静岡で旅館・ホテル営業をはじめるには丨旅館業営業許可の基準と手続きについて
静岡県といえば、日本を代表するお茶の名産地であり、熱海・伊豆・伊東といった名湯を抱える温泉地であり、何よりも日本のシンボルである富士山が所在する観光資源の宝庫です。個人的には世界に誇るサッカー漫画の名作「キャプテン翼」の舞台が静岡であったことで、幼少期から淡い憧れを抱いていた場所でもあります。
コロナ禍の煽りを直に受けている観光業界ですが、これだけのポテンシャルを秘めた静岡県の観光事業に対して盛り返しを期待する声は決して小さいものではありません。実際に弊所においても旅行業や旅館業といった観光産業に関するお問い合わせも増えてきており、着々とその下地は整いつつあるように思います。
そこで本稿では、静岡県において観光事業への参入を検討する皆さまに向けて、旅館・ホテルを営業するにあたり必要となる許可やその基準について、詳しく解説していきたいと思います。
なお、解説するに当たり、どうしても避けられない専門用語(特に浴槽の衛生基準の部分)が出てきますので、その点は軽く流しつつ、全体像をしっかりと押さえるようにしてください。
旅館・ホテル営業とは
旅館業法及び旅館業施行令では、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業を、合わせて「旅館業」と呼んでいます。このうち旅館・ホテル営業とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業であって、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいいます。
したがって、名目を問わず「宿泊料」を対価として、「宿泊施設」において人を「宿泊」させる営業は、「簡易宿所営業」にも「下宿営業」にも該当しない限りは、すべて「旅館・ホテル営業」として取り扱われることになります。
なお、かつて旅館営業とホテル営業とは和式洋式で別個に区分されていましたが、現在では「旅館・ホテル営業」というひとつの営業形態として統一されています。
旅館・ホテル営業 | 施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの |
簡易宿所営業 | 宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの |
下宿営業 | 施設を設け、1か月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業 |
旅館業営業許可
静岡県において旅館・ホテル営業を営もうとする者は、静岡県知事(保健所設置市にあっては市長)に対して申請し、その許可を受ける必要があります。具体的な申請先については以下のとおりですが、申請の前提として、後述する人的基準、構造設備基準、衛生基準、設置場所基準のすべてを満たす必要があります。
なお、旅館・ホテル営業の許可を受けた者については、その施設において改めて下宿営業の許可を受けることなく下宿営業を営むことが認められています。
★申請先一覧
申請先 | 管轄地域 |
---|---|
静岡市保健所 | 静岡市葵区・駿河区・清水区・庵原郡(旧)蒲原町・(旧)由比町・(旧)清水市 |
浜松市保健所 | 浜松市中区・東区・西区・南区・北区・浜北区・天竜区・(旧)浜北市・引佐郡(旧)細江町・(旧)引佐町・(旧)三ヶ日町・(旧)雄踏町・(旧)舞阪町・磐田郡(旧)龍山村・(旧)佐久間町・(旧)水窪町・周智郡(旧)春野・(旧)天竜市 |
賀茂保健所 | 下田市・賀茂郡東伊豆町・河津町・南伊豆町・松崎町・西伊豆町・(旧)賀茂村 |
熱海保健所 | 熱海市・伊東市 |
御殿場保健所 | 御殿場市・駿東郡小山町 |
富士保健所 | 富士市・庵原(イハラ)郡(旧)富士川町・富士宮市・富士郡(旧)芝川町 |
東部保健所 | 沼津市・田方郡(旧)戸田村・三島市・裾野市・ 伊豆市・田方郡(旧)修善寺町・(旧)土肥町・(旧)天城湯ヶ島町・(旧)中伊豆町・伊豆の国市・田方郡 (旧)伊豆長岡町・(旧)韮山町・(旧)大仁町・函南町・駿東郡 清水町・長泉町 |
中部保健所 | 島田市・榛原郡(旧)金谷町・(旧)川根町・焼津市・志太郡(旧)大井川町・藤枝市・志太郡(旧)岡部町・牧之原市・榛原郡(旧)相良町・(旧)榛原町・吉田町・川根本町・(旧)中川根町・(旧)本川根町 |
西部保健所 | 磐田市・磐田郡(旧)豊田町・(旧)豊岡村・(旧)福田町・(旧)竜洋町・掛川市・小笠郡(旧)大東町・(旧)大須賀町・袋井市・磐田郡(旧)浅羽町・御前崎市・小笠郡(旧)浜岡町・榛原郡(旧)御前崎町・菊川市・小笠郡(旧)小笠町・(旧)菊川町・湖西市・浜名郡(旧)新居町・周智郡森町 |
人的基準
日本語に「寝首をかく」という表現があるように、通常宿泊中の人は無防備な状態に置かれます。このような状態で身体や財産を他人に預けるわけですから、旅館業に携わる「ヒト」については一定の信用性が要求されています。
旅館業法では、旅館業全般について以下の事由を欠格事由として定め、このうちいずれかひとつでも該当する者を、資格に欠ける者として当初から旅館業営業許可の対象から排除しています。
- 精神の機能の障害により、旅館業を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、又は旅館業法若しくは旅館業法に基づく処分に違反して罰金以下の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過していない者
- 許可を取り消され、取消しの日から起算して3年を経過していない者
- 暴力団対策法に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から起算して5年を経過しない者
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記のいずれかに該当するもの法人であって、その業務を行う役員のうちに上記のいずれかに該当する者があるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
構造設備及び衛生基準
旅館・ホテル営業を営むためには、使用する施設や設備について、構造上の基準と衛生を保つために必要な基準をクリアする必要があります。この基準は、国の法令(旅館業法、旅館業施行令、旅館業施行規則)以外に、各自治体の条例にも定めが設けられているため、そのすべてについて適合させる必要があります。
以下で説明するのは、あくまでも旅館業法施行令と「静岡県条例」に設けられている基準です。旅館業に対する規制は市町村条例レベルで細かく設定されているため、申請の際には必ず市町村条例にまで目を通すようにしてください。
なお、知事は営業施設の特殊性によりこの基準によることが適当でないと認めるときは、公衆衛生の維持のために必要な特別の措置を命ずることができます。
また、ここでは全体像をつかむため、構造設備基準と衛生基準をあえて併記しています。便宜上、構造設備基準については赤色、衛生基準については青色で色分けして明示しています。
施設全体に関する基準
- 客室の床面積は、7㎡(寝台を置く客室にあっては9㎡)以上であること
- 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として、事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備、並びに宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること
- 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること
- 施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障を来さないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること
- 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること
- 適当な数の便所を有すること
- その設置場所が一定の施設(後述)の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲おおむね100mの区域内にある場合には、その施設から客室又は客の接待をして客に遊興若しくは飲食をさせるホール若しくは客に射幸心をそそるおそれがある遊技をさせるホールその他の設備の内部を見通すことを遮ることができる設備を有すること
- 客室その他適当な場所にくず入れ容器を備えること
- 客室及び浴室ごとに、日常の衛生管理を行うための責任者を定めること
客室に関する基準
- 客室には、1客室の有効面積3.3㎡(寝台を置く客室にあっては4㎡)につき1人を超えて宿泊させないこと
- 寝具類は、収容定員以上の数を備え、寝衣、敷布、布団カバー、まくらカバー等は、客ごとに洗濯したものと取り替えること
洗面所に関する基準
洗面所は、常に清潔を保ち、湯及び水は、飲用しても衛生上有害でないものを供給すること
便所に関する基準
便所には、手洗設備を設けるほか、くみ取式の便所には、防臭設備を設けること
入浴設備に関する基準(循環式浴槽)
必ずしも循環式浴槽を使用することは求められていませんが、使用する場合については、入浴設備について以下の措置を講ずる必要があります。
- 水道水以外の水を使用した原湯、原水、上がり用湯及び上がり用水並びに浴槽水は、基準(※1)に適合するよう水質を管理すること
- 原湯を貯留する貯湯槽を設置している場合にあっては、貯湯槽内の原湯の温度を原湯の補給口から底部に至るまで、通常の使用状態では摂氏60度以上、最大の使用状態では摂氏55度以上に保つこと(これにより難い場合には、貯湯槽内の原湯の水質を定期的に検査することにより生物膜の状況を監視し、必要に応じて貯湯槽内の原湯の消毒又は貯湯槽内の生物膜を除去するための清掃、及び遊離残留塩素濃度が1l中50mg以上100mg以下の塩素水を貯湯槽内壁に噴霧する方法(又はこれと同等以上の消毒の効果があると知事が認める方法)による消毒を行うこと)
- 貯湯槽の清掃及び消毒は、1年に1回以上行うこと
- 浴槽は、十分にろ過した温水若しくは水又は原湯若しくは原水を供給することにより、常に満水に保つこと浴槽は、1週間に1回以上完全に換水し、かつ、清掃を行うこと(ろ過器を使用していない循環式浴槽にあっては、毎日、完全に換水し、かつ、清掃を行うこと)
- ろ過器は、1週間に1回以上逆洗浄その他の適切な方法により汚れを除去し、かつ、規則で定める方法(※2)により消毒を行うこと
- 1週間に1回以上浴槽水を循環させるための配管その他の設備を規則で定める方法(※3)により消毒を行うこととし、かつ、1年に1回以上配管等の設備内の生物膜の状況を監視し、必要に応じて規則で定める方法による消毒により生物膜を除去すること
- 浴槽水は、塩素系薬剤を投入する方法(又はこれと同等以上の消毒の効果があると知事が認める方法)により消毒を行うこと(浴槽水の遊離残留塩素濃度を1l中0.4mg以上に保つこと)
- 集毛器は、毎日、清掃及び消毒を行うこと消毒装置は、維持管理を適切に行うこと
- 水道水以外の水を使用した原湯、原水、上がり用湯及び上がり用水にあっては1年に1回以上、浴槽水にあっては1年に2回以上水質検査を行い、それらの結果を脱衣場等の見やすい場所に掲示し、かつ、知事に報告すること(水質検査の結果の記録は、検査の日から3年間保存すること)
- 循環している温水又は水を誤飲するおそれがある場合にあっては、誤飲を防止するための注意を掲示すること
- 浴槽に気泡発生装置、ジェット噴射装置その他の微小な水粒を発生させる設備を使用している場合にあっては適切な管理(※4)を行うこと
- 打たせ湯又はシャワーを設置している場合にあっては、循環している温水又は水を使用しないこと
- 共同浴室を設置している場合にあっては、脱衣場等の見やすい場所に、浴槽内に入る前には必ず身体を洗うことその他の入浴上の注意を掲示すること
- 浴槽水を河川又は湖沼に排出する場合にあっては、環境保全のための必要な処理を行うこと
- 衛生管理を自主的に行うため、衛生管理に係る計画書(※5)を知事に提出するとともに、点検表(※6)を作成し、脱衣場等の見やすい場所に掲示すること(計画書の写し及び点検表は、点検の日から3年間保存すること)
- 脱衣場を設置している場合にあっては、衣類かごその他の入浴者が直接利用する設備は、常に清潔に保つこと
- ろ過器を設置する循環式浴槽を設置する場合にあっては、ろ過器は、砂式ろ過器で、1時間当たりのろ過能力が浴槽の容量以上であるものとし、かつ、ろ材には、十分な逆洗浄を行うことができるものを使用したものとすること(これにより難い場合には、1時間当たりのろ過能力が浴槽の容量以上であるものとし、かつ、清掃及び消毒を容易に行うことができる構造のものとすること)
- ろ過器を設置する循環式浴槽を設置する場合にあっては、集毛器を設置すること(循環している温水又は水がろ過器内に入る前に設けられる構造とすること)
- ろ過器を設置する循環式浴槽を設置する場合にあっては、浴槽水の消毒装置を設置すること(循環している温水又は水がろ過器内に入る直前に消毒に用いる薬剤が注入される構造とすること)
- ろ過器を設置する循環式浴槽を設置する場合にあっては、浴槽水の補給口は、浴槽の底部に近い部分に接続する構造のもの又は微小な水粒の発生を防止する構造のものとすること(浴槽水の補給に関し適切な管理(※7)を行う場合にあってはこの限りでない)
★用語の定義
循環式浴槽 | ろ過器その他の設備を設置し、浴槽水を循環させる方式の浴槽 |
浴槽水 | 浴槽内の温水又は水 |
原湯 | 浴槽水を再利用しないで浴槽に直接供給される温水 |
原水 | 原湯の原料に用いる水及び浴槽水の温度を調整する目的で浴槽水を再利用しないで浴槽に直接供給される水 |
上がり用湯 | 洗い場及びシャワーに備え付けられた湯栓から供給される温水 |
上がり用水 | 洗い場及びシャワーに備え付けられた水栓から供給される水 |
脱衣場 | 浴室に附属し、宿泊者が衣類の着脱を行う室又は場所 |
共同浴室 | 旅館業の施設に設けられた浴室であって、同時に複数の者を入浴させることを予定しているもの |
★水質基準(※1)
水道水以外の水を使用した原湯、原水、上がり用湯及び上がり用水は、以下の基準に適合するよう水質を管理する必要があります。
検査項目 | 検査方法 | 基準値 |
---|---|---|
色度 | 比色法又は透過光測定法 | 5度以下 |
濁度 | 比濁法、透過光測定法、積分球式光電光度法、散乱光測定法又は透過散乱法 | 2度以下 |
pH値 | ガラス電極法 | 5.8以上8.6以下 |
(全有機炭素(TOC)の量)又は有機物等(マンガン酸カリウム消費量) | 有機物(全有機炭素(TOC)の量)全有機炭素計測定法、有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)にあっては滴定法 | 有機物(全有機炭素(TOC)の量)にあっては1l中3mg以下、有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)にあっては1l中10mg以下 |
大腸菌 | 特定酵素基質培地法 | 検出されないこと |
レジオネラ属菌 | ろ過濃縮法又は冷却遠心濃縮法 | 検出されないこと(100ml中10cfu未満であること) |
ただし、温泉水若しくは井戸水又は温泉の含有物質若しくは医薬品等を原料とした薬湯を使用する場合であって、この基準により難く、かつ、衛生上危害を生ずるおそれがないと知事が認めたときは、色度、濁度、pH値及び有機物(全有機炭素(TOC)の量)又は有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)については、基準値の一部又は全部に適合しなくてもよいものとされています。
また、浴槽水については、以下の基準に適合するよう水質を管理する必要があります。
検査項目 | 検査方法 | 基準値 |
---|---|---|
濁度 | 比濁法、透過光測定法、積分球式光電光度法、散乱光測定法又は透過散乱法 | 5度以下 |
有機物(全有機炭素(TOC)の量)又は有機物等(過マンガン酸カリウム消費量) | 有機物(全有機炭素(TOC)の量)にあっては全有機炭素計測定法、有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)にあっては滴定法 | 有機物(全有機炭素(TOC)の量)にあっては1l中8mg以下、有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)にあっては1l中25mg以下 |
大腸菌群 | 下水の水質の検定方法等に関する省令第6条に規定する方法 | 1ml中1個以下 |
レジオネラ属菌 | ろ過濃縮法又は冷却遠心濃縮法 | 検出されないこと(100ml中10cfu未満であること) |
ただし、温泉水若しくは井戸水又は温泉の含有物質若しくは医薬品等を原料とした薬湯を使用する場合であって、この基準により難く、かつ、衛生上危害を生ずるおそれがないと知事が認めたときは、濁度及び有機物(全有機炭素(TOC)の量)又は有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)については、基準値の一部又は全部に適合しなくてもよいものとされています。
★ろ過器の消毒方法(※2)
ろ過器の消毒方法は、以下のいずれかの方法によるものとされています。
- 遊離残留塩素濃度が1l中5mg以上10mg以下の塩素水を注入する方法(又はこれと同等以上の消毒の効果があると知事が認める方法)
- 浴槽水に塩素系薬剤を投入することにより浴槽水の遊離残留塩素濃度を1l中10mg以上50mg以下とし、浴槽水を2時間以上循環させた後、中和処理して排出する方法(又はこれと同等以上の消毒の効果があると知事が認める方法)
- 浴槽水の温度を摂氏60度以上に維持した状態で1時間以上循環させた後、浴槽水を排出する方法
- 浴槽水の温度を摂氏65度以上に維持した状態で30分以上循環させた後、浴槽水を排出する方法
- 過酸化水素により処理する方法二酸化塩素処理による方法過炭酸ナトリウムにより処理する方法
★配管等の設備の消毒方法(※3)
配管等の設備の消毒方法は、以下のいずれかの方法によるものとされています。
- 浴槽水に塩素系薬剤を投入することにより当該浴槽水の遊離残留塩素濃度を1l中10mg以上50mg以下とし、浴槽水を2時間以上循環させた後、中和処理して排出する方法(又はこれと同等以上の消毒の効果があると知事が認める方法)(1週間に1回以上実施する消毒に係るもの)
- 浴槽水の温度を摂氏60度以上に維持した状態で1時間以上循環させた後、浴槽水を排出する方法(1週間に1回以上実施する消毒に係るもの)
- 浴槽水の温度を摂氏65度以上に維持した状態で30分以上循環させた後、当該浴槽水を排出する方法(1週間に1回以上実施する消毒に係るもの)
- 過酸化水素により処理する方法(必要に応じて実施する消毒に係るもの)
- 二酸化塩素処理による方法(必要に応じて実施する消毒に係るもの)
- 過炭酸ナトリウムにより処理する方法(必要に応じて実施する消毒に係るもの)
★気泡発生装置等の管理方法(※4)
気泡発生装置、ジェット噴射装置その他の微小な水粒を発生させる設備を使用している場合にあっては、以下のように管理を行うよう努めるものとされています。
- ろ過器を使用している場合にあっては、ろ過器は、毎日1回以上逆洗浄その他の適切な方法により汚れを除去し、かつ、遊離残留塩素濃度が1l中5mg以上10mg以下の塩素水を注入する方法(又はこれと同等以上の消毒の効果があると知事が認める方法)により消毒を行うこと(けいそう土式ろ過器で、浴槽水を毎日完全に換水している浴槽に係るものにあってはこの限りでない)
- 浴槽水は、2か月に1回以上レジオネラ属菌についての水質検査を行うこと(ろ過器を設置していない浴槽の浴槽水又はけいそう土式ろ過器を使用し、かつ、浴槽水を毎日完全に換水している浴槽の浴槽水にあってはこの限りでない)
★衛生管理に係る計画書(※5)
旅館業を営む者が営業を開始したときは、以下の事項を記載した計画書を遅滞なく知事に提出するものとされています。これは計画書の記載事項に変更があったときも同様です。
- 営業者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称、事務所所在地及び代表者の氏名)
- 営業施設の名称及び所在地
- 営業施設の使用状況
- 営業施設の構造設備
- 営業施設の管理計画
- 浴室の責任者の氏名及び連絡先
★点検表(※6)
旅館業を営む者は、以下の事項を記載した点検表を作成する必要があります。
- 営業者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称、事務所所在地及び代表者の氏名)
- 営業施設の名称及び所在地
- 営業施設の構造設備
- 営業施設の管理計画及び点検状況
- 浴室の責任者の氏名
★浴槽水の補給に関する管理方法(※7)
- ろ過器は、毎日1回以上逆洗浄その他の適切な方法により汚れを除去し、かつ、遊離残留塩素濃度が1l中5mg以上10mg以下の塩素水を注入する方法(又はこれと同等以上の消毒の効果があると知事が認める方法)により消毒を行うこと(けいそう土式ろ過器で、浴槽水を毎日完全に換水している浴槽に係るものにあってはこの限りでない
- 浴槽水は、2か月に1回以上レジオネラ属菌についての水質検査を行うこと(けいそう土式ろ過器を使用し、かつ、浴槽水を毎日完全に換水している浴槽の浴槽水にあってはこの限りでない)
- 浴槽水は、塩素系薬剤を投入する方法(浴槽水の遊離残留塩素濃度を1l中0.4mg以上に保つ方法に限る)(又はこれと同等以上の消毒の効果があると知事が認める方法)により消毒を行うこと
入浴設備に関する基準(その他)
循環式浴槽以外の浴槽を使用している場合にあっては、入浴設備について以下の措置を講ずる必要があります。
- 水道水以外の水を使用した原湯、原水、上がり用湯及び上がり用水並びに浴槽水は、基準(※1)に適合するよう水質を管理すること
- 原湯を貯留する貯湯槽を設置している場合にあっては、貯湯槽内の原湯の温度を原湯の補給口から底部に至るまで、通常の使用状態では摂氏60度以上、最大の使用状態では摂氏55度以上に保つこと(これにより難い場合には、貯湯槽内の原湯の水質を定期的に検査することにより生物膜の状況を監視し、必要に応じて貯湯槽内の原湯の消毒又は貯湯槽内の生物膜を除去するための清掃、及び遊離残留塩素濃度が1l中50mg以上100mg以下の塩素水を貯湯槽内壁に噴霧する方法(又はこれと同等以上の消毒の効果があると知事が認める方法)による消毒を行うこと
- 貯湯槽の清掃及び消毒は、1年に1回以上行うこと
- 浴槽に気泡発生装置、ジェット噴射装置その他の微小な水粒を発生させる設備を使用している場合にあっては適切な管理(※4)を行うこと
- 打たせ湯又はシャワーを設置している場合にあっては、循環している温水又は水を使用しないこと
- 共同浴室を設置している場合にあっては、脱衣場等の見やすい場所に、浴槽内に入る前には必ず身体を洗うことその他の入浴上の注意を掲示すること
- 浴槽水を河川又は湖沼に排出する場合にあっては、環境保全のための必要な処理を行うこと
- 衛生管理を自主的に行うため、衛生管理に係る計画書(※5)を知事に提出するとともに、点検表(※6)を作成し、脱衣場等の見やすい場所に掲示すること(計画書の写し及び点検表は、点検の日から3年間保存すること)
- 脱衣場を設置している場合にあっては、衣類かごその他の入浴者が直接利用する設備は、常に清潔に保つこと
- 共同浴室の浴槽は、原湯又は原水を供給することにより、常に満水に保つこと
- 浴槽は、毎日、完全に換水し、かつ、清掃を行うこと
- 水道水以外の水を使用した原湯、原水、上がり用湯及び上がり用水並びに浴槽水(入浴者ごとに完全に換水する浴槽の浴槽水を除く)にあっては、1年に1回以上水質検査を行い、その結果を脱衣場等の見やすい場所に掲示し、かつ、知事に報告すること(水質検査の結果の記録は、検査の日から3年間保存すること)
脱衣場に関する基準
脱衣場を設置する場合、宿泊者の需要を満たすことができる適当な広さとし、かつ、衣類かごその他の衣類の保管設備を有すること
浴室に関する基準
- 入浴者の利用に供する湯栓及び水栓を設けること
- 洗い場を設置する場合にあっては、洗い場の床面から浴槽の上縁までの高さは、5cm以上とすること
- 打たせ湯又はシャワーを設置する場合にあっては、循環している温水又は水を用いない構造とすること
- 気泡発生装置等を設置する場合にあっては、気泡発生装置等の空気の取入口から土ぼこりが入らない構造とすること
- 屋外に浴槽を設置する場合にあっては、屋外の浴槽水が屋内の浴槽水に混入しない構造とすること
サウナ室に関する基準
サウナ室を設置する場合にあっては、サウナ室の出入口の扉に室内の全部を見通すことができる窓を設け、室内の見やすい場所にブザーその他の非常用設備を設けること
構造設備基準等の緩和措置
以下の施設のように季節的状況、地理的状況その他特別の事情により、これらの基準による必要がない場合又は基準によることができない場合であって、かつ、施設の所在地を管轄する保健所の長が公衆衛生の維持に支障がないと認めたときは、定員を1客室の有効面積1.65㎡につき1人とすることができます。
この場合であっても、寝具類については、収容定員以上の数を備え、寝衣、敷布、布団カバー、まくらカバー等は、必要に応じて洗濯することが求められています。
- キャンプ場、スキー場、海水浴場等において特定の季節に限り営業する施設
- 交通が著しく不便な地域にある施設であって利用度の低いもの
- 体育会、博覧会等のために一時的に営業する施設
- 農林漁業体験民宿業に係る施設
また、上記の施設以外で修学旅行等の団体客を一時的に多数宿泊させるものについても、定員を客室の有効面積1.65㎡につき1人とすることができます。
設置場所基準
施設の設置場所が、以下の施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む)の周囲おおむね100mの区域内にある場合において、旅館・ホテルの設置によってこれらの施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認められるときは、原則として旅館業営業許可を受けることはできません。
- 学校教育法に規定する学校(大学を除く)
- 幼保連携型認定こども園
- 児童福祉施設
- 図書館
- 博物館及び博物館に相当する施設
- 公民館
- 公共職業能力開発施設
- 青少年のための教育施設、スポーツ施設その他の施設のうち、主として児童の利用に供される施設又は多数の児童の利用に供される施設で、知事が指定したもの
ただし、許可不許可の判断は知事(又は保健所設置市の市長)に委ねられており、上記のケースについて許可を与える場合には、あらかじめ、旅館・ホテルの設置によって清純な施設環境が著しく害されるおそれがないかどうかについて、上記施設の学長等の意見を求めなければならないものとされています。
上記施設の学長等は、旅館・ホテルが構造設備基準に適合しなくなった場合、又は構造設備基準に違反した場合において、清純な施設環境が著しく害されていると認めるときは、処分について知事(又は保健所設置市の市長)に対して意見を述べることができるものとされています。
旅館業営業許可申請の流れ
STEP1:事前調査
候補地を選定後、まずは旅館業法と関係法令による規制について調査を行います。土地の利用には都市計画法上の用途地域による規制があり、以下の用途地域以外では、そもそも旅館・ホテル営業を行うことはできません。
- 第一種住居地域(旅館業の用途に供する部分が3000㎡以下の場合に限る)
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
さらによく問題になるのが農地法との兼ね合いです。農地は農業という重要な産業の基盤となるものなので、たとえ所有者であっても、自由に農地を潰すことは認められていません。このため、農地の転用を行う際には、農業委員会から農地転用許可を受ける必要があります。また、場合によっては、都市計画法上の開発許可を必要とするケースも想定されます。
農地転用許可について
都市計画法上の開発許可について
このほかにも、建築基準法、消防法、自然公園法、景観法などによる規制も想定して計画を進めます。
★用途変更
旅館・ホテルの用途となる部分の床面積が200㎡を超える場合には、元々その建物が旅館やホテルであった場合を除き、建築確認申請による「用途変更」が必要となります。なお、床面積が200㎡以下の場合であっても、建物は建築基準法に沿った建築物でなければなりません。
旅館業における建築基準法の基準について
旅館業における消防法の基準について
自然公園法に基づく規制について
景観法16条の届出について
STEP2:事前協議
旅館業営業許可申請は大掛かりな手続きであるため、施設の工事着工前に設計図等を持参の上、事前に保健所(保健福祉事務所)と協議を行う必要があります。また、建設や改築工事などについては管轄の土木事務所、消防関連の手続きについては、消防本部などと事前協議を行います。
STEP3:書類の準備
関係機関から求められた膨大な数の書類を準備します。図面も多く求められるため、広ければ広いほど、規制が多ければ多いほど大変な作業となります。また、旅館・ホテルの予定施設から100mの区域内に学校・児童福祉施設等の一定の施設がある場合には、譲受けや種別変更の場合を除き、証明願(距離証明)の手続きも必要となります。
STEP4:書類の提出
以下の書類をそろえて保健所(保健福祉事務所)の窓口に提出し、申請手数料は22,000円を納付します。同時に公衆浴場営業許可を申請する場合にはさらに22,000円、温泉利用許可を申請する場合には36,000円を納付します。
- 旅館業営業許可申請書
- 水道水使用証明書又は水質検査成績書
- 地図、配置図、各階平面図(1/100 以上)
- 定款又は寄付行為の写し(法人)
- 循環ろ過装置等の概要書(循環ろ過装置等を設置する場合)
- 衛生管理に係る計画書
- 農林漁家民宿確認書の写し(該当する場合)
- 建築確認通知書の写し(建築確認が必要な場合は提示)
- 建築物検査済証の写し(建築確認が必要な場合は提示)
- 消防法令適合証明書(証明書が交付された場合は提示)
- その他都道府県知事等が公衆衛生上又は善良の保持上必要があると認める書類
STEP5:現地調査
調査員が現地を訪れ、施設の構造設備について、申請内容と相違がないかを調査します。この際にはヒヤリングによる調査も行われるため、必ず立会いが必要になります。
STEP6:許可書の交付
申請書提出後、土日祝日・年末年始休暇を除く15日の間に許可不許可の処分が下されます。許可書が交付されることによりようやく営業を開始することができるようになります。
営業者の義務等
人を宿泊させることは、他人の健康や財産を預かることに等しく、大きな責任を伴う行為です。このため営業許可を取得した旅館業の営業者には、以下に説明するとおり、多くの義務と努力義務が課されます。
宿泊の拒否
営業者は、次のいずれかに該当する場合を除いては、宿泊を拒むことはできません。
- 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき
- 宿泊しようとする者が賭博、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき
- 宿泊施設に余裕がないとき
- 宿泊しようとする者がでい酔者等で、他の宿泊者に迷惑を及ぼすおそれがあると認められるとき
- 宿泊者が氏名等を告げないとき
また、営業者は旅館業の施設又は営業者の事務所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業、国籍及び旅券番号(外国人)その他都道府県知事が必要と認める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければなりません。
宿泊者についても、営業者から請求があったときは、営業者に対して上記の事項を告げなければならないものとされています。
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