なぜパチンコだけ景品がOKなのか|麻雀・ゲームセンターとの違いを行政書士が解説

パチンコで勝って喜ぶ人

パチンコ店で出玉を景品に換える光景は、誰にとっても見慣れた日常の一コマです。台の前でチンジャラという音を聞きながら遊び、最後は玉の数に応じて何かしらの景品を受け取る。この一連の流れを、法律的に特殊な仕組みだと意識したことがある人はほとんどいないでしょう。

しかし実際には、これはかなり例外的な扱いです。風営法という同じ法律の枠組みの中にありながら、麻雀店やゲームセンターでは、遊技の結果に応じて客に景品を渡すことが認められていません。麻雀もゲームセンターの遊技機も、パチンコと同じく「射幸心をそそるおそれのある遊技」として規制対象に位置づけられている点は変わらないのにもかかわらずです。

外から見れば、この3つはどれも「勝ち負けや運の要素があって、のめり込みやすい遊び」という共通点を持つ業態です。それなのに、なぜパチンコだけが景品提供を許され、麻雀店やゲームセンターは許されていないのか。実はこの線引きには、賭博罪との距離感や、戦後から続く業界の歴史的経緯が絡んでいます。単に「昔からそうだから」では片付けられない、法律上の理屈がちゃんと存在しています。

本稿では、風俗営業許可を扱う行政書士の立場から、この線引きがどのような条文と解釈に基づいているのか、そしてなぜパチンコだけが特別扱いされてきたのかを、順を追って整理していきます。

麻雀店・パチンコ店は同じ「4号営業」

風営法第2条第1項第4号は、「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」を風俗営業のひとつとして定めています。麻雀店とパチンコ店は、条文上まったく同じカテゴリー(4号営業)に属する業態です。

一方、ゲームセンター(UFOキャッチャーや一般的なアミューズメント機器など)は「5号営業」に区分され、条文上は4号営業とは別枠になっています。とはいえ、どちらも「射幸心をそそるおそれのある遊技」を扱う業態という点は共通しています。

風営法第23条第2項は、4号営業のうち麻雀店、および5号営業を営む者について、「遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」と明確に定めています。つまり、遊技の結果に応じた賞品提供が認められているのは、4号営業の中でもパチンコ店等だけという、条文の枠組みだけでは説明のつかない差があるわけです。

麻雀店・ゲームセンターはなぜ景品を出せないのか

理由はシンプルで、「遊技の結果に応じて金品を渡す」という行為そのものが、刑法上の賭博罪と紙一重だからです。

麻雀は、対局の勝敗に応じて点数(=実質的な金銭的価値)をやり取りする性質が非常に強いゲームです。仮に麻雀店が「勝った客に景品を渡す」ことを合法的に認めてしまうと、店を舞台にした賭博行為を法律が公認するのとほぼ同じ結果になってしまいます。俗に言う「テンピン麻雀」のような実質的な賭け麻雀が違法とされているのも、同じ理屈です。

ゲームセンターも同様で、5号営業として扱われる機器はあくまで「遊技そのものを楽しむための娯楽機器」という建付けです。スロットマシンやテレビゲーム機で得点や出玉数に応じた景品・現金交換を行うことは、法律上明確に禁止されています。

唯一の例外|クレーンゲーム

ここで多くの人が疑問に思うのが、「ゲームセンターのクレーンゲームでは普通に景品がもらえるじゃないか」という点です。これは、警察庁が発出している解釈運用基準(通達)による例外的な取扱いです。

条文上は、クレーンゲームも他の5号営業機器と同じく「遊技の結果に応じた賞品提供」に該当し、本来は禁止対象です。しかし警察庁は、クレーンで直接つかんで獲得する物品のうち、小売価格でおおむね1,000円以下のものについては、「遊技の結果に応じて賞品を提供することには当たらない」ものとして扱うという解釈を示しています。この基準は2022年3月に、それまでの800円から1,000円へと引き上げられました。

建前としては「クレーン操作というゲームそのものへの対価であって、景品はあくまで副次的なおまけ」という整理です。あくまで法令そのものに書かれた例外ではなく、警察庁の裁量的な運用基準という位置づけである点、そして対象がクレーン式の遊技機に限られる点には注意が必要です。

ただし、カプセルに入った番号札を景品と交換するような間接的な方式や、1,000円を超える高額景品を置く運用は、この例外の対象外となり摘発リスクを伴います。

パチンコだけがなぜ特別扱いされているのか

パチンコに景品提供が認められている一番の理由は、単純に「歴史的にそういう制度として作られてきたから」です。

戦後、パチンコの景品はタバコが中心でした。当時タバコは配給制で価値が高く、これを景品として渡す商慣行が定着していきます。その後、景品を現金化したい客のニーズに応える形で、景品の買取りを仲介する業者が登場しました。ただし、この仲介業者に暴力団が資金源として介入する事態が相次いだため、1961年に大阪でパチンコ業界と警察OBが連携し、業者を分離する仕組み(後の「三店方式」)が作られます。

つまりパチンコの景品制度は、「賭博を合法化した」のではなく、「もともと存在していた景品授受の商慣行を、暴力団排除の観点から適正な形に制度化していった」という経緯で今の形になっています。麻雀のように直接的な金銭のやり取りを模した遊技ではなく、あくまで「遊技の結果として景品(物)を得る」という体裁が保たれている点が、法律上の整理を可能にしている部分といえます。

ここでもうひとつ押さえておきたいのが、風営法上の書きぶりです。風営法第19条は、4号営業者に対して、遊技料金・賞品の提供方法・賞品価格の最高限度について、国家公安委員会規則の定める基準に従って「営業を営まなければならない」と規定しています。つまりパチンコ店にとって景品提供は、「やってもいい」という任意のオプションではなく、営業を続ける以上は基準に沿って必ず行うことが前提になっている仕組みです。

これは、麻雀店やゲームセンターに対する「してはならない」という禁止規定とは、条文の立て付け自体が正反対です。景品のやり取りが、パチンコという遊技の仕組みそのものに組み込まれていることの表れといえるでしょう。

麻雀店4号営業だが、遊技結果に応じた景品提供は不可。(賭博罪との関係)
パチンコ店4号営業で、厳格なルール・三店方式のもとで景品提供が可能。
ゲームセンター5号営業で、原則は景品提供不可。ただしクレーンゲームのみ、警察庁通達により1,000円以下の景品提供が例外的に認められている。

景品提供が認められる代わりに厳しいルールがある

パチンコ店が景品を提供できるとはいえ、無制限に何でも許されるわけではありません。風営法上、以下の行為は明確に禁止されています。

  • 現金または有価証券を景品として提供すること
  • 客に提供した景品を店が買い取ること(自社買い)
  • 遊技球等(パチンコ玉・メダル)を営業所外に持ち出させること

現金を直接渡せない代わりに使われているのが、いわゆる「三店方式」です。パチンコ店・景品交換所・景品問屋という、資本関係のない3つの独立した事業者が関わることで、店が直接現金を渡す形を作らずに、客が特殊景品を現金化できる仕組みになっています。

景品交換所はパチンコ店とは別法人・別棟である必要があり、経営者が同一であることも認められません。景品交換所を営むには、特殊景品の買取りが古物営業に該当するため、別途古物商許可も必要になります。

もっとも、この三店方式については「建前と実態が違うのではないか」という批判が根強く存在します。パチンコ店・景品交換所・景品問屋が資本的に独立している体で運用される一方、実際には景品交換所の経営に暴力団が関与していた時期があったことは既に触れたとおりです。

近年でも、パチンコ店の経営者が実質的に自身の景品交換所を経営し、客から直接景品を買い取っていたとして風営法違反(景品買い取り禁止)で逮捕される事例が発生しています。「独立した三者」という建前が、実務上どこまで厳密に維持されているかは、業界内でも常に問われ続けているテーマです。

三店方式は、法律上は適法なスキームとして確立されていますが、「実質的な現金化を可能にするための迂回構造である」という批判が根強く残っていることも、公平を期すために触れておくべきでしょう。

まとめ

麻雀店・パチンコ店・ゲームセンターは、どれも「射幸心をそそる遊技」を提供する業態としてひとくくりに語られがちですが、景品提供という切り口で見ると、法律上の立て付けはまったく別物です。

これから4号営業(パチンコ店・麻雀店)や5号営業(ゲームセンター)の許可取得を検討されている方は、業態によって守るべきルールがまったく異なる点に注意が必要です。景品制度の設計を誤ると、風営法違反として刑事処分の対象になるケースもあるため、開業準備の段階で一度専門家に確認しておくことをお勧めします。

弊所はパチンコ店・雀荘(4号営業)、ゲームセンター(5号営業)の営業許可についても申請代行の実績があります。景品制度の設計や三店方式の構築を含め、開業準備段階からご相談いただけます。

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