建築基準法及び消防法による障がい者グループホーム(共同生活援助)の設置基準について
障がい者グループホームを開設するにあたっては、障害者総合支援法の関係法令の規定を満たすだけでなく、事業主の責任において、建築基準法や消防法といった建築物に関する各種法令に適合しているかを予め確認する必要があります。
これらの法令は案外見落としやすく、また規定が細かいことからどうしても複雑に感じてしまうところでもあります。
そこで本稿では、障がい者グループホームを開設しようとされる皆さまに向けて、建築基準法及び消防法上で求められているグループホームの設置基準について詳しく解説していきたいと思います。
グループホームの指定申請について
建築基準法の基準
グループホームは、建築基準法上「寄宿舎」として取り扱われ、特に既存の戸建住宅等をグループホームとして活用する場合、より厳しい防火・避難関係規定に適合させる必要があります。
グループホームへ用途変更する場合は、以下のとおり、建築工事に着工する前に建築確認申請の手続きが必要になります。また、申請が不要な場合であっても、新たに適用される防火避難関係規定等に適合する必要があるため、申請の有無に限らず、建築士等の専門家とご相談のうえ、適法に整備する必要がありますのでご注意ください。
用途変更部分の床面積200㎡以内 | 確認申請は不要 |
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用途変更部分の床面積200㎡超 | 確認申請が必要 |
既存建物を活用する場合は、まず完了検査済証の有無を確認し、完了検査済証が無い場合は、建築士等が既存建物が建築基準法に適合しているかを調査して適法性が確保できないと確認申請を行うことが出来ません。完了検査済証の有無については、都道府県や市町村の建築指導課等で確認することができます。
2階以下かつ200㎡未満の⼾建住宅等
2⽅向避難の確保 | 直上階の寝室の床⾯積の合計が100㎡を超える場合は避難できる階に通じる直通階段を2箇所以上設置すること(階段部分を間仕切り壁⼜は煙を遮る構造を備えた⼾で区画した場合は適⽤除外) |
階段昇降の安全性の確保 | 階段⼨法を幅75cm以上、蹴上げ22cm以下(階段への両側⼿すり設置・踏⾯の滑り⽌め措置を講じた場合は23cm以下)、踏⾯21cm以上(階段への両側⼿すり設置・踏⾯の滑り⽌め措置を講じた場合は15cm以上)とすること |
寝室と避難経路、⽕気使⽤室の防⽕区画 | 寝室と寝室、寝室と避難経路、⽕気使⽤室とその他の室とを耐⽕性能を有する壁で区画し、その壁を天井裏⼜は⼩屋裏まで到達させること |
内装の不燃化 | コンロ(IHを除く)など、⽕気を使⽤する部屋の壁と天井を燃えにくい材料(準不燃材料)で仕上げること |
煙を排出するための窓 | すべての居室において天井から下⽅80cm以内にある開放できる窓の⾯積を各居室の床⾯積の1/50以上確保すること |
避難経路の安全性の確保 | 居室(寝室除く)と避難経路に⾮常時に点灯する照明を設置すること(採光上有効な開⼝部を有した居室で各部分から⼀定の距離以内で屋外への出⼝等へ避難できる場合や30㎡以下の居室は適⽤除外※避難経路は必要) |
屋外避難通路の確保 | 建物の出⼝から道路に通じる幅員0.9m以上の屋外避難通路を設けること |
以下のいずれかを満⾜する場合、寝室と避難経路、⽕気使⽤室の防⽕区画に関する規定は適⽤除外となります。
- ⾃動スプリンクラー設備を設けること
- 居室の床⾯積が100㎡以下の階であること、各居室に煙感知式の住宅⽤防災報知設備若しくは⾃動⽕災報知設備⼜は連動型住宅⽤防災警報器を設置すること、及び以下のいずれかを満足させること
- 各居室から直接屋外等(屋外、避難上有効なバルコニー⼜は100㎡以内ごとの他の区画(屋外及び避難上有効なバルコニーは幅員50cm以上の通路その他の空地に⾯するものに限る)に避難ができるものであること
- 各居室と避難経路とが間仕切壁及び常時閉鎖式の⼾(ふすま、障⼦等を除く)等で区画されており、各居室の出⼝から屋外等に歩⾏距離8m(各居室と通路の内装不燃化の場合は16m)以内で避難できるものであること
- 天井に強化せっこうボードを2枚以上張ったもので、その厚さの合計が36mm以上のものを設け、区画貫通処理等を講じること
床面積200㎡以下の共同住宅の住戸
寝室と避難経路の防火区画 | 寝室と寝室、寝室と避難経路とを耐火性能を有する壁で区画し、その壁を天井裏又は小屋裏まで到達させること |
内装の不燃化 | コンロ(IHを除く)など、火気を使用する部屋の壁と天井を燃えにくい材料(準不燃材料)で仕上げること |
煙を排出するための窓 | すべての居室において天井から下方80cm以内にある開放できる窓の面積を各居室の床面積の1/50以上確保すること(準耐火構造の床もしくは壁又は防火設備で区画された部分でその床面積が100㎡以内であれば適用除外) |
避難経路の安全性の確保 | 居室(寝室除く)と避難経路に非常時に点灯する照明を設置すること(採光上有効な開⼝部を有した居室で各部分から⼀定の距離以内で屋外への出⼝等へ避難できる場合や30㎡以下の居室は適⽤除外※避難経路は必要) |
以下のいずれかを満⾜する場合、寝室と避難経路の防火区画に関する規定は適用除外となります。
- 床面積200㎡以下の階又は床面積200㎡以内ごとに準耐火構造の壁等で区画した部分であること、及び自動スプリンクラー設備を設けること
- 居室の床面積が100㎡以下の階又は居室の床面積100㎡以内ごとに準耐火構造の壁等で区画した部分であること、各居室に煙感知式の住宅用防災報知設備若しくは自動火災報知設備又は連動型住宅用防災警報器を設置すること、及び以下のいずれかを満足させること
- 各居室から直接屋外等に避難ができるものであること
- 各居室と避難経路とが間仕切壁及び常時閉鎖式の戸(ふすま、障子等を除く)等で区画されており、各居室の出口から屋外等に歩行距離8m(各居室と通路の内装不燃化の場合は 16m)以内で避難できるものであること
- 天井に強化せっこうボードを2枚以上張ったもので、その厚さの合計が36mm以上のものを設け、区画貫通処理等を講じること
消防法に関する基準
障がい者グループホームは、消防法施行令別表第1(六)項の防火対象物(社会福祉施設)に該当し、主に以下のような消防用設備等の規制が課されています。
障害支援区分4以上の者が概ね8割を超える施設 | 障害支援区分4以上の者が概ね8割以下の施設 | |
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消火器 | すべて | 延べ面積150㎡以上 |
屋内消火栓設備 | 延べ面積700㎡以上 (スプリンクラー設備設置により設置不要) | 延べ面積700㎡以上 (スプリンクラー設備設置により設置不要) |
スプリンクラー設備 | すべて(一部施設は275㎡) | 床面積合計が6,000㎡以上 |
自動火災報知設備 | すべて(火災通報装置と連動) | すべて(入居・宿泊有り) |
火災通報装置 | すべて(自動火災報知設備と連動) | 延べ面積500㎡以上 |
非常警報設備 | 収容人員(入居者+施設職員)50人以上 (自動火災報知設備設置により設置不要) | 収容人員(入居者+施設職員)50人以上 (自動火災報知設備設置により設置不要) |
避難器具 | 階の収容人員が20人以上 (下階に飲食店や事務所等がある場合は10人以上) | 階の収容人員が20人以上 (下階に飲食店や事務所等がある場合は10人以上) |
誘導灯 | すべて | すべて |
防炎物品 | すべて | すべて |
就寝部分 | 2方向避難を確保すべき場合あり | 2方向避難を確保すべき場合あり |
避難方向の扉 | 緑色の表示とすべき場合あり | 緑色の表示とすべき場合あり |
厨房施設 | 消火器等の設置が必要となる場合あり | 消火器等の設置が必要となる場合あり |
防火管理者の選任と消防計画の作成 | 収容人員10人以上で必要 | 収容人員30人以上で必要 |
上の表は専用住宅(戸建住宅)をグループホームに変更した場合の設置基準の一例となります。避難上又は消火活動上必要な開口部がない場合、設備が必要となる面積が変わります。
共同住宅その他の建物の一部を使用する場合は構造、階数等によって設置基準が異なることがあり、場合によっては使用する部屋以外の建物全体に影響を及ぼす場合があります。
また、当初は障害支援区分4以上の者が8割以下の施設であっても、入所者の介護度によっては用途判定が変わることがあります。このため、入居者の安全を考慮し、できるだけ障害支援区分4以上の者が8割を超える施設の基準に準じて、スプリンクラー設備等の設置を検討することが推奨されています。
いずれにせよ、管轄の消防署とは密に連携する必要があるため、物件を選定する際は必ず消防署に出向いて事前相談と確認を行うようにしましょう。
条例に関する基準
建築や消防関連の手続きには地域の実情を反映させるため、市町村や都道府県の条例による規制が大きく影響します。各自治体ごとに上記法令の規定をさらに細かくした基準が設けられているのが一般的ですので、やはりここでも担当窓口とはしっかり協議することが重要になります。
障害福祉サービス事業者指定申請サポート
弊所では、障がい福祉事業に関するさまざまな情報を発信するとともに、指定申請に関する手続きのサポートを行っています。代表は介護施設を運営していた実績を有する福祉の専門家であるとともに、現役のケアマネジャーという傾聴のスペシャリストでもあります。ご不明な点、ご不安な点がありましたら、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
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