冷凍食品の規格基準について
食品は摂取することによって、人体に多大な影響を及ぼします。このため、食品衛生法という法律においては、食品取扱者を細かく業種分けし、業種ごとの基準を設けた上で許可性を採用しています。冷凍食品を製造販売する場合には「食品の冷蔵又は冷蔵業」の許可を取得する必要がありますが、これはあくまで営業所に対しての許可であり、実際に製造販売する「冷凍食品」そのものについても、規格に適合しなければ販売することができない仕組みになっています。本稿では食品の冷蔵又は冷蔵業を営業しようとする際には必須となる冷凍食品の規格基準についてご案内したいと思います。なお、食品の冷蔵又は冷蔵業の概要については、下の埋め込み記事にてご確認ください。
食品の冷蔵又は冷蔵業について
冷凍食品とは
冷凍食品とは、「製造し、又は加工した食品(清涼飲料水、食肉製品、鯨肉製品、魚肉練り製品、ゆでだこ及びゆでがにを除く)及び切り身又はむき身にした鮮魚介類(生かきを除く)を凍結させたものであって、容器包装に入れられたもの」とされています。清涼飲料水や食肉製品等が除外されているのは、除外された食品がそれぞれ「清涼飲料水製造業」や「食肉製品製造業」等、別の基準による許可の対象となっているからです。なお、冷凍食品の分類については以下のとおりです。
無加熱摂取冷凍食品 | 冷凍食品のうち製造し、又は加工した食品を凍結させたものであって、飲食に供する際に加熱を要しないとされているもの |
加熱後摂取冷凍食品(凍結直前加熱) | 加熱した後に摂取する冷凍食品(冷凍食品のうち製造し、又は加工した食品を凍結させたものであって、無加熱摂取冷凍食品以外のもの)であって凍結させる直前に加熱されたもの |
加熱後摂取冷凍食品(凍結直前未加熱) | 加熱した後に摂取する冷凍食品(冷凍食品のうち製造し、又は加工した食品を凍結させたものであって、無加熱摂取冷凍食品以外のもの)であって凍結させる直前に加熱されたもの以外のもの |
生食用冷凍鮮魚介類 | 冷凍食品のうち切り身又はむき身にした鮮魚介類であって、生食用のものを凍結させたもの |
切り身又はむき身の冷凍鮮魚介類 | 冷凍食品のうち切り身又はむき身にした鮮魚介類であって、生食用以外のものを凍結させたもの |
冷凍食品の規格基準
冷凍食品は、その種別ごとに、それぞれ成分規格、保存基準、加工基準(生食用冷凍鮮魚介類のみ)が設定されています。成分規格については次の表のとおりですが、以下に種別ごとの規格基準を記述します。
項目 | 細菌数(生菌数) | 大腸菌群 | E.coli | 腸炎ビブリオ最確数 |
---|---|---|---|---|
無加熱摂取冷凍食品 | 100,000以下/g | 陰性 | − | − |
加熱後摂取冷凍食品 (凍結直前加熱) | 100,000以下/g | 陰性 | − | − |
加熱後摂取冷凍食品 (凍結直前未加熱) | 3,000,000以下/g | − | 陰性 | − |
生食用冷凍鮮魚介類 | 100,000以下/g | 陰性 | − | 100以下/g |
無加熱摂取冷凍食品
成分規格
細菌数(生菌数)が検体1gにつき100,000 以下で、かつ、大腸菌群が陰性でなければなりません。
保存基準
-15 °以下で保存すること(業界団体は-18°以下を推奨)
清潔で衛生的な合成樹脂、アルミニウム箔はくまたは耐水性の加工紙で包装して保存すること
加熱後摂取冷凍食品(凍結直前加熱)
成分規格
細菌数(生菌数)が検体1gにつき100,000 以下で、 かつ、大腸菌群が陰性でなければなりません。
保存基準
-15 °以下で保存すること(業界団体は-18°以下を推奨)
清潔で衛生的な合成樹脂、アルミニウム箔または耐水性の加工紙で包装して保存すること
加熱後摂取冷凍食品(凍結直前未加熱)
成分規格
細菌数(生菌数)が検体1gにつき3,000,000 以下で、かつ、E.coliが陰性でなければなりません。
E.coli
E.coliとは、グラム陰性の無芽胞桿菌で、乳糖を分解して酸とガスを産出する好気性または通性嫌気性の一群(大腸菌群)のうち、44.5℃で発育して乳糖を分解してガスを産生する菌群とされています。 細菌分類学上で言う大腸菌(Escherichia coli)とは、必ずしも一致しません。
保存基準
-15 °以下で保存すること(業界団体は-18°以下を推奨)
清潔で衛生的な合成樹脂、アルミニウム箔はくまたは耐水性の加工紙で包装して保存すること
生食用冷凍鮮魚介類
成分規格
細菌数(生菌数)が検体1g につき100,000以下であり、かつ、大腸菌群が陰性であって、腸炎ビブリオ最確数が100以下でなければなりません。
保存基準
-15 °以下で保存すること(業界団体は-18°以下を推奨)
清潔で衛生的な合成樹脂、アルミニウム箔はくまたは耐水性の加工紙で包装して保存すること
加工基準
原料用鮮魚介類は,鮮度が良好なものであること
加工に使用する水は、飲用適の水、殺菌した海水又は飲用適の水を使用した人工海水を使用すること
原料用鮮魚介類が凍結されたものである場合は、 その解凍は衛生的な場所で行うか、又は清潔な水槽中で飲用適の水、殺菌した海水又は飲用適の水を使用した人工海水を用い、かつ、十分に換水しながら行うこと
原料用鮮魚介類は、飲用適の水、殺菌した海水又は飲用適の水を使用した人工海水で十分に洗浄し、製品を汚染するおそれのあるものを除去すること、この処理を行った鮮魚介類の加工は、その処理を行った場所以外の衛生的な場所で行うこと、また、その加工に当たっては化学的合成品たる添加物(次亜塩素酸ナトリウムを除く)を使用しないこと
加工に使用する器具は 、洗浄及び殺菌が容易なものであること、また、その使用に当たつては,洗浄した上殺菌すること
加工した生食用鮮魚介類は、加工後速やかに凍結させること
まとめ
専門用語が多く、かえって難解な解説になってしまったように思います。しかし、せっかく食品衛生法上の許可を取得しても、冷凍食品そのものが基準に適合しなければ、商品として販売することはできません。検査を事業者側が単独で行うことはほぼ不可能なので民間業者に委託する流れになりますが、以後も営業を継続するからには最低限抑えておくべき事項です。本稿が適切な食品管理と運営に一役買って、より良い事業展開につながったのであれば幸いです。