貨物軽自動車運送事業の届出(許可)│黒ナンバー取得ガイド

軽貨物車

貨物軽自動車運送事業とは、貨物自動車運送事業法において貨物自動車運送事業(運送業)3事業のひとつに数えられる事業で、軽貨物自動車を使用して貨物の輸送を行う事業のことをいいます。単に「軽貨物運送事業」と呼ばれることもありますが、ナンバープレートが黒に代わることから、一般的には「黒ナンバー」として認知されています。

新規参入のハードルが極めて高い一般貨物自動車運送事業とは異なり許可制を採用しておらず、個人法人を問わず、比較的参入しやすい事業形態となっています。ただし、必要となる手続きはそれなりに面倒です。

そこで本稿では、これから貨物軽自動車運送事業をはじめようとされる皆さまに向けて、おおまかな事業内容や必要となる手続きについてできる限り詳しく解説していきたいと思います。

貨物軽自動車運送事業

貨物自動車運送事業法では、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る)を使用して貨物を運送する事業を貨物軽自動車運送事業として定義しています。(貨物自動車運送事業法第2条第4項)

これを平たく言い換えると、「他人の依頼により、運賃をもらって軽トラや125㏄以上のバイクを使用して貨物を運ぶ事業」が貨物軽自動車運送事業に該当することになります。

したがって、自社の貨物を運搬する事業、完全無償で他人の貨物を運搬する行為、軽トラ以外の自動車を使用する運送業(一般(特定)貨物自動車運送事業)、又は125cc未満のバイクを使用する運送事業等については、貨物軽自動車運送事業には該当しません。

上記のうち手続きを必要とするのは一般(特定)貨物自動車運送事業のみであり、たとえば125cc未満のバイクを使用する運送事業については許可申請も届出も必要ありません。したがって、街でよく見かけるデリバリーサービス事業も、125cc未満のバイクや自転車を使用するのであれば特に手続きは必要ありません。

なお、貨物軽自動車運送事業に該当するバイク便については「黒ナンバー」ではなく「緑ナンバー」となります。

軽トラや125㏄以上のバイクを使用する事業貨物軽自動車運送事業黒ナンバー
軽トラ以外の自動車を使用する運送業一般(特定)貨物自動車運送事業緑ナンバー
125cc未満のバイクを使用する事業白ナンバー(手続きは不要)

以降、貨物軽自動車運送事業については、俗称である黒ナンバーとして表記させていただきます。

黒ナンバー取得のメリット

  • 小資本で一人から開業できる
  • 許可(登録)要件を備えることが容易
  • 自家用車に比べて税金が安くなる

この辺りが黒ナンバーを取得するメリットであるといえそうです。折しも昨今の社会情勢ともマッチした事業形態といえ、本業としてはもちろんのこと、副業的にはじめることも選択肢のひとつです。

事業開始までに半年を要する一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)とは異なり、「はじめようかな」と思ってからさくっと1週間ほどで事業を開始することができることも魅力です。

ただし、任意保険料の負担や軽自動車の維持費をはじめ、それなりの経費が付いて回ることに関しては熟考するようにしてください。

開業までの流れ

黒ナンバー事業者として営業を開始するまでには①車両・営業所及び車庫の確保→②黒ナンバー登録用の届出→③事業用自動車等連絡書の取得→④黒ナンバーへの変更→⑤任意保険への加入→⑥開業届の提出というプロセスを経由します。

①車両・営業所・車庫の確保

事業開始前には商売道具となる車両や、拠点となる営業所及び車両を保管するための駐車場(車庫)を確保する必要があります。

②黒ナンバー登録用の届出

黒ナンバー事業を開始するための行政庁の許可は必要ありませんが、営業所の所在地を管轄する陸運局に対して届出を行う必要があります。この届出は添付書類を含めた必要書類を提出することによって行います。

③事業用自動車等連絡書の取得

必要書類に不備がなければ届出はその場で受理され、車両を黒ナンバーに変更するための「事業用自動車等連絡書」が発行されます。

④黒ナンバーへの変更

営業所の所在地を管轄する陸運局(軽自動車検査協会)において事業用車両を黒ナンバーに変更します。

⑤任意保険への加入

黒ナンバー取得の要件には任意保険料への加入が含まれているため、加入は任意ではなく義務となっています。毎月支払う保険料のほかにも、保障内容や事故対応の有無なども併せて総合的に判断して代理店を選択するようにしましょう。

⑥開業届の提出

個人事業主であれば所轄の税務署及び市町村に対して開業届を提出する必要があります。

⑦事業開始

書類に不備がなければ申請日当日に黒ナンバー事業者として登録がなされます。登録完了後はその当日から事業を開始することができます。

黒ナンバー登録の要件

黒ナンバー事業の開始には許可を必要としませんが、届出を受理してもらい黒ナンバーを取得(登録)するためには、次の5つの要件をすべてクリアする必要があります。

  1. 車両要件
  2. 施設要件
  3. 運送約款
  4. 運行管理体制
  5. 損害賠償能力

車両要件

当然ながら事業用の車両を1台以上確保することが前提条件となります。事業用車両については、自己所有の車両である必要はなくリース契約であっても構いませんが、車検証上の用途欄が「貨物」となっている軽貨物自動車又は排気量125㏄以上の二輪車であることが要件となります。乗用タイプの軽自動車を事業用に登録することはできず、この場合には原則として軽トラック仕様に構造を変更することが必要になります。

施設要件

営業所及び休憩・仮眠施設については、いずれも都市計画法、農地法及び建築基準法などの法令に違反していないことが要件とされています。土地は自己所有でなくても構いませんが、借入の場合は賃貸借契約や使用承諾により土地を使用する権限を有することが確実に証明できることが必要になります。

駐車場(車庫)については、原則として営業所に併設していることが求められますが、併設できない場合には、営業所から半径2km以内までの距離に設置することができます。車庫地として使用する土地は事業用車両を容易に駐車できるスペースを確保し、都市計画法、農地法及び建築基準法などの法令に違反していないことが要件となります。

また、営業所と同様に自己所有地でなくても構いませんが、借入の場合は賃貸借契約や使用承諾により土地を使用する権限を有することが確実に証明できることが必要になります。

適切な運送約款の設定

荷主との契約書に該当する運送約の内容は、旅客の運送を行うことを想定したものでなく、運賃及び料金の収受並びに軽貨物自動車事業者の責任に関する事項等が明確に定められているものであることが求められています。

適切な運行管理体制の整備

緑ナンバー事業(一般貨物運送事業)とは異なり、運行管理者や整備管理者を確保する必要はありません。が、黒ナンバー事業の適切な運営を確保するために、運行管理等の管理体制を整えることが必要とされています。

損害賠償能力

自動車損害賠償保障法等に基づく責任保険及び責任救済に加入する計画その他一般自動車保険の締結等十分な損害賠償能力を有することが必要とされています。分かりやすく言えば、自賠責保険とともに自動車任意保険に加入することが要件とされています。

許可申請に必要な書類

陸運局に対して提出する書類は以下のとおりです。なお、届出の際は副本を準備して受付印を押印してもらいます。受付印が押印された副本は事業をしていることの証明にもなるので、大切に保管するようにして下さい。(原則として再発行することはできません。)

  • 貨物軽自動車運送事業経営届出書(2通)
  • 運賃料金表(2通)
  • 事業用自動車等連絡書
  • 車検証
  • 完成検査証など車台番号が確認できる書面(新車の場合)

まとめ

冒頭で説明したとおり、黒ナンバーによる貨物軽自動車運送事業は、昨今の社会情勢ともマッチする上、コストが安く済むこともあって比較的参入しやすいビジネスモデルです。

ただし事業であるからにはすべてが予定調和で進むことはあまりなく、常にリスクがつきまとっていることについてはしっかりと再確認する必要があります。想像以上に体力仕事であることは間違いないでしょうし、何よりも資金繰りは重要な課題となります。開業を検討するからにはこれらの要素も踏まえた上でしっかり準備を整えるよう心がけましょう。

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