社交飲食店営業者の遵守事項について

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)では、店内において接待を提供する飲食店を「社交飲食店」と定義し、これを営業しようとするときは、風俗営業許可を取得することを要求しています。
また、無事に風俗営業許可を取得した後も、風俗営業者には遵守すべき義務があり、これに違反した状態で運営を継続することはできません。
目 次
名義貸しの禁止
風俗営業許可は「人」と「場所」に属する許可であるため、許可を受けた者は、自己の名義をもって、他人に風俗営業を営ませることはできません。
名義貸しは実質的な無許可営業に該当するため、違反者に対しては、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又はこれの併科(法人である場合は3億円の罰金)という風営法が定める罰則の中で一番重い刑罰が適用されます。
構造及び設備の維持
風俗営業許可を受けるときは、営業所の構造及び設備を以下の基準に適合させる必要がありますが、これは許可取得後であっても変わらず、基準に適合するように維持し続ける必要があります。
- 客室の床面積は、客室が一室のみである場合を除き、一室の床面積を16.5㎡(和風のものは9.5㎡)以上とすること
- 客室の内部が営業所の外部から容易に見通すことができないものであること
- 客室の内部に見通しを妨げる設備(おおむね高さ1m以上の設備)を設けないこと
- 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
- 営業所外に直接通ずる客室の出入口を除き、客室の出入口に施錠の設備を設けないこと
- 営業所内の照度が5ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
- 騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
特にスライダックス(調光器)については、許可申請時の実査で指摘されて一旦は取り外したものの、許可後に再改修して再び取り付けている店を耳目にすることがあります。
たとえ許可取得後であっても、基準に適合しない設備を設置することは違法行為となり、指導や処分の対象となる点については十分にご注意ください。
営業時間の制限
社交飲食店において、深夜(午前0時から午前6時までの時間)における営業は、原則として認められていません。
ただし、都道府県の条例に特別の定めがある場合や、午前0時以後において風俗営業を営むことが許容される特別な事情のある地域として定められた地域は、例外的に時間を延長して営業することが認められています。(もっとも延長が認められるにせよ、大体の地域では午前1時までを延長の上限としています。)
なお、営業時間の延長が認められる場合であっても、客が大声若しくは騒音を発し、又は酒に酔って粗野若しくは乱暴な言動をすることその他営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼすことがないようにするために、以下の措置を講ずる必要があるほか、その措置が適切に講じられるようにするため、措置について、従業員に対する教育を行い、又は営業所の管理者に教育を行わせる必要があります。な
- 営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼしてはならない旨を表示した書面を営業所の見やすい場所に掲示し、又は書面を客に交付すること
- 営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼしてはならない旨を客に対して口頭で説明し、又は音声により知らせること
- 泥酔した客に対して酒類を提供しないこと
- 営業所内及び営業所の周辺を定期的に巡視し、営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼす行為を行い、又は行うおそれのある客の有無を確認すること
- 営業所の周辺において他人に迷惑を及ぼす行為を行い、又は行うおそれのある客がいる場合には、その客に対し、その行為を取りやめ、又はこれを行わないよう求めること
苦情の処理に関する帳簿
風俗営業者は、営業時間の延長が認められる場合であって実際に午前0時を超えて営業を行うときは、営業所ごとに、苦情の処理に関する帳簿を備え付け、以下の事項を記載するとともに苦情の適切な処理に努め、最終の記載をした日から起算して3年間保存する必要があります。
- 苦情を申し出た者の氏名及び連絡先(氏名又は連絡先が明らかでない場合は、その旨)並びに苦情の内容
- 原因究明の結果
- 苦情に対する弁明の内容
- 改善措置
- 苦情処理を担当した者
照度の規制
社交飲食店営業者は、営業所内の照度を5ルクス以下にして営業を営むことはできません。
なお、営業所内の照度は、下表に該当する部分における水平面について計測します。
客席に食卓その他の飲食物を置く設備がある営業所 | 設備の上面及び上面の高さにおける客の通常利用する部分 |
客席に食卓その他の飲食物を置く設備がない営業所であって、椅子がある客席 | 椅子の座面及び当該座面の高さにおける客の通常利用する部分 |
客席に食卓その他の飲食物を置く設備がない営業所であって、椅子がない客席 | 客の通常利用する場所における床面(畳又はこれに準ずるものが敷かれている場合にあっては、その表面) |
騒音及び振動の規制
社交飲食店営業者は、営業所周辺において、都道府県条例で定める数値以上の騒音又は振動(人声その他その営業活動に伴う騒音又は振動に限る)が生じないように、その営業を営む必要があります。
広告及び宣伝の規制
社交飲食店営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をすることができません。
なお、令和7年6月28日に風営法が改正施行されたことに伴い、警察庁は接待飲食営業における広告及び宣伝の規制等に係る運用方針を通達の中で明示しています。
通達の中では、競争意識等を過度に煽る不適切な広告について、客に自身が好意の感情を抱く接客従業者の営業成績を向上させるために高額の遊興又は飲食をする意欲をそそらせ、接客従業者に自身の営業成績を向上させるためには違法行為をもいとわない意識を醸成させるような状態が引き起こされるおそれがあることから、規制の対象となることが改めて明示されています。
料金の表示
社交飲食店営業者は、その遊技料金を、以下のいずれかの方法により営業所内に表示する必要があります。
- 壁、ドア、ついたてその他これらに類するものに料金表その他料金を表示した書面その他の物(料金表等)を客に見やすいように掲げること
- 客席又は遊技設備に料金表等を客に見やすいように備えること
- その他、注文前に料金表等を客に見やすいように示すこと
なお、社交飲食店について表示すべき料金とは、以下のすべてが該当します。
- 遊興料金、飲食料金その他名義のいかんを問わず、その営業所の施設を利用して客が接待を受けて遊興又は飲食をする行為について、その対価又は負担として客が支払うべき料金
- サービス料金その他名義のいかんを問わず、客が当該営業所の施設を利用する行為について、その対価又は負担として客が支払うべき料金で上記のもの以外のものがある場合にあっては、その料金
年少者の立入禁止の表示

麻雀店営業者は、18歳未満の者がその営業所に立ち入ってはならない旨を営業所の入口に表示する必要があります。
接客従業者に対する拘束的行為の規制
社交飲食店営業者は、その営業における接客従業者に関し、以下の行為を行うことができません。
- 営業所で客に接する業務に従事する者(以下、接客従業者)に対し、接客従業者でなくなった場合には直ちに残存する債務を完済することを条件として、その支払能力に照らし不相当に高額の債務(利息制限法その他の法令の規定によりその全部又は一部が無効とされるものを含む)を負担させること
- その支払能力に照らし不相当に高額の債務を負担させた接客従業者の旅券や運転免許証等を保管し、又は第三者に保管させること
また、接客業務受託営業を営む者が接客業務受託営業に関する規定に違反する行為又は売春防止法第9条(前貸等)、第10条(売春をさせる契約)若しくは第12条(売春をさせる業)の罪に当たる違法な行為をしている疑いがあると認められるときは、接客業務受託営業を営む者の使用人その他の従業者で違反行為の相手方となっているものが営業所で客に接する業務に従事することを防止するため必要な措置をとる義務を負います。
客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制
社交飲食店営業者は、その営業に関し、以下の行為を行うことができません。
- 料金について、事実に相違する説明をし、又は客を誤認させるような説明をすること
- 客が、接客従業者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、接客従業者も客に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、以下の行為により客を困惑させ、それによって遊興又は飲食をさせること(色恋営業)
- 客が遊興又は飲食をしなければ当該接客従業者との関係が破綻することになる旨を告げること
- 接客従業者がその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益を回避するためには、客が遊興又は飲食をすることが必要不可欠である旨を告げること
- 客が注文その他の遊興又は飲食の提供を受ける旨の意思表示をする前に遊興又は飲食の全部又は一部を提供することにより、客を困惑させ、それによって遊興をさせ、若しくはしたものとさせ、又は飲食をさせること
禁止行為等
社交飲食店営業者は、以下の行為を行うことが禁止されています。禁止行為については違反者に対する罰則が前述した「遵守行為」の違反者に対するものよりも厳しいものが設定されています。
- 営業に関し客引きをすること
- 営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと
- 営業所で18歳未満の者に客の接待をさせること
- 営業所で午後10時から翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者を客に接する業務に従事させること
- 18歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること
- 営業所で20歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること
- 客に注文等をさせ、又はその営業に係る料金の支払その他の財産上の給付若しくは財産の預託若しくはこれらに充てるために行われた金銭の借入れ(これと同様の経済的性質を有するものを含む)に係る債務の弁済(以下、料金の支払等)をさせる目的で、客を威迫して困惑させること
- 客に対し、威迫し、又は誘惑して、料金の支払等のために客が以下の行為により金銭その他の財産を得ることを要求すること
- 売春防止法その他の法令に違反する行為をすること
- 対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交類似行為等(※)をすること
- ソープランドやファッションヘルスにおいて異性の客に接触する役務を提供する業務に従事すること
- 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律第2条第3項に規定する性行為映像制作物への出演をすること
- 外国において売春をすること
(※)性交類似行為等とは、性交類似行為をし、又は他人の性的好奇心を満たす目的で、当該他人の性器、肛こう門又は乳首を触り、若しくは当該他人に自己の性器等を触らせることをいいます。
営業所の管理者
風俗営業者は、その営業所ごとに、営業所における業務の実施を統括管理する者のうちから、管理者1人を選任する必要があります。また、管理者として選任した者が退職等の理由により欠けたときは、その日から14日以内に新たな管理者を選任する必要があります。
なお、風俗営業者は、公安委員会から管理者について講習を行う旨の通知を受けたときは、管理者に講習を受けさせる必要があります。
風俗営業許可申請サポート
風俗営業は法令や条例の規制をダイレクトに被る営業形態です。規制は各市区町村条例に及んでいることも多いため、市区町村によっては都道府県条例よりもさらに厳しい条例(いわゆる上乗せ条例)が施行されている地域も存在します。
このように想定外の落とし穴にはまってしまうこともあるため、風俗営業の見切り発車は非常にリスクの大きい行為です。知人の風俗営業者が色々と入れ知恵してくれたとしても、それがその時期その地域その営業形態にすべて合致する正しい情報とは限りません。いずれにせよ風俗営業をはじめようとする際は、所轄の警察署や風営法に精通した行政書士に相談することを強くお薦めします。
弊所では、全国各地において、風俗営業許可申請の代行を承っています。事前調査、書類作成、関係各所とのやり取り及び書類提出に至るまで、まるっとフルサポートさせていただいています。また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。風俗営業許可を取得する際は、どうぞ弊所まで安心してご相談ください。
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