サービス付高齢者住宅をはじめるには│高齢者住まい法の登録申請について

サービス付高齢者住宅(以下、サ高住)とは、医療と介護とが連携し、単身または夫婦世帯の高齢者が安心して暮らせるよう生活環境が整備された賃貸住宅をいいます。
近年では、一般にもその存在が認知されているサ高住ですが、介護付有料老人ホーム等の他施設との違いや、運営するために必要となる「高齢者住まい法」上の手続きについてまでは、案外知られていないのが実情ではないかと思います。
そこで本稿では、サ高住を新たに運営しようとお考えの皆さまに向けて、その概要とともに、運営するために必要となる手続きについて、詳しく解説していきたいと思います。
目 次
サ高住の特色
サ高住は、居室の広さや設備、バリアフリーといった条件を備えるとともに、ケアの専門家による安否確認や生活相談をサービスとして提供することにより、高齢者にとって、より生活しやすい環境となっているのが特長です。
民間企業が運営主体となることはもちろん可能ですが、住宅をサ高住として運営していくためには、都道府県知事に対して申請を行い、その登録を受ける必要があります。
また、高齢者施設の区分は多岐にわたるため、しばしば他施設との間で混同が生ずることがあります。その中でも特に混同されることの多い「介護付有料老人ホーム」との違いについて、以下で簡単に説明させていただきます。
介護付有料老人ホームとの違い
端的に表現すれば、「サービス付」と「介護付」との違いは、「介護保険法」の適用の有無になります。
すなわち、介護保険法の適用を受けて特定施設として「介護」を提供するものが「介護付」、適用を受けずに「サービス」を提供するものが「サービス付」ということになります。
なお、介護保険法上の指定を受け、「特定施設」として取り扱われるようになったサ高住を、便宜上「介護型」と呼称することがあります。(後述)
★ポイント
施設として介護保険法の適用を受けていないものが「サ高住」である!
サービスや利用者の違い
内情を知る元介護職の視点からざっくり比較すると、サ高住は自立した方でも安心して自由に暮らせるよう整備された施設というイメージであり、介護付有料老人ホームはより介護に特化した施設というイメージがあります。
そのためサ高住の方が利用者の自立度は高く、反対に介護付有料老人ホームでは要介護度が高くなるという傾向があるように感じます。
区分 | サービス付高齢者向け住宅 | 介護付有料老人ホーム | 住宅型有料老人ホーム |
---|---|---|---|
概要 | 都道府県・政令市・中核市の登録を受けた高齢者住宅 | 「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホーム | 「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていない有料老人ホーム |
サービス内容 | 安否確認と生活相談サービス | 食事・清掃など、すべてをホームが提供する | 食事サービスと、緊急時の対応などの日常的な生活支援 |
介護サービス | 外部の事業者 | 施設が提供 | 外部の事業者 |
その他 | 介護専用型:要介護1以上の方が対象 混合型:自立でも対象となる |
施設の形態
サ高住を運営するためには、都道府県知事の登録を受けることが必要とされていますが、この登録だけでは介護保険法上の「特定施設」としては取り扱われないため、施設として介護保険請求を行うことはできません。
特定施設の指定を受けるためには、より厳しい基準をクリアした上で、都道府県知事から「特定施設入居者生活介護」として指定を受ける必要があります。
特定施設として指定を受けたものを「介護型」、受けていないものを「一般型」と呼ぶことがありますが、一般型であっても、同じ敷地内あるいは隣接する敷地内において同法人が運営する訪問介護サービス事業者が、外部のサービス事業者として介護サービスの提供を行うという形態の運営がなされていることが多くあります。
なお、介護保険法上、定員29名以下の小規模な施設については、市町村長から「地域密着型特定施設入居者生活介護」の指定を受けることになります。
入居の対象者
高齢者住まい法により、入居することができるのは、①60歳以上の高齢者若しくは②要介護・要支援認定を受けている60歳未満の者及び③その同居者(配偶者(内縁関係を含む)、60歳以上若しくは要介護・要支援認定を受けている親族又は特別な理由により同居する必要があると登録主体(都道府県又は指定機関)が認めた者)に限られます。
また、施設ごとに「認知症の有無」や「自立度」を独自の入居条件として設定していることがあるほか、ほとんどの施設では入居の際に連帯保証人や身元引受人を必要としています。
登録の申請
登録の申請は、後述する登録基準に適合させた上で、都道府県知事(又は政令市・中核市の市長)に対して、原則としてオンラインにより行います。
細かい部分については、各自治体ごとに違いがあるため、登録の際は、必ず自治体の公開する手引などを確認するようにしてください。
また、登録申請とは別に、開発許可申請、建築確認申請あるいは消防法令上の届出を必要とする場合があるため、不明な点があれば、各自治体やの担当窓口に確認するようにしましょう。
登録の基準
高齢者向けに特化した住宅であるため、申請すれば当然に登録を受けることができるわけではなく、登録を受けるためには、施設設備面、サービス面及び契約面について、それぞれ一定以上の基準を満たす必要があります。
以下に紹介する基準はその一例ですが、この他にも各自治体ごとに独自の基準が設定されている場合があるため注意が必要になります。
施設設備の基準
サ高住の施設や設置すべき設備は、以下の基準にすべて適合させる必要があります。
- 各居住部分の床面積は原則25㎡以上であること
- 各居住部分に、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室を備えたものであること
- 加齢対応構造(バリアフリー構造)であること
床面積
各居住部分の床面積は、25㎡以上であることが原則とされていますが、居間、食堂、台所その他の住宅の部分が高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合は18㎡以上の床面積で足ります。
必要な設備
各居住部分には、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室を備える必要があります。
ただし、共用部分に共同して利用するために適切な台所、収納設備又は浴室を備えることにより、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保される場合は、必ずしも各戸に台所、収納設備又は浴室を備える必要はありません。
加齢対応構造
建物の構造は、原則として以下のようなバリアフリー構造を有する設備であることが求められます。
- 段差のない床
- 廊下や出入口の幅員の確保
- 浴室の寸法及び面積の確保
- 便所の配置や寸法の確保
- 腰掛け式便器の使用
- 寝室の面積の確保
- 階段の寸法の確保
- 手すりの設置
- エレベーターの設置
なお、既存建物の改修の場合であって、建築材料又は構造方法により通常の基準をそのまま適用できないときは、以下の構造を有する設備で足りるものとされています。
- 段差のない床
- 便所の配置
- 階段の寸法の確保
- 手すりの設置
サービスの基準
サ高住において提供すべきサービスの最低基準は以下のとおりです。
- 少なくとも状況把握(安否確認)サービス及び生活相談サービスを提供すること
- ケアの専門家が敷地内又は隣接もしくは近接地に少なくとも日中常駐し、サービスを提供すること
- 常駐しない時間帯は、緊急通報システムにより対応すること
★ケアの専門家
- 社会福祉法人
- 医療法人
- 指定居宅サービス事業所等の職員
- 医師
- 看護師
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 介護支援専門員
- 介護職員初任者研修課程を修了した者
契約関連の基準
契約面においても基準が設けられており、事業者側が完全自由に契約を締結することは認められていません。
- 書面により契約を締結すること
- 専用部分が明示された契約であること
- 権利金その他の金銭を受領しない契約であること
- 入居者が入院したことまたは入居者の心身の状況が変化したことを理由として、入居者の同意を得ずに居住部分の変更や契約解除は行わないこと
- 住宅の工事完了前に、敷金及び家賃等の前払金を受領しないものであること
たとえば金銭については、敷金、家賃、サービス費のいずれか若しくは家賃及びサービス費の前払金のみ徴収することが可能です。
なお、家賃を前払いする場合は、以下の基準についても、すべて満たすことが必要になります。
- 家賃等の前払い金の算定の基礎、返還債務の金額の算定方法が明示されていること
- 入居後3か月が経過するまでの間に契約を解除し、又は入居者が死亡したことにより契約が終了した場合は、「契約解除までの日数×日割計算した家賃等」を除き、家賃等の前払金を返還すること返還債務を負うことになる場合に備えて、家賃等の前払金に対し、必要な保全措置が講じられていること
登録申請に必要となる書類
登録申請は、オンライン上の受付窓口に対し、以下の書類を提出することにより行います。
- 登録申請書
- 各種図面(付近見取図・配置図・平面図)
- 土地・建物の登記事項証明書(自己所有)
- 賃貸借契約書(他人所有)
- 委託契約(管理又はサービスを委託する場合)
- 登記事項証明書及び定款(法人)
- 登録拒否要件の確認情報
- 登録事項等について説明する書面
- 入居基準の適合チェックリスト
- 建築確認の確認済証、検査済証
- その他必要と認める書類
登録のメリット
登録を受けた住宅であることが表示されることにより、一定以上の基準を満たしている高齢者向け住宅であることが公的に担保されます。また、税制上の優遇措置や、住宅金融支援機構による融資等の支援制度を受けることができる場合があります。
また、サ高住は国土交通省のサービス付き高齢者向け住宅整備事業の対象となっているため、新築や改築の費用の一部(新築の場合は最大で建築費の10分の1)を補助金として受給することができます。
登録後の手続き
登録の有効期間は5年間とされており、この有効期間が経過した後も引き続き登録を希望する場合は、あらためて登録を申請する必要があります。
また、登録後は定期的に報告書を提出する義務が生ずるほか、重大な事故又は災害が発生した場合には、事故(災害)報告書を提出する必要があります。
なお、行政の指導監督権限は一般の賃貸住宅に対するものと比較して強く、状況に応じては、立入検査等を受けるよう指導される場合があります。
サ高住登録申請サポート
弊所では、関西圏全域にわたりサ高住の登録申請の代行を承(うけたまわ)っております。代表は、現役の介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、福祉住環境コーディネーターの有資格者であり、なおかつ介護施設における長年の運営実績を有し、職員の教育研修から運営及び営業の手法まで熟知しております。
また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」として、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。サ高住登録申請でお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。
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