旅館施設内における風俗営業について

大宴会場と座席

旅館業と風俗営業という一見して接点がないように思われがちな営業形態ですが、京都府や奈良県をはじめ、温泉宿等で旅館業を営みつつ、その施設内において同時に風俗営業を営むケースはそんなに珍しいことでもありません。

一例として、旅館の施設内に設けられたバーやスナック等で接待を提供するケースや、コンパニオン派遣業者から派遣を受けて宴会場において宿泊客に接待を提供するケース等がこれに該当します。また、旅館内において大規模な擬似的カジノスペースを設けることも風俗営業に該当します。

逆に言えば、旅館業の営業許可を取得しているからと言って風営法の規定が除外されることはなく、例えば女将さんや仲居さんがお酌をしてもてなしたり、必要以上の談笑を行うことも含め、施設内において接待や遊興を提供する場合は、例外なく風営法の適用を受けることになります。

したがって、営業形態が風俗営業に該当するものであれば、旅館業の営業許可とは別に風俗営業許可を取得する必要があるほか、風俗営業を提供するスペースにおいては深夜営業(午前0時〜午前6時の間における営業)や18歳未満の者の入場が禁止されることになります。

ただし、後述するとおり、風俗営業を提供する場所として明確に区画された場所以外の客室等については、通常の旅館業として使用することができますし、深夜営業や未成年者の入場を制限する必要もありません。また、風俗営業許可を受けた客室であっても、接待を提供しない時間帯であれば旅館業の客室として使用することも可能です。

風俗営業許可を受ける上では、人的要件、構造的要件及び場所的要件を満たすがありますが、このうち人的要件については、通常の店舗内における申請と求められるものが変わりません。

他方、場所的要件については、各自治体の実情に合わせて条例で定められており、風営法の基準よりもやや緩やかな基準となっていることが多い印象を受けます。

また、構造要件については、風営法に定められている客室面積や設備に対する基準のほか、国家公安委員会規則により、以下のような基準が設けられています。

  • 風俗営業の営業所が設けられる階の営業所以外の部分、その直上部分(営業所が最上階に設けられる場合は屋上)及び直下部分を旅館業法の許可を受けて旅館・ホテル営業を営む者(以下、ホテル等営業者)、風俗営業者、特定遊興飲食店営業者、深夜酒類提供飲食店を営む者において酒類提供飲食店営業又は興行場営業を営む者が管理すること
  • バルコニーを設置する場合にあっては、バルコニーに通じる出入口に二重扉を設けること
  • 非常の場合を除き、風俗営業の営業所が設けられる施設のうちホテル等営業者が管理する部分を通じてのみ客(客となろうとする者を含む)が営業所に出入りできるような構造であること
  • 風俗営業の営業所への客の出入りをホテル等営業者が適切に管理することが見込まれること
  • 風俗営業の営業所が設けられる旅館・ホテル営業に係る施設がラブホテル・モーテル等の営業の用に供されるものでないこと

さらに警察庁の通達(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準 :660KB)により、以下のような基準も明示されています。

旅館業を営む者が旅館業の施設の一部において常態として接待飲食等営業を営もうとする場合における風俗営業の許可は、接待飲食等営業の用に供する旅館業の施設の一部を特定し、必要に応じ条件を付するなどして行うことができる。

(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準)

これは例えば、旅館の施設である宴会場について社交飲食店の営業の許可をする場合において、客室で客の接待をしないこと及び許可の対象となる宴会場と客室とは明確に区分された構造とすることという内容の条件を付すること等が考えられます。

そしてこの場合、前述したとおり、風俗営業を提供する場所として特定した場所以外の客室等については、通常の旅館業として使用することができます。

風俗営業開業サポート

風俗営業許可申請は必要書類が非常に多く、場所や設備の確認といった事前調査の必要性もあることから、手続きには相当な負担が強いられます。都道府県ごとに条例や運用方法の違いも存在するため、風営法に精通していなければ、たとえ行政書士であったとしても大変な作業となることは間違いありません。

弊所は旅館業及び風俗営業に関する手続きに関与する機会が多く、旅館施設内における風俗営業許可の申請についても、同業他社より数多くの経験を積んできたという自負があります。そのためご依頼をいただいた際は、面倒な事前調査から、警察署との協議、書類の作成と収集、実査の立会いに至るまでを含めて、しっかりまるっと迅速にサポートさせていただいています。

また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。旅館施設内における風俗営業許可の取得でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

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