車検証のAタイプとBタイプの違いとは│電子車検証での見分け方と登録識別情報を行政書士が解説

自動車検査証、いわゆる車検証をじっくり眺める機会は、あまり多くないかもしれません。ところが、車検証には「Aタイプ」と「Bタイプ」の2種類があり、どちらの車検証かによって、名義変更や廃車などの手続きで用意する書類が変わってきます。ローンで購入した車やリース車両を使っている方にとっては、知っておいて損のない知識です。
一般的な車検証はAタイプと呼ばれ、所有者と使用者の欄が設けられています。一方、Bタイプは、リース会社やローン会社のように多数の自動車を所有する事業者の事務負担を軽くするために設けられたもので、所有者欄がなく、所有者の情報は備考欄に記載されるという特徴があります。
さらに、令和5年1月からは車検証が電子化され、A6サイズの厚紙にICタグを貼り付けた「電子車検証」が交付されるようになりました。電子車検証の券面には所有者の情報が記載されないため、従来のように車検証を見ただけでAタイプかBタイプかを判断することはできなくなっています。
そこで本稿では、車検証の役割、AタイプとBタイプの違い、Bタイプの前提となる登録識別情報制度、電子車検証になってからの見分け方、そして手続きの際に気をつけたい点までを、行政書士が詳しく解説します。
車検証の役割
自動車検査証は、道路運送車両法に基づいて交付される公文書で、その自動車が検査の時点で保安基準に適合していることを証明するとともに、自動車の所有者や使用者を公証する役割を持っています。乗用車やトラックなどの登録自動車のほか、軽自動車や、総排気量250ccを超える二輪の小型自動車にも交付され、自動車を運行する際には車内に備え付けておく必要があります。
車検証には、自動車登録番号や車台番号、車名、型式といった車両の情報に加えて、所有者と使用者の氏名や住所、使用の本拠の位置などが記録されています。ここでいう所有者は自動車の持ち主であり、使用者は実際にその自動車を使い、保守管理を担う人を指します。自分で購入して自分で使っている車であれば、所有者と使用者は同じ人になります。
一方、ローンで自動車を購入した場合は、ローンを完済するまで販売店やローン会社が所有権を留保し、車検証上の所有者となることが一般的です。リース契約の場合も、自動車はリース会社の所有物であり、利用者は使用者として記録されます。このように、所有者と使用者が別の人になるケースは、決して珍しいものではありません。
所有者と使用者が異なる場合、名義変更や廃車などの手続きでは、所有者側の書類が必要になります。どちらのタイプの車検証かによって、所有者に関する情報の記載のされ方や、手続きの際に所有者から提供を受ける情報が変わってくるため、まずは両者の違いを押さえておきましょう。
Aタイプ車検証とBタイプ車検証
国土交通省は、二つのタイプを次のように説明しています。
| タイプ | 内容 |
|---|---|
| Aタイプ | 自動車検査証に所有者と使用者の欄が設けられ、所有者に関する記載があるもの |
| Bタイプ | 自動車検査証に所有者欄がなく、使用者欄のみが設けられ、備考欄に自動車検査証発行時の所有者(例えばリース会社など)の情報が表示されたもの |
ほとんどの自動車に交付されているのはAタイプです。所有者と使用者が同じ場合はもちろん、所有者と使用者が異なる場合でも、後述する登録識別情報の通知を所有者が希望しなければ、Aタイプが交付されます。Aタイプでは、所有者欄に現在の所有者の氏名や住所が記載されているため、手続きの際は、その欄に記載された所有者から書類をそろえることになります。
Bタイプの大きな特徴は、備考欄に記載された所有者の情報が「車検証発行時」のものであるという点です。所有者であるリース会社が本社を移転したり、合併によって名称が変わったりしても、それだけを理由に車検証を書き換える必要はなく、継続検査などで車検証が更新される際に最新の所有者情報に置き換えられます。裏を返せば、Bタイプの備考欄に記載された所有者情報は、すでに古くなっている可能性があるということです。
Bタイプが設けられた背景には、多数の自動車を所有する事業者の事務負担の問題があります。所有者の住所や名称が変わるたびに、全国の使用者から車検証を回収して書き換えるとなれば、膨大な手間と費用がかかります。Bタイプは、所有者情報の変更があっても車検証の書き換えを不要とすることで、こうした負担を軽くするための仕組みといえるでしょう。
登録識別情報制度
Bタイプの車検証は、「登録識別情報制度」と一体の仕組みです。登録識別情報とは、所有者に通知される6桁の英数字からなる情報で、移転登録や抹消登録などの手続きの際に、所有者本人であることを確認するためのいわばパスワードの役割を果たします。
所有者と使用者が異なる自動車について、所有者が登録識別情報の通知を希望すると、その自動車には登録識別情報制度が適用され、Bタイプの車検証が交付されます。所有者と使用者が同じ自動車や、所有者と使用者が異なっていても所有者が通知を希望しない自動車は、制度の対象外となり、Aタイプの車検証が交付されます。所有者が多数の自動車を保有するリース会社などでは、この制度を利用することで、車検証を書き換えずに済むという利点を得ています。
なお、登録識別情報制度は登録自動車を対象とした制度であり、二輪の小型自動車や軽自動車には適用されません。そのため、軽自動車の車検証はAタイプのみであり、Bタイプの車検証が交付されることはありません。
また、一時抹消登録をした場合は、AタイプかBタイプかにかかわらず、すべての所有者に登録識別情報が通知され、「登録識別情報等通知書」が交付されます。一時抹消した自動車を再び登録したり、名義を変えたりする際には、この通知書に記載された登録識別情報が必要となるため、紛失しないよう大切に保管しておきましょう。
電子車検証での見分け方
令和5年1月4日から、登録自動車の車検証は順次電子化されています。軽自動車は令和6年1月から電子化されました。電子車検証は、A6サイズ相当の厚紙にICタグを貼り付けたもので、券面には、継続検査や変更登録の影響を受けない自動車登録番号や車名、型式などの基礎的な情報だけが記載されます。
自動車検査証の有効期間、所有者の氏名や住所、使用者の住所、使用の本拠の位置といった情報は、券面には記載されず、ICタグに記録されます。そのため、国土交通省は、電子車検証の場合は券面の表示だけではAタイプかBタイプかを判別できないと案内しています。
電子車検証のタイプを確かめるには、国土交通省が提供する「車検証閲覧アプリ」を使い、スマートフォンやICカードリーダーを接続したパソコンでICタグの情報を読み取る方法があります。アプリからは、ICタグの情報を一覧にした「自動車検査証記録事項」をPDFで出力することもでき、帳票の左上の記載でタイプを確認できます。なお、記録事項では、所有者と使用者が同じ場合、使用者の欄が「***」と表示されます。
一方、電子化される前の紙の車検証(A4サイズ)であれば、車検証の枠外左上にある番号欄で確認できます。5桁の数字に続いて「A」又は「B」のアルファベットが記載されているため、ここを見ればどちらのタイプかがわかります。紙の車検証は、新規登録や継続検査などで新しい車検証が交付される際に、順次電子車検証へ置き換えられていきます。
自動車検査証記録事項の入手
電子車検証の導入にあたって、国土交通省は、閲覧アプリが普及するまでの補助的な措置として、電子車検証の交付時や更新時に、運輸支局などの窓口で紙の「自動車検査証記録事項」を配布してきました。この措置は、電子化から少なくとも3年間は続けるとされていたものです。
この配布は縮小が進んでいます。たとえば福島運輸支局は、継続検査の際の自動車検査証記録事項の配布を令和7年12月26日で終了すると案内しており、紙の記録事項が必要な場合は、窓口に設置した印刷端末を利用するか、閲覧アプリからPDFを出力するよう求めています。券面の記載事項に変更がある手続きでの配布についても、いずれ終了する方向とされています。
名義変更や廃車の手続き、自動車税の申告、各種の補助金の申請などでは、所有者や使用者の住所、車検の有効期間を確認するため、電子車検証とあわせて記録事項の提出を求められることが少なくありません。電子車検証のコピーだけでは必要な情報が確認できないためです。
窓口で記録事項を受け取れなかった場合や、受け取った記録事項を紛失した場合でも、閲覧アプリを使えば、いつでも最新の情報で出力し直すことができます。スマートフォンが読み取りに対応しているかどうかを含めて、あらかじめアプリの使い方を確認しておくと、いざ手続きが必要になったときに慌てずに済むでしょう。
手続きの際に注意したい点
所有者と使用者が異なる自動車の手続きでは、使用者だけで完結しないものがある点に注意が必要です。移転登録や抹消登録のように所有者に関わる手続きでは、所有者からの委任状や印鑑証明書、譲渡証明書などの書類が必要になり、所有者と使用者の双方の書類をそろえることになります。
Bタイプの車検証の場合は、備考欄に記載された所有者の情報が発行時のものであるため、所有者の住所や名称がすでに変わっている可能性があります。手続きの前には、備考欄の情報をうのみにせず、リース会社やローン会社などの所有者に、現在の情報と必要な書類を確認しておくことが大切です。
また、登録識別情報の通知を受けている所有者が手続きに関わる場合は、登録識別情報の提供が必要です。所有者が登録識別情報を電子的に提供できないときは、申請書に登録識別情報を記入することとされているため、使用者が名義変更などの手続きを進める際は、あらかじめ所有者に連絡を取り、登録識別情報の扱いについて確認しておく必要があります。
ローンを完済して所有権留保を解除する場合も、販売店やローン会社から必要な書類を取り寄せて、所有者を自分に変更する移転登録を行うことになります。完済しただけで車検証の名義が自動的に変わるわけではないため、売却や廃車を考えたときに初めて所有者が自分でないことに気づいた、ということのないよう、早めに手続きを済ませておきましょう。
まとめ
車検証には、所有者と使用者の欄が設けられたAタイプと、所有者欄がなく備考欄に発行時の所有者情報が記載されたBタイプの2種類があります。Bタイプは、所有者と使用者が異なり、所有者が登録識別情報の通知を希望した場合に交付されるもので、リース会社などが所有者情報の変更のたびに車検証を書き換えなくて済むようにするための仕組みです。登録自動車のみが対象であり、軽自動車にBタイプの車検証はありません。
令和5年1月から交付されている電子車検証では、所有者の情報が券面に記載されないため、券面を見ただけではAタイプかBタイプかを判別することができません。タイプを確認するには、車検証閲覧アプリでICタグを読み取るか、自動車検査証記録事項の左上の記載を確認する必要があります。紙の車検証であれば、枠外左上の番号欄に記載されたアルファベットで判断できます。
所有者と使用者が異なる自動車の手続きでは、所有者側の書類が必要になり、Bタイプの場合は登録識別情報の提供も求められます。備考欄の所有者情報は発行時のものであるため、手続きの前には、必ず所有者に現在の情報と必要書類を確認するようにしましょう。
車検証は、車検をはじめ、名義変更や廃車、税の申告など、自動車に関わるさまざまな手続きの基礎となる重要な書類です。一度、手元の車検証や自動車検査証記録事項を確認し、所有者と使用者が誰になっているか、記載内容に実態と異なる点がないかを把握しておくことをおすすめします。


