食肉製品製造業許可について│本当は複雑な食肉の世界

生ハムの画像

食品衛生法に定められた食品取扱業の業種は幅広く、特に食中毒の原因となりやすい食肉に関しては、本稿で紹介する食肉製品製造業のほかにも、食肉販売業や食肉処理業といった業種も存在しています。

関連法令においては、各業種ごとに施設設備等の基準を設けて衛生管理の徹底化を図っていますが、業種の違いや手続きの必要性を理解しないまま無許可営業を行ってしまい、行政処分の対象となってしまう事例も数多く散見されます。

そこで本稿では、食肉製品を自家で製造し販売しようと検討されている皆さまに向けて、必要となる食肉製品製造業許可の基準や手続きについて、詳しく解説していきたいと思います。

食肉製品製造業とは

食肉製品製造業とは、ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するものを製造(加工)する営業をいいます。「その他これらに類するもの」については、ウインナーやチャーシュー、ビーフジャーキー又はローストチキン等が該当するほか、食肉を50%以上含むハンバーグやミートボール等も含まれます。

ただし、「食肉」には、魚介類、鯨肉及び乳製品等は含まれておらず、これらについてはそれぞれ別のカテゴリーが用意されています。

また、ここで言う「製造」とは「使用した原料とは本質的に異なる新たなものを作り出すこと」を意味し、食肉を味付けして加熱すること等が該当し、「加工」とは「原料の本質を保持しつつ新しい属性を付加すること」 を意味し、加熱処理の無い半製品の精製がこれに該当します。

したがって、工場でハムやベーコン等を分割又は細切する営業は「加工」として食肉製品製造業の範囲に含みますが、単に仕入れた食肉に味付けを施すことについては製造にも加工にも当たらないため、食肉製品製造業には該当しません。

食肉販売業について

食品衛生法においては、食肉製品製造業と混同しやすい業種として、他に食肉販売業と食肉処理業が存在しますが、このうち食肉販売業とは、シカやイノシシといった野生動物を含む「鳥獣」の肉を販売する営業をいいます。

食肉処理業について

食用に供する目的で、食鳥処理場で処理される食鳥(鶏、あひる、七面鳥)以外の鳥若しくは、と畜場で処理される獣畜(牛馬、豚、めん山羊)以外の獣畜をと殺し、もしくは解体し、又は解体された鳥獣の肉、内臓等を分割し、若しくは細切する営業をいいます。

具体的な事例

具体的にこれらの営業形態をまとめたものが下表です。実態と異なる営業を選択することがないよう、しっかりと確認するようにしてください。

具体的な事例必要な許可
店内における肉料理の提供飲食店営業許可
肉料理の宅配や店頭販売飲食店営業許可
生肉の店頭・通信販売
(味・衣付けした生肉含む)
食肉販売業
魚介類・鯨肉の店頭・通信販売魚介類販売業
食肉をいったん保管し注文配送する営業食肉販売業
食肉製品を製造(加工)する営業食肉製品製造業
工場で食肉製品を分割、細切する営業食肉製品製造業
食用に供する目的で処理場で処理される鳥以外の鳥獣をと殺し、もしくは解体し、又は解体された鳥獣の肉、内臓等を分割し、若しくは細切する営業食肉処理業

食肉製品製造業許可

食肉製品製造業を営もうとするときは、施設設備等を都道府県知事が定めた基準に適合させた上で製造場所の所在地を管轄する保健所に対して申請し、その許可を受ける必要があります。

特に注意すべき点は、配置すべき資格者が、飲食店等で必要とされる食品衛生責任者ではなく、食品衛生管理者であるという点にあります。食品衛生責任者のように、一日で修了する講習の受講によって取得することができる簡易な資格ではないため、資格要件等についてもよく確認するようにしてください。(後述)

ここでは代表的な許可基準を抜粋して掲載していますが、施設設備等について求められる基準は自治体ごとに異なるため、基準の詳細については、各自治体のホームページ等でしっかりと確認するようにしてください。

共通基準

食品衛生法上の営業許可を受けるためには、飲食店であれ食肉製品製造業であれ、営業用の施設設備を以下の基準すべてに適合させる必要があります。

  1. 営業の施設は衛生上支障のない場所に設置すること
  2. 営業の施設は住居その他営業の施設以外の施設と明確に区分すること
  3. 作業場は使用目的に応じて適当な広さを有し、かつ、十分な明るさを確保することができる照明の設備及び換気を十分に行うことができる設備を設けること
  4. 作業場の床は次に掲げる要件を備えること
    • 排水溝を有すること
    • 清掃が容易にできるよう平滑であり、かつ、適当な勾配のある構造であること
    • 水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料(厚板、モルタルその他水により腐食しにくいもの)で造られていること
    • 作業場の床面と内壁面との接合部分及び排水溝の底面の角は、適度の丸みをつけ、清掃が容易にできる構造であること
  5. 作業場の内壁は清掃が容易にできる構造とし、床面からの高さが1.5mまでの部分及び水その他の液体により特に汚染されやすい部分は、耐水性材料で造られていること
  6. 作業場の天井は隙間がなく、清掃が容易にできる構造であること
  7. 営業の施設は、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ構造であること
  8. 営業の施設及び機械、器具類は、製造量、販売量、来客数等に応じて十分な規模及び機能を有するものを設けること
  9. 器具の洗浄、消毒、水切及び乾燥の設備を設けること
  10. 洗浄の設備は、熱湯を十分に供給できるものであること
  11. 固定した設備又は移動が困難な設備は、洗浄が容易にできる場所に設けること
  12. 機械は食品又は添加物に直接接触する部分が不浸透性材料(ステンレス、石、コンクリートその他水が浸透せず、かつ、さびないもの)で造られ、かつ、洗浄及び消毒が容易にできる構造であること
  13. 器具及び容器包装を衛生的に保管するための設備を設けること
  14. 添加物を使用する場合は、専用の計量器を備えること
  15. 原材料、添加物、半製品又は製品を保管する設備は、それぞれ専用のものとし、及び温度、湿度、日光等に影響されない場所に設ける等衛生的に保管ができるものであること
  16. 冷蔵庫(摂氏10℃以下に冷却する能力を有するものに限る)、冷凍庫その他温度又は圧力を調節する必要のある設備には、温度計、圧力計その他必要な計器を見やすい位置に備えること
  17. 飲用に適する水を十分に供給できる衛生的な給水設備を専用に設けること
  18. 十分な容量を有し、不浸透性材料で造られ、清掃が容易にでき、及び汚液、汚臭等が漏れない構造である廃棄物容器を設けること
  19. 便所には、ねずみ、昆虫等の侵入を防ぐ設備を設けるとともに、その出入口及びし尿くみ取口は、衛生上支障のない場所にそれぞれ設けること
  20. 消毒薬を備えた流水受槽式手洗い設備を、適当な場所に設けること(ただし、魚介類販売業を除き、露店により営業を行う場合又は自動車により営業を行う場合にあってはこの限りでない)
  21. 従業員の数に応じて、更衣室その他更衣のための設備を設け、及び専用の外衣、帽子、マスク、履物等を備えること
  22. 露店により営業を行う場合又は自動車により営業(魚介類販売業を除く)を行う場合は、次に掲げる要件を備えること
    • 流水受槽式手洗い設備を有しないときは、消毒用アルコール、逆性石けん等を含ませた綿を十分に入れた容器を備えること
    • 直接排水ができない場合は、水その他の液体が浸透しにくい材質で、かつ、洗浄が容易にできる排水容器を備えること
  23. 露店により営業を行う場合は、当該営業に係る施設について、屋根を設け、及び覆いをする等により、調理し、又は加工するための設備にほこり、ちり等が入らない構造とすること
  24. 自動販売機は、屋内に設置すること。ただし、ひさし等により雨水を防止できる場合にあっては、この限りでない
  25. 自動販売機の設置場所の床面は、不浸透性材料で造られ、かつ、清掃が容易にできる構造であること

業種別基準

食肉製品製造業については、上記の共通基準に加え、施設設備等を以下すべての基準に適合させる必要があります。

  1. 生肉処理室、製造室、包装室及び検査室をそれぞれ専用に設けること
  2. ボイル、くん煙等の加熱を行う場所は、他の場所と明確に区分すること
  3. 生肉用又は製品用の冷蔵庫をそれぞれ専用に設けること
  4. 放冷の必要がある食品を取り扱う場合は、放冷のための施設又は設備を専用に設けること
  5. 製品の外装に着色する場合は、着色槽を専用に設けること
  6. 腸を処理する場所は、他の場所と明確に区分すること
  7. 包装室にステンレス又は合成樹脂で造られた包装台を専用に設けること(機械により自動的に包装する場合にあってはこの限りでない)
  8. 製品を薄切りにして包装する場合は、包装室を専用に設け、これに包装後殺菌を行う設備を設けること
  9. 検査室に、品質管理のための検査に必要な設備を設けること
  10. 汚物だめは、不浸透性材料で造られ、かつ、密閉できる覆いがあること
  11. 汚水の浄化装置を設けること

食品衛生管理者

食品衛生管理者は、食品を製造又は加工する業種に配置することを義務付けられている国家資格者であり、飲食店等を営業するときに配置する食品衛生責任者とは異なります。

食品衛生管理者になるためには、以下のいずれかの要件に該当する必要があります。これから資格を取得しようとする場合には、厚生労働省が毎年東京で実施する講習会に参加することになりますが、この講習会の期間は長く、費用もそれなりに高くなるため、取得までのハードルがそれなりに高い国家資格であるといえます。

  1. 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師
  2. 学校教育法に基づく大学、旧大学令に基づく大学又は旧専門学校令に基づく専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学の課程を修めて卒業した者
  3. 厚生労働大臣の登録を受けた食品衛生管理者の養成施設において所定の課程を修了した者
  4. 学校教育法に基づく高等学校若しくは中等教育学校若しくは旧中等学校令に基づく中等学校を卒業した者又は厚生労働省令の定めるところによりこれらの者と同等以上の学力があると認められる者で、食品衛生管理者を置かなければならない製造業又は加工業において食品又は添加物の製造又は加工の衛生管理の業務に3年以上従事し、かつ、厚生労働大臣の登録を受けた講習会の課程を修了した者(※)

(※)4.により食品衛生管理者となるための要件を満たした者については、従事した業種と同種の業種の施設においてのみ食品衛生管理者となることができます。

食品衛生責任者(参考)

一般的な飲食店等においては、各自治体の食品衛生協会が開催する講習を受講すれば誰でも取得することができる食品衛生責任者の配置が義務付けられています。講習の受講料は1万円程で、食品衛生学、衛生法規及び公衆衛生等の科目を座学で約6時間受講します。

手続きの流れ

食肉製品製造業の営業をはじめるために必要となる手続きは以下のとおりです。

事前相談及び準備工事着工前
申請書類等の提出開店の2週間前までに
食品衛生監視員による施設調査申請後数日
許可書の交付
営業開始

事前相談及び準備

施設の工事前に、施設平面図(機器配置を含む)等を出店地を管轄する保健所に持参し、施設基準等の説明を受けます。 

「営業施設の基準」と「公衆衛生上講ずべき措置の基準」が自治体の条例で定められているので必ず確認するようにしてください。 

必要となる書類

営業予定地を管轄する保健所に対し、以下の書類を開店のおおむね10日前までに提出します。 

  • 食品営業許可申請書
  • 営業施設の大要
  • 施設の平面図及び付近案内図
  • 食品衛生管理者の資格を証明するもの(原本)
  • 営業許可申請手数料
  • 発行後6カ月以内の登記簿謄本の原本(法人)

まとめ

食品に対する衛生管理については、食品衛生法をはじめとする関連法令が改正されるごとに厳格化しています。食肉を取り扱う営業を検討される際は、最低限、どのような形態でどんなものを販売するのかについてしっかり説明できるようにしておいてください。その上で必要な資金を試算し、調達方法などもしっかり計画してから事前協議にのぞみましょう。

弊所では、兵庫大阪全域にわたり、食肉製品製造業の営業許可申請の代行を承(うけたまわ)っております。保健所との事前協議から書類の作成と提出、及び保健所による検査の立会いに至るまで、しっかりまるっとサポートいたします。下記の報酬は、市場価格を反映したものですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。食肉製品製造業手続きでお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

飲食店営業許可
新規申請
38,500円
食肉製品製造業新規許可申請66,000円〜
飲食店営業許可

食肉製品製造業許可申請
88,000円
更新申請33,000円
変更届等22,000円~
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