地域限定旅行業│着地型観光旅行で地域の活性化に貢献しよう

旅行業法では、悪質な旅行業者によるトラブルから旅行者を守り、旅行業務に関する取引の公正を維持することを目的として、旅行業及び関連業務について登録制を採用し、業務に関する規制及びその適正化を図っています。
旅行業法に規定のある旅行業には、第1種から第3種までの旅行業のほかに地域限定旅行業という登録種別がありますが、他の種別よりも登録基準が低く設定されているため、厳しい資金要件や難解な手続きを求められる旅行業にあって、比較的参入しやすい事業形態となっています。
また、運送業や旅館業といった他業種との相性も抜群で、地域からは地域振興の担い手としても期待されている業種でもあります。
そこで本稿では、これから旅行業を開業しようと検討されている皆さまに向けて、地域限定旅行業を開業するにあたり必要となる資格や手続きについて詳しく解説していきたいと思います。
地域限定旅行業とは
旅行者に対し、地域の観光資源を活用した旅行商品や体験プログラムを提供する旅行形態を「着地型旅行」といいますが、地域限定旅行業とは、「着地型」の旅行商品を旅行者に提供する旅行業の一形態といえます。
後述するように、営業保証金や基準資産額などの財産基準が他の旅行業種よりも低く設定されている一方で、取り扱うことができる旅行業務の範囲に以下のような制限が設けられていることが地域限定旅行業の特色となっています。
企画旅行 | 募集型・受注型ともに、出発地、目的地、宿泊地及び帰着地が営業所の存する市町村(特別区を含む)、それに隣接する市町村(特別区を含む)及び、観光庁長官の定める区域となる市町村に収まっている旅行商品に限り取扱可 |
手配旅行 | 出発地、目的地、宿泊地及び帰着地が営業所の存する市町村(特別区を含む)、それに隣接する市町村(特別区を含む)及び、観光庁長官の定める区域となる市町村に収まっている旅行商品に限り取扱可 |
他社実施の募集型企画旅行の受託販売 (代売) | 海外・国内問わず取扱可能 |
第1種から第3種までの旅行業と比較すると取扱可能な業務範囲は極めて限定的であり、企画旅行及び手配旅行ともに、出発地、目的地、宿泊地及び帰着地について、営業所の存する市町村(特別区を含む)及び観光庁長官の定める区域となる市町村(営業所の存する市町村に隣接する市町村等)の区域に収まる旅行商品に限って取り扱うことが認められています。
また、旅行業法には、旅行業のほかに関連業務として旅行業者代理業及び旅行サービス手配業という種別がありますが、旅行業務にはそもそもこれらのサービスに該当する業務が含まれているため、登録を受けた旅行業者であれば改めて旅行業者代理業や旅行サービス手配業の登録を受けることなくこらに該当する業務を行うことができます。
ただし、地域限定旅行業については、旅行業者代理業又は旅行サービス手配業に該当する業務を行うことができる地域が限定されているものと解されることから、この限定を解除するためには、改めて旅行業者代理業又は旅行サービス手配業の登録を受ける必要があります。
地域限定旅行業の登録
地域限定旅行業の営業を開始するにあたっては、基準を満たした上で主たる営業所を管轄する都道府県知事に対して申請し、その登録を受ける必要があります。
なお、登録の有効期間は5年間とされており、期間経過後も引き続き旅行業を営業しようとするときは、登録の更新を受ける必要があります。
登録の基準
申請さえすれば誰でも簡単に登録される訳ではなく、申請者は、旅行業務取扱管理者を選任すること、財産的基礎(基準資産額)を満たすこと及び登録拒否事由に該当しないことの3点をすべて満たすことが求められています。
旅行業務取扱管理者の選任
地域限定旅行業者等は、営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選任する必要があります。さらに従業員10人以上の営業所においては、従業員の人数に応じて複数の旅行業務取扱管理者を選任する必要があります。
必ずしも申請者が旅行業務取扱管理者である必要はありませんが、旅行業務取扱管理者がいなくなるとすべての事業について運営が不可能となるため、申請者自身が旅行業務取扱管理者に就任することがベストの選択肢です。
なお、選任した旅行業務取扱管理者が欠格事由のいずれかに該当し、又は欠けた場合には、その営業所において新たに管理者を選任するまでの間は旅行業務に関する契約を締結することはできません。
旅行業務取扱管理者となる資格
旅行業務取扱管理者となるためには、「総合旅行業務取扱管理者」、「国内旅行業務取扱管理者」又は「地域限定旅行業務 取扱管理者」の3資格(旅行業務取扱管理者試験)のうちのいずれかの国家資格を取得する必要があります。
取扱可能な範囲 | 総合旅行業務取扱管理者 | 国内旅行業務取扱管理者 | 地域限定旅行業務 取扱管理者 |
---|---|---|---|
海外・国内 | ◯ | ✕ | ✕ |
国内 | ◯ | ◯ | ✕ |
地域限定 | ◯ | ◯ | ◯ |
ただし、上記の資格を保有する者であっても、以下のいずれかの事由に該当する者を旅行業務取扱管理者として選任することはできません。
- 登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者
- 禁錮以上の刑又は旅行業法違反による罰金刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなったから5年を経過していない者
- 暴力団員等又は暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
- 未成年者で、その法定代理人が上記4つのいずれかに該当するもの又はその法定代理人が法人であって、その役員のうちに上記4つの項目、又は下記の項目のいずれかに該当するもの
- 成年後見人若しくは被保佐人又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
専任制要件の緩和
旅行業務取扱管理者は営業所に常勤かつ専任であることが原則ですが、地域限定旅行業者においては、次の2つの条件を満たしている場合に限り、複数の営業所を1人の旅行業務取扱管理者に兼任させることができます。
- 営業所間の距離の合計が40km以下であること
- 旅行業務取扱管理者を兼務させようとする複数の営業所の直近事業年度の旅行業務に関する旅行者との取引額の合計が1億円以下であること
財産的基礎
旅行業者は、一定の範囲で旅行者の旅行中の事故に対する責任を負うため、旅行業者が不意に倒産してしまうと旅行者の利益は損なわれてしまうことになります。このような事態に対応するため、旅行業法では旅行業者に対して一定の財産的基礎を求めています。
財産的基礎として求められているのは基準資産額及び営業保証金(若しくは弁済業務保証金分担金)であり、登録種別に応じて下表の額を準備する必要があります。
登録後1年間の旅行者との取引見込額 | 営業保証金(最低額) | 弁済業務保証金分担金を供託する場合 | 基準資産額 |
---|---|---|---|
400万円未満 | 15万円 | 3万円 | 100万円 |
400万円以上5000万円未満 | 100万円 | 20万円 | 100万円 |
5000万円以上2億円未満 | 300万円 | 60万円 | 100万円 |
基準資産額
財産的基礎の基準となる資産額(基準資産額)は、直近の決算における貸借対照表にある資産の総額から、負債性のある資産(繰延資産、不良債権、営業権)、負債の総額、営業保証金(若しくは弁済業務保証金分担金)を除して(引き算して)算出します。
地域限定旅行業における基準資産額は100万円とされており、これ以上の基準資産額を保有することが、登録を受けるための条件となっています。
基準資産額≧100万円=
資産の総額-(負債性のある資産+負債の総額+営業保証金もしくは弁済業務保証金分担金)
営業保証金
営業保証金とは、供託所(法務局等)に旅行業の種別や旅行者との取引額に応じた額の金銭等を預けさせ(供託)、旅行業者が自由に引き出せない財産を確保するための制度です。
供託する金額は、登録後1年間の旅行者との取引見込額によって、下表のように変動します。
登録後1年間の旅行者との取引見込額 | 営業保証金(最低額) |
---|---|
400万円未満 | 15万円 |
400万円以上5000万円未満 | 100万円 |
5000万円以上2億円未満 | 300万円 |
弁済業務保証金分担金
旅行者の利益を保護するとともに、旅行業者の金銭的負担を軽減するため、旅行業協会(日本旅行業協会又は全国旅行業協会)に加入している事業者については、営業保証金の供託に代えて、その5分の1の金額を弁済業務保証金分担金として納付することができる制度が設けられています。
弁済業務保証金分担金は、営業保証金と同様に、登録後1年間の旅行者との取引見込額によって下表のように変動します。
登録後1年間の旅行者との取引見込額 | 弁済業務保証金分担金を供託する場合 |
---|---|
400万円未満 | 3万円 |
400万円以上5000万円未満 | 20万円 |
5000万円以上2億円未満 | 60万円 |
★旅行業協会
旅行業協会には一般社団法人日本旅行業協会(JATA)と一般社団法人全国旅行業協会(ANTA)の2つの団体があります。また、旅行業協会へ入会する場合は、弁済業務保証金分担金の他に、入会金・年会費の支払いが必要になります。入会手続きの詳細についてはは、主たる営業所を管轄する都道府県の旅行業協会支部へ確認するようにしましょう。
登録拒否事由
申請者が次のいずれかに該当する場合、登録の申請はすることができません。
- 登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者
- 禁錮以上の刑又は旅行業法違反による罰金刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなったから5年を経過していない者
- 暴力団員等又は暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
- 未成年者で、その法定代理人が上記4つのいずれかに該当するもの又はその法定代理人が法人であって、その役員のうちに上記4つの項目、又は下記の項目のいずれかに該当するもの
- 成年後見人若しくは被保佐人又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 法人であって、その役員のうちに1〜4、6のいずれかに該当する者があるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
- 営業所ごとに旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者
- 旅行業を営もうとするものであって、当該事業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しないもの
- 旅行業者代理業を営もうとする者であって、その代理する旅行業を営む者が2以上であるもの
申請に必要となる書類
登録申請は、以下の書類を主たる営業所を管轄する都道府県の担当窓口に提出することにより行います。
- 登録申請書
- 宣誓書(事業者・役員)
- 事業者の住民票
- 財産に関する調書
- 残高証明、不動産鑑定書等
- 旅行業務に係る事業計画
- 旅行業務に係る組織概要
- 旅行業務取扱管理者選任の一覧表
- 事故処理体制の説明書
- 標準旅行業約款
- 登記簿謄本(法人)
- 法人税確定申告書(法人)
ただし、法人の「目的」については厳しく、法人で登録申請を行う場合は、定款と履歴事項全部証明書の「事業目的」欄には、「旅行業」又は「旅行業法に基づく旅行業」と記載することが求められます。
このいずれか以外で目的が記載されている場合には、定款の目的について実態に適合させる旨の宣誓書を提出するよう求められることがあります。
また、名称や商号についても、既存の旅行業者、代理業者及び旅行サービス手配業者との類似商号を避けるよう求められる場合があるのでご注意ください。
申請書類等(大阪府)
- 旅行業(第2種・第3種・地域限定)新規登録申請書類一覧表・様式集(Word/222KB)
- 標準旅行業約款(R2.4.1改正)(PDF/328KB)
- 旅行業新規登録申請書類(記入例) (Word/214KB)
地域限定旅行業登録サポート
弊所では、兵庫大阪京都を中心に関西圏全域における旅行業登録申請のサポートを行っております。ご依頼があったときは、面倒な書類作成から関係機関との調整、申請時の同行に至るまで、まるっとフルサポートいたします。また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。旅行業登録申請及び旅行業者代理業登録でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
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