運送業(一般貨物自動車運送事業)の人員に関する許可基準について
運送業(一般貨物自動車運送事業)をはじめるためには、国土交通大臣に対して申請し、その許可を受ける必要がありますが、この手続きは非常に複雑かつ煩(わずら)わしく、手続きについて不慣れであれば、戸惑うことは間違いありません。
許可を受けるためには、多くの基準(許可要件)をすべて満たすことが求められるなど、とにかく開業までのハードルが高いことも運送業の特長ですが、このうちヒトに関する基準も、運送業の新規参入を阻む障壁のひとつとなっています。
そこで本稿では、これから運送業をはじめようと検討されている皆さまに向けて、許可基準のうち、ヒトに関するものを抜粋し、要求される内容や重要なポイントについて、できる限り詳しく解説していきたいと思います。
目 次
運送業とは
運送業とは、他人から依頼を受け、運賃をもらって車両で貨物を運ぶ事業を指します。俗に「緑ナンバー」と言われることもありますが、貨物自動車運送事業法では、運送業を貨物自動車運送事業と呼んでおり、事業形態に応じて、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業及び貨物軽自動車運送事業の3業種に区分して規制を行っています。
このうち特定貨物自動車運送事業とは、事業用自動車を用いて特定の1社のみの貨物を有償で運送する事業を指し、貨物軽自動車運送事業とは、軽自動車や排気量125㏄以上の自動二輪車を用いて有償で貨物を運送する事業を指します。
一般的に「運送業」と表記するときは、これら以外の貨物自動車運送事業である一般貨物自動車運送事業のことを指すので、ここでも一般貨物自動車運送事業に関する規定を下敷きに解説していこうと思います。
許可の基準
一般貨物自動車運送事業の許可を受けるために適合させるべき基準は多岐にわたりますが、ざっくりと分けて、以下5つの基準をすべてクリアすることが求められます。このうち本稿では、人員基準についてのみ解説していますので、他の基準については、該当ページから確認するようにしてください。
また、人員基準についても、運転者、運行管理者及び整備管理者について、それぞれ基準が設けられています。
欠格事由
基準以前の前提条件として、申請者(個人の場合は事業主、法人の場合には役員全員)が、以下のいずれかの事由に該当するときは、貨物自動車運送事業者としての適格性を欠く者として許可を受けることができません。
- 1年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者であるとき
- 一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては、取消しに係る聴聞の通知が到達した日(通知が到達した日又は通知が到達したものとみなされた日)前60日以内にその法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む)であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む)であるとき
- 密接な関係を有する者(親会社等)が、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者であるとき
- 一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しの処分に係る聴聞の通知が到達した日から処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に事業の廃止の届出をした者(事業の廃止について相当の理由がある者を除く)で、その届出の日から5年を経過しないものであるとき
- 立入検査が行われた日から聴聞決定予定日までの間に事業の廃止の届出をした者(事業の廃止について相当の理由がある者を除く)で、その届出の日から5年を経過しないものであるとき
- 4の期間内に事業の廃止の届出があった場合において、聴聞の通知が到達した日前60日以内にその届出に係る法人(事業の廃止について相当の理由がある法人を除く)の役員であった者で、その届出の日から5年を経過しないものであるとき
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が欠格事由のいずれかに該当するものであるとき
- 法人である場合において、その役員のうちに上記(3を除く)のいずれかに該当する者があるとき。
人員の最定員数
一般貨物自動車運送事業の許可を受けるためには、運転者5人プラス運行管理者1人の最低6人の従業員が必要になります。その他には車両整備を管理する「整備管理者」も最低1人必要になりますが、整備管理者は運転者又は運行管理者と兼任することができるため、最低限必要な員数は、計算上「6人」となります。
運転者
一般貨物自動車運送事業の許可要件として、車両5台以上が必要とされていることから、営業所に配置する運転者(ドライバー)についても、最低5人が必要になります。これはあくまでも最低人員数であるため、5台以上の事業用車両があるのであれば、車両台数分に合わせて運転者を配置する必要があります。
なお、運転者と運行管理者との兼務は認められていませんが、運転者と整備管理者との兼務は認められています。
運転者の要件
雇用期間が2か月以内の短期雇用労働者、日雇い労働者又は14日間以内の使用期間中の者については、運転者として雇用することはできません。ただし、必ずしも正社員であることまでは求められず、2か月を越える雇用契約等を結んでいるのであれば、派遣社員、出向社員、パートタイマー又はアルバイトであっても構いません。
★パートタイマー
パートタイマーとは、1週間の所定労働時間(事業所で定める労働時間)が、同じ事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い者をいいます。
運行管理者
運行管理者とは、運行の安全を確保するために、運転者の乗務割の作成、休憩・睡眠施設の管理、運転者の指導監督、点呼による運転者の疲労・健康状態等の把握や安全運行の指示などの業務を行う要職です。
一般貨物自動車運送事業許可を取得するためには、常勤の運行管理者を1名以上確保する必要があります。運行車であるか運行車以外であるかを問わず、事業用車両29台までは1名で構いませんが、以降車両30台ごとに1名を増員する必要があります。(下表参照)
運行車+運行車以外の車両数 | 必要な運行管理者数 |
---|---|
〜29両 | 1人以上 |
30〜59両 | 2人以上 |
60〜89両 | 3人以上 |
運行管理者は、複数の営業所の運行管理者を兼務することはできず、運転者との兼務も認められませんが、整備管理者との兼務は可能とされています。
一方で、地方運輸局長から解任命令を出された者については、解任後2年を経過していない場合は、運行管理者として選任することはできません。
運行管理者の資格
運行管理者になるには、貨物・旅客など事業内容に応じた運行管理者資格者証が必要です。資格取得のルートは2つあり、年2回実施される運行管理者法令試験に合格するか、もしくは5年以上の運行管理の経験を有する者が、運行管理者の講習を年1回、通算5回以上受講して修了する必要があります。
運行管理者法令試験
運行管理者法令試験は、以下の要件のうち、いずれかを満たしている者について受験資格が与えられます。
- 自動車運送事業(貨物軽自動車運送事業を除く)の用に供する事業用自動車又は特定第二種貨物利用運送事業者の事業用自動車(緑色ナンバーの車)のいずれかの事業用自動車の運行管理の実務経験が1年以上あること
- 独立行政法人自動車事故対策機構が実施する基礎講習を修了又は修了予定であること
合格基準は、総得点数が満点の60%以上であり、かつ出題分野ごとに指定された正解数をクリアすることです。なお、許可申請後に申請者が受験する「役員法令試験」とは別物である点にはご注意ください。
実務経験及び講習
取得しようとする運行管理者資格の種類(一般乗合旅客、一般貸切旅客、一般乗用旅客、特定旅客、旅客、貨物)に応じた運行管理の実務経験が5年以上ある者については、その(実務経験)期間中に、5回以上、独立行政法人自動車事故対策機構が行う講習を受けている場合、運輸支局に交付申請することにより、国家試験を受けることなく運行管理者資格者証を取得することができます。
講習については、5回のうち、少なくとも1回は基礎講習を受講している必要があります。なお、受講回数には、基礎講習を受ける前に受講した一般講習の受講回数はカウントされません。
運行管理補助者
自動車運送事業者は、運行管理者の業務を補助させるため、その職務及び選任方法等について、運行管理規程に明記することにより、運行管理者資格者又は大臣認定講習機関が行う基礎講習を修了した者のうちから、運行管理補助者を選任することができます。
運行管理補助者は、あくまでも運行管理者の履行補助を行う者であって、運行管理者の代理業務を行うことができるわけではありませんが、点呼に関する業務については、その一部を単独で行うことができるものとされています。ただし、月単位で総回数の3分の1以上は、必ず選任された運行管理者が行う必要があります。
運行管理補助者が行う補助業務は、運行管理者の指導及び監督のもとで行われるものであり、補助者が行うその業務において、以下に該当するおそれがあることが確認された場合には、直ちに運行管理者に報告を行い、運行の可否の決定等について指示を仰ぎ、その結果に基づき各運転者に対し指示を行わなければならない。
- 運転者が酒気を帯びている場合
- 疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができない場合
- 無免許運転や大型自動車等無資格運転
- 過積載運行
- 最高速度違反行為
手続き上、運行管理補助者の要件を満たす者を確保することは必須ではありませんが、運行管理補助者を確保できない場合であって、営業所に運行管理者不在のときは、貨物自動車運送事業を行うことはできません。
整備管理者
貨物自動車運送事業者の営業所には、以下のいずれかに該当する者のうちから、車両の点検整備記録の管理などを担当する常勤の整備管理者を、1営業所ごとに1人以上確保する必要があります。
- 自動車整備士3級以上の資格を有すること
- 整備管理などに関して2年以上の実務経験を積んだ上で整備管理者選任前研修を修了していること
上記のうち、過去2年間の実務経験を証明することができる者は、貨物自動車運送事業の許可業者又は整備工場に限られます。
また、整備管理者については、運転者及び運行管理者ともに兼務することが認められています。
なお、許可申請までに必ずしも整備管理者を確保することは求めれておらず、確保予定として申請することが可能です。ただし、この場合には、整備管理者の資格証等の提出が許可書の交付条件となります。
社会保険への加入
遅くとも許可後、事業用ナンバーの取得前までには、従業員の社会保険関係(健康保険・厚生年金保険・労働保険・雇用保険)を整備しておく必要があります。
法人の場合は、社会保険について加入義務があるため、健康保険・厚生年金保険・労働保険・雇用保険すべての加入手続きを行う必要がありますが、個人事業主や、その従業員が同居の親族の場合は、健康保険・厚生年金保険並びに労働保険・雇用保険の加入手続きが不要なケースもあります。(例:個人事業主には、原則として雇用保険及び労災保険に加入する義務はない。)
派遣社員は、派遣元で健康保険・厚生年金保険、雇用保険・労災保険に加入するため、派遣先である事業者が社会保険に加入する必要はありません。また、法人の役員については、労働保険・雇用保険の加入は必要ありません。
運送業許可取得サポート
お伝えしているとおり、運送業許可申請は複雑かつ煩わしい手続きとなっています。ここでは触れていませんが、物件探しの段階から必要期間を見積もると、下手をすれば1年2年の期間を浪費することも珍しくありません。効率よく計画を実施するためには、専門家のサポートを利用しながら工程を分担して進めることをお薦めしています。
弊所では、関西圏の全域にわたり、運送業許可取得のサポートを承(うけたまわ)っています。関与させていただく期間が長いことから、報酬額は後記のとおりやや高めの設定ですが、このサポートには以下のサービスをすべて含みます。
- 許可基準の調査
- 必要書類の作成及び提出
- 行政機関との連絡調整
- 法令試験対策
- 期間中の相談(無制限)
- 許可取得後のサポート
見積もりサイト等で恐ろしく低料金の設定を見かけたことがありますが、これはあまりにも実態を知らない=経験がない若しくはサポートが極めて限定的であるように思われるため、熟慮するようにしてください。
また、長丁場の申請であることから、「何だかんだ追加費用が発生するのでは?」とやきもきするものとお察ししますが、弊所はどうしても必要となる実費を除き、追加費用はいただいていません。併せて弊所は「話しの分かる行政書士事務所」を標榜しているため、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応にも自信を持っています。貨物自動車運送事業許可申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
手続き | 報酬額 | 登録免許税 | 合計額 |
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一般貨物自動車運送事業新規許可申請 | 517,000円〜 | 120,000円 | 637,000円〜 |
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