高齢者施設の違いを知っていますか?間違われやすい高齢者施設の種別について【2022年最新版】

老人ホーム

超高齢社会とは、65歳以上の人口の割合が全人口の21%以上を占める社会を指しますが、日本は2007年にこの基準に達しました。少子高齢化の波は今後も続くことが予測され、高齢者人口の割合は、2025年に約30%、2060年には約40%に到達するものと試算されています。

この超高齢社会の加速度的な進行に伴って、高齢者施設の需要と供給は右肩上がりに増加しており、今後もさらにその傾向が続いてゆくものと見込まれます。

さて、幣所は行政書士事務所ではありますが、代表が現役のケアマネジャーでもあることから、業務外においては、高齢者福祉分野について尋ねられる機会も多くあります。

高齢者やその家族にとって、高齢者施設は重大な関心ごとのひとつであり、実際に承る質問も、高齢者施設にまつわるものがその大半を占めています。

そこで本稿では、混同されることの多い高齢者施設の違いについて、現役ケアマネジャーとしての立場から、簡潔に解説していきたいと思います。

高齢者福祉施設の種類

高齢者福祉施設は、その目的や入居条件、運営主体の違いによって、さまざまな種類に区分されています。ここではサラッと大雑把に把握していただけるよう、種類と入居条件について、簡単に表記しています。

施設の種類入居の条件その他
特別養護老人ホーム
(介護老人福祉施設)
要介護3以上介護保険施設(通称は特養)
介護老人保健施設要介護1以上介護保険施設(通称は老健)
介護療養型医療施設要介護1以上介護保険施設(2023年に廃止)
介護医療院要介護1以上介護保険施設
グループホーム要支援2以上の認知症高齢者認知症対応型共同生活介護
介護付有料老人ホーム介護専用型:要介護1以上
混合型:自立~要介護5
住宅型有料老人ホーム自立~要介護5
健康型有料老人ホーム自立のみ
サービス付高齢者住宅
自立~要介護3程度通称はサ高住
シニア向け分譲マンション自立~要介護5
養護老人ホーム主に経済的な理由で居宅において養護を
受けることが困難な65歳以上の自立者
市町村による処置入所
軽費老人ホーム自立~要介護3程度
ケアハウス自立~要介護3程度

まずは「こんなにあるの?」が、正しい反応ではないかと思います。これだけではなかなか掴みどころが無いので、次章からはそれぞれの施設について、より詳細に紹介していきたいと思います。

介護保険施設 

介護保険法では、以下の4施設を「介護保険施設」として取り扱い、その他の施設とは明確に区分しています。介護保険サービスの区分としては、「施設サービス」に位置づけられており、サービスも「施設サービス計画書」に則って提供されています。

①特別養護老人ホーム(特養)

食事・入浴・排せつなどの身体介護、清掃・洗濯などの日常的な生活支援、リハビリテーション、及びレクリエーションなどの介護サービスを受けることができる施設です。

比較的安価で入居することができるほか、看取りにも対応していることから、終の棲家となりうる施設として、最も高い人気を獲得しています。そのため、地域によっては入居までに数年単位の待機を強いられることも珍しくなく、「安いけどなかなか入りにくい施設」となっているのが現状です。

なお、入居基準は以下のとおりです。

  • 65歳以上であって、要介護3以上の高齢者
  • 40歳~64歳であり、特定疾病が認められた要介護3以上の者
  • 以下の要件に該当することにより特例によって入居が認められた要介護1~2の者
    • 認知症により、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること
    • 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること
    • 家族等の深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること
    • 単身世帯、または同居家族が高齢もしくは病弱である等の理由により、家族等の支援が期待できず、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること

②介護老人保健施設(老健)

病院と自宅の中間的な位置づけで、おもに退院直後の在宅生活が難しい要介護1以上の高齢者を対象に、在宅復帰を目指す施設として機能しています。

あくまでも在宅復帰をその目的としていることからも、入居期間は原則として3~6ヶ月とされています。(例外あり)

介護老人保健施設では、食事・入浴・排せつなどの身体介護、医師・看護師による医療的管理、理学療法士などによるリハビリテーションなどが提供されます。

入居期間が限定されているので終の棲家とはなりえませんが、実際には特別養護老人ホームの入居待ちとして利用している人も多いのが現状です。

③介護療養型医療施設

医学的管理が必要な要介護1以上の高齢者を対象にした介護保険施設です。食事・入浴・排せつなどの身体介護、医師・看護師による医療的管理、理学療法士などによるリハビリテーションなどが提供されます。

医療法人が運営しており、実態としては医療機関という位置づけです。このため、原則的には終身制を採用しておらず、心身の状態が改善してきた場合には、退所を求められることもあります。

なお、2023年には廃止されることが決定しており、その機能の大部分は、次の「介護医療院」に引き継がれることになります。

④介護医療院

Ⅰ型とⅡ型に区分されており、Ⅰ型では重度の利用者に対する医療ケアを行い、Ⅱ型では在宅復帰を目指してリハビリ支援を行います。いずれも要介護1以上の高齢者が対象とされており、日常生活の身体介助に加えて、医療ケアや生活支援も重視していることが特長です。

グループホーム

グループホームとは、認知症と診断された者同士が、専門スタッフの援助を受けつつ共同生活を送るタイプの施設です。介護保険法上は、「認知症対応型共同生活介護」として「地域密着型介護サービス」に位置づけられています。

原則として、施設と同一の市区町村に住民票を有する者が入居の対象となります。具体的な入居基準は、次のとおりとなっています。

  • 要支援2以上の認定を受けている65歳以上の高齢者であって、医師により認知症の診断を受けた者
  • 若年性認知症または初老期認知症と診断された65歳未満の者であって、要支援2以上の認定を受けている者

このほかにも、各施設ごとに独自の入居条件を付すことが多いのも特長のひとつとなっています。

認知症ケアに特化しており、規模も小さいことから個別対応の面で優れてはいますが、医療スタッフの配置基準がないため、高度な医学的管理が必要となった場合には退去が求められることがあります。

利用者はユニットごとに分けられ、家事などを役割分担しながら共同生活を行います。1ユニットは9名が定員であり、最大2ユニット(合計で最大18名)が原則とされています。

介護付有料老人ホーム

都道府県の指定を受けることによって、「特定施設(特定施設入居者生活介護)」に分類された老人ホームです。主に民間の営利法人が運営しており、その入居基準や入居費用もさまざまです。

要介護者のみが入居できる「介護専用型」と自立~要介護5の方を対象にした「混合型」とに区分されていますが、いずれも24時間体制で介護職員が常駐し、身の回りの世話や、食事・入浴・排せつなどの介助サービスを受けることができます。

住宅型有料老人ホーム

一見して介護付有料老人ホームやサービス付高齢者住宅(サ高住)との違いはありませんが、こちらは「特定施設(特定施設入居者生活介護)」としての指定や、都道府県知事の登録を受けていない施設です。

食事サービスと、緊急時の対応などの日常的な生活支援が行われますが、基本的には自立度の高い高齢者が入居の対象とされています。

健康型有料老人ホーム

家事などのサポートを受けることができるほか、図書室やスポーツジム等日常生活を楽しむための設備が充実している施設です。基本的に、自立もしくは要支援状態の高齢者を中心に受入れを行っているため、要介護度が上った場合には、原則として退去しなければなりません。

サービス付高齢者住宅

60歳以上の高齢者、もしくは要介護認定を受けた60歳未満の者を入居の対象にしています。日中は医療や介護の有資格者が常駐し、安否確認と生活相談サービスを提供します。

設備やサービスに対する基準が設けられており、運営主体である民間企業は、都道府県知事に対して申請を行い、その登録を受ける必要があります。なお、介護保険法上の指定の有無により、さらに以下のように区分されています。

一般型自立した独居高齢者や高齢者夫婦に向いたサービスです。介護が必要になった場合は、外部の在宅介護サービスを利用します。
介護型介護保険法上の指定を受けている施設であり、介護が必要になった場合は、建物内に常駐する職員から介護サービスや生活支援サポートを受けることができるため、要介護の高い高齢者のにも対応しています。

シニア向け分譲マンション

その名のとおり、高齢者が生活しやすいようにバリアフリーに対応した分譲マンションのことです。

養護老人ホーム

主に経済的な理由により、居宅において養護を受けることが困難な65歳以上の自立者を入所させ、「措置」として養護することを目的とする施設のことです。

特別養護老人ホームとは異なり、介護保険施設として取り扱われていないため、入所の申込みは市町村に対して行います。

軽費老人ホーム

自立した生活に不安を抱えた身寄りのない高齢者が、自治体の助成により比較的軽費で入居することができる施設です。AからCまでの3類型があり、このうちA型とB型への入居については、所得制限が設けられています。

A型食事が提供されます。
B型食事は提供されません。
C型ケアハウスのことです。

ケアハウス

軽費老人ホームの一類型ですが、A型・B型とは異なり、所得制限が設けられていません。

一般型食事サービス、安否確認・生活相談サービスが提供され、介護が必要になった場合は外部サービスと契約し介護サービスを受けます。
介護型要介護1以上の方が対象となり、施設の職員から介護サービスを受けることができます。

まとめ

正直に言えば、ケアマネジャーであっても、これら全ての施設の違いを完璧に把握することは困難です。介護保険法の改正頻度は目まぐるしく、少し現場を離れてしまうと、いつの間にか制度が大きく変貌していることも珍しいことではありません。

それぞれの施設ごとに特長があり、入居条件も異なりますので、何となくでもイメージをお持ちいただいて、必要に迫られた際には、手引きとして活用していただければ幸いです。

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