奈良で旅館・ホテル営業をはじめるには丨旅館業営業許可の基準と手続きについて
奈良県といえば、古都の情緒を現代にそのまま継承する世界に誇れる日本の一大観光名所です。東大寺&奈良公園、法隆寺、平城宮跡、吉野山、十津川温泉等々、名だたる観光地を挙げていけばきりがありません。申請機会の多い地域でもあることから、個人的には大変馴染み深い場所でもあります。
コロナ禍からの開放により、復調の兆しが見える観光業界ですが、これだけのポテンシャルを秘めた奈良の観光事業に対して盛り返しを期待する声は決して小さいものではありません。実際に弊所においても旅行業や旅館業といった観光産業に関するお問い合わせも増えてきており、着々とその下地は整いつつあるように思います。
そこで本稿では、奈良県において観光事業への参入を検討する皆さまに向けて、旅館・ホテルを営業するにあたり必要となる許可やその基準について、詳しく解説していきたいと思います。
旅館・ホテル営業とは
旅館業法及び旅館業施行令では、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業を、合わせて「旅館業」と呼んでいます。このうち旅館・ホテル営業とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業であって、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいいます。
したがって、名目を問わず「宿泊料」を対価として、「宿泊施設」において人を「宿泊」させる営業は、「簡易宿所営業」にも「下宿営業」にも該当しない限りは、すべて「旅館・ホテル営業」として取り扱われることになります。
なお、かつて旅館営業とホテル営業とは和式洋式で別個に区分されていましたが、現在では「旅館・ホテル営業」というひとつの営業形態として統一されています。
旅館・ホテル営業 | 施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの |
簡易宿所営業 | 宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの |
下宿営業 | 施設を設け、1か月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業 |
旅館業営業許可
奈良県において旅館・ホテル営業を営もうとする者は、奈良県知事(奈良市にあっては奈良市長)に対して申請し、その許可を受ける必要があります。具体的な申請先については以下のとおりですが、申請の前提として、後述する人的基準、構造設備基準、衛生基準、設置場所基準のすべてを満たす必要があります。
なお、旅館・ホテル営業の許可を受けた者については、その施設において改めて下宿営業の許可を受けることなく下宿営業を営むことが認められています。
★申請先一覧
申請先 | 所管区域 | 所在地 | 連絡先 |
---|---|---|---|
奈良市保健所保健衛生課 | 奈良市 | 奈良市三条本町13番1号 はぐくみセンター(奈良市保健所・教育総合センター)3階 | 0742-93-8395 |
郡山保健所 | 大和郡山市、天理市、生駒市、山添村、平群町、三郷町、斑鳩町、安堵町 | 大和郡山市満願寺町60-1 | 0743-51-0193 |
中和保健所 | 大和高田市、橿原市、桜井市、御所市、香芝市、葛城市、宇陀市、川西町、三宅町、田原本町、曽爾村、御杖村、高取町、明日香村、上牧町、王寺町、広陵町、河合町 | 橿原市常盤町605番地の5 | 0744-48-3033 |
吉野保健所 | 吉野町、大淀町、下市町、黒滝村、天川村、下北山村、上北山村、川上村、東吉野村 | 吉野郡下市町新住15-3 | 0747-64-8131 |
吉野保健所五條出張所(旧内吉野保健所) | 五條市、野迫川村、十津川村 | 五條市岡口1丁目3-1 | 0747-22-3051 |
人的基準
日本語に「寝首をかく」という表現があるように、通常宿泊中の人は無防備な状態に置かれます。このような状態で身体や財産を他人に預けるわけですから、旅館業に携わる「ヒト」については一定の信用性が要求されています。
具体的に旅館業法では、旅館業全般について以下の事由を欠格事由として定め、このうちいずれかひとつでも該当する者を、資格に欠ける者として当初から旅館業営業許可の対象から排除しています。
- 精神の機能の障害により、旅館業を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、又は旅館業法若しくは旅館業法に基づく処分に違反して罰金以下の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過していない者
- 許可を取り消され、取消しの日から起算して3年を経過していない者
- 暴力団対策法に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から起算して5年を経過しない者
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記のいずれかに該当するもの法人であって、その業務を行う役員のうちに上記のいずれかに該当する者があるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
構造設備及び衛生基準
旅館・ホテル営業を営むためには、使用する施設や設備について、構造上の基準と衛生を保つために必要な基準をクリアする必要があります。この基準は、国の法令(旅館業法、旅館業施行令、旅館業施行規則)以外に、各自治体の条例にも定めが設けられているため、そのすべてについて適合させる必要があります。
以下で説明するのは、あくまでも旅館業法施行令、奈良県旅館業法施行条例(PDF:522KB)及び奈良県旅館業の業務の適正な運営の確保等に関する条例施⾏規則(PDF:1.16MB)に設けられている基準です。旅館業に対する規制は市町村条例レベルで細かく設定されているため、申請の際には必ず市町村条例にまで目を通すようにしてください。
なお、知事は営業施設の特殊性によりこの基準によることが適当でないと認めるときは、公衆衛生の維持のために必要な特別の措置を命ずることができます。
また、ここでは全体像をつかむため、構造設備基準と衛生基準をあえて併記しています。便宜上、構造設備基準については赤色、衛生基準については青色で色分けして明示しています。
施設全体に関する基準
- 客室の床面積は、7㎡(寝台を置く客室にあっては9㎡)以上であること
- 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として、事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備、並びに宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること
- 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること
- 施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障を来さないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること
- 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること
- 適当な数の便所を有すること
- その設置場所が一定の施設(後述)の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲おおむね100mの区域内にある場合には、その施設から客室又は客の接待をして客に遊興若しくは飲食をさせるホール若しくは客に射幸心をそそるおそれがある遊技をさせるホールその他の設備の内部を見通すことを遮ることができる設備を有すること
- 寝具類は、宿泊者の定員に応じて⼗分な数を有すること
- 善良の風俗が害されるような文書、図画その他の物件を旅館業の施設に掲示し、又は備え付けないこと
- 善良の風俗が害されるような広告物を掲示しないこと
- 旅館業の施設及びその周囲は、定期的に清掃し、必要に応じて消毒を⾏い、常に清潔で衛⽣的に保つこと
- 旅館業の施設におけるねずみ、昆⾍等の防除は、6か⽉以内ごとに1回、定期に⾏い、その実施記録を2年以上保存すること
- 給⽔設備は、定期的に点検し、及び保守し、貯⽔槽については、1年以内ごとに1回、定期に清掃し、その実施記録を2年以上保存すること
- ⽔道法に規定する給⽔装置以外に給⽔に関する設備を設けて飲料⽔を供給する場合は、規則で定めるところにより検査を⾏い、⼈の飲⽤に適する⽔を供給するとともに検査の記録を2年以上保存すること
- 換気設備及び照明設備は、定期的に点検し、及び保守し、常にこれらの設備のそれぞれ適正な換気能⼒及び照度を維持すること
- 布団、⽑布、まくら等は、清潔な敷布、カバー等で覆うこと
- 浴⾐、敷布、カバー等直接⼈に接触するものは、宿泊者ごとに洗濯したものと取り替えること
- その他適切に寝具等の洗濯、管理等を⾏うこと
- 応急⼿当に必要な医療品及び衛⽣材料を備えておくこと
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定する患者若しくは無症状病原体保有者⼜はその疑いのある者を、感染症を公衆にまん延させるおそれがなくなるまでの期間業務に従事させないこと
玄関帳場等に関する基準
- 事務を⾏うのに適した広さを有すること
- ⽞関から容易に⾒え、かつ、宿泊者その他の利⽤者の全てが必ず通過する場所に設けられていること
- 宿泊者等と直接⾯接できる構造であること
以下の要件をすべて備えた「宿泊しようとする者の確認を適切に⾏うための設備 として厚⽣労働省令で定める基準に適合するもの」が設けられている場合は、上記の基準が緩和され、この基準を満たす必要はなくなります。
- ⽞関帳場等に代替する機能を有する設備を設けることその他善良の⾵俗の保持を図るための措置が講じられていること
- 事故が発⽣したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること
客室に関する基準
客室には、客室の区分に応じ、それぞれに定める⼈数を超えて宿泊者を宿泊させないこと
原則 | 床⾯積3.2㎡につき1⼈(団体の宿泊者を宿泊させる場合であって、公衆衛⽣上⽀障がないときは、床⾯積2.4㎡につき1⼈とすることができる) |
寝台を置く客室 | 床⾯積4.5㎡につき1⼈(団体の宿泊者を宿泊させる場合であって、公衆衛⽣上⽀障がないときは、床⾯積3.0㎡につき1⼈とすることができる) |
洗面所に関する基準
- 共同⽤の洗⾯設備が共同⽤の便所と隣接して設けられている場合は、その便所とは、扉等で区画されていること
- 洗⾯所には、飲⽤に適する湯⼜は⽔を⼗分に供給すること
便所に関する基準
便所は、臭気の防除を⾏い、その⼿洗設備には、衛⽣上⽀障がないようせっけん等を備えておくこと
浴室及び脱衣室に関する基準
共同⽤の浴室⼜はシャワー室が設けられている場合は、次の要件を満たすものであること
- 男⼦⽤及び⼥⼦⽤の区分があること
- 外部から⾒通されない構造であること
- 男⼦⽤及び⼥⼦⽤のものが隣接して設けられている場合は、相互に⾒通すことができない構造であること
- 男⼦⽤及び⼥⼦⽤の脱⾐室が設けられていること
浴槽水等の衛生基準
- 浴室の給湯栓及び給⽔栓の湯⽔は、⼗分に供給すること
- 浴槽⽔は、規則で定める基準に適合するように⽔質を管理すること
- 原湯1を貯留する貯湯槽内の温⽔の温度は、規則で定める温度以上に保つこと(レジオネラ属菌が繁殖しないように貯湯槽内の温⽔を消毒する場合を除く)
- 貯湯槽の⽣物膜の状況を定期的に監視し、必要に応じ⽣物膜を除去するために清掃し、及び消毒すること
- 浴槽⽔は、常に満杯の状態に保ち、かつ、原湯⼜はろ過した湯⽔を⼗分に供給することにより浴槽の外にあふれ出させ清浄に保つこと
- 毎⽇(ろ過器を使⽤している浴槽にあっては1週間に1回以上)、浴槽⽔を完全に換⽔するとともに浴槽を清掃すること
- 浴槽⽔は、湯⽔の性質その他の条件により消毒を⾏うことができない場合⼜は適切でない場合であって、消毒に代わる適切な消毒その他の措置を講ずるときを除き、塩素系薬剤により消毒し、浴槽⽔内の遊離残留塩素濃度を頻繁に測定し、及び規則で定める基準により管理するとともに、測定の結果を測定の⽇から3年間保存すること(ろ過器を使⽤している浴槽にあっては塩素系薬剤は、ろ過器の直前に注⼊し、⼜は投⼊すること)
- 消毒装置を設置している場合は、維持管理を適切に⾏うこと
- 集⽑器は、毎⽇清掃すること
- 調整箱2は、定期的に清掃すること
- 浴槽水の水質基準に適合していることを確認するため、1年に1回以上検査を⾏い、及び検査の結果を検 査の⽇から3年間保存するとともに、基準に適合していない場合は、直ちにその旨を知事に届け出ること
- 回収槽3の湯⽔は、浴⽤に使⽤しないこと(回収槽を頻繁に清掃し、及び消毒するとともに、レジオネラ属菌が繁殖しないように回収槽内の湯⽔を塩素系薬剤等により消毒する場合を除く)
- 浴槽に気泡発⽣装置、ジェット噴射装置等微⼩な液体の粒⼦を発⽣させる設備を設置している場合は、24時間以上完全に換⽔しないで使⽤している浴槽⽔は使⽤しないこと
- ろ過器を使⽤している浴槽にあっては、打たせ湯及びシャワーには、浴槽⽔は使⽤しないこと
- 屋外の浴槽⽔は、屋内の浴槽⽔に混じることのないようにすること
- ろ過器を使⽤している浴槽にあっては、次に掲げる措置を講ずること
- ろ過器は、1週間に1回以上逆洗浄4を⼗分に⾏うこと(逆洗浄を⾏ってもろ過器のろ材の汚れを⼗分に排出することができなくなったときは、ろ材を交換すること)
- ろ過器及びろ過器と浴槽との間の配管は、1週間に1回以上⽣物膜を除去するために清掃し、及び消毒すること
共同⽤の浴室⼜はシャワー室が設けられている場合は、次の要件を満たすものであること
- 男⼦⽤及び⼥⼦⽤の区分があること
- 外部から⾒通されない構造であること
- 男⼦⽤及び⼥⼦⽤のものが隣接して設けられている場合は、相互に⾒通すことができない構造であること
- 男⼦⽤及び⼥⼦⽤の脱⾐室が設けられていること
客室に設置された⼊浴設備で、宿泊者が浴槽⽔を換⽔することができるものについては、以下の衛生基準が適用されます。
- 浴室の給湯栓及び給⽔栓の湯⽔は、⼗分に供給すること
- 湯槽の⽣物膜の状況を定期的に監視し、必要に応じ⽣物膜を除去するために清掃し、及び消毒すること
- ろ過器を使⽤している浴槽にあっては、次に掲げる措置を講ずること
- ろ過器は、1週間に1回以上逆洗浄を⼗分に⾏うこと(逆洗浄を⾏ってもろ過器のろ材の汚れを⼗分に排出することができなくなったときは、ろ材を交換すること)
- ろ過器及びろ過器と浴槽との間の配管は、1週間に1回以上⽣物膜を除去するために清掃し、及び消毒すること
- 毒装置を設置している場合は、維持管理を適切に⾏うこと
- 集⽑器は、毎⽇清掃すること調整箱は、定期的に清掃すること
- ⽔道法に規定する給⽔装置により供給される⽔以外の⽔を使⽤した原⽔5、原湯、上がり⽤⽔6及び上がり⽤湯7は、規則で定める基準に適合するように⽔質を管理すること
- 浴槽水の水質基準に適合していることを確認するため、1年に1回以上検査を⾏い、及び当該検査の結果を検査の⽇から3年間保存するとともに、基準に適合していない場合は、直ちにその旨を知事に届け出ること
- 原湯を貯留する貯湯槽内の温⽔の温度は、規則で定める温度以上に保つこと(レジオネラ属菌が繁殖しないように貯湯槽内の温⽔を消毒する場合を除く)
- 回収槽の湯⽔は、浴⽤に使⽤しないこと(回収槽を頻繁に清掃し、及び消毒するとともに、レジオネラ属菌が繁殖しないように回収槽内の湯⽔を塩素系薬剤等により消毒する場合を除く)
- 浴槽に気泡発⽣装置、ジェット噴射装置等微⼩な液体の粒⼦を発⽣させる設備を設置している場合は、24時間以上完全に換⽔しないで使⽤している浴槽⽔は使⽤しないこと
- ろ過器を使⽤している浴槽にあっては、打たせ湯及びシャワーには、浴槽⽔は使⽤しないこと
- 屋外の浴槽⽔は、屋内の浴槽⽔に混じることのないようにすること
- 浴槽⽔を再利⽤せずに浴槽に直接注⼊される温⽔ ↩︎
- 洗い場の給湯栓⼜はシャワーに送る温⽔の温度を調整するために設ける箱 ↩︎
- 浴槽の外にあふれ出た浴槽⽔を回収し、貯留する槽 ↩︎
- 湯⽔を逆流させることによりろ過器のろ材その他の部分の汚れを排出させること ↩︎
- 原湯の原料に⽤いる⽔及び浴槽⽔を再利⽤せずに浴槽に直接注⼊される⽔ ↩︎
- 洗い場に備え付けられた給⽔栓及びシャワーから供給される⽔ ↩︎
- 洗い場に備え付けられた給湯栓及びシャワーから供給される温⽔ ↩︎
追加の基準
一定の施設の敷地(これらの⽤に供するものと決定した⼟地を含む)の周囲200m以内の区域内、又は商業地域(⾵致地区を除く)を除く県全域においては、上記の基準に加えて、以下の構造設備基準が追加されます。この基準は、旅館・ホテルがラブホテルの代替施設となることを排除するための規制になります。
★配慮すべき施設
- ⼀団地の官公庁施設学校教育法第1条に規定する学校
- 図書館
- 児童福祉施設
- 病院及び有床診療所
- 博物館及び博物館に相当する施設
- 公⺠館
- 隣保館
- ⻘年の家、少年⾃然の家、⻘少年野外活動センターその他の⻘少年教育施設で、国⼜は地⽅公共団体が設置するもの
- 体育館及び⽔泳プール並びに陸上競技場、野球場、庭球場その他の運動場で、国⼜は地⽅公共団体が設置するもの
★追加される構造設備基準
- 施設の外壁、屋根、広告物その他外観は、周囲の善良な⾵俗を害することがないよう、意匠等が著しく奇異でなく、かつ、周囲の環境に調和するものであること
- 宿泊者等が⾞庫⼜は駐⾞場から⽞関帳場を経由することなく直接客室への出⼊りを⾏うことができる構造でないこと
- ロビー⼜は⽞関広場が設けられている場合は、⽞関帳場に接続していること
- 浴室⼜はシャワー室は、壁等で区画され、これらの内部が当該浴室⼜はシャワー室の外から⾒通すことができない構造であること
- 動⼒により振動し、⼜は回転するベッド、横臥している⼈の姿態を映すために設けられた鏡(特定⽤途鏡)で⾯積が1㎡以上のもの⼜は2以上の特定⽤途鏡でそれらの⾯積の合計が1㎡以上のもの(天井、壁、仕切り、ついたてその他これらに類するもの⼜はベッドに取り付けてあるものに限る)その他専ら異性を同伴する宿泊者等の性的好奇⼼に応ずるための設備が設けられていないこと
構造設備基準等の特例
季節的状況、地理的状況その他特別の事情により上記の構造設備基準による必要がない場合⼜はこれらの基準によることができない場合であって、公衆衛⽣の維持に⽀障がないと知事が認めるときは、これらの基準によることなく営業をすることができます。
なお、以下の施設のように季節的に利用されるもの、交通が著しく不便な地域にあるものその他特別の事情があるものについては、客室の床面積等について特例が適用されます。
- キャンプ場、スキー場、海水浴場等において特定の季節に限り営業する施設
- 交通が著しく不便な地域にある施設であって利用度の低いもの
- 体育会、博覧会等のために一時的に営業する施設
- 農林漁業体験民宿業に係る施設
1から3までに該当する施設については客室の床面積に関する基準が撤廃され、農林漁業体験民宿業に係る施設については客室の床面積に関する基準のうち客室の延床面積に関する基準が撤廃されます。
設置場所基準
施設の設置場所が、以下の施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲おおむね100mの区域内にある場合において、旅館・ホテルの設置によってこれらの施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認められるときは、原則として旅館業営業許可を受けることはできません。
- 学校教育法に規定する学校
- 学校教育法に規定する各種学校で、その教育課程が同法第1条に規定する学校(大学を除く)の教育課程に相当するもの
- 幼保連携型認定こども園
- 児童福祉施設
- 図書館
- 博物館及び博物館に相当する施設並びにこれらと同⼀の⽬的を有する施設で国⼜は地⽅公共団体が設置するもの
- 公⺠館
- ⻘年の家、少年⾃然の家、⻘少年野外活動センターその他の⻘少年教育施設で、国⼜は地⽅公共団体が設置するもの
- 体育館及び⽔泳プール並びに陸上競技場、野球場、庭球場その他の運動場で、国⼜は地⽅公共団体が設置するもの
- 上記施設以外の施設で、知事が指定するもの
ただし、許可不許可の判断は知事(又は奈良市長)に委ねられており、上記のケースについて許可を与える場合には、あらかじめ、旅館・ホテルの設置によって清純な施設環境が著しく害されるおそれがないかどうかについて、上記施設の学長等の意見を求めなければならないものとされています。
上記施設の学長等は、旅館・ホテルが構造設備基準に適合しなくなった場合、又は構造設備基準に違反した場合において、清純な施設環境が著しく害されていると認めるときは、処分について知事(又は保健所設置市の市長)に対して意見を述べることができるものとされています。
旅館業営業許可申請の流れ
STEP1:事前調査
候補地を選定後、まずは旅館業法と関係法令による規制について調査を行います。土地の利用には都市計画法上の用途地域による規制があり、以下の用途地域以外では、そもそも旅館・ホテル営業を行うことはできません。
- 第一種住居地域(旅館業の用途に供する部分が3000㎡以下の場合に限る)
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
さらによく問題になるのが農地法との兼ね合いです。農地は農業という重要な産業の基盤となるものなので、たとえ所有者であっても、自由に農地を潰すことは認められていません。このため、農地の転用を行う際には、農業委員会から農地転用許可を受ける必要があります。また、場合によっては、都市計画法上の開発許可を必要とするケースも想定されます。
農地転用許可について
都市計画法上の開発許可について
このほかにも、建築基準法、消防法、自然公園法及び景観法などによる規制も想定して計画を進めます。
★用途変更
旅館・ホテルの用途となる部分の床面積が200㎡を超える場合には、元々その建物が旅館やホテルであった場合を除き、建築確認申請による「用途変更」が必要となります。なお、床面積が200㎡以下の場合であっても、建物は建築基準法に沿った建築物でなければなりません。
旅館業における建築基準法の基準について
旅館業における消防法の基準について
自然公園法に基づく規制について
景観法16条の届出について
STEP2:事前協議
旅館業営業許可申請は大掛かりな手続きであるため、施設の工事着工前に設計図等を持参の上、事前に保健所と協議を行う必要があります。また、建設や改築工事などについては管轄の土木事務所、消防関連の手続きについては、消防本部などと事前協議を行います。
STEP3:書類の準備
関係機関から求められた膨大な数の書類を準備します。図面も多く求められるため、広ければ広いほど、規制が多ければ多いほど大変な作業となります。また、旅館・ホテルの予定施設から100mの区域内に学校・児童福祉施設等の一定の施設がある場合には、譲受けや種別変更の場合を除き、証明願(距離証明)の手続きも必要となります。
STEP4:書類の提出
以下の書類をそろえて保健所の窓口に提出し、申請手数料24,200円(奈良県収入証紙)を納付します。同時に公衆浴場営業許可や温泉利用許可を申請する場合には、それぞれ別途手数料が必要になります。
- 旅館業営業許可申請書
- 欠格事由に該当しない旨の宣誓書
- 各階平⾯図及び⽴⾯図
- 営業施設の設置場所の周囲250mの区域内の状況を明らかにした図面(区域内に所在する学校等の清純な施設環境を保持すべき施設の所在地及びその所在地までの距離を示したもの)
- 定款又は寄付行為の写し(法人)
- 水質検査成績書(水道事業者等から飲用に供する水を供給されていない場合)
- その他都道府県知事等が公衆衛生上又は善良の保持上必要があると認める書類
STEP5:現地調査
調査員が現地を訪れ、施設の構造設備について、申請内容と相違がないかを調査します。この際にはヒヤリングによる調査も行われるため、必ず立会いが必要になります。
STEP6:許可書の交付
申請書提出後、土日祝日・年末年始休暇を除く20日の間に許可不許可の処分が下されます。許可書が交付されることによりようやく営業を開始することができるようになります。
営業者の義務等
人を宿泊させることは、他人の健康や財産を預かることに等しく、大きな責任を伴う行為です。このため営業許可を取得した旅館業の営業者には、以下に説明するとおり、多くの義務と努力義務が課されます。
宿泊の拒否
営業者は、以下のいずれかに該当する場合を除いては、宿泊を拒むことはできません。
- 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき
- 宿泊しようとする者が賭博、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき
- 宿泊しようとする者が、泥酔し、若しくはその⾔動が著しく異常で、⼜はその⾝体、⾐服等が著しく不潔で、他の宿泊客に迷惑を及ぼすおそれのあるとき
- 通常の時間外に宿泊を申し込まれたとき
- 宿泊料等費⽤の⽀払能⼒がないと認められると宿泊者名簿の記載に応ぜず、⼜はその記載事項について虚偽の申告をしたとき
宿泊者名簿
営業者は、旅館業の施設又は営業者の事務所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、性別、年齢、職業、国籍及び旅券番号(外国人)、客室の名称(⼜は番号)、到着年月日、出発年月日、前宿泊地及び行先地を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出する義務があります。
宿泊者についても、営業者から請求があったときは、営業者に対してもこれらの事項を告げなければならないものとされています。また、営業者には、宿泊者名簿の正確な記載を確保するために必要な機器、設備⼜は装置を有することが求められています。
営業者の努力義務
営業者は、旅館業の施設の整備及び宿泊に関するサービスの向上等に関し、以下の措置を講ずるよう努めるものとされています。
- ⾼齢者、障害者等の移動⼜は施設の利⽤に係る⾝体の負担を軽減することによるその移動上⼜は施設の利⽤上の利便性及び安全性の向上のために必要な措置
- 外国語等による情報の提供、インターネットを利⽤した観光に関する情報の閲覧を可能とするための措置、座便式の⽔洗便所の設置その他の外国⼈観光旅客の旅館業の施設及びサービスの利⽤に係る利便を増進するために必要な措置
- 上記のほか、旅館業の業務の適正な運営を確保するために必要な措置
外国⼈観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るために必要な措置
営業者は、外国⼈観光旅客である宿泊者に対し、宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るために必要な以下の措置を講ずる必要があります。
- 外国語を⽤いて、旅館業の施設の設備の使⽤⽅法に関する案内をすること
- 外国語を⽤いて、移動のための交通⼿段に関する情報を提供すること
- 外国語を⽤いて、⽕災、地震その他の災害が発⽣した場合における連絡先に関する案内をすること
- 上記のほか、知事が必要と認める措置
周辺地域の⽣活環境への悪影響の防⽌に関し必要な事項の説明
営業者は、宿泊者に対し、旅館業の施設の周辺地域の⽣活環境への悪影響の防⽌に関し必要な以下の事項について、書⾯の備付けその他の適切な⽅法により、説明を行う必要があります。
この規定による義務を履行するにあたっては、説明に必要な機器、設備⼜は装置を有することが求められているほか、外国⼈観光旅客である宿泊者に対して説明を行うときは、外国語を⽤いて説明を行う必要があります。
- 騒⾳の防⽌のために配慮すべき事項
- ごみの処理に関し配慮すべき事項
- ⽕災の防⽌のために配慮すべき事項
- 上記のほか、知事が必要と認める事項
苦情等への対応
営業者は、旅館業の施設の周辺地域の住⺠からの苦情及び問合せについては、適切かつ迅速に対応する体制を備え、これに対応する必要があります。
知事への定期報告
営業者は、営業施設ごとに、各⽉の宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の延べ宿泊者数の内訳及び稼働状況等を把握するために知事が必要と認める事項について、毎年1・4・7・10⽉の15⽇までに、それぞれの⽉の前3か⽉分について知事に報告を行う義務があります。
営業者の遵守事項
営業者は、その営業を⾏うについて以下の事項を遵守する必要があります。
- ⾮常時の場合の避難路を明⽰した施設図を客室、廊下等の適当な場所に表⽰すること
- 宿泊者相互の同意がないときは、宿泊者を同室させないこと
- 住所、⽒名、⽣年⽉⽇、就業年⽉⽇、退職年⽉⽇、健康診断受診年⽉⽇及び疾病の有無を記載した営業従事者名簿を整備しておくこと
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