公衆浴場営業許可│銭湯や温泉施設の開設に必要な手続きについて

公衆浴場

公衆浴場法では、公衆浴場を「温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」と定義し、これを業として営もうとするときは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては市長又は区長)の許可を受けなければならない旨を定めています。

近年のサウナブームにより再燃の兆しを見せる公衆浴場ですが、許可を受けるための申請は煩雑(はんざつ)な割に取り扱う専門家も少ないため、情報収集の段階から苦労を強いられる手続きとなっています。

そこで本稿では、これから公衆浴場を営業しようと検討する皆さまに向けて、公衆浴場に関する基礎知識や申請の手続方法などについて詳しく解説していきたいと思います。

公衆浴場の種別

公衆浴場とは公衆を入浴させる施設全般を指しますが、公衆浴場法ではこれをさらに一般公衆浴場その他の公衆浴場とに区分し、それぞれに応じた異なる規定を設けています。

一般公衆浴場地域住民の日常生活において保健衛生上必要なものとして利用される施設(銭湯、老人福祉センター等の浴場)
その他の公衆浴場保養・休養を目的としたヘルスセンター・健康ランド型のもの、ゴルフ場やアスレチックジム等スポーツ施設に併設されるもの、工場等に設けられた福利厚生のための浴場、サウナ、個室付き公衆浴場、移動入浴車、エステティックサロンの泥風呂等

適用除外となる施設

他の法令又は条例等に基づいて設置された施設であって衛生措置の講じられているものについては公衆浴場法の適用外とされており、作業場に設けられた浴場(労働安全衛生法)、事業附属寄宿舎(労働基準法)、旅館業法の適用を受ける宿泊施設の浴場(旅館業法)、病院や老人保健施設のデイケアとして使用する浴場及び国や自治体によって寝たきり老人等を対象に入浴介助を伴った入浴サービスに使用される浴場等がこれに該当します。

なお、遊泳プールに付帯する採暖室及び採暖槽はそもそも浴場には当たらず、また、もらい湯等は業(反復継続の意思と社会性を持って行われること)として行われていないものについては公衆浴場法による規制対象からは除外されています。

公衆浴場営業許可

許可申請は都道府県知事等に対して行いますが、実際の申請先は設置しようとする施設の所在地を管轄する保健所(若しくは都道府県の担当課)の窓口になります。

設置しようとする施設が次のいずれかに該当するときは、公衆浴場として営業許可を受けることができません。また、都道府県知事等が必要があると認めるときは、許可に必要な条件を附されることがあります。

  • 公衆浴場の設置の場所若しくはその構造設備が公衆衛生上不適当であると認めるとき
  • 公衆浴場の設置の場所が配置の適正を欠くと認めるとき

公衆浴場法にはこのようにざっくりとした記述しかなく、換気、採光、照明、保温及び清潔等の衛生風紀基準や設置場所基準等の詳細のほとんどが各自治体の条例において定められています。(都道府県条例だけではなく市町村条例の規定にも服することになります。)

例えば兵庫県尼崎市において一般公衆浴場を営もうとするときは、既設の一般公衆浴場から最短直線距離にして220m以上隔てて施設を設置する必要があります。

以下の記事は兵庫県条例による基準等をまとめたものですが、参考資料として確認するようにしてください。

なお、最近問い合わせの多いサウナ施設(例:テントサウナによる営業)に関する基準についても、特にこれとは別の基準が用意されているわけではないので、簡易的なサウナ施設であったとしても、同様の基準をクリアする必要があります。

手続きの流れ

自治体ごとに違いはありますが、大まかには①事前調査→②事前協議→③書類の準備及び提出→④現地調査→⑤許可書の交付というのが一連の流れになります。

STEP1:事前調査

候補地を選定後、まずは公衆浴場法と関係法令による規制について調査を行います。また、公衆浴場には「一般公衆浴場」と「その他の公衆浴場」の2つの区分が存在していますが、一般公衆浴場については既設の一般公衆浴場から一定距離以上隔てて設置しなければならないという基準が設けられています。

また、公衆浴場としてクリアすべき基準には公衆浴場法に定めのあるもの以外にも、旅館業法、建築基準法、消防法、農地法、河川法及び自然公園法等の法令や各自治体の条例によるものがあります。これらの基準についてはすべて漏れなく適合させる必要があるため、担当窓口においてどのような手続きが必要になるのかをしっかりと確認するようにしてください。

STEP2:事前協議

工事等を必要とする場合は施設の工事着工前に設計図等を持参の上、事前に保健所と協議を行う必要があります。また、建設や改築工事などについては管轄の土木事務所、消防関連の手続きについては消防本部などと事前協議を行います。

STEP3:書類の準備及び提出

関係機関から求められた書類をすべてそろえて保健所の窓口に提出し、申請手数料として22,000円を納付します。

STEP4:現地調査

調査員が現地を訪れ、施設の構造設備について、申請内容と相違がないかを調査します。この際にはヒヤリングによる調査も行われるため、必ず立会いが必要になります。

STEP5:許可書の交付

申請書提出後、土日祝日・年末年始休暇を除くおおむね15〜30日の間に許可不許可の処分が下されます。許可書が交付されることによりようやく営業を開始することができるようになります。

許可申請に必要となる書類

以下は兵庫県における公衆浴場営業許可申請に必要とされている書類です。各自治体ごとに求められる書類も異なるため、申請の際は所轄の保健所等の窓口に対し、必要となる書類や許可の基準等について必ず事前に確認を行うようにしましょう。

  • 公衆浴場営業許可申請書  [Word:30KB]
  • 営業施設の敷地周辺の既設の公衆浴場、道路、人家等の概要図
  • 営業施設の配置図、平面図その他の構造設備の概要を明らかにした書類
  • 設置しようとする土地及び建物を使用する権利を証する書類
  • 営業形態(入浴予定者の性別、入浴料金、営業予定時間等)を記載した書類
  • 水質成績証明書(水道水以外の水を使用する場合)
  • 定款及び登記事項証明書(法人)
  • その他都道府県知事等が必要とする書類
★申請書の記載事項
  • 申請者の住所、氏名及び生年月日(法人にあっては、その名称、事務所所在地、代表者の氏名及び定款又は寄附行為の写し)
  • 公衆浴場の名称及び所在地
  • 公衆浴場の種類(温泉の含有物質又は医薬品等を原料とした薬湯を使用する公衆浴場にあっては、その物質又は医薬品等の名称、成分、用法、用量及び効能を付記すること)
  • 営業施設の構造設備
  • その他都道府県知事が定める事項
  • 浴場業を営む者が当該浴場業を譲渡したときは、当該営業を譲り受けたことを証する旨
公衆浴場営業許可申請書
公衆浴場営業許可申請書(2)

営業者の義務

営業者は伝染性の疾病にかかっている者と認められる者に対しては、その入浴を拒否することとされています。ただし、次のいずれかに該当する場合であって、都道府県知事の許可を受けたときは患者を入浴させることができるものとされています。

  • 温泉を使用する公衆浴場で、その温泉が伝染性の疾病に対して療養効果があると認められ、かつ、患者用の入浴施設が別に設けられている場合
  • 潮湯又は薬湯を使用する公衆浴場で、患者用の入浴施設が別に設けられている場合

また、入浴者に対しても公衆浴場において浴そう内を著しく不潔にするなどの公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為を禁止しており、営業者又は公衆浴場の管理者には、これらの行為をする者に対してその行為を制止することが義務付けられています。

公衆浴場営業許可申請サポート

弊所では、淡路島を含む兵庫県全域のほか、大阪府京都府全域において公衆浴場に関する手続きの代行を承っております。事前調査から書類作成、関係各所との調整、申請の代行及び立入検査の同行に至るまで、しっかりとフルサポートいたします。

下記の報酬額は市場価格を反映したものを当初から割り引いたものですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」を標榜するため、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応には自信を持っています。公衆浴場営業許可申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

一般公衆浴場営業許可330,000円~
その他公衆浴場営業許可220,000円~
※税込み

事務所の最新情報をお届けします