ゾンビ免許とは?酒類の通信販売に関する落とし穴とレア免許

通信販売による酒類販売には「通信販売酒類小売業免許」の取得を要しますが、取扱可能な酒類に課された厳格な制限は一般に深く浸透していません。
実は通販で販売可能な酒類は「年間の課税移出数量が3,000kl未満の製造者が扱う酒類」または「輸入酒」に限られており、この規定上、大手国内メーカーが製造する清酒やビール等を通販で販売することは一律に禁止されています。
一方で、大手ECプラットフォーム上で大手メーカー製品が日常的に取引されている事実に違和感を覚える事例は少なくありません。当然ながらこれらは違法行為ではなく、現行制度に準拠した構造的裏付けが存在します。その核心を握るのが、1989年の酒税法改正以前に交付された旧酒類小売業免許、通称「ゾンビ免許」の存在です。
本稿では、新規取得が不可能なこの希少免許がEC業界で活用されるスキームと、その事業承継やM&Aを通じた獲得・運用における実務的要点を解説します。
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ECサイトに酒販免許は必要?
端的に解説すると、ECサイトとはインターネットを利用したモノやサービスの販売サイトのことを指します。自社型とモール型とに区分されていて、自社型は文字どおりそのまま、モール型についてはいわゆる「ショッピングモール」をイメージしていただければ理解しやすいように思います。
大型ショッピングモールでは、たばこやお酒、飲食店といった許可や免許を必要とする業種の店舗が立ち並んでいますが、これらは各店舗が個別に有効な許可等を取得しているのであって、なにもショッピングモール自体が許可等を取得しているわけではありません。
ECサイトもこれと同様に、あくまでもインターネット上に「販売する場所」を提供しているだけに過ぎず、したがって、楽○に代表される大手ECサイトが、そのサイト内で「酒販免許保有事業者」の販売するお酒を「紹介」することについては、何ら問題は生じていません。
ゾンビ免許とは?
現行の酒類小売免許は、「一般酒類小売業免許」「通信販売酒類小売業免許」及び「特殊酒類小売業免許」の3つに区分されており、店頭販売を行うためには「一般免許」、通販を行うためには「通販免許」をそれぞれ取得する必要があります。
ところが、平成元年6月より前に取得された酒販免許については、これらの区分が存在しておらず、ひとつの免許でもって、すべての酒類について、すべての販売方法をカバーすることができる「オールマイティ」な免許形態となっています。
したがって、このような古い酒販免許を「ゾンビ免許」と通称し、これを保有している者は、店頭であれ通信販売であれ、合法的にすべての酒類を販売することが認められています。類似例を挙げれば、平成19年6月より前に普通自動車免許を取得している者が、4tトラックを運転することができることと同様の制度となります。
すなわち、この「ゾンビ免許」を取得していた法人を買収することによって、合法的に既得権益を獲得した企業が、前述の大手ECサイトです。
★行政書士実務メモ
ゾンビ免許は現在では新規取得が一切不可能な、いわば「絶滅危惧種」の希少免許です。市場へ流通すること自体が極めて稀であり、仮に売買対象となった場合でも免許そのものに高額なプレミアム価格が上乗せされるため、新規参入事業者にとって現実的な選択肢とは言えません。
なお、当事務所では「ゾンビ免許保有者の紹介」および「買い手の探索」に関する仲介依頼は一切お受けしておりません。あらかじめご承知おきください。
ゾンビ免許の問題点
そもそも通販による酒類販売の限定規制は、酒税という国の重要施策に関わる酒販業者に対して公平な競争力を与えるための制度であり、実質的に「無制限」の免許を、一部の資本力のある大手ECサイトのみに付与することは、本来法律が予定していた酒販制度の趣旨を、大きく逸脱してしまうことになりかねません。
酒類を店頭で購入する場合、自宅に持ち帰るには商品が少々重く、また、対面販売がはばかられる現在の社会情勢にあって、インターネットによる通信販売は、物販には欠かせない魅力あるコンテンツとなっています。
このため、弊所にお問い合わせいただいたお客様に「通信販売をすることができる酒類には制限がある」旨をお伝えすると、皆さまこぞって肩を落とされてしまうというのが実際のところです。
インターネット上の商取引が盛んになる一方で、現行制度のいわば「抜け道」を通ることができた一部の大企業だけが、制約を受けることなく商品を販売できる現状は、公正な競争環境とは言い難く、「自由化」が形骸化しているように感じるのも、私だけではないはずです。
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現行制度の妥協点
それでは現行制度上、古い酒販免許を何らかの形で取得しなければ大手メーカーのお酒をインターネット上で販売することができないのかと言うと、実はそうでもありません。
確かに全国規模で大手メーカーのお酒を通販する場合、新たに通信販売酒類小売業免許を取得したとしても、販売することができるお酒には制限が設けられることになります。
ところがこれには例外があり、「一般酒類小売業免許」の取得者が、免許を受けた店舗の所在地と同一の都道府県内の消費者を対象にお酒を販売する場合は、受注と販売の手段がインターネットであったとしても、すべての酒類を販売することができるよう取り扱われています。
既に説明したとおり、酒類の購入者が商品を自宅に持ち帰ることは少々荷が重く、配達サービスをまったく認めないとなると、一般消費者の利便性を著しく欠いてしまうことになります。
そこであくまでも近場(同一の都道府県内)であるならば、「一般酒類小売業免許」の範囲でこれを認めようというのが制度の趣旨になります。
ただし、注意しなければならないのは、この例外的取扱いが認められているのが、「通信販売酒類小売業免許」ではなく、「一般酒類小売業免許」を取得している者についてであるという点です。免許の名称だけを見て「通販=通信販売酒類小売業免許」と単純に思い込んでしまうと、事業計画そのものを誤ってしまいかねません。
これから酒販免許を取得しようとされる方は、下表を参考にしながら、熟慮して事業形態を選択するようにしてください。
| 免許区分 | 対面販売 | 通信販売(一の都道府県内) | 通信販売(二以上の都道府県) |
|---|---|---|---|
| 一般酒類小売業免許 | すべての酒類の販売が可能 | すべての酒類の販売が可能 | ☓ |
| 通信販売酒類小売業免許 | ☓ | 「課税移出数量3,000kl未満の製造者の酒類」「輸入酒」のみ | 「課税移出数量3,000kl未満の製造者の酒類」「輸入酒」のみ |
| 両方の免許を取得 | すべての酒類の販売が可能 | すべての酒類の販売が可能 | 「課税移出数量3,000kl未満の製造者の酒類」「輸入酒」のみ |
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まとめ
酒販業界は、酒税という国税が絡むことに加え、薄利多売主義的な側面があり、決して手軽に参入できる業種ではありません。
実際に免許を申請する際には、行政書士が取り扱う書類中でも、少々特殊な部類に該当する綿密な事業計画を提出する必要があり、これが高いハードルとなることは間違いありません。
制度に合わせて計画を策定することも必要なことではありますが、ただ漠然と「お酒を売りたい」と考えるのではなく、「どんなお酒を」「どのような方法で」「どれくらい売りたいのか」をしっかりと意識することが肝心です。
例えば「探し当てた『幻の地酒』を世に広めたい」のであれば、制限付きの「通信販売酒類小売業免許」はドンピシャの事業形態であると言えますし、「自慢の漬物をお酒のあてとして近隣に売りたい」のであれば、「一般酒類小売業免許」の範囲内でお酒を販売することも選択肢になるでしょう。
いずれにせよ、しっかりとした計画を策定することが重要です。本稿が酒類販売業免許の取得を目指す方の道しるべとなったのであればお酒好き行政書士の冥利に尽きます。
弊所は関西圏を中心に、全国各地で年間300件以上の申請に携わっています。酒類関連の手続きは、より難易度の高い製造免許を含めてコンスタントにご依頼をいただいており、対応エリアも着実に広がっています。さらに、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」をモットーとし、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。酒類に係る免許の取得でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
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