トレーラーハウスで宿泊事業をはじめるには│トレーラーを活用した宿泊施設の法的な取扱いについて

トレーラーハウスの宿泊施設

比較的初期費用が安く済むことから、時折トレーラーハウスを利用した民泊を開業したいというご相談をいただきます。近年はトレーラーハウスを店舗、事務所、仮設住宅などに活用するケースもあり、風呂・キッチン・トイレ等の設備を備え、はじめから宿泊施設として活用することを想定したトレーラーハウスも製造されており、販売やリース事業等のほか、投資の対象とされているケースもあります。

ところで民泊や簡易宿舎をはじめる際には許可申請や届出といった手続きが必要になるわけですが、車両を活用するという点で、建物を使用して宿泊施設を営む場合とは申請や届出の方法が異なります。

そこで本稿では、トレーラーハウスを活用して民泊や簡易宿舎をはじめようとする際の参考となるよう、トレーラーハウスに関する周辺知識についてざっくり解説していきたいと思います。

本稿においてご紹介する建築基準法や消防法といった法令の解釈と運用は各自治体ごとの判断に委ねられるため全国一律の統一基準とはなりません。実際に手続きをはじめようとする際は、管轄の行政機関に対し、必ず事前確認を行うようにしてください。

トレーラーハウスとは

トレーラーハウスとは、車輪を有する移動型住宅で、原動機を備えず牽引車により牽引されるものを指します。一般物件とは異なり、車輪がついていて移動が可能な点が特長となっています。また、自走できるキャンピングカーに対して、牽引しなければ動かせない点が一般車両とも異なります。

トレーラーハウスには、自由に移動ができたり初期投資を抑えることができるといった利点のほか、建築基準法上の確認申請が不要になるといったメリットがあります。

ただし、トレーラーハウスを利用する場合でも、トレーラー自体が車両ではなく建築物とみなされるケースがあり、この場合には上記のメリットは、もはや享受することができなくなってしまいます。次章では使用するトレーラーが車両にあたるのか、建築物にあたるのかを判断する基準について述べてみたいと思います。

建築物とみなされるケース

基本的にトレーラーハウスは「車両」ですから、そのまま置いていれば当然に車両とみなされるのが原則です。ただし、車両としての条件を満たさない場合、トレーラーハウスは車両ではなく建築物として取り扱われるため、事前に建築確認を受けなければ違法建築物になってしまいます。

具体的には、以下3つの条件に該当するものが「建築物」、該当しないものが「車両」とみなされます。なお、設置時点では建築物に該当しない場合であっても、その後の改造等を通じて土地への定着性が認められるようになった場合については、その時点から建築物として取り扱われることになります。

  • トレーラーハウス等が随時かつ任意に移動することに支障のある階段、ポーチ、ベランダ、柵等があるもの
  • 給排水、ガス、電気、電話、冷暖房等のための設備配線や配管等をトレーラーハウス等に接続する方式が、簡易な着脱式(工具を要さずに取り外すことが可能な方式)で ないもの
  • 規模(床面積、高さ、階数等)、形態、設置状況等から、随時かつ任意に移動できる とは認められないもの
  • 適法に公道を移動できること

トレーラーハウスの設置基準

トレーラーハウスを車両扱いとするためには「随時かつ任意に移動できること」が必要とされますが、以下のような場合は「随時かつ任意に移動できるもの」として認められず、トレーラーハウスは建築物として取り扱われることになります。

  • 車輪が取り外されているもの又は車輪は取り付けてあるがパンクしているなど走行するために十分な状態に車輪が保守されていないもの
  • 上部構造が車輪以外のものによって地盤上に支持されていて、その支持構造体が容易に取り外すことができないもの(支持構造体を取り外すためにはその一部を用具を使用しなければ取り外しができない場合等)
  • トレーラーハウス等の敷地内に、トレーラーハウス等を設置場所から公道まで支障なく移動することが可能な構造(勾配、幅員、路盤等)の連続した通路がないもの
  • トレーラーハウス等が適法に公道を移動できないもの

なお、臨時運行許可(仮ナンバー)や特殊車両通行許可等の許可を受けただけでは、「随時かつ任意に移動できるもの」と判断することはできません。また、同一場所で10年を超えた使用は脱法行為となる可能性があります。

住宅とは

トレーラーハウスを活用した宿泊施設を「誰でも簡単に開業することができる」と断言しているサイトも見受けますが、実務上そう簡単に事は進みません。そもそも民泊を規定する住宅宿泊事業法においては、宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないもの住宅宿泊事業としています。

さらに「住宅」とは、次のいずれにも該当する家屋をいうのであって、単に人が出入りする構造物を指すのではありません。

  • 家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備が設けられていること
  • 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋、随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋であって、事業(人を宿泊させるもの又は人を入居させるものを除く)の用に供されていないもの

トレーラーハウスを「住宅」として取り扱うのか否かの解釈は、トレーラーハウスを「車両」とみなすか「建築物」とみなすかという点とも別の観点となります。この辺りの解釈が各自治体ごとに温度差を感じる部分です。

一般論で言えば「建築物」とみなされたトレーラーハウスを同時に「住宅」として取り扱うことは可能でしょう。ただ「車両」としてみなされたトレーラーハウスを「住宅」として取り扱うことについては、自治体の判断によるというのが実務レベルでのお話しです。

まとめ

このようにトレーラーハウスを活用した宿泊施設の開設は決して「簡単」なものではありません。車両ならではの特性を活かした事業展開や、享受することができるメリットは確かに魅力的ですが、実際に事業をスタートする際には先走りせず、事前にしっかりと確認して計画を進めるようにしてください。

★まとめ
  • トレーラーハウスを「車両」として取り扱う場合と「建築物」として取り扱う場合とがあり、どちらに該当するかについては基準がある。
  • トレーラーハウスを「建築物」として取り扱う場合には建築確認が必要になるが、「車両」として取り扱う場合には不要である。
  • トレーラーハウスを「建築物」として取り扱う場合には「住宅」としても認められる公算が高い。
  • トレーラーハウスを「車両」として取り扱う場合に「住宅」としても認められるのかについては各自治体の判断による。

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