未成年者が古物商許可を取得する方法

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成年に達すると、親権者の同意を得ることなく、自分の意思のみで様々な契約を行うことができるようになります。好きな場所で好きなように生活することができますし、自由にお店をオープンさせることだってできます。反対に、未成年者は親権者が指定する居所以外では生活することができず、親権者の同意なく自由にお店をオープンさせることもできません。古物商に関しても同様の取扱いとなり、基本的に未成年者は古物商許可を受けることができないので、従って、古物営業を行うことはできません。これは判断能力が未熟である未成年者を保護するための制度であると同時に、未成年者と取引を行う者を保護するための制度でもあります。

それでは未成年者は絶対に古物商を営むことができないのかと問われると、実はそうではありません。これはあくまで「原則」の中の話しであって、条件付きではあるものの、「例外」として未成年者が古物商を営むことができるケースが用意されているのです。それでは次節以降、詳しく解説していくことにしましょう。

古物商の欠格事由

許可申請を行なっても、一定の事由に該当する者は許可を受けることができません。この一定の事由を欠格事由といいますが、古物商の場合、次のいずれかに該当する者は古物商を営むことができません。

1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

2.禁錮刑や懲役刑に処せられその執行を終わり、又はその執行を受けなくなってから5年を経過しない者

3.無許可古物営業や名義貸しのほか窃盗、背任、遺失物横領、盗品譲受け等で罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けなくなってから5年を経過しない者

4.暴力団員、暴力団員でなくなってから5年を経過しない者

5.暴力団以外の犯罪組織にいて、集団的または常習的に暴力的不法行為をする恐れのある者(過去10年間に暴力的不法行為を行ったことがある者)

6.暴力団対策法により、公安委員会から命令または指示を受けて3年経っていない者

7.住居の定まらない者

8.古物営業を取り消された者、取り消されて5年を経過しない者等

9.心身の故障により古物商または古物市場主の業務を適正に実施することができない者として国家公安委員会規則で定めるもの

10.営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者

11.管理者の業務を適正に行えない者を管理者に選んでいるもの

12.法人の役員に1~11のいずれかに該当する者があるもの

ご覧のとおり、営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者は、古物商許可を受けることができないことがお分かりいただけると思います。

ん?「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない」未成年者?

回りくどい表現にひっかかった方はお見事です。「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない」未成年者は確かに欠格事由に該当するものの、未成年者そのものが欠格事由とされているわけではないのです。

行為能力とは

行為能力とは、契約などの法律行為を単独で確定的に遂行することができる能力をいいます。民法では、判断能力が不十分であると考えられる者を保護するため、あらかじめ年齢や審判の有無という形式的基準により行為能力の有無を定めています。そして行為能力が制限された者を制限行為能力者といい、個別の事情により未成年者、成年被後見人、被保佐人等に類型化されています。このため、成年被後見人、被保佐人等についても、未成年者と同様に古物商許可を取得することはできません。

古物商許可を取得できるケース

ここまで欠格事由や制限行為能力者について説明させていただきました。それでは次に、いよいよ未成年者が古商許可を取得できるケースについてご紹介したいと思います。

法定代理人の許可(同意)

制限行為能力者は、法定代理人の許可(同意)を得ることにより法律行為を完遂することができるようになります。未成年者であれば、一般的に法定代理人は親権者(親)であるため、従って、親の許可を受けた未成年者については、その許可(同意)の範囲内において「営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者」とみなされ、古物商を営むことができるようになるのです。ただし、次の点については注意が必要です。

  • 法定代理人の許可(同意)は、包括的な内容ではなく個別具体的な内容であること
    • 例えば「商売することに同意する」といった内容ではなく、「古物商を営業することについて同意し、その営業に関するすべての責任を負う」というような具体的な内容であること
  • 警察署によっては、未成年登記という商業登記を求められることがあること

結婚している場合

民法においては、未成年者であっても婚姻することにより成年に達したものとみなすという成年擬制という制度が存在します。結婚し責任を持って家庭を築く能力があるのであれば、私法上は成年と同一の行為能力を認めてもいいのではないかというのが制度の主旨です。ただし、婚姻によって公法上(例:公職選挙法、未成年者飲酒禁止法等)の成年としてまで認められるわけではありません。なお、令和4年4月1日からは、民法改正により成年年齢が18歳に引き下げられ、また、女性の婚姻開始年齢が18歳に引き上げられるため、成年擬制の制度は消滅することになります。

相続人である場合

被相続人(亡くなられた方)が古物商許可を取得して営業していた場合であって、その事業を相続する相続人が未成年であり、かつ、その法定代理人(通常は親)が欠格要件に該当しなければ、法定代理人を経由して未成年者本人を申請者として古物商許可を申請することができます。

管理者の欠格事由

管理者にも欠格事由があります。管理者とは、古物営業を適正に管理するための責任者のことですが、古物商の営業所には、営業所ごとに1名の管理者を選任する必要があります。特に必要な資格や実務経験はありませんが、こちらにも申請者と同様に欠格事由が定められており、次のいずれかに該当する者は管理者になることができません。

1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

2.禁錮刑や懲役刑に処せられその執行を終わり、又はその執行を受けなくなってから5年を経過しない者

3.無許可古物営業や名義貸しのほか窃盗、背任、遺失物横領、盗品譲受け等で罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けなくなってから5年を経過しない者

3.住居の定まらない者

4.古物営業を取り消された者、取り消されて5年を経過しない者等

5..法人の役員に1~4のいずれかに該当する者があるもの

6.未成年者

注意すべきは「未成年者」を欠格事由として明記している点です。申請者の欠格事由とは異なり、こちらには「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない」という文言も付されていないため、未成年者であれば例外なく管理者になることはできません。管理者は営業所における古物商のすべての行為について責任を負う立場です。やはりそこには責任を完全に果たしうる成年者であることが要求され、これにより取引の安全性を図っているのです。

まとめ

令和4年4月1日から成人年齢が引き下げられ、その日以降満18歳に達した者については、いち成人として取り扱われるようになります。これが今後の古物商許可制度にどのように影響するのかについてはまだ未知の部分がありますが、引き続き注視していきたいと思います。

本稿でご紹介した未成年者申請はレアケースであり、実務上の許可難易度は著しく高いものと言わざるを得ません。弊所でも取扱はありますが、所轄の警察署において何度も協議し、追加資料を添付することでやっと申請を通しました。管轄が異なれば求められる資料も異なるため、やはりここは事前協議を重ねることが重要です。弊所ではレアケースに対する無料調査も行っておりますので、どうぞご遠慮なくお申し付けください。

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