特定一階段等防火対象物に関する規制について
消防法令上の特定用途とは、通常「不特定多数」の者が使用することが想定され、又は火災発生時に避難等が困難であると予想される建物の用途を指し、たとえば、劇場、カラオケ、飲食店、ホテル、病院又はスーパー銭湯等がこれに該当します。
特定一階段等防火対象物(通称:特一)とは、地下又は3階以上の階においてこの特定用途が存在し、かつ、避難に使用する屋内階段が屋内に1つしかない防火対象物をいいます。
このような構造を持つ建物は、すぐに避難することができない場所に出火危険の高い特定防火対象物が存することと、火災等の災害が発生した際の避難困難性の高さから、一般的な建物よりも、自動火災報知設備の設置基準や、避難器具の設置基準について強化が図られています。
他方、消防法令は、防災に資するという重要な目的を有しながらも難解な規定が多く、条文を読み込んで内容を把握するだけでも、それなりの時間の浪費と重作業を強いられます。
そこで本稿では、消防法令の規定から、特定一階段等防火対象物に関するものを抜粋し、基礎となる法的知識や、特定一階段等防火対象物に該当することにより受けうる規制の内容について、ざっくりと解説していきたいと思います。
目 次
特定用途と特定一階段等防火対象物
冒頭で触れているとおり、消防法令上の特定用途とは、消防法令上の特定用途とは、通常「不特定多数」の者が使用することが想定され、又は火災発生時に避難等が困難であると予想される建物の用途をいいます。
具体的には、劇場、映画館、ナイトクラブ、遊技場、ダンスホール、百貨店、物品販売店舗、展示場及びホテル・旅館等の宿泊施設などが、「不特定多数の者が使用することが想定される建物」に該当し、病院、老人ホーム、幼稚園及び身体障害者福祉施設などが「火災発生時に避難等が困難であると予想される建物」に該当します。
そして特定一階段等防火対象物とは、原則として、地下又は3階以上の階においてこの特定用途が存在し、かつ、避難に使用する屋内階段が屋内に1つしかない防火対象物をいいます。
ただし、避難階(直接地上へ通ずる出入口のある階)へ通じる1の階段が屋外に設置されているときは、災害発生時の避難経路が確保されているという観点から、建物内が仕切りなどにより事実上1つの階段しか利用できない場合を除き、例外的に特定一階段等防火対象物とはみなされません。
たとえば、傾斜地上に建築された地上3階建ての対象物であって、3階が避難階となる建物の場合は、階段が1であったとしても、特定一階段等防火対象物には該当しません。
自動火災報知設備の設置
消防法と条例により、一定面積以上の建物や店舗がある雑居ビルや重要文化財などの防火対象物には、自動火災報知設備(通称:自火報)を設置することが義務付けられています。
自動火災報知設備を設置することが義務付けられる建物であるかどうかについては、通常その建物の「用途」と「面積」、もしくは「危険物等の数量」によって決しますが、特定一階段等防火対象物に該当する建物は、火災等の災害発生時における危険度の高い建物という位置付けから、これらの基準によることなく、強制的に自動火災報知設備の設置が義務付けられます。
したがって、使用する建物が特定一階段等防火対象物に該当する限りは、その面積にかかわらず、必ず自動火災報知設備を設置する必要があります。
特定小規模施設用自動火災報知設備
消防法令の改正により、従来は設置することを免除されていた、延べ面積300㎡未満のグループホーム等の小規模社会福祉施設、簡易宿泊所、4床以上の診療所、宿泊を伴う施設(デイサービス、助産施設、保育所等)及び民泊施設などの建物に対する消防用設備の設置が義務化されました。
この改正に対する措置として、これら小規模な施設として使用する建物については、本来であれば設置義務のある自動火災報知設備に代えて、特定小規模施設用自動火災報知設備(通称:特小自火報)を設置することが可能となりました。
特定小規模施設用自動火災報知設備は、建物内での火災発生の際に、警報を一斉に鳴動させて火災発生を知らせる設備ですが、比較的大掛かりな工事が必要となる自動火災報知設備と比べると、設置に対する費用や手続的なコストを、大幅に抑えることができます。
このため小規模な施設では、自動火災報知設備に代わるものとして重宝されていますが、たとえ小規模であったとしても、特定一階段等防火対象物に該当する建物については、このメリットを享受することができず、強制的に自動火災報知設備の設置が義務付けられます。
再鳴動方式受信機
再鳴動方式受信機とは、音響設備が鳴動した際、一時的に音響を止めたとしても、数分後に再度音響設備が自動的に鳴動する仕組みを有する受信機(火災信号を受信し、音響ベル等で報知する設備)のことです。
特定一階段等防火対象物は、自動火災報知設備の設置が義務付けられますが、その際に取り付ける受信機は、この再鳴動方式受信機に限定されます。
民泊における特例
一戸建て・共同住宅の別に、一定の要件を満たす小規模な民泊施設については、特定一階段等防火対象物に該当する3階建の建物であっても、例外的に特定小規模施設用自動火災報知設備の設置可能範囲を広げる規制緩和が行われています。
煙感知器の設置基準
特定一階段等防火対象物に該当する建物において屋内階段に設置する煙感知器は、通常の屋内階段であれば垂直距離15mごとにひとつという設置基準が、垂直距離7.5mごとにひとつという基準に変更されます。
避難器具の仕様基準
特定一階段等防火対象物に設置する避難器具には、「安全でかつ容易に避難できる構造のもの」、「容易かつ確実に使用できる状態で設置されているもの」及び「一動作で容易かつ確実に使用できるもの(開口部を開く動作や保安蔵置を解除する動作を除く)」という条件が付加されています。
火災予防条例
以上はあくまでも消防法令上の規定に基づく記述ですが、規制内容の詳細は各自治体の条例に委ねられていることも多いため、自動火災報知機について手続きを実施する際は、必ず所轄の消防署と協議するようにしてください。
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