第三種旅行業登録ガイド│登録(許可)の基準と申請方法について分かりやすく解説
旅行業法では、旅行業を第一種から第三種及び地域限定旅行業の4種に区分し、種別ごとに携わることのできる旅行業務の範囲を明確化しています。いずれの種別も登録を受けるための基準が厳しく設定されており、新規参入を目指す事業者にとって高いハードルとなっています。
このうち第三種旅行業は、第一種・第二種と比較すると基準が緩く、これから旅行ビジネスへの参入を目指す事業者にとって、足がかり的な営業形態となっています。
そこで本稿では、これから第三種旅行業者として旅行ビジネスに参入しようとお考えの皆さまに向けて、開業にあたり必要となる登録制度の内容や詳細な基準について、詳しく解説していきたいと思います。
目 次
旅行業の内容
旅行業とは、報酬を得て、旅行に関する行為を行う事業のことをいいます。要するに、何らかの対価を目的として、旅行をビジネスとして手掛けるものが旅行業であり、この規定に従うのであれば、まったくの無報酬で行うボランティアのサービスや、親族から些少の対価を得て旅行計画を立てる事業性のない行為は旅行業には該当しないことになります。
★旅行業に該当しない事例
- 添乗員の派遣業務
- 運送、宿泊の伴わないサービスの提供
- 回数券販売所や航空運送代理店
- 同一職場内において有志が募集をするケース
- 学校が児童・生徒を対象に募集するケース
- 日常的な接触のある団体内部における構成員による参加者の募集
- 現地集合・解散する日帰りツアーを募集するケース
- テーマパークやイベントの入場券のみの販売といった運送等関連サービスのみの手配を行うケース
- 運送事業者や宿泊事業者自らが行う運送等サービスの提供
- 一般貸切旅客自動車運送事業者が自社のバスを使って日帰りバスツアーの募集を行うケース
- 旅館業許可を取得している宿泊施設が自ら運営する温泉やレジャーを併せたパックツアーの募集
旅行業務には、企画旅行、手配旅行、付随的旅行業務及び旅行相談業務があり、これらの業務を報酬を得て反復継続して行うものが旅行業に該当することになります。
企画旅行 | 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送及び宿泊のサービス内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、計画に定めるサービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる契約を、自己の利益を図るためにサービス提供者との間で締結する行為 | |
募集型企画旅行 | 旅行業者があらかじめ旅行計画を企画し提供するように働きかけるタイプの旅行 | |
受注型企画旅行 | 旅行業者が旅行者からの依頼によって旅行計画を作成し、提供するように働きかけるオーダーメイド型の旅行 | |
手配旅行 | 運送及び宿泊のサービスの提供について、旅行業者が代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをするサービス | |
付随的旅行業務 | 企画旅行に付随して、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる関連サービスの提供に係る契約を、自己の利益を図る目的でサービスを提供する者との間で締結する行為 | |
旅行相談業務 | 旅行に関する相談に応ずる行為 |
★報酬について
報酬には単に旅行者から受け取る旅行代金のみならず、募集経費、割戻金、販売手数料、送客手数料、及び旅行業務取扱料金など旅行業務を行うことによる経済的収入のすべてが該当します。
旅行業の登録種別
冒頭で説明したとおり、旅行業は取り扱う業務範囲によって第一種から第三種の旅行業と地域限定旅行業の4種に区分されています。ひとつの法人(または一個人)で複数の種別で登録を行うことは認められておらず、必ず一つの種別のみを選択して登録することになります。
また、4種の旅行業には該当しない関連業種として、旅行業者代理業と旅行サービス手配業という業種も設けられています。
★旅行業
登録種別 | 申請先 | 業務範囲 |
---|---|---|
第一種旅行業 | 官公庁長官 | 海外・国内の募集型企画旅行・受注型企画旅行・手配旅行 他の旅行業者が実施する募集型企画旅行契約の代理締結 |
第二種旅行業 | 主たる営業所を管轄する都道府県知事 | 国内の募集型企画旅行 海外・国内の受注型企画旅行・手配旅行 他の旅行業者が実施する募集型企画旅行契約の代理締結 |
第三種旅行業 | 主たる営業所を管轄する都道府県知事 | 営業所の所在地とそれに隣接する市区町村内の募集型企画旅行 海外・国内の受注型企画旅行・手配旅行 他の旅行業者が実施する募集型企画旅行契約の代理締結 |
地域限定旅行業 | 主たる営業所を管轄する都道府県知事 | 営業所の所在地とそれに隣接する市区町村内の募集型企画旅行・受注型企画旅行 ・手配旅行 他の旅行業者が実施する募集型企画旅行契約の代理締結 |
★旅行に関する業種
上の表で上に表記している種別ほど業務範囲が広く、自由度が高くなる反面、必要となる資金要件に大きな違いが生ずるなど、登録を取得するためのハードルも高くなります。
第三種旅行業の業務範囲
第三種旅行業では、原則として自社で募集型企画旅行を行うことは認められていません。つまり、基本的にはパッケージツアーやパック旅行など、自社が企画するオリジナルの旅行商品は販売することができないことになります。
ただし、募集型企画旅行ごとに、募集型企画旅行の催行地(出発地、目的地、宿泊地、帰着地)が、すべて事業者の営業所が存する市町村(特別区を含む)及びこれに隣接する市町村等の区域内に設定されているときは、例外としてその区域内に限定して募集型企画旅行を行うことが認められています。
たとえば尼崎市に営業所を構える第三種旅行業の登録を受けた旅行会社では、隣接する大阪市への日帰りツアー等を企画し、パッケージツアーとして販売することができます。
★第三種旅行業の業務範囲
募集型企画旅行 | 受注型企画旅行 | 手配旅行 | 他社募集型企画旅行代売 | |
---|---|---|---|---|
海外 | × | ○ | ○ | ○ |
国内 | △ | ○ | ○ | ○ |
第三種旅行業登録
第三種旅行業を営もうとする者は、以下の基準をすべて満たした上で主たる営業所を管轄する都道府県知事に対して申請を行い、観光庁長官の行う登録を受ける必要があります。
- 旅行業務取扱管理者を選任すること
- 財産的基礎(基準資産額)をみたすこと
- 申請者が登録拒否条項に該当しないこと
旅行業務取扱管理者
旅行業者は、営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選任し、常勤専任として配置する必要があります。さらに従業員10人以上の営業所においては、その人数に応じて複数の旅行業務取扱管理者を選任します。
必ずしも申請者が旅行業務取扱管理者である必要はありませんが、旅行業務取扱管理者がいなくなるとすべての事業について運営が不可能となるため、申請者自身が旅行業務取扱管理者に就任することがベストの選択肢でしょう。
なお、選任した旅行業務取扱管理者が欠格事由のいずれかに該当し、又は欠けた場合には、その営業所において新たに管理者を選任するまでの間は旅行業務に関する契約を締結することはできません。
★旅行業務取扱管理者の職務
- 旅行に関する計画の作成に関する事項
- 料金の掲示に関する事項
- 旅行業約款の掲示及び備置きに関する事項
- 取引条件の説明に関する事項
- 書面の交付に関する事項
- 広告に関する事項
- 企画旅行の円滑な実施のための措置に関する事項
- 旅行に関する苦情の処理に関する事項
- 契約締結の年月日、契約の相手方その他の旅行者又は旅行に関するサービスを提供する者と締結した契約の内容に係る重要な事項についての明確な記録又は関係書類の保管に関する事項
- 取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するため必要な事項として観光庁長官が定める事項
★旅行業務取扱管理者の区分
旅行業務取扱管理者となるためには、「旅行業務取扱管理者試験」という国家資格に合格する必要があります。「総合旅行業務取扱管理者」と「国内旅行業務取扱管理者」の資格があり、保有する資格によって取り扱うことのできる業務範囲が異なります。
取扱可能な範囲 | 総合旅行業務取扱管理者 | 国内旅行業務取扱管理者 |
---|---|---|
海外・国内 | ◯ | ✕ |
国内 | ◯ | ◯ |
★旅行業務取扱管理者の欠格条項
以下のいずれかに該当する者を旅行業務取扱管理者として選任することはできません。
- 登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者
- 禁錮以上の刑又は旅行業法違反による罰金刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなったから5年を経過していない者
- 暴力団員等又は暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
- 未成年者で、その法定代理人が上記4つのいずれかに該当するもの又はその法定代理人が法人であって、その役員のうちに上記4つの項目、又は下記の項目のいずれかに該当するもの
- 成年後見人若しくは被保佐人又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
財産的基礎
旅行業者は、一定の範囲で旅行者の旅行中の事故に対する責任を負います。また、旅行業者が不意に倒産してしまうと旅行者の利益は損なわれてしまうことになります。このような事態に対応するため、旅行業法では旅行業者に対して一定の財産的基礎を求めています。
基準資産額 | 300万円 |
営業保証金(最低額) | 300万円 |
弁済業務保証金分担金を供託する場合 | 60万円 |
基準資産額
財産的基礎の基準となる資産額のことを「基準資産額」といいます。基準資産額は直近の決算書から導き出しますが、具体的には貸借対照表にある資産の総額から、負債性のある資産(繰延資産、不良債権、営業権)、負債の総額、営業保証金もしくは弁済業務保証金分担金を除して(引き算して)算出します。
基準資産額=
資産の総額-(負債性のある資産+負債の総額+営業保証金もしくは弁済業務保証金分担金)
営業保証金
供託とは、供託所(法務局等)に金銭等を預けさせ、旅行業者が自由に引き出せない財産を「営業保証金」として確保するための制度です。第三種旅行業では、営業保証金として300万円以上の金額を供託する必要があります。
弁済業務保証金分担金
旅行業協会(日本旅行業協会又は全国旅行業協会)に加入している場合は、営業保証金の供託に代えて、その5分の1の金額(60万円)を弁済業務保証金分担金として納付することになります。旅行業者の金銭的負担を軽減するための制度ですが、別途入会金と年会費が必要となる点についてはご注意ください。
登録拒否条項
申請者が以下のいずれかの条項に該当する場合は登録を受けることができません。
- 登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者
- 禁錮以上の刑又は旅行業法違反による罰金刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなったから5年を経過していない者
- 暴力団員等又は暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
- 未成年者で、その法定代理人が上記4つのいずれかに該当するもの又はその法定代理人が法人であって、その役員のうちに上記4つの項目、又は下記の項目のいずれかに該当するもの
- 成年後見人若しくは被保佐人又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 法人であって、その役員のうちに1〜4、6のいずれかに該当する者があるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
- 営業所ごとに旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者
- 旅行業を営もうとするものであって、当該事業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しないもの
- 旅行業者代理業を営もうとする者であって、その代理する旅行業を営む者が2以上であるもの
登録申請に必要となる書類
- 登録申請書
- 宣誓書(事業者・役員)
- 事業者の住民票
- 財産に関する調書
- 残高証明、不動産鑑定書等
- 旅行業務に係る事業計画
- 旅行業務に係る組織概要
- 旅行業務取扱管理者選任の一覧表
- 事故処理体制の説明書
- 標準旅行業約款
- 登記簿謄本(法人)
- 法人税確定申告書(法人)
また、法人で申請する場合、定款及び登記簿謄本の目的欄には、「旅行業」又は「旅行業法に基づく旅行業」の記載が必要になります。
申請書類等(大阪府)
- 旅行業(第2種・第3種・地域限定)新規登録申請書類一覧表・様式集(Word/222KB)
- 標準旅行業約款(R2.4.1改正)(PDF/328KB)
- 旅行業新規登録申請書類(記入例) (Word/214KB)
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第3種旅行業登録 | 165,000円~ |
第1種旅行業登録 | 330,000円~ |
第2種旅行業登録 | 198,000円~ |
地域限定旅行業登録 | 99,000円~ |
旅行業者代理業登録 | 88,000円~ |
旅行サービス手配業登録 | 88,000円~ |
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