ビール、発泡酒及び第3のビールの違いについて

黄金色に輝く麦

普段何気なく口にするビールですが、その種類は実に多く、また、発泡酒や第3のビール(新ジャンル)といったビールテイストの酒類とも、一見すると区別がつきません。

ユーザーとしてお酒を楽しむ場合もさることながら、酒類製造や酒類販売の免許を取得する上においては、これらの違いについて、明確に把握して理解する必要性に迫られます。

そこで本稿では、ビール、発泡酒及び第3のビールの違いについて、原料や製造方法も踏まえ、改めてしっかりと解説していきたいと思います。酒類製造者及び行政書士向けに、ところどころ小難しい専門用語も飛び交いますが、飛ばしながら読み進め、ざっくりと全体像を把握していただければ幸いです。

ビールの定義

酒税法及び酒税法施行令では、ビールについて、以下のいずれかの酒類であって、アルコール分が20度未満のものであることを定義しています。

  • 麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの
  • 麦芽、ホップ、水、麦、米、とうもろこし、高粱(もろこし)、馬鈴薯、でん粉、糖類若しくはカラメル又は果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮させた果汁を含む)若しくはコリアンダーその他の財務省令で定める香味料を原料として発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の50%以上のものであり、かつ、その原料中果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮させた果汁を含む)又はコリアンダーその他の財務省令で定める香味料の重量の合計が麦芽の重量の5%を超えないものに限る)
  • 上記の酒類に、ホップ、果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮させた果汁を含む)又はコリアンダーその他の財務省令で定める香味料を加えて発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の50%以上のものであり、かつ、その原料中果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮させた果汁を含む)又はコリアンダーその他の財務省令で定める香味料の重量の合計が麦芽の重量の5%を超えないものに限る)

このようにビールの原料にはさまざまなものがありますが、代表的な原料は、麦芽(モルト)、ホップ、水及び酵母であり、これらを使用した製造方法は概ね以下のとおりです。

①水温約15℃で2日間ほど大麦に水分を含ませ(浸麦)、空気を送りながら麦芽を発芽させる(製麦)

②麦芽を乾燥(焙燥)させた後、苦み成分の素である根を取り除き、粉砕し高温で焦がして(焙煎)、温水と混ぜ合わせる(もろみづくり)

③デンプンを糖化させ、ろ過したものにホップを加え、煮沸したら、ビール酵母を加えて発酵させる(仕込み)

④貯蔵タンクに移し、低温で数十日間熟成させる

発芽の際に働く酵素は、大麦の成分(デンプンやタンパク質)を分解し、アルコールの元となる糖分等に変える働きがあるため、発芽はビール製造において重要な工程となります。

なお、ビールの原料となる「コリアンダーその他の財務省令で定める香味料」とは、コリアンダー又はその種のほか、ビールに香り又は味を付けるため使用する以下の物品が該当します。

  • 胡椒、シナモン、クローブ、山椒その他の香辛料又はその原料
  • カモミール、セージ、バジル、レモングラスその他のハーブ
  • 甘藷(サツマイモ)、かぼちやその他の野菜(野菜を乾燥させ、又は煮つめたものを含む)
  • そば又はごま
  • 蜂蜜その他の含糖質物、食塩又はみそ
  • 花又は茶、コーヒー、ココア若しくはこれらの調製品
  • 牡蠣、昆布、わかめ又はかつお節

発泡酒の定義

発泡酒とは、以下のいずれかの酒類(清酒、合成清酒、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、みりん、ビール、果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー及び原料用アルコールを除く)のうち、発泡性を有するものであって、アルコール分が20度未満のものをいいます。

  • 麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く)
  • ホップを原料の一部としたもの
  • 上記以外の酒類であって、香味、色沢その他の性状がビールに類似するものとして、以下のいずれにも該当する酒類
    • 財務省令で定める方法(※1)により測定した場合における光を吸収する度合を基礎として算出した苦味価の値(吸光度×50)が5以上であること
    • 財務省令で定める方法(※2)により測定した場合における光を吸収する度合を基礎として算出した色度の値(吸光度×25(希釈した場合にあっては、25×希釈率))が4以上であること

(※1)財務省令で定める方法は、酒類(濁りのある酒類にあっては、濁りを取り除いたもの)100㎤に15mm3のオクチルアルコールを加え、温度約20度において20分間かくはんした後、その10㎤を遠沈管に採り、これに6mol/Lの塩酸0.5㎤及びイソオクタン20㎤を順次加え、遠沈管に共栓をして毎分240回から毎分260回の範囲の速度で15分間振とうし、それを毎分3000回で5分間遠心分離して得られたイソオクタン層について、日本産業規格に定める吸光光度分析通則に従い、光路長10mmの吸収セルを用いて波長275nmにおけるイソアルファー酸及び還元型イソアルファー酸に由来する吸光度を純粋なイソオクタンを対照として測定する方法とする。

(※2)財務省令で定める方法は、炭酸ガスを抜く処理を施した酒類について、吸光光度分析通則に従い、光路長10mmの吸収セルを用いて波長430nmにおける吸光度を測定する方法とする。(吸光度が0.8以上である場合には、0.8未満となるように酒類を蒸留水で希釈した上で前段に規定する方法によって測定する方法とする)

製造工程もほぼ一緒であり、見た目やテイスト的にもビールと遜色ない発泡酒ですが、その違いは、上記のとおり、おもにその原料にあります。

ビールの代表的な主原料は、麦芽、ホップ及び水であり、これに米やトウモロコシ等の副原料を加えることが認められている一方で、「その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の50%以上のもの」がビールとして定義されていることから、副原料については、麦芽の重量を超えてはいけないというルールが定められています。

日本の発泡酒として代表的なものは、ビールと同じく麦芽又は麦を原料の一部とした発泡性のある酒類ですが、ビールとの違いは、原料としての麦芽の割合と、定められた原料以外のものを使用しているかどうかにより決します。

これらを踏まえ、「副原料が麦芽の重量を上回るビール風味の酒類」、「ビールの原料として認められていない原料を使ったもの」及び「麦芽ではく麦を原料とするもの」等、ビールには該当しないものが発泡酒に該当することになります。

第3のビール(新ジャンル)

「第3のビール」という用語は、ビール及び発泡酒に続くビールテイストの酒類という意味合いから、便宜的に作られた呼称です。酒税法上はビールではないため、表現として正確さを欠きますが、広く世間から認知されています。

「ビール」にも「発泡酒」にも当たらないように、原料を麦や麦芽以外の穀物(主に豆類)にしたり、発泡酒に別のアルコール飲料(麦由来の蒸留酒)を混ぜるという手法を採用しているため、酒税法上、前者は「その他の醸造酒(発泡性)」、後者は「リキュール(発泡性)」に分類されます。

その他の醸造酒穀類、糖類その他の物品を原料として発酵させた酒類であってアルコール分が20度未満のもの(エキス分が2度以上のものに限る)
リキュール酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの

下表のとおり、「ビール」や「発泡酒」と比較して、「その他の醸造酒(発泡性)」及び「リキュール(発泡性)」は、税率が低めに設定されています。これにより消費者は、「第3のビール」を「ビール」や「発泡酒」を割安で購入することができるようになります。

酒税率一覧表

なお、「第3のビール」のシェアは、その他醸造酒型がリキュール型を上回っていましたが、近年主要4社がはリキュール型の販売を開始したことから、リキュール型について、「第4のビール」と呼称する動きもあります。

まとめ

製造者、消費者及び行政庁の3者の思惑が入り乱れるビールテイスト飲料業界ですが、このようにそれぞれのタイプを深堀りしてみるのも面白い試みです。違いを知ってからそれぞれを飲み比べてみると、また新たな楽しみを発見することができるかもしれませんね。

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