特定小規模施設用自動火災報知設備の設置基準について

特定小規模施設用自動火災報知設備のイメージ

消防法令の改正により、従来は設置することを免除されていた、延べ面積300㎡未満のグループホーム等の小規模社会福祉施設、簡易宿泊所、4床以上の診療所、宿泊を伴う施設(デイサービス、助産施設、保育所等)及び民泊施設などの建物に対する消防用設備の設置が義務化されました。

この改正に対する措置として、これら小規模な施設として使用する建物については、本来であれば設置義務のある自動火災報知設備に代えて、特定小規模施設用自動火災報知設備(通称:特小自火報)を設置することが可能となりました。また、共同住宅への民泊対応として、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置可能範囲を広げる規制緩和が行われています。

消防法令は、防災に資するという重要な目的を有しながらも難解な規定が多く、条文を読み込んで内容を把握するだけでも、それなりの時間の浪費と重作業を強いられます。

そこで本稿では、消防法令の規定から、特定小規模施設用自動火災報知設備に関するものを抜粋し、基礎となる法的知識や、自動火災報知設備に代えて設置することができる建物の基準について、ざっくりと解説していきたいと思います。

自動火災報知設備

消防法と条例により、一定面積以上の建物や店舗がある雑居ビルや重要文化財などの防火対象物には、自動火災報知設備(通称:自火報)を設置することが義務付けられています。

自動火災報知設備を設置することが義務付けられる建物であるかどうかについては、その建物の「用途」と「面積」、もしくは「危険物等の数量」によって決します。

自動火災報知設備のイメージ

特定小規模施設用自動火災報知設備

特定小規模施設用自動火災報知設備は、建物内での火災発生の際に、警報を一斉に鳴動させて火災発生を知らせる設備です。通常の自動火災報知設備のように受信機(本体)、感知器(センサー)及び音響装置(ベル)等を設置して配線する方式のほか、無線式の連動型警報機能付感知器を設置する方式があります。

感知器自体が警報音を発するため、音響装置の設備が不要であり、電池式の感知器を使用する場合は電源の配線工事、感知器同士が無線通信を行う方式のものであれば感知器間の配線工事、すべての感知器が連動して警報音を発するタイプのものであれば受信機の設置が、それぞれ不要になります。

また、受信機や中継器を設置せず、無線式連動型警報機能付感知器のみを設置する工事については、消防設備士の有資格者でなくても施工可能であり、本来であれば必要となる工事着手前の届出も不要です。(設置工事完了後の届出は必要)

保守点検についても、消防設備士に委託することなく実施することができますが、保守点検の結果は、消防署に報告する義務があります。

このような特長を有することから、比較的大掛かりな工事が必要となる自動火災報知設備と比べると、設置に対する費用や手続的なコストを、大幅に抑えることができます。

特定小規模施設用自動火災報知設備

防火対象物

多数の人が出入りしたり、敷地が広大もしくは構造が巨大である建築物では、火災発生時に甚大な被害が生じるおそれがあることから、必要な措置を講ずるため、一般建造物よりも厳しい防火管理が求められています。

消防法施行令では、防火対象物の全般的な危険性を基準上で考慮し、戸建住宅を除き、ほぼすべての建築物及び工作物について、以下のように細かく用途区分が設けられています。(別表第1)

防火対象物

また、防火対象物は、その用途によって、以下のとおり「特定防火対象物」「不特定防火対象物」に大別されています。

特定防火対象物不特定多数の人が利用する用途の防火対象物
非特定防火対象物特定の人(従業員、作業員など)が利用する用途の防火対象物

特定小規模施設

特定小規模施設用自動火災報知設備ですから、これを取り付けることができるのは、特定小規模施設に限られます。

特定小規模施設の範囲は下表のとおりですが、後述する特定一階段等防火対象物に該当する建物については、特定小規模施設の範囲に含まれるものであっても、原則どおり、必ず自動火災報知設備を設置することが義務付けられます。

カラオケ店
個室ビデオ店
300㎡未満
旅館・ホテル300㎡未満
病院・有床診療所300㎡未満
特別養護老人施設など300㎡未満
老人デイサービスセンター、保育所等で利用者を入居させ、又は宿泊させるもの300㎡未満
複合用途【特定用途が入居】延べ面積300㎡未満でかつ、令別表第1(2)項ニ(カラオケボックス等)又は(5)項イ(旅館・ホテル・宿泊所等)、(6)項イ(1)~(3)(病院・有床診療所))、(6)項ロ(特別養護老人ホーム等)、(6)項ハ(老人デイサービスセンター・保育所等で利用者を入居させ、又は宿泊させるもの)の用途に供される部分があるもの
延べ面積が300m²以上の小規模特定用途複合防火対象物であって、次の防火対象物の用途に供される部分(下記①②に掲げる防火対象物で10%以下かつ300m²未満)及び感知器を設けることを要しない部分のみで構成され、これらの部分以外がないもの
①令別表第1(2)項ニ、(5)項イ、(6)項イ(1)〜(3)、(6)項ロの防火対象物
②令別表第1(6)項ハ(利用者を入居させ、又は宿泊させるもの)の防火対象物
令別表第1(5)項イ及びロの用途以外の用途に供される部分が存せず、かつ、(5)項イに掲げる用途に供される部分の床面積が300m²未満のもののうち、延べ面積が300m²以上500m²未満のもの
赤文字は特定用途

特に複合用途防火対象物に関する規定が難解であるため、しっかりと確認するようにしてください。

なお、あくまでも自動火災報知設備の代わりであるため、特定小規模施設においては、住宅用火災警報器を取り付けることはできません。

★共同住宅への民泊対応

延面積500㎡未満の共同住宅のうち、民泊部分の面積が300㎡未満であるものについては、特定小規模施設とする規制緩和が実施されています。

特定一階段等防火対象物

特定用途とは、通常「不特定多数」の者が使用することを想定した用途のことで、たとえば、劇場、カラオケ、飲食店、ホテル、病院又はスーパー銭湯等が該当します。特定一階段等防火対象物(通称:特一)とは、地下又は3階以上の階においてこの特定用途が存在し、かつ、避難に使用する屋内階段が屋内に1つしかない防火対象物をいいます。

ただし、(避難階(直接地上へ通ずる出入口のある階)へ通じる階段が2以上あるが建物内が仕切りなどにより事実上1つの階段しか利用できない場合を除き)避難階へ通じる1の階段が屋外に設置されているときは、例外的に特定一階段等防火対象物とはみなされません。

特定一階段等防火対象物に該当する建物は、火災による危険度の高い建物という位置付けから、特定小規模施設であることや、面積等の基準によることなく、強制的に自動火災報知設備の設置が義務付けられます。

民泊における特例

一戸建て・共同住宅の別に、一定の要件を満たす小規模な民泊施設については、特定一階段等防火対象物に該当する3階建の建物であっても、例外的に特定小規模施設用自動火災報知設備の設置可能範囲を広げる規制緩和が行われています。

火災予防条例

以上はあくまでも消防法令に基づく特定小規模施設用自動火災報知設備の設置基準ですが、詳細は各自治体の条例に委ねられていることも多いため、自動火災報知機について手続きを実施する際は、必ず所轄の消防署と協議するようにしてください。

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