障がい福祉事業の全体像について│開業のための基礎知識
福祉って複雑なの?
確かに福祉の世界は、一見して複雑なものであるかのように映ります。ただ、それは制度そのものが入り組んでいたり、手続きが煩雑であったりするからであって、本来はそんなに難しく考えるものではありません。
福祉って何ですか?
「福」も「祉」も、「しあわせ」や「ゆたかさ」を表わす言葉です。人が「ゆたか」で「しあわせ」になる「くらし」づくりこそが、「福祉」の根幹であり原点です。
弊サイトでは、社会福祉制度の一端を担う障がい福祉事業について情報を発信しています。まずは障がい福祉事業の全体像を把握するために必要となる基礎知識について、簡潔に解説していきたいと思います。
目 次
- 1 障がい福祉事業とは
- 2 障害福祉サービスの仕組み
- 3 障害福祉サービスの分類
- 4 障害福祉サービスの内容
- 4.1 居宅介護(ホームヘルプ)
- 4.2 重度訪問介護
- 4.3 同行援護
- 4.4 行動援護
- 4.5 重度障害者等包括支援
- 4.6 療養介護
- 4.7 生活介護
- 4.8 短期入所(ショートステイ)
- 4.9 施設入所支援
- 4.10 自立生活援助
- 4.11 共同生活援助(グループホーム)
- 4.12 自立訓練(機能訓練)
- 4.13 自立訓練(生活訓練)
- 4.14 宿泊型自立訓練
- 4.15 就労移行支援
- 4.16 就労継続支援A型(雇用型)
- 4.17 就労継続支援B型(非雇用型)
- 4.18 就労定着支援
- 4.19 計画相談支援
- 4.20 地域移行支援
- 4.21 地域定着支援
- 4.22 児童発達支援
- 4.23 医療型児童発達支援
- 4.24 障害児放課後等デイサービス
- 4.25 居宅訪問型児童発達支援
- 4.26 保育所等訪問支援
- 4.27 福祉型障害児入所支援
- 4.28 医療型障害児入所支援
- 4.29 障害児相談支援
- 5 まとめ
障がい福祉事業とは
Q.障がい福祉って何?
障がい福祉とは、身体、知的発達、精神に障害を持つ人々に対し、自立を支援するために行われる社会的サービス全般を指します。
かつては「措置型」といわれる行政主体のサービス提供が行われていましたが、現在では利用者が自由に事業者や施設を選択して契約をする「民間型」のサービスに移行しています。そしてこのサービスを提供する民間の事業が障がい福祉(障害者福祉)事業です。
Q.誰でもできるの?
障がい福祉事業を行うためには、障害者総合支援法や児童福祉法に規定される基準を満たした上で申請を行い、行政機関から障がい福祉事業者としての「指定」を受ける必要があります。障がい福祉事業における指定権者(指定を行う行政機関)は、都道府県または市町村長となります。
Q.障害福祉サービスって何?
障害福祉サービスとは、障害程度、社会活動、介護者の状況、居住環境といった個別の事情を踏まえた上で支給決定が行われるサービスです。市町村が実施する「地域生活支援事業」という事業もあります。
Q.障害福祉サービスの種類は?
障害福祉サービスは、多種多様かつ複雑な体系で構成されています。個々のサービス内容については後述しますが、おおまかには以下のように大別されており、それぞれにおいて利用の際のプロセスも異なります。
介護給付 | 介護の支援に対する給付 |
訓練等給付 | 訓練等の支援に対する給付 |
障害福祉サービスの仕組み
以下の図は、兵庫県尼崎市における障害福祉サービスの仕組みを簡略化して示したものです。「尼崎市」の部分をご自身の市町村に置き換えて考えてみてください。また、「地域生活支援事業」については、市町村ごとに取扱いが異なるため注意が必要となります。
サービスは、利用者ごとの利用目的に適合するように柔軟に組み合わせて作成した個別支援計画に基づき、提供されることになります。
★事例(常時介護が必要なケース)
日中は生活介護を利用し、住まいの場として施設入所支援を利用するなど、柔軟に組み合わせることができます。
障害福祉サービスの分類
種類が多く、「高齢者介護」と混同してしまうような名称のサービスも存在することから、障害福祉サービスを複雑に感じさせる大きな要因となっています。
以下にサービス名を列記していますので、区分と名称について、まずはざっくりと確認するようにしてください。
障害者総合支援法に基づくサービス
訪問系サービス
- 居宅介護(ホームヘルプ)
- 重度訪問介護
- 同行援護
- 行動援護
- 重度障害者等包括支援
日中活動系サービス
- 療養介護
- 生活介護
- 短期入所(ショートステイ)
施設系サービス
- 施設入所支援
居住系サービス
- 自立生活援助
- 共同生活援助(グループホーム)
訓練系・就労系サービス
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練・宿泊型)
- 就労移行支援
- 就労継続支援(A型・B型)
- 就労定着支援
相談支援系サービス
- 計画相談支援
- 地域移行支援
- 地域定着支援
児童福祉法に基づくサービス
障害児通所支援系サービス
- 児童発達支援
- 医療型児童発達支援
- 障害児放課後等デイサービス
- 居宅訪問型児童発達支援
- 保育所等訪問支援
障害児入所系サービス
- 福祉型障害児入所支援
- 医療型障害児入所支援
相談支援系サービス
- 障害児相談支援
障害福祉サービスの内容
ここからはいよいよサービス内容に触れていきます。項目が多いので、上記のサービス分類から大体の目星をつけた上で確認するようにしましょう。
居宅介護(ホームヘルプ)
居宅において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助を行います。
重度訪問介護
重度の肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により行動上著しい困難を有する障害者であって常時介護を要するものについて、居宅において入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助並びに外出時における移動中の介護を総合的に行うとともに、病院等に入院又は入所している障害者に対して意思疎通の支援その他の支援を行います。
同行援護
視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等について、外出時に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の当該障害者等が外出する際の必要な援助を行います。
行動援護
知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものに対し、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護、排せつ及び食事等の介護その他の当該障害者等が行動する際の必要な援助を行います。
重度障害者等包括支援
常時介護を要する障害者等であって、意思疎通を図ることに著しい支障があるもののうち、四肢の麻痺及び寝たきりの状態にあるもの並びに知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有するものに対し、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助及び共同生活援助を包括的に提供します。
療養介護
病院において機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護、日常生活上の世話その他必要な医療を要する障害者であって常時介護を要するものに対し、主として昼間、病院において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び日常生活上の世話を行います。また、療養介護のうち医療に係るものについては、療養介護医療として提供します。
生活介護
障害者支援施設その他の以下に掲げる便宜を適切に供与することができる施設において、入浴、排せつ及び食事等の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他必要な援助を要する障害者であって、常時介護を要するものに対し、主として昼間において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の必要な日常生活上の支援、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の身体機能又は生活能力の向上のために必要な支援を行います。
短期入所(ショートステイ)
居宅においてその介護を行う者の疾病その他の理由により、障害者支援施設、児童福祉施設等への短期間の入所を必要とする障害者等につき、当該施設に短期間の入所をさせて、入浴、排せつ及び食事の介護その他の必要な支援を行います。
施設入所支援
施設に入所する障害者に対し、主として夜間において、入浴、排せつ及び食事等の介護、生活等に関する相談及び助言その他の必要な日常生活上の支援を行います。
自立生活援助
居宅において単身等で生活する障害者に対し、定期的な巡回訪問又は随時通報を受けて行う訪問、相談対応等により、居宅における自立した日常生活を営む上での各般の問題を把握し、必要な情報の提供及び助言並びに相談、関係機関との連絡調整等の自立した日常生活を営むために必要な援助を行います。
共同生活援助(グループホーム)
障害者に対し、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において行われる相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他の必要な日常生活上の援助を行います。
自立訓練(機能訓練)
障害者に対し、障害者支援施設若しくは障害福祉サービス事業所に通わせて当該障害者支援施設若しくは障害福祉サービス事業所において、又は当該障害者の居宅を訪問して、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーション、生活等に関する相談及び助言その他の必要な支援を行います。
自立訓練(生活訓練)
障害者に対し、障害者支援施設若しくは障害福祉サービス事業所に通わせて当該障害者支援施設若しくは障害福祉サービス事業所において、又は当該障害者の居宅を訪問して、入浴、排せつ及び食事等に関する自立した日常生活を営むために必要な訓練、生活等に関する相談及び助言その他の必要な支援を行います。
宿泊型自立訓練
障害者に対し、居室その他の設備を利用させるとともに、家事等の日常生活能力を向上させるための支援、生活等に関する相談及び助言その他の必要な支援を行います。
就労移行支援
就労を希望する障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれるものに対し、生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談その他の必要な支援を行います。
就労継続支援A型(雇用型)
通常の事業所に雇用されることが困難な障害者のうち適切な支援により雇用契約等に基づき就労する者に対し、生産活動その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行います。
就労継続支援B型(非雇用型)
通常の事業所に雇用されることが困難な障害者のうち通常の事業所に雇用されていた障害者であってその年齢、心身の状態その他の事情により引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者に対し、生産活動その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行います。
就労定着支援
生活介護、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援(以下「就労移行支援等」)を利用して、通常の事業所に新たに雇用された障害者の就労の継続を図るため、企業、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整を行うとともに、雇用に伴い生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導及び助言等の必要な支援を行います。
計画相談支援
障害福祉サービスの利用申請に当たり、サービス等利用計画についての相談などの支援を行うとともに、サービス事業者等の関係機関との連絡調整などの支援を行います。
地域移行支援
障害者支援施設等に入所している障害者や、精神科病院に入院している精神障害者が地域生活に移行する際の相談や支援等の援助を行います。
地域定着支援
単身等で生活する障害者に対して、常時の連絡体制を確保して、障害の特性により生じた緊急の事態等に相談等の支援を提供します。
児童発達支援
障害のある児童を通所させて、日常生活の基本的動作の指導や、知識や技能の付与等の訓練を行うサービスです。
医療型児童発達支援
障害のある児童を通所させて、日常生活の基本的動作の指導や、知識や技能の付与等の訓練を行うことと併せて、治療を行うサービスです。
障害児放課後等デイサービス
学校通学中の障害のある児童を通所させて、放課後や夏休み等の長期休暇中において、生活能力向上のための訓練等を継続的に提供することにより、障害児の自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりを行います。
居宅訪問型児童発達支援
重度の障害等により、児童発達支援、医療型児童発達支援又は放課後等デイサービスを受けるために外出することが著しく困難な児童等の居宅を訪問し、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活へ適応するための訓練及びその他必要な支援を行います。
保育所等訪問支援
保育所等に通う障害のある児童について、通い先の施設等を訪問し、障害のある児童及び保育所等のスタッフに対し、集団生活に適応するための専門的な支援や支援方法等の指導等を行います。
福祉型障害児入所支援
障害のある児童を入所させて、保護、日常生活の指導等を行うサービスです。
医療型障害児入所支援
医療型障害児入所施設又は、指定発達支援医療機関に入所する障害児に対し、保護、日常生活の指導、自活に必要な知識技能の付与及び治療等を行います。
障害児相談支援
障害児支援利用援助
障害児通所支援の利用申請手続きにおいて、障害児の心身の状況や環境、障害児または保護者の意向などを踏まえて「障害児支援利用計画案」の作成を行います。利用が決定した際は、サービス事業者等との連絡調整、決定内容に基づく「障害児支援利用計画」の作成を行います。
継続障害児支援利用援助
利用している障害児通所支援について、その内容が適切かどうか一定期間ごとにサービス等の利用状況の検証を行い、「障害児支援利用計画」の見直しを行います(モニタリング)。また、モニタリングの結果に基づき、計画の変更申請などを勧奨します。
まとめ
全体像をお伝えするため、ここではあえて簡略化した解説にとどめましたが、専門用語も頻出するので、触りの部分だけでも辟易されたのではないでしょうか。
実は私自身、高齢者介護の出身ということで、当初は制度間での混同を生じ、障がい福祉分野に対しては、かえって馴染みにくさを感じていました。もちろん制度のすべてを覚える必要はありませんが、ご自身が携わる事業については、しっかりと知識を身につけるようにしてください。それぞれの詳細については、各リンク先の記事で確認していただき、ご活用いただければ幸いです。
原点に戻りませんか?
皆さまがはじめようとされていることは何ですか?制度や手続きがハードルになって踏み出せないのであれば、専門家に相談してみませんか?
当事務所は福祉と手続きのエキスパートです。
弊所では、障がい福祉事業に関するさまざまな情報を発信するとともに、指定申請に関する手続きのサポートを行っています。代表は介護施設を運営していた実績を有する福祉の専門家であるとともに、現役のケアマネジャーという傾聴のスペシャリストでもあります。
ご不明な点、ご不安な点がありましたら、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
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