自動火災報知設備の設置基準について

火災報知機

自動火災報知設備(通称:自火報)は、火災により発生する熱や煙を感知器により自動的に検知し、受信機と音響装置(ベル)とを鳴動させて建物内に報知することにより、避難と初期消火活動を促す設備です。

消防法と条例により、一定面積以上の建物や店舗がある雑居ビルや重要文化財などの防火対象物に設置することが義務付けられていますが、設置が義務付けられる建物であるかどうかについては、その建物の「用途」と「面積」、もしくは「危険物等の数量」によって決します。

他方、消防法令は重要な目的を有しながらも難解な規定が多く、条文を読み込んで内容を把握するだけでも、それなりの時間の浪費と重作業を強いられます。

そこで本稿では、消防法令の規定から、自動火災報知設備に関するものを抜粋し、基礎となる法的知識や、設置を義務付けられる建物の基準について、ざっくりと解説していきたいと思います。

火災警報機器

火災警報機器をざっくりと大別すると、まずは住宅用火災警報器(住宅)と自動火災報知設備(事業所)とに区分されます。

機器やシステムについてはそれぞれ下図のとおりですが、自動火災報知設備に比べて住宅用火災警報器は、簡易な機器の取付けで済ませることができます。

火災警報機器

そもそも一般住宅は、消防法令上の「防火対象物」とはされておらず、基本的に消防法令の適用は限定的です。これは個人住宅について多大な義務を負わせることよりも個人の防火管理に委ねる方が自然であるという考え方や、通常建物内に出入りする人間が、ある程度特定された少数であるか、不特定もしくは多数であるかの違いによるものです。

ただし、このような主旨があることから、共同住宅については、消防法令上の防火対象物として明確に位置づけられているため、注意が必要になります。

自動火災報知設備住宅用火災警報器
義務対象一定規模以上の事業所(宿泊施設、飲食店、物販店等)個人の住宅
構成機器感知器、受信機、地区音響装置、発信機等住宅用火災警報器(住警器)のみ
鳴動の範囲建物全体の地区音響装置が鳴動*一定規模以上の建物は出火階・直上階等を優先して鳴動火災を感知した住警器のみ*各住警器が連動して鳴動するシステムあり
警報音に関する主な規定音圧は取り付けられた音響装置の中心から1m離れた位置で90(音声により警報を発するものにあっては92)デシベル以上であること
階段又は傾斜路に設ける場合を除き、感知器の作動と連動して作動するもので、設備を設置した防火対象物又はその部分の全区域に有 効に報知できるように設けること
各階ごとに、その階の各部分から一の地区音響装置までの水平距離が25m以下となるように設けること
警報音(音声によるものを含む)により火災警報を発する住宅用防災警報器における音圧は、区分に応じた値の電圧において、無響室で警報部の中心から前方1m離れた地点で測定した値が、70デシベル以上であり、かつ、その状態を1分間以上継続できること
音以外の警報に関する規定特になし警報音以外により火災警報を発する住宅用防災警報器にあって は、住宅の内部にいる者に対し、有効に火災の発生を報知できるものであること
自動火災報知設備のイメージ

防火対象物

多数の人が出入りしたり、敷地が広大もしくは構造が巨大である建築物では、火災発生時に甚大な被害が生じるおそれがあることから、必要な措置を講ずるため、一般建造物よりも厳しい防火管理が求められています。

消防法施行令では、防火対象物の全般的な危険性を基準上で考慮し、戸建住宅を除き、ほぼすべての建築物及び工作物について、以下のように細かく用途区分が設けられています。(別表第1)

防火対象物

また、防火対象物は、その用途によって、以下のとおり「特定防火対象物」「不特定防火対象物」に大別されています。

特定防火対象物不特定多数の人が利用する用途の防火対象物
非特定防火対象物特定の人(従業員、作業員など)が利用する用途の防火対象物

自動火災報知設備の設置基準

防火対象物となる建物すべてに自動火災報知設備の設置が義務付けられているわけではありません。設置が義務になるかどうかを調べるためには、対象物の用途と建物の面積とを照らし合わせ、併せて危険物等の数量を確認する必要があります。

消防法施行令においては、下表のとおり、防火対象物の区分に応じた自動火災報知設備を設置すべき面積等の基準が設定されています。

用途区分(消防法施行令別表第1)一般(延べ面積㎡) 以上特定一階段防火対象物1地階又は2階(床面積㎡) 以上地階・無窓階又は3階以上(床面積㎡) 以上
11階以上の階
その他(床面積㎡) 以上
特定防火対象物
1項イ(劇場等)


300






全部
駐車の用に供する部分の存する階でその部分の床面積
200
(駐車のすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く)
300























全部
1)通信機器室500

2)道路の用に供される部分で屋上部分600その他400
ロ(公会堂等)



2項
イ(キャバレー等)3002
ロ(遊技場等)
ハ( 性風俗特殊営業店舗等)
ニ( 個室型店舗等)全部(一般と同じ)
3項イ(料理店等)
300
3002
ロ(飲食店等)
4項百貨店等300
5項イ(旅館等)
ロ(共同住宅等)500(一般と同じ)
6項イ(病院等)

300
全部
300
ロ(主として自力避難困難なものが入所する福祉施設等)全部(一般と同じ)
ハ(上記ロ以外の福祉施設等)300300
ニ(幼稚園等)
7項学校500(一般と同じ)
8項図書館等
9項イ(特殊浴場)200全部
ロ(一般浴場)500(一般と同じ)
10項停車場等
11項神社・寺院等1000
12項イ(工場等)500
ロ(スタジオ)
13項イ(駐車場等)
ロ( 航空機格納全部(一般と同じ)
14項倉庫500300
15項事務所等1000



16項
イ(特定複合用途防火対象物)300全部3002
ロ(非特定複合用途防火対象物)3(一般と同じ)300
16の2項地下街3004(一般と同じ)(一般と同じ)
16の3項準地下街
5
全部
17項文化財全部(一般と同じ)
  1. (1)項~(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イの用途部分が避難階以外の階(1階及び2階を除く)に存する防火対象物で、避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が2(階段が屋外に設けられ、又は避難上有効な構造を有する場合にあっては1)以上設けられていないもの ↩︎
  2. (2)項イ~ハ、(3)項の地階又は無窓階は100㎡以上、(16)項イについては、地階又は無窓階に存する(2)項、(3)項の用途部分の床面積の合計が100㎡以上のもの ↩︎
  3. 各用途部分の設置基準に従って設置する ↩︎
  4. (2)項ニ又は(6)項ロの用途に供されるものが存する場合は、その部分に全て必要 ↩︎
  5. 延べ面積500㎡以上で、かつ、(1)項から(4)項、(5 )項イ、(6)項、(9)項イの用途部分の床面積の合計が300㎡以上のもの ↩︎

設置が義務となる建物

ホテル、カラオケ、避難困難者を収容する福祉施設等及び高層建築物の11階以上の階は、これらの用途の特性から、火災による著しく甚大な被害が発生することが想定されるため、面積等の他の基準によることなく、すべての建物が設置義務の対象となります。

また、後述する特定一階段等防火対象物については、建物全体に自動火災報知設備を設置する必要があるという、非常に厳しい基準が設けられています。

これら以外の建物については、面積による基準や危険物等の数量の基準により、設置が義務となるかどうかを決します。

  • 11階以上の階
  • カラオケボックス等
  • 避難介助が必要な病院又は有床診療所
  • 老人デイサービスなどで入居又は宿泊ができるもの
  • 航空機等の格納庫
  • 文化財
  • 特定一階段等防火対象物

特定一階段等防火対象物

特定用途とは、通常「不特定多数」の者が使用することを想定した用途のことで、たとえば、劇場、カラオケ、飲食店、ホテル、病院又はスーパー銭湯等が該当します。特定一階段等防火対象物(通称:特一)とは、地下又は3階以上の階においてこの特定用途が存在し、かつ、避難に使用する屋内階段が屋内に1つしかない防火対象物をいいます。

ただし、(避難階(直接地上へ通ずる出入口のある階)へ通じる階段が2以上あるが建物内が仕切りなどにより事実上1つの階段しか利用できない場合を除き)避難階へ通じる1の階段が屋外に設置されているときは、例外的に特定一階段等防火対象物とはみなされません。

特定一階段等防火対象物に該当する建物は、火災による危険度の高い建物という位置付けから、面積等の基準によることなく、強制的に自動火災報知設備の設置が義務付けられます。

面積による設置基準

強制的に自動火災報知設備の設置が義務付けられるもの以外の建物は、下表のとおり、それぞれの用途の延べ面積に応じて自動火災報知設備の設置が義務付けられます。ただし、複合用途の建物の場合は、各階の用途が入居する床面積により、設置の要否が判断されます。

劇場等
集会場等
300㎡以上
キャバレー
遊技場
性風俗特殊営業
300㎡以上
カラオケ店
個室ビデオ店
全部
料理店
飲食店
300㎡以上
物品販売
百貨店
300㎡以上
旅館・ホテル全部
共同住宅など500㎡以上
避難介助が必要な病院又は診療所
上記を除く病院又は有床助産所
全部
無床診療所
無床安産所
300㎡以上
老人短期入所施設全部
老人デイサービス
特別支援学校
300㎡以上
学校など500㎡以上
図書館500㎡以上
蒸気浴場(サウナ)200㎡以上
一般浴場500㎡以上
車両停車場500㎡以上
神社など1000㎡以上
工場
スタジオなど
500㎡以上
車庫など500㎡以上
航空機等の格納庫全部
倉庫500㎡以上
その他(事務所・美容室など)1000㎡以上
複合用途【特定用途が入居】300㎡以上
複合用途【特定用途が入居なし】各用途基準による
地下街300㎡以上
準地下街500㎡で特定の合計が300㎡以上
文化財全部
赤文字は特定用途

地下・無窓階・3階以上

建物のうち、無窓階、地下にある階又は3階以上の階については、火災が発生した際に避難や救助活動に支障をきたすおそれが大きいことから、下表のとおり、通常よりも厳しい面積基準が設定されています。

キャバレー
遊技場
性風俗特殊営業
100㎡以上
3階以上は300㎡以上
料理店
飲食店
100㎡以上
3階以上は300㎡以上
共同住宅など300㎡以上
学校など500㎡以上
図書館300㎡以上
蒸気浴場(サウナ)300㎡以上
一般浴場300㎡以上
車両停車場300㎡以上
神社など300㎡以上
工場
スタジオなど
300㎡以上
車庫など500㎡以上
倉庫500㎡以上
その他(事務所・美容室など)300㎡以上
複合用途【特定用途が入居】100㎡以上
3階以上は300㎡以上
複合用途【特定用途が入居なし】各用途ごとに300㎡以上
赤文字は特定用途

通信機器室

通信機器室については、延べ面積が500㎡以上となるものについて、自動火災報知設備の設置が義務付けられるという個別の面積基準が設けられています。

通信機器室500㎡以上

道路の用に供される部分

トンネル等のように、道路の用に供される部分については、「屋上」と「屋上以外」の別に、それぞれ下表のとおり、自動火災報知設備の設置が義務付けられるという個別の面積基準が設けられています。

道路の用に供される部分(屋上)600㎡以上
道路の用に供される部分(その他)400㎡以上

駐車の用に供される部分

車両停車場であっても、地下や2階以上の階にあるものについては、延べ面積が200㎡以上となるものについて、自動火災報知設備の設置が義務付けられます。

ただし、停車する車両がすべて同時に屋外に出ることができる場合はこの規定から除外され、通常どおり500㎡以上又は300㎡以上(地下・無窓階・3階以上)という面積基準が適用されます。

地下又は2階以上の階において駐車の用に供される部分200㎡以上
停車する車両がすべて同時に屋外に出ることができる場合500㎡以上又は300㎡以上

危険物の取扱い及び貯蔵

消防法では、火災発生の危険性が大きいもの、火災拡大の危険性が大きいもの及び消火の困難性が高いものを危険物とし、下表のとおり、6つの類別で区分しています。

類別性質性質等の概要
第一類酸化性固体固体であって、そのもの自体は燃焼しないが、他の物質を強く酸化させる性質を有し、可燃物と混合したとき、熱、衝撃、摩擦によって分解し、極めて激しい燃焼をおこさせる危険性を有するもの
第二類可燃性固体火炎によって着火しやすい固体又は比較的低温(40℃未満)で引火しやすい固体であり、出火しやすく、かつ、燃焼が速く、消火することが困難であるもの
第三類自然発火性物質及び禁水性物質空気にさらされることにより自然に発火する危険性を有し、又は水と接触して発火し若しくは可燃性ガスを発生するもの
第四類引火性液体液体であって、引火性を有するもの(引火点250℃未満のもの)
第五類自己反応性物質固体又は液体であって、加熱分解などにより、比較的低い温度で多量の熱を発生し、又は爆発的に反応が進行するもの
第六類酸化性液体液体であって、そのもの自体は燃焼しないが、混在する他の可燃物の燃焼を促進する性質を有するもの

これらの危険物には、「指定数量」という単位が設けられており、指定数量を基準とする数量以上の危険物を取り扱ったり、貯蔵する建物について、自動火災報知設備を設置することを義務付けています。

自動火災報知設備の設置区分

指定可燃物

危険物とは別に、各自治体においては「指定可燃物」と、その「指定数量」が設定されています。これらの指定可燃物を取り扱い又は貯蔵する総量が、指定数量の500倍以上の場合は、やはり自動火災報知設備の設置が義務付けられます。

品名指定数量届出が必要となる数量自動火災報知設備の設置が必要となる数量
綿花類200kg1,000kg100トン
木毛及びかんなくず400kg2,000kg200トン
ぼろ及び紙くず1,000kg5,000kg500トン
糸類1,000kg5,000kg500トン
わら類1,000kg5,000kg500トン
再生資源燃料1,000kg1,000kg500トン
可燃性固体類3,000kg3,000kg1,500トン
石炭・木炭類10,000kg50,000kg5,000トン
可燃性液体類2m32m31,000m3
木材加工品及び木くず10m350m35,000m3
合成樹脂類(発泡させたもの)20m320m310,000m3
合成樹脂類(その他のもの)3,000kg3,000kg1,500トン

特定小規模施設用自動火災報知設備

消防法令の改正により、従来は設置することを免除されていた、延べ面積300㎡未満のグループホーム等の小規模社会福祉施設、簡易宿泊所、4床以上の診療所、宿泊を伴う施設(デイサービス、助産施設、保育所等)及び民泊施設などの建物に対する消防用設備の設置が義務化されました。

この改正に対する措置として、これら小規模な施設として使用する建物については、本来であれば設置すべきである自動火災報知設備に代えて、特定小規模施設用自動火災報知設備(通称:特小自火報)を設置することが可能となりました。 また、共同住宅への民泊対応として、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置可能範囲を広げる規制緩和が行われています。

特定小規模施設用自動火災報知設備を設置することができる建物では、大掛かりな工事が必要となる自動火災報知設備を設置する場合と比較して、費用面や手続的なコストを大幅に抑えることができます。

火災予防条例

以上はあくまでも消防法令に基づく自動火災報知機の設置基準ですが、詳細は各自治体の条例に委ねられていることも多いため、自動火災報知機について手続きを実施する際は、必ず所轄の消防署と協議するようにしてください。

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