業を行う飲食店を「深夜営業飲食店」、このうち酒類をメインに提供する飲食店を「深夜酒類提供営業飲食店」として区分しています。
このように「深夜酒類提供営業飲食店」をわざわざ区分しているのは、深夜に及ぶ飲酒による歓楽的な雰囲気に起因するトラブルを、未然に防ぐことを規制の目的としているからです。
深夜営業店であるからといって直ちに手続きが必要になることはありませんが、深夜酒類提供営業飲食店に該当するお店を出店するのであれば、所轄の警察署に対し、深夜酒類提供営業飲食店営業営業開始届を提出する必要があります。
注意点としては、ボードゲームカフェを深夜酒類提供営業飲食店として届け出てしまうと、ボードゲームカフェが「風俗営業」に該当する場合に、両立(兼業)が困難になってしまうという点にあります。(後述)
風俗営業とボードゲーム
風俗営業と言えば、ほとんどの方がアダルト系ピンク系のお店をイメージするのではないかと思います。ところが風営法では、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するために規制を行う必要があるもの」を風俗営業としているため、世間的な認識と実際の風俗営業との間には少しズレが生じています。
類型として風俗営業は5つの営業形態に区分されており、このうち「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業」は、「ゲームセンター等営業」(5号営業)とされ、しっかりと規制の対象に定められています。
射幸心とは、幸運や偶然によって思いがけない利益を得ることを期待する心理を言いますが、射幸心をそそる恐れのある遊技は、賭博等の違法行為を誘発したり、未成年者が犯罪に巻き込まれたりするおそれがあることから、これらの遊技を提供する施設を規制対象として警察の監督下に置くことにより、営業の適正化を図ることが風営法の趣旨になります。
規制対象となる遊技設備
ひとことで「遊技設備」と言っても、その概念は相当広く解釈されるため、どの遊技設備を規制の対象とするのかについては、明確に線引きする必要があります。
規制する必要があるのは、あくまでも「射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの」であり、この点については、国家公安委員会規則(風営法施行規則)及び警察庁の通達により、規制対象となる遊技設備を、具体的に以下のとおり例示しています。
- スロットマシンその他遊技の結果がメダルその他これに類する物の数量により表示される構造を有する遊技設備
- テレビゲーム機(勝敗を争うことを目的とする遊技をさせる機能を有するもの又は遊技の結果が数字、文字その他の記号によりブラウン管、液晶等の表示装置上に表示される機能を有するものに限るものとし、射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く)
- フリッパーゲーム機
- 遊技の結果が数字、文字その他の記号又は物品により表示される遊技の用に供する遊技設備(人の身体の力を表示する遊技の用に供するものその他射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く)
- ルーレット台、トランプ及びトランプ台その他ルーレット遊技又はトランプ遊技に類する遊技の用に供する遊技設備
確認していただければ分かるとおり、ここに列挙された遊技設備は、賭博の用に転じさせることが容易なものばかりです。ポーカーバーやカジノバー等が風俗営業とされるのも、上記のうち、ルーレット台、トランプ及びトランプ台その他ルーレット遊技又はトランプ遊技に類する遊技の用に供する遊技設備を設置して遊技を提供する営業であるからです。
規制対象外となる遊技設備
上記の遊技設備に該当しないものはもとより、該当する遊技設備であっても、「人の身体の力を表示する遊技の用に供するものその他射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるもの」は規制対象から除外されていることから、以下の遊技設備については、風営法の規制対象からは除外されるものと解釈されています。
- ビリヤード
- ボーリング
- バッティングセンター
- 投球速度計測ゲーム機
- パンチングマシン
- モグラ叩きゲーム機
- プリクラ機
- 占いゲーム機
- カプセル容器玩具自販機(ガチャガチャ)
- ドライブシュミレーションゲーム機
- フライトシュミレーションゲーム機
- ボードゲーム
しっかりと赤文字で示してあるとおり、ボードゲームは、射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかである限りにおいて、風営法上の規制対象とはされていません。したがって、ボードゲームを客に興じさせる通常のボードゲームカフェは、風営法でいうところのゲームセンター等営業には該当しません。
なお、デジタルダーツマシンとシミュレーションゴルフについては、警視庁の通達により、①従業員が目視できること又はモニターで遊技設備の状況が確認できること及び②ダーツマシンやシミュレーションゴルフ以外の遊技設備を設置しないことという条件を満たしていれば規制の対象外となることが明らかにされています。
接待とボードゲームカフェ
ボードゲームカフェが、風営法でいうところのゲームセンター等営業には該当しないことを明らかにしましたが、ボードゲームカフェが風俗営業となる可能性は排除することができません。何故なら風俗営業はゲームセンター等営業には限られず、以下のとおり、他に4つの営業形態が規定されているからです。
1号営業 | キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業 | キャバクラ、ラウンジ、ホストクラブ |
2号営業 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計った営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの | 低照度飲食店 |
3号営業 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの | 区画席飲食店 |
4号営業 | まあじゃん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業 | 雀荘、ぱちんこ店 |
5号営業 | スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業 | ゲームセンター、アミューズメント施設 |
意外に思われるかもしれませんが、上記のうち特に注意すべき点は、キャバクラやホストクラブのような「社交飲食店」との類似性にあります。
社交飲食店(1号営業)は、唯一「接待」をサービスとして提供することができる営業形態ですが、この「接待」というのが曲者で、イメージするものよりも広い意味を含む概念であるということを知らないまま営業しているという現実があります。
例えば、お酌をしたり、談笑をサービスとして提供する行為については「接待」としてイメージしやすい行為であるように思いますが、風営法では、風俗営業における接待について、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義しています。
抽象的すぎてよく分かりませんが、警察庁の通達によれば、談笑やお酌といった比較的分かりやすい行為のほかに、ショー、歌唱、ダンス及び「遊戯等」についても、「接待」に該当する可能性があることを明示しています。
特に「遊戯等」については、「客とともに」、遊戯、ゲーム又は競技等を行う行為を「接待」としているため、対戦はもちろんのこと、指導することも含め、客とゲームに興じる行為については、接待に該当するものと解釈される可能性があります。
ただし、実務として風俗営業に関与する中で、最近は各都道府県警察によって対応が少しずつ変化してきたことを感じます。このため、ボードゲームカフェのようなアミューズメント系の施設を開業しようと検討する際は、所轄警察署か風営法に精通する行政書士に事前に相談することをお薦めしています。
風俗営業のデメリット
ここまでご覧になって、風俗営業があたかも悪どい営業方法であるかのように感じた方も多いのではないかと思いますが、法で認められている営業である以上、規制対象とはなるものの、決してそれ自体が違法な営業ということではありません。
ただし、風俗営業とみなされることによる営業上のデメリットは存在するため、風俗営業とみなされることを回避するかどうかは、以下の点を確認した上で判断するようにしてください。
深夜営業が不可能となる
享楽的な雰囲気が深夜帯にまで及ぶことは周辺環境にとって好ましいものではないことから、風俗営業は、午前0時まで(一部地域では午前1時まで)しか営業することができないというのが原則とされています。
ボードゲームカフェにしても、深夜までドンチャン騒ぎながらゲームに興ずるということは、やはり好ましいものてはありません。
なお、前記した深夜酒類提供飲食店営業との兼業という方法もありますが、警察の審査が厳しく、実務上これが認められるのは相当困難であるというのが現状です。
未成年者の立入りが困難になる
接待を提供する社交飲食店においては、18歳未満の年少者の立入りが禁止されます。ポーカーやスロットマシンであればともかく、ボードゲームは年少者も見込み客となるため、特にファミリー層をターゲットとする場合は、風俗営業とみなされることは回避した方が得策です。
営業場所に制限がある
風俗営業については、清浄な風俗環境の保持と少年の健全な育成に資することを目的として様々な規制が設けられていますが、その中でも最も厳しいのが場所に関する規制です。
私の個人的見解はさて置いて、閑静な住宅街において享楽的なムードが漂う環境は、やはり好ましいものではありません。
このため風俗営業の営業所は、商業を振興するための地域である商業地域や、そもそも住宅街を形成しにくい工業地域等にのみ設置することが認められており、また、学校や病院等保全対象施設と言われる施設からも、一定の距離を超えた位置でしか営業を行うことができません。
このような制限があることから、営業所に選定した物件が、そもそも風俗営業を行うことができない場所に立地していることも珍しくないため、逆に風俗営業としての営業を見据える際は、物件の選定から慎重に計画を練ることが得策です。
まとめ
従業員とお客さんとがゲームで対戦する光景は珍しくもないような気がしますが、こちらは接待行為として風俗営業の対象となるため注意が必要になります。「それぐらいで」と思われるかもしれませんが、事実として摘発事例も存在するため、まずははっきりとリスクを知った上で、風営法をはじめとする諸法令の理解も深めるように心がけましょう。
弊所では、ボードゲームカフェ(カバー)の開業を手続面からサポートするサービスを提供しています。飲食店や風俗営業に関する手続きは十八番であり、全国を対象に年間3桁の飲食店の開業に携わります。
また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。飲食店や風俗営業の許可の取得代行のほか、上記のような情報の提供やご相談も随時受けつけていますので、ダーツバー開業についてお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にお問い合わせください。
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