旅行ビジネス(旅行代理店)開業ガイド│旅行業登録(許可)申請の手続きについて

空港に佇む女性旅行者

札幌の味噌ラーメン、香川の讃岐うどん、福岡の豚骨ラーメン。割と最近では名古屋のひつまぶし。私の旅先の思い出といえば食べ物のことばかりです。人それぞれ楽しみ方は違えども、旅先の楽しい思い出というものはいつまでも鮮明に覚えているものです。

そんな旅先でトラブルに見舞われてしまったら、せっかく楽しいはずの旅行が台無しになってしまいます。そこで旅行業法では、旅行業を明確に定義した上で登録制を採用し、旅行業者について様々な規制を設けています。

そこで本稿では、旅行代理店などの旅行ビジネスを始めようとするするにあたり必要となる手続きについて詳しく解説していきたいと思います。

旅行業とは

旅行業とは、報酬を得て、旅行に関する行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く)をいう。

(旅行業法第2条第1項)

旅行業法では、このような条文で旅行業を定義しています。旅行業を構成する要素は以下の3つで、これらすべての要素を満たす事業形態が旅行業に該当し、旅行業法の適用対象となります。

  • 報酬を得ていること
  • 旅行に関する行為を行っていること
  • 事業性が認められること

まずは全体像を把握するために、「旅行に関する行為」について確認していくことにしましょう。

企画旅行

企画旅行とは、「旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(運送等サービス)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為」をいいます。(旅行業法第2条第1項1号)

ザ・法律というべき回りくどい表現ですが、これを平たく説明すると、旅行の内容や料金等の旅行計画を企画し、計画したサービスが実際に提供されるよう、自己の利益を図る目的で、運送会社やホテル・旅館との間で契約を締結する行為が「企画旅行」に該当することになります。

募集型企画旅行

旅行に関する計画をあらかじめ事業者が企画し提供するように働きかけるタイプの旅行形態が募集型企画旅行です。募集型企画旅行としては、よくあるパッケージ型のツアーなどが該当します。

後述する手配旅行よりも規制が厳しく、募集型企画旅行を企画した旅行業者には旅行者保護のために、旅程管理、旅程保証、特別保障の三大責任が課されます。

★旅程管理

旅程管理とは、旅行者が契約書面に記載された旅行サービス(旅程)を確実に受けられるように管理を行うことをいいます。

★旅程保証

旅程保証とは、契約書面に記載された旅行サービス(旅程)に変更が生じた場合やサービス内容が低下した場合などに、旅行業者が旅行者に対して補償金を支払う制度です。

★特別保障

特別保障とは、旅行業者の過失の有無を問わずに、旅行者が旅行中に、急激かつ偶発的な事故で、その生命、身体または携帯品に被った一定の損害について、あらかじめ定める額を補償金及び見舞金として支払う制度です。

受注型企画旅行

旅行者からの依頼によって旅行計画を作成し、提供するように働きかけるタイプの旅行形態が受注型企画旅行です。修学旅行や社員旅行が典型例になりますが、オーダーメイド型の旅行形態はすべてこちらに該当することになります。

受注型企画旅行についても募集型企画旅行と同様に、旅行業者には上記の旅程管理、旅程保証、特別保障の三大責任が課されます。

手配旅行

手配旅行とは、「旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為」(旅行業法第2条第1項3号)をいいます。

分かりやすく言えば、旅行者のために宿泊・運送のサービスを手配する行為が手配旅行にあたります。旅行者に対してサービスの手配を完成させる義務がある企画旅行とは異なり、手配旅行では手配をした時点で旅行者に対する義務を果たしたことになります。したがって、手配はしたものの満席・満室などの事情により席や部屋が確保されなくても、旅行業者は旅行者に対して手数料を請求することができます。

★代理・媒介・取次

代理当事者に代わり契約を行う行為
媒介当事者間に紹介を行う行為
取次他人の経済的負担のもとに直接契約の当事者となる行為

付随的旅行業務

付随的旅行業務とは、「企画旅行に付随して、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービス(運送等関連サービス)を旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等関連サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等関連サービスを提供する者との間で締結する行為」(旅行業法第2条第1項2号)をいいます。

観光施設やガイドの手配など、企画旅行の実施に付随した運送・宿泊以外のサービス(運送等関連サービス)を提供するように働きかける業務が付随的旅行業務にあたります。

旅行相談業務

旅行相談業務とは、「旅行に関する相談に応ずる行為」(旅行業法第2条第1項9号)をいいます。これには有償での情報提供や見積もりの作成などが該当します。

報酬と事業性

すでに説明している「旅行に関する行為」を行う場合であっても、「報酬を得ていること」「事業性を有すること」の2点を満たしていなければ旅行業には該当しません。

報酬とは

単に旅行者から受け取る旅行代金を指すのではなく、先述した旅行業務を行うことによる経済的収入のすべてが「報酬」とみなされます。したがって、募集経費、割戻金、販売手数料、送客手数料、及び旅行業務取扱料金などはすべて報酬に該当することになります。

事業性とは

事業性とは、同種の行為を反復継続して行うことをいいます。したがって、両親のためにサプライズで旅行計画を企画するなど、単発的な行為には事業性は認められないため、このような事例は旅行業には該当しません。

旅行業に該当しない事例

旅行業務は旅行者との間で直接的な旅行契約を伴う業務に限られます。以上のことから、以下のような事例は旅行業には該当しないものと考えられています。

  • 添乗員の派遣業務
  • 運送、宿泊の伴わないサービスの提供
  • 回数券販売所や航空運送代理店
  • 同一職場内において有志が募集する場合
  • 学校が児童・生徒を対象に募集する場合
  • 日常的な接触のある団体内部における構成員による参加者の募集
  • 現地集合・解散する日帰りツアーを募集する場合
  • テーマパークやイベントの入場券のみの販売といった運送等関連サービスのみの手配を行う場合
  • 運送事業者や宿泊事業者自らが行う運送等サービスの提供
  • 一般貸切旅客自動車運送事業者が自社のバスを使って日帰りバスツアーの募集を行う場合
  • 旅館業許可を取得している宿泊施設が自ら運営する温泉やレジャーを併せたパックツアーの募集

旅行業登録

旅行業を営もうとする者は、要件を満たした上で申請し、観光庁長官の行う登録を受ける必要があります。「旅行業許可」や「旅行業免許」と誤表記をされることがありますが、厳密には「旅行業登録」という手続きになります。ただし、実務上この違いをあまり気にする必要はありません。なお、登録の有効期間は5年間となります。

登録の種別

旅行業の登録は取り扱う業務範囲によって以下の6つに区分して行われます。このうち旅行業に該当するのは、第一種から第三種の旅行業と地域限定旅行業の4種であり、旅行業者代理業と旅行サービス手配業については厳密には旅行業に該当しません。

★旅行業

登録種別申請先業務範囲
第一種旅行業官公庁長官海外・国内の募集型企画旅行・受注型企画旅行・手配旅行
他の旅行業者が実施する募集型企画旅行契約の代理締結
第二種旅行業主たる営業所を管轄する都道府県知事国内の募集型企画旅行
海外・国内の受注型企画旅行・手配旅行
他の旅行業者が実施する募集型企画旅行契約の代理締結
第三種旅行業主たる営業所を管轄する都道府県知事営業所の所在地とそれに隣接する市区町村内の募集型企画旅行
海外・国内の受注型企画旅行・手配旅行
他の旅行業者が実施する募集型企画旅行契約の代理締結
地域限定旅行業主たる営業所を管轄する都道府県知事営業所の所在地とそれに隣接する市区町村内の募集型企画旅行・受注型企画旅行
・手配旅行
他の旅行業者が実施する募集型企画旅行契約の代理締結

★旅行に関する業種

登録種別申請先業務範囲
旅行業者代理業主たる営業所を管轄する都道府県知事旅行業者から委託された業務
旅行サービス手配業主たる営業所を管轄する都道府県知事運送・宿泊・有償ガイド・免税店の手配

旅行業(第一種から第三種の旅行業と地域限定旅行業)は複数の種別で登録を行うことはできず、必ず一つの種別で登録することになります。

上の表で上に表記している種別ほど業務範囲が広く自由度が高くなる反面、後述する資金要件に大きな違いが生ずるなど登録を取得するためのハードルも高くなります。基準さえ満たしていればいきなり第一種旅行業の登録を受けることも可能ですが、まずは足がかりとして第三種旅行業の登録を経てから第二種、第一種へとステップアップする事業展開を検討されてもいいように思います。

また、弊所では地域限定旅行業に関するご相談を多く承りますが、業務範囲が極めて限定的であるため、逆にしっかりとしたビジョンが無ければ参入しても事業展開は難しいように思います。

いずれにせよどの種別で登録を受けるのかは非常に重要なファクターとなるため、予算と合わせてしっかりと検討して計画を進めるようにしましょう。

他の事業との関係

旅行業登録だけでは、一般貸切旅客自動車運送事業や一般乗用旅客自動車運送事業、旅館業等を運営できるものではありません。これらを事業として行う際は、それぞれの事業において許可を取得する必要があります。

登録の要件

次の3点をすべて満たすことが登録の要件となります。

  • 旅行業務取扱管理者を選任すること
  • 財産的基礎(基準資産額)をみたすこと
  • 申請者が登録拒否事由に該当しないこと

旅行業務取扱管理者の選任

旅行業者又は旅行業者代理業者は、営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選任し、営業所における旅行業務に関し、その取引に係る取引条件の明確性、旅行に関するサービスの提供の確実性その他取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するため必要な事項についての管理及び監督に関する事務を行わせる必要があります。

さらに従業員10人以上の営業所においては、その人数に応じて複数の旅行業務取扱管理者を選任する必要があります。

必ずしも申請者が旅行業務取扱管理者である必要はありませんが、旅行業務取扱管理者がいなくなるとすべての事業について運営が不可能となるため、申請者自身が旅行業務取扱管理者に就任することがベストの選択肢でしょう。

なお、選任した旅行業務取扱管理者が欠格事由のいずれかに該当し、又は欠けた場合には、その営業所において新たに管理者を選任するまでの間は旅行業務に関する契約を締結することはできません。

★旅行業務取扱管理者の職務

  1. 旅行に関する計画の作成に関する事項
  2. 料金の掲示に関する事項
  3. 旅行業約款の掲示及び備置きに関する事項
  4. 取引条件の説明に関する事項
  5. 書面の交付に関する事項
  6. 広告に関する事項
  7. 企画旅行の円滑な実施のための措置に関する事項
  8. 旅行に関する苦情の処理に関する事項
  9. 契約締結の年月日、契約の相手方その他の旅行者又は旅行に関するサービスを提供する者と締結した契約の内容に係る重要な事項についての明確な記録又は関係書類の保管に関する事項
  10. 取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するため必要な事項として観光庁長官が定める事項

★旅行業務取扱管理者の区分

旅行業務取扱管理者となるためには、「旅行業務取扱管理者試験」という国家資格に合格する必要があります。「総合旅行業務取扱管理者」「国内旅行業務取扱管理者」「地域限定旅行業務 取扱管理者 」の3資格があり、保有する資格によって取り扱うことのできる業務範囲が異なります。事実上、旅行業の登録を受けるために必要となる資格はこの旅行業務取扱管理者資格であるといえます。

取扱可能な範囲総合旅行業務取扱管理者国内旅行業務取扱管理者地域限定旅行業務 取扱管理者
海外国内
国内
地域限定

★旅行業務取扱管理者の欠格条項

以下のいずれかに該当する者を旅行業務取扱管理者として選任することはできません。

  1. 登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者
  2. 禁錮以上の刑又は旅行業法違反による罰金刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなったから5年を経過していない者
  3. 暴力団員等又は暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  4. 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
  5. 未成年者で、その法定代理人が上記4つのいずれかに該当するもの又はその法定代理人が法人であって、その役員のうちに上記4つの項目、又は下記の項目のいずれかに該当するもの
  6. 成年後見人若しくは被保佐人又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

財産的基礎

旅行業者は、一定の範囲で旅行者の旅行中の事故に対する責任を負います。また、旅行業者が不意に倒産してしまうと旅行者の利益は損なわれてしまうことになります。このような事態に対応するため、旅行業法では旅行業者に対して一定の財産的基礎を求めています。

登録種別営業保証金(最低額)弁済業務保証金分担金を供託する場合基準資産額
第一種旅行業7000万円1400万円3000万円
第二種旅行業1100万円220万円700万円
第三種旅行業300万円60万円300万円
地域限定旅行業100万円20万円100万円
旅行業者代理業不要不要なし
基準資産額

財産的基礎の基準となる資産額のことを「基準資産額」といいます。基準資産額は直近の決算書から導き出しますが、具体的には貸借対照表にある資産の総額から、負債性のある資産(繰延資産、不良債権、営業権)、負債の総額、営業保証金もしくは弁済業務保証金分担金を除して(引き算して)算出します。

基準資産額=
資産の総額-(負債性のある資産+負債の総額+営業保証金もしくは弁済業務保証金分担金)

営業保証金

供託とは、供託所(法務局等)に金銭等を預けさせ、旅行業者が自由に引き出せない財産を「営業保証金」として確保するための制度です。供託する金額は旅行業の種別や旅行者との取引額に応じて決します。

弁済業務保証金分担金

旅行業協会(日本旅行業協会又は全国旅行業協会)に加入している場合は上記の営業保証金の供託に代えて、その5分の1の金額を弁済業務保証金分担金として納付することになります。こちらは旅行者の利益を保護するとともに、旅行業者の金銭的負担を軽減するための制度です。

登録拒否事由

申請者が次のいずれかに該当する場合、登録の申請はすることができません。

  1. 登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者
  2. 禁錮以上の刑又は旅行業法違反による罰金刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなったから5年を経過していない者
  3. 暴力団員等又は暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  4. 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
  5. 未成年者で、その法定代理人が上記4つのいずれかに該当するもの又はその法定代理人が法人であって、その役員のうちに上記4つの項目、又は下記の項目のいずれかに該当するもの
  6. 成年後見人若しくは被保佐人又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  7. 法人であって、その役員のうちに1〜4、6のいずれかに該当する者があるもの
  8. 暴力団員等がその事業活動を支配する者
  9. 営業所ごとに旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者
  10. 旅行業を営もうとするものであって、当該事業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しないもの
  11. 旅行業者代理業を営もうとする者であって、その代理する旅行業を営む者が2以上であるもの

登録申請に必要となる書類

  • 登録申請書
  • 宣誓書(事業者・役員)
  • 事業者の住民票
  • 財産に関する調書
    • 残高証明、不動産鑑定書等
  • 旅行業務に係る事業計画
  • 旅行業務に係る組織概要
  • 旅行業務取扱管理者選任の一覧表
  • 事故処理体制の説明書
  • 標準旅行業約款
  • 登記簿謄本(法人)
  • 直近の法人税確定申告書(法人)

また、法人で申請する場合における定款及び登記簿謄本の目的欄については、以下のとおりに記載する必要があります。

旅行業「旅行業」
「旅行業法に基づく旅行業」
旅行業者代理業「旅行業者代理業」
「旅行業法に基づく旅行業者代理業」
旅行サービス手配業「旅行サービス手配業」
「旅行業法に基づく旅行サービス手配業」

まとめ

コロナ禍の煽りを直に受けている観光産業ですが、盛り返しの兆しが見られるのも事実であり、実際に弊所においても旅行業や旅館業といった観光産業に関するお問い合わせが増加傾向にあり、着々とその下地は整いつつあるように感じます。

人が、人や場所とつながりたいという思いを持ち続ける限り、観光の灯は消えることはありません。本稿が旅行業の開業を目指す皆さまにとっての道標となれば幸いに思います。

弊所では、兵庫大阪京都を中心に関西圏全域における旅行業登録申請のサポートを行っております。面倒な書類作成から関係機関との調整、申請時の同行まで、まるっとフルサポートいたします。下記の報酬は市場価格を反映したものですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」です。さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応には自信があります。旅行業登録申請でお困りの際は、ぜひ弊所までお気軽にご相談ください。

第1種旅行業登録330,000円~
第2種旅行業登録198,000円~
第3種旅行業登録165,000円~
地域限定旅行業登録99,000円~
旅行業者代理業登録88,000円~
旅行サービス手配業登録88,000円~
※税込み

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