運送業(一般貨物自動車運送事業)の営業所及び休憩仮眠室に関する許可基準について
運送業(一般貨物自動車運送事業)をはじめるためには、国土交通大臣に対して申請し、その許可を受ける必要がありますが、この手続きは非常に複雑かつ煩(わずら)わしく、手続きについて不慣れであれば、戸惑うことは間違いありません。
許可を受けるためには、多くの基準(許可要件)をすべて満たすことが求められるなど、とにかく開業までのハードルが高いことも運送業の特長ですが、このうち営業所及び休憩仮眠室に関する基準も、運送業の新規参入を阻む障壁のひとつとなっています。
そこで本稿では、これから運送業をはじめようと検討されている皆さまに向けて、許可基準のうち、営業所及び休憩仮眠室に関するものを抜粋し、要求される内容や重要なポイントについて、できる限り詳しく解説していきたいと思います。
運送業とは
運送業とは、他人から依頼を受け、運賃をもらって車両で貨物を運ぶ事業を指します。俗に「緑ナンバー」と言われることもありますが、貨物自動車運送事業法では、運送業を貨物自動車運送事業と呼んでおり、事業形態に応じて、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業及び貨物軽自動車運送事業の3業種に区分して規制を行っています。
このうち特定貨物自動車運送事業とは、事業用自動車を用いて特定の1社のみの貨物を有償で運送する事業を指し、貨物軽自動車運送事業とは、軽自動車や排気量125㏄以上の自動二輪車を用いて有償で貨物を運送する事業を指します。
一般的に「運送業」と表記するときは、これら以外の貨物自動車運送事業である一般貨物自動車運送事業のことを指すので、ここでも一般貨物自動車運送事業に関する規定を下敷きに解説していこうと思います。
許可の基準
一般貨物自動車運送事業の許可を受けるために適合させるべき基準は多岐にわたりますが、ざっくりと分けて、以下5つの基準をすべてクリアすることが求められます。このうち本稿では、営業所及び休憩仮眠室基準についてのみ解説していますので、他の基準については、該当ページから確認するようにしてください。
営業所基準
貨物自動車運送事業許可を取得するためには、以下の基準にすべて適合する営業所を設置する必要があります。
- 法令に適合していること
- 使用権原があること
- 適切な規模(広さ)があること
- 駐車場(車庫)と離れすぎていないこと
たとえば、都市計画法上の「市街化調整区域」や農地法上の「農地」に営業所を設置することはできず、建築基準法違反となる建物や消防法令に適合しない建物を使用することもできません。
用途地域
用途地域とは、住居、商業、工業など市街地における用途の混在を防ぐことを目的として、都市計画法に基づき、各自治体が設定する地域区分のことです。
区分された用途地域では、その用途地域ごとに、設置することができる建築物が定められていますが、以下の用途地域は、住宅街を想定した地域であることから、貨物自動車運送事業の営業所を新たに設置することはできません。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域(床面積1,500㎡を超えるもの、又は1,500㎡以下で3階以上の建築物)
- 第一種住居地域(床面積3,000㎡を超えるもの)
農地
農地は、日本の第一次産業である農業の基盤であることから、国から特別な保護を受けています。このため、むやみやたらに農地を潰すことは認められておらず、地目が農地となっている土地については、原則として貨物自動車運送事業の営業所を設置することはできません。
どうしても農地上の建物を営業所として使用したい場合には、農地転用手続きにより自治体の長からの許可を受けるか、もしくは農業委員会から非農地証明の交付を受ける必要があります。
市街化調整区域
市街化調整区域とは、その名が示すとおり、市街化が進むことを政策として調整(制限)している地域です。このような建前があることから、原則として、市街化調整区域では、貨物自動車運送事業の営業所を設置することはできません。
ただし、一概に「絶対的に不可能」というわけではなく、例外的に市街化調整区域内に営業所を設置することが認められることもあります。とは言え、極めてハードルが高く、開発許可等を併せて取得する必要のあるケースも多いことから、地価が安いからといって、市街化調整区域に安易に手を出すことはあまりお薦めできません。
建築基準法と消防法令
使用する建物についても、建築基準法や消防法に適合させた合法な建物である必要があります。そもそも建物とは、居住用、店舗用などの目的で利用される土地に定着した建造物であって、屋根や周壁を有するものをいうことから、地上に置いただけのコンテナはこれに含まれません。
また、違法建築は、使用することにのみリスクがあるわけではなく、存在すること自体がリスクであるものと考えられることから、使用以前に、行政庁から建物を撤去するよう指導を受けることもありますのでご注意ください。
営業所の使用権限
営業所は、申請者がその物件(土地建物)を使用することについて正当な権限があるものでなければなりません。必ずしも自己所有物件である必要はなく、賃貸物件であっても問題ありませんが、少なくとも1年以上の契約期間が設定されているか、もしくは自動更新の規定を設定していることが必要とされています。
また、原則として、建物の使用目的が「事務所」である必要がありますが、「住居」であったとしても、別途所有者からの使用承諾書を添付すれば特に問題ありません。
許可申請時には、営業所について正当な使用権限を有することを証明する書類を添付するように求められますが、これには以下のような書類が該当します。
自己所有物件 | 土地建物の不動産登記事項証明書 |
賃貸物件 | 賃貸借契約書のコピー |
転貸物件 | ①所有者と賃借人の賃貸借契約書のコピー ②転貸人(元の賃借人)と転借人(最終の借主)の転貸借契約書のコピー ③所有者からの転貸借承諾書 |
営業所の規模
営業所は適切な規模(広さ)が必要とされていますが、これについては、数値で明確化されているわけではありません。従業員(運転者や運行管理者等の人員)が支障なく使用できるスペースを確保できればよく、個人宅の1室や、ワンルームマンションでも構いません。
なお、事務所、休憩室及び仮眠室は、原則として、車庫から10km以内(地域差あり)の圏内に設置する必要があります。
休憩室及び仮眠室
休憩室は必ず設置すべき施設になりますが、仮眠室については、「運転者が帰宅すると8時間以上の休息時間が確保することができないような運行があるとき」に限り、必ず設置する必要があります。
仮眠室については、1人当たり2.5㎡以上の広さを確保する必要がありますが、所属する運転者が一斉に仮眠するということは考えられないため、全員分のスペースまでは必要とされていません。
原則として、休憩室及び仮眠室は営業所又は車庫に併設する必要がありますが、車庫から10km以内(地域差あり)の圏内であれば、別の場所に設置することも可能です。
営業所内に休憩室や仮眠室を設ける場合は、営業所と休憩室・仮眠室とが明確に区分できるよう仕切りを設けるなどの工夫が必要となります。
運送業許可取得サポート
お伝えしているとおり、運送業許可申請は複雑かつ煩わしい手続きとなっています。ここでは触れていませんが、物件探しの段階から必要期間を見積もると、下手をすれば1年2年の期間を浪費することも珍しくありません。効率よく計画を実施するためには、専門家のサポートを利用しながら工程を分担して進めることをお薦めしています。
弊所では、関西圏の全域にわたり、運送業許可取得のサポートを承(うけたまわ)っています。関与させていただく期間が長いことから、報酬額は後記のとおりやや高めの設定ですが、このサポートには以下のサービスをすべて含みます。
- 許可基準の調査
- 必要書類の作成及び提出
- 行政機関との連絡調整
- 法令試験対策
- 期間中の相談(無制限)
- 許可取得後のサポート
見積もりサイト等で恐ろしく低料金の設定を見かけたことがありますが、これはあまりにも実態を知らない=経験がない若しくはサポートが極めて限定的であるように思われるため、熟慮するようにしてください。
また、長丁場の申請であることから、「何だかんだ追加費用が発生するのでは?」とやきもきするものとお察ししますが、弊所はどうしても必要となる実費を除き、追加費用はいただいていません。併せて弊所は「話しの分かる行政書士事務所」を標榜しているため、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応にも自信を持っています。貨物自動車運送事業許可申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
手続き | 報酬額 | 登録免許税 | 合計額 |
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一般貨物自動車運送事業新規許可申請 | 517,000円〜 | 120,000円 | 637,000円〜 |
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