レンタカー事業開業ガイド│自家用自動車有償貸渡許可

レンタカー

近年自動車を有償で貸し出すレンタカー事業の成長は目覚ましく、市場規模は年々拡大の一途をたどっています。その背景には需要の拡大があることはもちろんのこと、レンタカー事業に対する規制緩和によって個人事業主や中小企業の参入が盛んになったことが関係しています。

道路運送法においては、レンタカー事業を自家用自動車有償貸渡業と呼んで許可制による規制を実施していますが、このように自家用自動車有償貸渡業は、個人法人の別にかかわらず、比較的参入しやすい事業形態です。

そこで本稿では、これから自家用自動車有償貸渡業をはじめようとお考えの皆さまに向けて、自家用自動車有償貸渡業に関する基礎知識や必要となる手続きについて詳しく解説していきたいと思います。

自家用自動車有償貸渡業

自家用自動車有償貸渡業とは、本来であれば禁止されている自家用自動車の有償貸出を、許可を受けて行う事業のことを指します。許可行政庁は国土交通大臣ですが、申請先は営業所を管轄する地方運輸支局の窓口になります。

自家用自動車有償貸渡業の許可は、あくまでもレンタカー事業に対する許可であるため、送迎を含め運賃をもらってレンタカーの車両に旅客を乗車させて運搬することは認められていません。また、買い取った中古車両をレンタカーとして貸し出す事業を行う際には別に古物商許可を取得する必要があります。

許可の基準

レンタカー事業ではわざわざ許可制を採用しているので、車両さえあれば良いという訳にはいきません。自家用自動車有償貸渡業許可を取得するためには、人的基準物的基準及び金銭的基準をすべて満たす必要があります。

人的基準

申請者及びその役員が以下のいずれかの事由(欠格事由)に該当するとき又は申請日前2年前以降において自動車運送事業経営類似行為により処分を受けているものであるときは、自家用自動車有償貸渡業者としての適格性を欠く者として許可を受けることができません。

  • 許可を受けようとする者が1年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない者であるとき
  • 許可を受けようとする者が、一般旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業又は自家用自動車の有償貸渡しの許可の取消しを受け、取消しの日から2年を経過していない者であるとき
  • 許可を受けようとする者が、一般旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業又は自家用自動車の有償貸渡しの許可の取消しの処分に係る通知があった日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に、事業又は貸渡しの廃止の届出をした者(事業又は貸渡しの廃止について相当の理由がある者を除く)で、届出の日から2年を経過していない者であるとき
  • 許可を受けようとする者が、一般旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業又は自家用自動車の有償貸渡しの監査が行われた日から許可の取消しの処分に係る聴聞決定予定日までの間に、事業又は貸渡しの廃止の届出をした者(事業又は貸渡しの廃止について相当の理由がある者を除く)で、届出の日から2年を経過していない者であるとき
  • 許可を受けようとする者が営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者であるとき
  • 許可を受けようとする者が法人である場合において、その法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む)が上記のいずれかに該当する者であるとき

また、事務所には責任者を配置する必要があるほか、一定数の車両を営業所に配置する場合は、営業所ごとに、①1級〜3級整備士のいずれかの資格を保有する者、又は②整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備の管理に関して2年以上の実務経験を有し、かつ地方運輸局が行う整備管理者選任前研修を修了している者のうちから整備管理者を選任する必要があります。

乗車定員が11人以上のバス等1台以上
車両総重量8トン以上の大型トラック等5台以上
その他の車両10台以上
※整備管理者の選任が必要な場合は整備管理者選任の届出も行うこと

物的基準

モノに関する基準は特に要求されていませんが、営業の前提として営業所、車両及び車庫が必要になります。営業所は自宅でも賃貸物件でもよく、設備や面積に関する基準も設けられていません。車庫については、営業所から直線距離で2kmの範囲内にすべての車両が駐車できる広さを確保する必要があります。

申請時に使用する車両を確定している必要はありませんが、許可申請書には車両数を記載する欄が設けられているため、少なくとも車両数については確定させる必要があります。なお、貸渡自動車の車種は以下の車種区分により行うものとされており、霊柩車及び乗車定員30人以上又は車両長が7mを超える自家用バスの貸渡しを行うことはできません。

  • 自家用乗用車
  • 自家用マイクロバス
  • 自家用貨物自動車
  • 特種用途自動車
  • 二輪車

金銭的基準

具体的に資産額を確認されることはありませんが、貸渡自動車は、事故を起こした場合に備えて十分な補償を行いうる以下の自動車保険に加入する必要があります。

対人保険1人あたり8,000万円以上
対物保険1件あたり200万円以上
搭乗者保険(搭乗者が補償対象となる人身傷害保険も含む)1人あたり500万円以上

自家用マイクロバスの貸渡しについて

自家用マイクロバスの貸渡しについては、従来より貸切バス経営類似行為の横行が指摘されていることから、当分の間、自家用マイクロバスの貸渡しを行う者は、以下の要件を満たす者に限定されます。また、既に自家用マイクロバスの貸渡しを行っている者がさらに自家用マイクロバスの貸渡しを行おうとする際には、原則として、その7日前までに、直近2年間の事業における自家用マイクロバスの貸渡簿の写しを、車両の配置事務所の所在地を管轄する運輸支局長に提出する必要があります。

  • 他車種でのレンタカー事業について、2年以上の経営実績を有し、かつ、自家用マイクロバスに係る貸渡し前2年間においてレンタカー事業について貸渡自動車の使用禁止以上の処分を受けていないこと(現在自家用マイクロバスの貸渡しを行っていない者)
  • 自家用マイクロバスに係る貸渡し前2年間においてレンタカー事業について貸渡自動車の使用禁止以上の処分を受けていないこと(既に自家用マイクロバスの貸渡しを行っている者)

レンタカー型カーシェアリング

自家用自動車有償貸渡業の許可を受け、会員制により特定の借受人に対して、自家用自動車を貸し渡す事業をレンタカー型カーシェアリングといいます。レンタカー型カーシェアリングを行おうとする場合は、あらかじめ、貸渡自動車の配置事務所の所在地を、主たる事務所の所在地を管轄する運輸支局長に対して届け出る必要があります。

変更届

以下の事項を変更したときは、遅滞なく主たる事務所の所在地を管轄する運輸支局長に対して届出を行う必要があります。

  • 貸渡人の氏名又は名称及び住所
  • 法人の役員
  • 貸渡料金及び貸渡約款
  • 貸渡しの廃止

また、配置事務所の名称若しくは所在地の変更(配置事務所の増設を含む)をしようとする者は、あらかじめ、変更後の事務所の名称又は所在地をその事務所の所在地を管轄する運輸支局長に対して届け出る必要があります。

許可申請に必要となる書類

  • 自家用自動車有償貸渡許可申請書
  • 貸渡料金表
  • 貸渡約款
  • 宣誓書
  • 事務所別車種別配置車両数一覧表
  • 貸渡しの実施計画を記載した書類
  • 住民票の写し(個人)
  • 履歴事項全部証明書(法人)

法人が自家用自動車有償貸渡業許可の申請を行う場合は、履歴事項全部証明書の事業目的に、「自家用自動車有償貸渡業」など、レンタカー事業に関する記載が必要になります。

また、レンタカー型カーシェアリングを行おうとするときは、併せて以下の事項を記載した書類を提出する必要があります。

  • レンタカー型カーシェアリングを行う貸渡自動車の車名及び型式
  • レンタカー型カーシェアリングを行う貸渡自動車の保管場所(デポジット)の所在地及び配置図
  • レンタカー型カーシェアリングを行う貸渡自動車の保管場所を管理する事務所の所在地
  • IT等の活用により行う車両の貸渡し状況、整備状況等車両の状況の把握方法車両、エンジンキー等の管理・貸し出し方法
  • 会員規約又は契約書

なお、許可証の受領後に支払う登録免許税は、全国一律で9万円です。

車両の登録

自家用自動車有償貸渡業許可の取得後は、営業所を管轄する検査登録事務所において貸渡自動車の登録を行います。登録を行う際は、通常の登録書類と併せて、運輸支局の窓口で取得するレンタカー事業者証明書を添付します。また、登録には管轄警察署が発行する車庫証明が必要になるため、レンタカーのナンバー取得前には車庫証明を取得する必要があります。

営業開始後の手続き

貸渡自動車の登録完了後、営業所内に貸渡証及び貸渡簿を備え付け、貸渡約款及び貸渡料金を掲示することによりようやく営業を開始することができます。

自家用自動車有償貸渡業許可に有効期間はないため更新手続きは不要ですが、毎年4月1日から5月31日までの間に、主たる事務所の所在地を管轄する運輸支局に対して貸渡実績報告書及び事務所別車種別配置車両数一覧表を提出する必要があります。

貸渡簿

自家用自動車有償貸渡業者は、以下の事項を記載する貸渡簿を書面(又は電磁的記録)により備え、貸渡しの状況を適確に記録するとともに、貸渡しの終了日から2年間以上保存する必要があります。この貸渡簿は、貸渡原票を綴ったものによって代えることもできます。

  • 借受人の氏名又は名称及び住所
  • 運転者の氏名、住所、運転免許の種類及び運転免許証の番号
  • 貸渡自動車の登録番号又は車両番号
  • 貸渡日時及び時間
  • 貸渡事務所及び返還事務所
  • 運行区間又は行先及び利用者人数並びに使用目的(自家用マイクロバスの貸渡しを行う場合に限る)
  • 走行キロ数
  • 貸渡料金
  • 事故に関する事項

貸渡証

レンタカー型カーシェアリングの場合を除き、借受人には、以下の事項を記載した貸渡証を書面(電子メール等の電磁的方法を含む)により交付し、貸渡自動車の運転者にこれを携行(電磁的記録による携行を含む)するように指示する必要があります。

  • 借受人の氏名又は名称及び住所
  • 運転者の氏名、住所、運転免許の種類及び運転免許証の番号
  • 貸渡自動車の登録番号又は車両番号
  • 貸渡日時及び時間
  • 貸渡事務及び返還事務所
  • 貸渡人の氏名又は名称及び住所
  • 次の遵守事項
    • 「運行中必ず携帯し、警察官又は地方運輸局若しくは運輸支局の職員の請求があったときは、呈示しなければならない」旨の記載
    • 「自動車の借受けに付随して、貸渡人から運転者の労務供給(運転者の紹介及び斡旋を含む)を受けることができない」旨の記載
    • 貸渡自動車に係る事故及び故障等が発生した場合の処置(処置方法、連絡先等)に関する記載
    • 「貸渡期間が2日以上となる場合には、日常点検を借受人が実施することとなる」旨の記載

貸渡実績報告書

自家用自動車有償貸渡業者には、毎年4月1日から3月31日までの間に貸渡簿に記載された事項について数値を集計して報告することが義務付けられています。

貸渡実績報告書
貸渡実績報告書

事務所別車種別配置車両数一覧表

自家用自動車有償貸渡業者は、毎年度の四半期(6月末、9月末、12月末、3月末)ごと事務所ごとに、配置していた車種区分ごとの車両数をを集計して報告することが義務付けられています。

事務所別車種別配置車両数一覧表
事務所別車種別配置車両数一覧表

その他の義務

運転者に係る情報提供「レンタカー事業者が行うのあり方について」(平成16年3月16日付け国自旅第234号)により運転者に係る情報提供を行うほか、貸渡しに附随した運転者の労務供給(運転者の紹介及びあっせんを含む)を行ってはならず、その旨を以下のいずれかの方法により、借受人に対して明示しなければならない
①事務所において公衆の見やすいように掲示する方法(ディスプレイ等の電子機器に表示させることを含む)
②ウェブサイト等において公衆の見やすいように掲載する方法
③書面(電子メール等の電磁的方法を含む)の提示による方法
名義貸しの禁止自動車の貸渡しのため、自己の名義を他人に利用させてはならない
貸渡料金及び貸渡約款の明示貸渡料金及び貸渡約款は、以下のいずれかの方法により、借受人に対して明示しなければならない
①事務所において公衆の見やすいように掲示する方法(ディスプレイ等の電子機器に表示させることを含む)
②ウェブサイト等において公衆の見やすいように掲載する方法
③書面(電子メール等の電磁的方法を含む)の提示による方法
車両状況の把握貸渡自動車はその配置事務所に存するか、それ以外の事務所に一時的に存するかにかかわらず、配置事務所の従業員等により貸渡し状況及び整備状況等車両の状況を把握し(IT等の活用により車両の状況が配置事務所以外の本社等において把握されている場合にあっては、配置事務所の従業員等により本社等において把握されている車両の状況を把握することを含む)、適確な管理を実施しなければならない(レンタカー型カーシェアリングを行う場合であって、配置事務所以外の本社等においてIT等の活用により車両の貸渡し状況及び整備状況等車両の状況を適確に把握することが可能であると認められるときを除く)

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弊所では兵庫大阪京都全域において自家用自動車有償貸渡業許可申請の代行を承っています。面倒な書類作成から、運輸局との協議及び申請の代行に至るまで、しっかりとフルサポートいたします。また、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」を標榜し、さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応を心がけています。自家用自動車有償貸渡業許可の申請手続きでお困りの際は、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

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