障害者グループホーム(共同生活援助)の指定申請について│グループホーム開設マニュアル
障害者福祉サービス事業における共同生活援助とは、障害のある方が共同生活を行う住宅(グループホーム)において、主として夜間に、入浴、排泄、食事の支援や相談、日常生活上の必要な援助等を提供するサービスです。 利用者は事業所で生活を行いつつ、日中は生活介護施設や就労継続支援B型事業所に通所して活動を行うケースが一般的です。
また、グループホームを開設し、共同生活援助を事業として行う際は、法令において定められている指定基準を満たした上で申請し、地方自治体による障害福祉サービス事業者の指定を受ける必要があります。
本稿では、グループホームの開設を目指す皆さまに向けて、共同生活援助サービスの概要や、指定を受けるために必要とされている基準や手続き等について、詳しく解説していきたいと思います。
目 次
グループホームとは
グループホームとは、知的障害者、精神障害者、身体障害者が「世話人」等の支援を受けながら、地域のアパート、マンション、一戸建て等の住宅において、1住居あたり2~10人ほどで共同生活を行う居住の場です。
なお、介護保険サービスにも「グループホーム」と呼称する施設が存在しますが、こちらは認知症高齢者を対象とする「認知症対応型共同生活介護」という別のサービスになるので、これらを混同してしまわないように気をつけましょう。
根拠法 | 正式名称 | 対象者 |
---|---|---|
障害者総合支援法上のグループホーム | 共同生活援助 | 知的障害者、精神障害者、身体障害者 |
介護保険法上のグループホーム | 認知症対応型共同生活介護 | 認知症高齢者 |
利用までの流れ
グループホームを利用するためには、まずは市町村による障害支援区分の判定を受け、サービス利用にかかる給付決定がなされることが前提となります。ただし、入浴、排せつ又は食事等の介護の提供を希望しない障がい者は、必ずしも障害支援区分の判定を受ける必要はありません。
障害支援区分の判定と給付決定がなされ、その上でグループホームを運営する事業者と利用者とが直接契約を結ぶことで、入居とサービスの提供が開始されるという流れになります。(下図)
サービスの内容
共同生活援助では、孤立の防止、生活への不安の軽減、共同生活による身体・精神状態の安定などを目的として、主に夜間や休日において、共同生活を営む住居で以下の支援を行います。
- 入浴、排せつ、食事等の介護
- 調理、洗濯、掃除等の家事
- 日常生活・社会生活上の相談及び助言
- 就労先やその他の関係機関との連絡
- その他の日常生活上の援助
グループホームの類型
グループホームは、支援体制の違いによって、次の4類型に区分されています。障害支援区分による違いではありませんが、施設によっては、独自の利用条件を定めていることもあります。
- 介護サービス包括型
- 日中支援型
- 外部サービス利用型
- サテライト型
介護サービス包括型
介護サービス包括型とは、事業所の従業者が、主に夜間や休日において、相談や家事等の日常生活上の援助と入浴等の介護とを包括的に組み合わせて提供するタイプのサービス類型です。グループホームの4類型の中では最もポピュラーなタイプです。
日中サービス支援型
日中サービス支援型とは、事業所の従業者が、24時間支援体制を確保し、相談や家事等の日常生活上の援助と入浴等の介護とを合わせて行うサービス類型です。「夜間帯」の支援である共同生活援助に、「日中支援」の概念を採り入れたサービスとなっているのが特長です。
外部サービス利用型
外部サービス利用型とは、事業所の従業者が、主に夜間や休日において、相談や家事等の日常生活上の援助のみを行い、入浴等の介護は、事業所が委託契約を結んだ外部の指定居宅介護事業者が行うというタイプのサービス類型です。
サテライト型
サテライト型とは、利用者がアパートやマンションなどの一室(サテライト住居)で、従業員による定期的な巡回を受けつつ一人暮らしに近い生活を送りながら、本体住居となる共同生活住居を利用して食事や余暇活動などを行うタイプのサービス類型です。
対象となる利用者
障害支援区分の判定を受けた者が対象となります。なお、後述するように身体障害者には年齢制限が設けられています。
- 身体障害者(障害支援区分1〜6)
- 知的障害者(障害支援区分1〜6)
- 精神障害者(障害支援区分1〜6)
- 難病患者等(障害支援区分1〜6)
身体障害者にあっては、65歳未満の者又は65歳に達する日の前日までに障害福祉サービス若しくはこれに準ずるものを利用したことがある者が利用対象者となります。
指定基準について
共同生活援助としてグループホームを運営する際は、以下の指定基準を満たした上で申請し、都道府県知事(一部の市町については市町長)により共同生活援助サービス事業者として指定を受ける必要があります。
- 法人であること
- 人員配置基準をみたすこと
- 設備要件をみたすこと
個々のグループホームごとに指定を受けるのではなく、一定の地域内に所在する1以上のグループホームを1事業所として、この事業所単位ごとに指定を受けることになります。
兵庫県においては、この「一定の地域内」の解釈を、「主たる事務所から他の共同生活住居までが概ね30分以内で移動することができる範囲」としています。
人員配置基準
指定を受けるために配置すべき人員の基準は、次の表のとおりです。なお、サービス管理責任者(サビ管)は、管理者と兼務するものでなければ、生活支援員、世話人と兼務することが可能です。
職種 | 人数 | 要件 |
---|---|---|
管理者 | 1名以上 | 常勤 |
サービス管理責任者 | 1名以上 非常勤可 | 利用者30人ごとに1名を配置 |
生活支援員 | 1名以上 日中活動支援型は生活支援員、世話人のうち1名は常勤であること | 常勤換算で次の数の合算以上 ①障害支援区分3に該当する利用者の数を9で除した数 ②障害支援区分4に該当する利用者の数を6で除した数 ③障害支援区分5に該当する利用者の数を4で除した数 ④障害支援区分6に該当する利用者の数を2.5で除した数 |
世話人 | 1名以上 日中活動支援型は生活支援員、世話人のうち1名は常勤であること | 利用者6人ごとに1名 (包括型) 利用者5人ごとに1名 (日中活動支援型) |
夜間支援従業者 | 1名以上 (日中支援型のみ) | 共同生活住居ごとに1名以上 |
介護サービス包括型
世話人・生活支援員 | 利用者の生活サイクルに応じて、1日の活動終了時刻から開始時刻までを基本として夜間時間帯を設定し、当該夜間時間帯以外のサービス提供に必要な員数を確保することが必要です。 |
夜勤職員・宿直職員 | 必ずしも必要ではありません。ただし、夜間に職員の配置を行わない場合も、夜間の緊急時等における対応方法を定め、 利用者に十分説明しておく必要があります。 |
複数の共同生活住居を有する事業所 | 必要な員数(必要配置時間数)は事業所全体の利用者数に応じて算出するため、住居ごとの必要時間が定められているものではありません。 |
夜間における介護や緊急時の対応 | 指定基準に定められた世話人・生活支援員 とは別に、夜間時間帯に夜勤職員や宿直職員を配置する場合は、届出を行うことにより、報酬上、夜間支援等体制加算を算定することができます。 |
日中サービス支援型、外部サービス利用型
世話人・生活支援員 | 住居ごとに1日を通じて1人以上の世話人又は生活支援員を配置する必要があります。 (夜間及び深夜の時間帯も、住居ごとに夜勤職員を1人以上配置することが必要です。) |
夜勤職員・宿直職員 | 必ずしも必要ではありません。ただし、夜間に職員の配置を行わない場合も、夜間の緊急時等における対応方法を定め、 利用者に十分説明しておく必要があります。 |
指定短期入所の併設 | 併設又は同一敷地内で、短期入所(空床型不可)を行わなければなりません。 短期入所の定員はグループホームの定員合計が20人又はその端数を増すごとに1~5人になります。 |
その他の留意点
複数の住居を持つ場合も、利用者の安定した日常生活の確保と支援の継続性という観点から、住居ごとに専任の世話人を定める等の配慮を行うよう求められます。
利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、速やかに医療機関への連絡を行う等必要な措置を講じること、利用者に事故が発生した場合は、都道府県、市町、利用者の家族等に連絡を行うとともに必要な措置を講じることが必要です。また、緊急時等における対応のため、障害者支援施設等との連携体制を確保することが必要です。
設備基準
設備基準は次の表のとおりです。これらの設備は、原則として共同生活援助サービス事業所の用にのみ供するものである必要がありますが、利用者の支援に支障がなければ他の用途と兼用することができます。
設備 | 要件 |
---|---|
居室 | 7.43㎡以上 (収納スペース除く) 1住居10部屋まで |
食堂 | 居間と食堂を一つの場所とすることは可能です。 |
居間 | 利用者の特性に応じた工夫がなされれていること |
浴室等 | 利用者の特性に応じた工夫がなされれていること |
洗面所・トイレ | トイレ手洗いと洗面所の兼用は不可 アルコール消毒液、ペーパータオル設置 |
立地条件
住宅地又は住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあり、かつ、入所施設又は病院の敷地外にあることが立地要件となっています。
一戸建てのほか、マンションやワンルームでも事業を行うことが可能です。自己所有であるか賃貸物件であるかも問われません。ただし、都市計画法・農地法・建築基準法・消防法等による規制の有無については事前にしっかりと確認するようにしてください。
利用定員
1事業所の利用定員は4人以上です。日中活動支援型は20人以内で短期入所1人以上が必要となります。各グループホームごとの利用定員は2人以上かつ原則10人以下です。なお、30分圏内であれば、複数の住居をまとめて1事業所として運営することも可能です。
指定申請に必要となる書類
運営資金について
グループホームの運営は、障害福祉サービスを利用する障害者に対し市町から支給される「給付費」と利用者本人が負担する負担金を元に行います。
給付費
給付費は、利用するサービスに応じて市町から利用者に支給されるものですが、実際には代理受領方式により、サービスを提供する事業者が、国民健康保険団体連合会(国保連)から、原則1割の自己負担額を控除した額の支払いを受けます。
家賃等
グループホームを運営する事業者は、上記以外に、家賃、食費、光熱水費、日常生活品などの費用についての実費相当額を、利用者本人から徴収することができます。このうち低所得者の家賃については、各自治体による補助制度があるのが一般的です。
自己負担額
また、原則1割の自己負担額については、所得に応じて上限額が設けられています。18歳以上の場合は利用者とその配偶者の所得、18歳未満の場合は児童を監護する保護者の属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得に応じた自己負担の上限月額があります。ただし、月額上限よりもサービスに係る費用の1割の金額の方が低い場合には、そのままの金額を支払います。その他に、食材費、光熱水費、居住費などについての実費負担があります。
サービス報酬について
サービス報酬は、日中に就労又は就労継続支援等のサービスを利用している障害者に対し、地域生活を営む住居において、日常生活上の相談、介護等のサービスを提供することに対して支払われます。
サービス報酬
単価は、地域によって若干の違いがありますが、概ね1単位を10円として計算しています。また、個人単位で居宅介護等を利用する場合は、別途報酬単価が設定されています。
なお、受託居宅介護サービスは、障害支援区分に応じた支給標準時間数を参考に、市町が支給量を決定します。
加算・減算
専門職員の配置や夜間防災体制等に応じて以下の加算があります。
- 福祉専門職員配置等加算
- 視覚・聴覚言語障害者支援体制加算
- 看護職員配置加算
- 夜間支援等体制加算
- 夜勤職員加配加算
- 重度障害者支援加算
- 日中支援加算
- 自立生活支援加算
- 入院時支援特別加算
- 長期入院時支援特別加算
- 帰宅時支援加算
- 長期帰宅時支援加算
- 地域生活移行個別支援特別加算
- 精神障害者地域移行特別加算
- 強度行動障害者地域移行特別加算
- 医療連携体制加算
- 通勤者生活支援加算
- 福祉・介護職員処遇改善加算
- 福祉・介護職員処遇改善特別加算
- 福祉・介護職員等特定処遇改善加算
また、指定基準に定める基準等を満たしていない場合や住居の規模が一定以上の場合等は減算の規定があります。
まとめ
制度そのものには複雑な印象を受けるグループホームですが、内容としては、いわゆる大規模入所施設で行われているような介護サービスではなく、どこにでもあるような住宅において、こじんまりと共同生活を営む利用者の自立を促すようお助けするサービスです。
小規模である分、利用者とは濃密な関係性を築くことができるのが長所であるとともに課題ともなっています。
一方で、手続きの面はやはり複雑で、各自治体ごとに独自ルールを設定しているケースが多いことも、その特長とされています。申請前に慌てることのないように、まずはしっかりと周辺知識を蓄え、明確なビジョンと事業計画のもと、準備を進めるよう心がけましょう。
当事務所は福祉と手続きのエキスパートです。
弊所では、障がい福祉事業に関するさまざまな情報を発信するとともに、指定申請に関する手続きのサポートを行っています。代表は介護施設を運営していた実績を有する福祉の専門家であるとともに、現役のケアマネジャーという傾聴のスペシャリストでもあります。
ご不明な点、ご不安な点がありましたら、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
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