A型?B型?就労継続支援事業者の指定申請について
A型?B型?就労継続?就労移行?就労定着?
何から手を付けていいかわからない。。。
障害福祉サービスを開業をお考えの方からよく発せられる言葉です。「継続」やら「移行」やら「定着」やらに、生活介護や高齢者介護制度のよく似たサービス形態も混じってくるものですから、色々と混乱や混同が生じ、スタートアップの段階からつまづいてしまうこともよくあるお話しです。
意欲はあれど、制度が難解でなかなか踏み出す勇気が出ないという意見は、障がい福祉事業では結構あるあるの状況です。
そこで本稿では、これから「訓練系・就労系サービス」に分類されている就労継続支援事業に携わろうとされる皆さまに向けて、サービスの概要や、開業時に必要となる指定申請の手続きについて、詳しく案内していきたいと思います。
目 次
就労継続支援とは
就労継続支援とは、通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である障がい者に対して就労と生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行うサービスのことをいいます。
就労継続支援は、障がい福祉事業中、「訓練系・就労系サービス」に区分されており、さらに「A型」(雇用型)と「B型」(非雇用型)の2種類に細分化されています。
このうち「A型」は事業者と雇用契約を締結して利用する形態のサービスであり、「B型」は雇用契約を締結せずに利用する形態のサービスになります。
形態 | 雇用 | 賃金 | 定員 | 定款 |
---|---|---|---|---|
A型 | 雇用(労使関係) | 最低賃金保証 | 10名 | 専ら社会福祉事業 |
B型 | 非雇用 | 工賃(月額3000円以上) | 20名 | 制限なし |
就労継続支援A型事業
通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供および生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援事業のことをいいます。
対象となる利用者
18歳以上65歳未満で雇用契約に基づいた勤務が可能なものの、障がい・難病などにより一般企業への就職が難しい者が利用対象者になります。
労働者として働きつつ、同時に訓練も受けて知識・能力を習得していきます。ここからさらに就労移行訓練を経て、一般企業への就職ができるように支援を行います。なお、利用期間の制限はありません。
利用者とは労働契約を結ぶため、労働法規の適用を受けることになり、最低賃金の保証をする必要も生じます。
事業としての特色
通常の雇用形態であるため、利用者が比較的集まりやすい傾向があるほか、雇用関連の助成金も活用するが可能です。また、B型よりも定員が少ないため、小規模な事業所から事業を開始することができます。
就労継続支援(B型)
通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して行う就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援事業のことをいいます。
利用者には作業の対価(成果物に対する報酬)として工賃を支払いますが、これは一般的な労使関係における給与とは異なるため、労働法規の適用は受けません。
対象となる利用者
働く意思はあるけれど、一般企業での就労は難しい方が利用対象者となります。具体的には、以下のいずれかに該当する方がサービスを受けることができます。なお、A型と同様に、利用期間の制限はありません。
- 就労経験があり、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった者
- 50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
- 就労移行支援事業を利用した結果、利用が適当であると判断された者
事業としての特色
利用者を雇用する必要がなく、支払う金額も時給ベースではなく成果報酬としての工賃です。
1日1時間や週1日の利用など就労形態もさまざまで、一般就労や就労継続支援A型での雇用型勤務に移行する前に、B型事業所でリハビリを兼ねて就労に慣れるといった利用方法も可能です。また、65歳を超えても利用することができます。
指定基準について
就労継続支援事業を運営する際は、以下の指定基準を満たした上で申請し、都道府県知事(一部の市町村については市町村長)により就労継続支援事業者として指定を受ける必要があります。なお、A型の事業者の定款の目的には、「専ら社会福祉事業であること」を明記することが求められています。
- 法人であること
- 人員配置基準をみたすこと
- 設備要件をみたすこと
- 運営基準をみたすこと
人員配置基準
指定を受けるために配置すべき人員の基準は、次の表のとおりです。なお、表中の利用者の数については、前年度の平均値(新規に事業を開始する場合は推定数)から算出します。
役職 | 人数 | 要件 | |
---|---|---|---|
管理者 | 1名以上 | 常勤要件なし 可 原則として専任、就労継続支援事業所の管理上支障がない場合は、他の業務との兼任(サービス提供責任者との兼務含む)、同一敷地内の就労継続支援B型事業所以外の事業所・施設等の職務に従事することができる | |
サービス管理責任者 | 1名以上(利用者60人以下) 利用者60人を超えるときは、60人を超え40人を超えるごとに1名以上加えた人数 | 1人以上は常勤かつ専任であること 原則として専任、利用者の支援に支障がない場合は兼任可能 | |
職業指導員・生活支援員 | 総数は、常勤換算方法で、利用者10人に対して1人以上 | 職業指導員と生活支援員のいずれかが常勤であること | |
職業指導員 | 1名以上 | 資格要件なし 原則として専任、利用者の支援に支障がない場合は兼任可能 | |
生活支援員 | 1名以上 | 資格要件なし 原則として専任、利用者の支援に支障がない場合は兼任可能 |
★管理者の資格要件
就労継続支援事業の管理者は、以下のいずれかの要件に該当する者のうちから選任する必要があります。
- 大学等において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者(科目を修めて専門職大学の前期課程を修了した者を含む)
- 大学等において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて、大学院への入学を認められた者
- 都道府県知事の指定する養成機関又は講習会の課程を修了した者
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 厚生労働大臣の指定する社会福祉事業従事者試験に合格した者
- 社会福祉事業に2年以上従事した者
- 企業を経営した経験(おおむね1年以上)を有する者又はこれらと同等以上の能力を有すると認められる者
設備基準
就労継続支援事業には、下表のとおり、訓練・作業室、相談室、洗面所、便所及び多目的室その他運営上必要な設備を設ける必要があります。ただし、他の社会福祉施設等の設備を利用することにより効果的な運営を期待することができる場合であって、利用者の支援に支障がないときは、その一部を設けないことができます。
設備 | 要件 | 備考 |
---|---|---|
事業所の構造設備 | 事業所の配置、構造及び設備は、利用者の特性に応じて工夫され、かつ、日照、採光、換気等の利用者の保健衛生に関する事項及び防災について十分考慮されたものであること | |
訓練・作業室 | 訓練又は作業に支障がない広さを有すること 訓練又は作業に必要な機械器具等を備えること | 就労継続支援の提供に当たって支障がない場合は、設けないことができる |
相談室 | プライバシーに配慮できる空間であること | 利用者の支援に支障がない場合は、兼用することができる |
洗面所 | 利用者の特性に応じたものであること | |
便所 | 利用者の特性に応じたものであること | |
多目的室 | 相談室と兼ねることも可 | 利用者の支援に支障がない場合は、兼用することができる |
事務室 | 鍵付き書庫 |
自治体によっては面積要件が設定されていることがあるため、申請前には各自治体の担当窓口へ対し、必ず事前に確認するようにしましょう。
また、防火安全対策として、事業開始までには、所轄の消防署とも事前協議を行うようにしてください。
運営基準
就労継続支援事業者は、事業所ごとに、以下の重要事項について、その内容を運営規程として定め、サービス提供を開始するにあたっては、あらかじめ利用申込者に対し、運営規定の概要、職業指導員、生活支援員等の勤務の体制などの重要事項を記載した文書を利用申込者に交付して説明を行い、その同意を得る必要があります。
- 事業の目的及び運営の方針
- 職員の職種、員数及び職務の内容
- 営業日及び営業時間
- 利用定員
- 生活介護の内容並びに利用者から受領する費用の種類及びその額
- 通常の事業の実施地域
- サービスの利用に当たっての留意事項
- 緊急時等における対応方法
- 非常災害対策
- 事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には障害の種類
- 虐待の防止のための措置に関する事項
- その他運営に関する重要事項
雇用契約に係る特例(A型)
就労継続支援A型の事業所においては、利用定員について、以下の特例が設けられています。
- 雇用契約を締結する利用者に係る利用定員の数が10人以上であること
- 雇用契約を締結しない利用者に係る利用定員の数が、利用定員の半数及び9人を超えることができないこと
指定申請に必要となる書類
- 指定申請書
- 申請書・付表様式一覧チェック表
- 就労継続支援事業所の指定に係る記載事項
- 定款または寄附行為又
- 登記記載事項証明書
- 事業所の写真
- 事業所の平面図
- 経歴書(管理者・サービス管理責任者)
- 運営規程
- 利用者からの苦情解決措置の概要
- 勤務体制・形態一覧表
- 資産状況を疎明するための資料
- 貸借対照表
- 財産目録
- 事業計画書
- 収支予算書
- 設備・備品等一覧
- 実務経験証明書・実務経験見込申立書
- 雇用証明書・雇用確約証明書
- サービス管理責任者研修修了証明書の写し
- 相談支援従事者初任者研修等修了証明書の写し
- 資格証明書(看護師・介護福祉士等)の写し
- 役員等名簿
- 誓約書
- サービス管理責任者実務経験及び研修受講証明(申立)書
- 貸借契約書又は土地・建物の登記簿謄本
- 損害賠償保険契約書の写し
- 協力医療機関との契約内容がわかるもの
- 事業開始届
- 介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書
サービス報酬
就労継続支援A型サービス費
就労継続支援B型サービス費
まとめ
A型B型、就労移行支援、就労定着支援、、、同じような単語も多く、指定権者も都道府県であったり市町村であったりするのが、障がい福祉事業をより複雑に感じさせるひとつの大きな理由となっています。
まずは「どれくらいの規模」で「どのような事業」を希望するのかをイメージし、明確なビジョンを持つことが重要です。
本稿で紹介した就労継続支援をはじめとする障がい福祉事業は、現在は地域に密着したシステムに移行しており、サービス事業者に対する期待と需要は、いまだ高まり続けています。
一方で、コロナ禍を経て、障がい福祉事業の在り方そのものにも変化が求められつつあります。いずれにせよ、就労継続支援事業が過渡期のさなかであることは間違いありません。まずはしっかりと周辺知識を蓄え、明確なビジョンと事業計画のもと、準備を進めるよう心がけましょう。
当事務所は福祉と手続きのエキスパートです。
弊所では、障がい福祉事業に関するさまざまな情報を発信するとともに、指定申請に関する手続きのサポートを行っています。代表は介護施設を運営していた実績を有する福祉の専門家であるとともに、現役のケアマネジャーという傾聴のスペシャリストでもあります。
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