食肉販売業許可について│意外にややこしい食肉に関する許可制度
食用の肉は食中毒の原因となることも多いため、販売を行うためには、食品衛生法に基づく適正な営業許可を受ける必要があります。
他方、食品衛生法上の業種は混同されがちなものも多く、取得すべき営業許可や手続きが分からず、開業について足踏みされている方も少なくないように思います。
そこで本稿では、これから食肉を販売しようする皆さまに向けて、必要となる食肉販売業の営業許可の基準や手続きの方法について詳しく解説していきたいと思います。
目 次
食肉販売業とは
食肉販売業とは、字面のとおり、鳥獣の肉を販売する営業(いわゆる精肉店)のことをいいます。「鳥獣」とされていることから、シカやイノシシといった野生動物の肉も含まれますが、魚介類はこれに含まれません。また、鯨肉についても、食品衛生法上は「魚介類」として取り扱われるため、「鳥獣の肉」には該当しません。
また、「肉」については、いわゆる「生肉」が対象とされていることから、調理済みの肉料理を提供したり販売する営業は飲食店営業に当たり、食肉販売業には該当しません。他方、味付けをした状態であろうと衣をつけた状態であろうと、生肉の状態でこれを販売する営業であれば食肉販売業に該当します。
なお、販売先が店頭であるか通信販売であるかは問われず、生肉をいったん保管した上で流通させる営業はすべて食肉販売業として取り扱われるため、細断包装した食肉を保管し、注文配送する場合も食肉販売業に該当します。
食肉製品製造業について
食品衛生法においては、混同しやすい業種として、他に食肉製品製造業と食肉処理業が存在しますが、このうち食肉製品製造業とは、ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するものを製造(加工)する営業をいいます。
これらの食肉製品を製造(加工)する場合には、別に食肉製品製造業として営業許可を取得する必要がありますが、食品衛生責任者資格よりも取得のハードルが高い食品衛生管理者の資格を有する者を設置する必要があるなど、より一層規制が厳しい営業形態になります。
食肉処理業について
食用に供する目的で、食鳥処理場で処理される食鳥(鶏、あひる、七面鳥)以外の鳥や、と畜場で処理される獣畜(牛馬、豚、めん山羊)以外の獣畜をと殺し若しくは解体し、又は解体された鳥獣の肉、内臓等を分割し、若しくは細切する営業をいいます。
具体的な事例
具体的にこれらの営業形態をまとめたものが下表です。実態と異なる営業を選択することがないよう、しっかりと確認するようにしてください。
具体的な事例 | 必要な許可 |
---|---|
店内における肉料理の提供 (生肉の料理含む) | 飲食店営業許可 |
肉料理の宅配や店頭販売 | 飲食店営業許可 |
生肉の店頭販売 | 食肉販売業 |
生肉の通信販売 | 食肉販売業 |
味付けや衣付けをした生肉の販売 | 食肉販売業 |
魚介類の販売 | 魚介類販売業 |
鯨肉の販売 | 魚介類販売業 |
食肉をいったん保管し注文配送する営業 | 食肉販売業 |
食肉販売の斡旋又は仲介のみ | 不要 |
ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するものを製造(加工)する営業 | 食肉製品製造業 |
食用に供する目的で処理場で処理される鳥以外の鳥獣をと殺し、もしくは解体し、又は解体された鳥獣の肉、内臓等を分割し、若しくは細切する営業 | 食肉処理業 |
食肉販売業許可
食肉販売業を営もうとするときは、施設設備等を都道府県知事等が定めた基準に適合させた上で製造場所の所在地を管轄する保健所に対して申請し、その許可を受ける必要があります。
ただし、容器包装に入った食肉販売のみを行う営業については、包装済食肉販売業として届出をすれば足ります。
ここでは食肉販売業の代表的な許可基準を抜粋して掲載していますが、施設設備等について求められる基準は自治体ごとに異なるため、基準の詳細については、各自治体のホームページ等でしっかりと確認するようにしてください。
共通基準
食品衛生法上の営業許可を受けるためには、飲食店であれ食肉販売業であれ、営業用の施設設備を以下の基準すべてに適合させる必要があります。
- 営業の施設は衛生上支障のない場所に設置すること
- 営業の施設は住居その他営業の施設以外の施設と明確に区分すること
- 作業場は使用目的に応じて適当な広さを有し、かつ、十分な明るさを確保することができる照明の設備及び換気を十分に行うことができる設備を設けること
- 作業場の床は次に掲げる要件を備えること
- 排水溝を有すること
- 清掃が容易にできるよう平滑であり、かつ、適当な勾配のある構造であること
- 水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料(厚板、モルタルその他水により腐食しにくいもの)で造られていること
- 作業場の床面と内壁面との接合部分及び排水溝の底面の角は、適度の丸みをつけ、清掃が容易にできる構造であること
- 作業場の内壁は清掃が容易にできる構造とし、床面からの高さが1.5mまでの部分及び水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料で造られていること
- 作業場の天井は隙間がなく、清掃が容易にできる構造であること
- 営業の施設は、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ構造であること
- 営業の施設及び機械、器具類は、製造量、販売量、来客数等に応じて十分な規模及び機能を有するものを設けること
- 器具の洗浄、消毒、水切及び乾燥の設備を設けること
- 洗浄の設備は、熱湯を十分に供給できるものであること
- 固定した設備又は移動が困難な設備は、洗浄が容易にできる場所に設けること
- 機械は食品又は添加物に直接接触する部分が不浸透性材料(ステンレス、石、コンクリートその他水が浸透せず、かつ、さびないもの)で造られ、かつ、洗浄及び消毒が容易にできる構造であること
- 器具及び容器包装を衛生的に保管するための設備を設けること
- 添加物を使用する場合は、専用の計量器を備えること
- 原材料、添加物、半製品又は製品を保管する設備は、それぞれ専用のものとし、及び温度、湿度、日光等に影響されない場所に設ける等衛生的に保管ができるものであること
- 冷蔵庫(摂氏10℃以下に冷却する能力を有するものに限る)、冷凍庫その他温度又は圧力を調節する必要のある設備には、温度計、圧力計その他必要な計器を見やすい位置に備えること
- 飲用に適する水を十分に供給できる衛生的な給水設備を専用に設けること
- 十分な容量を有し、不浸透性材料で造られ、清掃が容易にでき、及び汚液、汚臭等が漏れない構造である廃棄物容器を設けること
- 便所には、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ設備を設けるとともに、その出入口及びし尿くみ取口は、衛生上支障のない場所にそれぞれ設けること
- 消毒薬を備えた流水受槽式手洗い設備を、適当な場所に設けること(ただし、魚介類販売業を除き、露店により営業を行う場合又は自動車により営業を行う場合にあってはこの限りでない)
- 従業員の数に応じて、更衣室その他更衣のための設備を設け、及び専用の外衣、帽子、マスク、履物等を備えること
- 露店により営業を行う場合又は自動車により営業(魚介類販売業を除く)を行う場合は、次に掲げる要件を備えること
- 流水受槽式手洗い設備を有しないときは、消毒用アルコール、逆性石けん等を含ませた綿を十分に入れた容器を備えること
- 直接排水ができない場合は、水その他の液体が浸透しにくい材質で、かつ、洗浄が容易にできる排水容器を備えること
- 露店により営業を行う場合は、当該営業に係る施設について、屋根を設け、及び覆いをする等により、調理し、又は加工するための設備にほこり、ちり等が入らない構造とすること
- 自動販売機は、屋内に設置すること。ただし、ひさし等により雨水を防止できる場合にあっては、この限りでない
- 自動販売機の設置場所の床面は、不浸透性材料で造られ、かつ、清掃が容易にできる構造であること
業種別基準
食肉販売業については、上記の共通基準に加え、施設設備等を以下すべての基準に適合させる必要があります。
- 枝肉及び精肉を取り扱う場所は、それぞれ明確に区分すること
- 冷蔵庫及び冷却保存をすることができる陳列ケースを設け、これらの内部を食肉用と食肉製品用とに明確に区分すること(自動車により営業を行う場合にあっては、取り出し口が二重扉である冷蔵庫を専用に備えること)
- 生食用及び加熱調理済み食品用のまな板は合成樹脂で造られていること
- 鳥又は獣畜をとさつし、又は解体する場合は、専用の処理室を設け、これに処理台を専用に備えること
- 食肉製品を薄切りにする場合は、そのための器具を専用に備えること
- 生食用食肉を加工し、又は調理する場合は、次に掲げる要件を備えること
- 生食用食肉を取り扱う場所は、他の場所と明確に区分すること
- 器具の洗浄及び消毒並びに手指の洗浄及び消毒に必要な設備をそれぞれ専用に設けること
- 生食用食肉が接触する設備及び器具を専用に備えること
- 加熱殺菌を行うのに十分な能力を有する設備を設け、これに温度を正確に測定することができる装置を備えること
- 加熱殺菌後の冷却を行うのに十分な能力を有する設備を設けること
- 生食用食肉調理基準のみが適用される場合にあっては、次に掲げる要件を備えること
- 生食用食肉を取り扱う場所は、他の場所と明確に区分すること
- 器具の洗浄及び消毒並びに手指の洗浄及び消毒に必要な設備をそれぞれ専用に設けること
- 生食用食肉が接触する設備及び器具を専用に備えること
食品衛生責任者
食肉販売業の営業所においては、営業所における食品衛生について責任を負う食品衛生責任者の配置が義務付けられています。
食品衛生責任者は、各自治体の食品衛生協会が開催する講習)を受講すれば誰でも取得することができる資格ですが、調理師等の有資格者をこれに当てることもできます。また、同敷地内であれば、飲食店の食品衛生責任者がこれを兼任することが可能です。
講習を受ける際の受講料は1万円程で、食品衛生学、衛生法規及び公衆衛生等の科目を座学で約6時間受講します。
手続きの流れ
食肉販売業の営業をはじめるために必要となる手続きは以下のとおりです。
① | 事前相談及び準備 | 工事着工前 |
② | 申請書類等の提出 | 開店の2週間前までに |
③ | 食品衛生監視員による施設調査 | 申請後数日 |
④ | 許可書の交付 | |
⑤ | 営業開始 |
事前相談及び準備
施設の工事前に、施設平面図(機器配置を含む)等を出店地を管轄する保健所に持参し、施設基準等の説明を受けます。
「営業施設の基準」と「公衆衛生上講ずべき措置の基準」が自治体の条例で定められているので必ず確認するようにしてください。
必要となる書類
営業予定地を管轄する保健所に対し、以下の書類を開店のおおむね10日前までに提出します。
- 食品営業許可申請書
- 営業施設の大要
- 施設の平面図及び付近案内図
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(原本)
- 営業許可申請手数料
- 発行後6カ月以内の登記簿謄本の原本(法人)
まとめ
食品に対する衛生管理については、食品衛生法をはじめとする関連法令が改正されるごとに厳格化しています。食肉を取り扱う営業を検討される際は、最低限、どのような形態でどんなものを販売するのかについてしっかり説明できるようにしておいてください。その上で必要な資金を試算し、調達方法などもしっかり計画してから事前協議にのぞみましょう。
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飲食店営業許可 新規申請 | 38,500円〜 |
食肉販売業新規許可申請 | 55,000円〜 |
飲食店営業許可 + 食肉販売業許可申請 | 77,000円 |
更新申請 | 27,500円 |
変更届等 | 22,000円~ |
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