介護福祉士養成施設の指定申請について│介護福祉士養成施設開校ガイド
近年、介護福祉士資格の取得までのルートが大きく様変わりし、資格を取得する際には、いずれかの時点において学校若しくは養成施設又は実務研修を修了(卒業)することが義務付けられるようになりました。この改正に伴い、介護福祉士養成施設に対する需要と期待感は、ますます高まりを見せています。
介護福祉士は、介護という社会的に大きな役割を担う重要な職種であり、また国家資格でもあるため、介護福祉士を養成するための施設には、社会的信用性と養成施設としての体制を確保することが求められています。
ただ、介護福祉士に関する情報はあふれかえっているのに対し、養成施設を開設するために必要とされる資格や手続きに関しては有用な情報が極めて少なく、実際に養成施設をはじめようとされている方は、さぞかし不便な思いをされているものとお察しいたします。
そこで本稿では、介護福祉士および介護支援専門員でもある行政書士が、介護福祉士養成施設を新たに立ち上げようとお考えの皆さまに向けて、習得すべき法的基礎知識について案内させていただこうと思います。
目 次
介護福祉士養成施設とは
介護福祉士資格の取得ルートにはいくつか選択肢があり、下図のとおり、いずれかの時点において学校もしくは養成施設において課程を修了(卒業)し、または研修を修了する必要があります。
介護福祉士養成施設とは、介護福祉士として必要な知識及び技能を修得するための施設です。入所対象者と修業年限の違いにより、以下の3つに区分されています。
区分 | 入所対象者 | 修業年限 |
---|---|---|
第1号養成施設 | 大学に入学することができる者 | 2年以上(夜間課程は3年以上) |
第2号養成施設 | 大学において文部科学省令・厚生労働省令で定める社会福祉に関する科目を修めて卒業した者(当該科目を修めて同法に基づく専門職大学の前期課程を修了した者を含む)その他その者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者 | 1年以上(夜間課程は2年以上) |
第3号養成施設 | 大学に入学することができる者(厚生労働省令で定める学校が大学である場合において、当該大学が当該大学に入学させた者を含む)であって、厚生労働省令で定める学校又は養成所を卒業したもの | 1年以上(夜間課程は2年以上) |
養成施設における養成課程は、昼間課程及び夜間課程とされており、これらの養成課程は、併せて設けることができます。
介護福祉士養成施設の開設
まずはじめにお伝えさせていただくと、介護福祉士の養成に関して、民間の事業者が研修やカルチャースクールを開校(開講)することについては、何らの手続きも必要とされていません。
たとえば弊所が「ツナグ介護実務スクール」を立ち上げて生徒を募集することについて許可は必要ありませんし、情報も自由に発信することができます。
ただし、介護福祉士の資格を取得するために通るべきルートとなる「指定養成施設」となるためには、都道府県知事に対して申請し、その指定を受ける必要があります。
上の例で言えば、「ツナグ介護実務スクール」は、兵庫県知事から指定を受けることにより「指定養成施設」として認められ、正式に介護福祉士資格の取得ルートに参入することができるようになります。
★ポイント
介護福祉士を養成するための私塾は自由に開校できるが、介護福祉士資格を取得するためのルートになるためには都道府県知事から指定を受けることが必要!!
指定の申請
介護福祉士養成施設の指定を受けようとする設置者は、第1号から第3号までそれぞれに求められている基準を満たした上で申請し、その所在地を管轄する都道府県知事からの指定を受けなければなりません。(新規指定)
また、指定養成施設等の設置者は、主務省令で定める重要な事項を変更しようとするときは、その旨を申請し、都道府県知事からの承認を受けなければなりません。(変更の承認)
その他の主務省令で定める事項に変更があったときは、承認を受ける必要はありませんが、変更の日から1か月以内に、都道府県知事に届け出なければなりません。(変更の届出)
★注意点
申請から指定までには、通常1年以上の期間を要することも珍しくありません。準備はできるだけ早く進めるようにしましょう。
養成施設の指定基準
共通の指定基準
- 教育の内容は、別表第四(後掲)に定めるもの以上であること
- 別表第四に定める教育の内容を教授するのに必要な数の教員を有し、かつ、別表第二(後掲)の生徒の総定員の区分に応じ、それぞれ同表に定める専任教員数以上の専任教員を有すること
- 専任教員は、次に掲げる者のいずれかであること
- 介護福祉士、医師、保健師、助産師、看護師又は社会福祉士の資格を取得した後5年以上の実務経験を有する者
- 学校教育法に基づく大学(大学院及び短期大学を含む)又は高等専門学校において、教授、准教授、助教又は講師として、その担当する教育に関し教授する資格を有する者
- 学校教育法に基づく専修学校の専門課程の教員として、その担当する教育に関し3年以上の経験を有する者
- 専任教員のうち1人は、別表第四の領域の欄の全ての区分における教育課程の編成等の教務に関する主任者とし、専任教員として必要な知識及び技能を修得させるために行う講習会であって厚生労働大臣が別に定める基準を満たすものとしてあらかじめ届け出られたものを修了した者その他その者に準ずるものとして厚生労働大臣が別に定める者(専任教員課程修了者等)であって、かつ、第1号から第3号までに規定する学校又は養成施設の専任教員として3年以上の経験を有する者を置くこと
- 別表第四の介護の領域に区分される教育内容を教授する専任教員は、専任教員課程修了者等であるとともに、そのうち一人は、当該領域における一貫性及び統一性が確保された科目の編成、授業の運営等につき責任を有する者とし、介護福祉士の資格を取得した後5年以上の実務経験を有する者を置くこと
- 別表第四のこころとからだのしくみの領域に区分される教育内容を教授する専任教員のうち1人は、当該領域における一貫性及び統一性が確保された科目の編成、授業の運営等につき責任を有する者とし、専任教員課程修了者等であって、かつ、医師、保健師、助産師又は看護師の資格を取得した後5年以上の実務経験を有する者を置くこと
- 別表第四の医療的ケアの領域に区分される教育内容を教授する教員は、当該教育内容を教授する教員として必要な知識及び技能を修得させるために行う講習会であってあらかじめ厚生労働大臣に届け出られたものを修了した者その他その者と同等以上の知識及び技能を有すると認められる者(医療的ケア教員講習会修了者等)であって、かつ、医師、保健師、助産師又は看護師の資格を取得した後5年以上の実務経験を有する者を置くこと
- 一学級の定員は、50人以下であること
- 同時に授業を行う学級の数に応じ、必要な数の普通教室を有すること
- 介護実習室及び入浴実習室並びに調理設備を有する家政実習室を有すること
- 教育上必要な機械器具、模型、図書その他の設備を有すること
- 一の介護実習施設等における介護実習について同時に授業を行う生徒の数は、その指導する実習指導者の員数に5を乗じて得た数を上限とすること
- 専任の事務職員を有すること
- 管理及び維持経営の方法が確実であること
- 入所し、又はしようとする者に対し、教育の内容、教員その他の事項に関する情報が開示されており、当該開示された情報は、虚偽又は誇大なものであってはならないこと
別表四
領域 | 教育内容 | 第一号養成施設 | 第二号等養成施設 | 第三号養成施設 |
---|---|---|---|---|
人間と社会 | 人間の尊厳と自立 | 30以上 | ||
人間関係とコミュニケーション | 60以上 | |||
社会の理解 | 60以上 | 15 | ||
人間と社会に関する選択科目 | ||||
合計 | 240 | |||
介護 | 介護の基本 | 180 | 180 | 180 |
コミュニケーション技術 | 60 | 60 | 60 | |
生活支援技術 | 300 | 300 | 300 | |
介護過程 | 150 | 150 | 150 | |
介護総合演習 | 120 | 60 | 60 | |
介護実習 | 450 | 270 | 210 | |
こころとからだのしくみ | こころとからだのしくみ | 120 | 60 | 60 |
発達と老化の理解 | 60 | 30 | 30 | |
認知症の理解 | 60 | 30 | 60 | |
障害の理解 | 60 | 30 | 30 | |
医療的ケア | 医療的ケア | 50 | 50 | 50 |
合計 |
別表二
生徒の総定員 | 専任教員数 |
---|---|
80人まで | 3 |
81人〜200人 | |
201人以上 |
介護実習の内容
養成施設において実施する介護実習は、次に掲げる内容の実習により構成され、実習の区分に応じて、それぞ以下に定める者を実習指導者とすることが必要とされています。
- 介護実習を行うのに適当な施設又は事業として厚生労働大臣が別に定めるもの(介護実習施設等)であって、その人員の配置について介護保険法その他の関係法令に基づく基準を満たすものにおいて行われる実習については、介護福祉士の資格を有する者又は介護職員として3年以上の実務経験を有する者
- 次に掲げる要件に適合する介護実習施設等において行われる実習については、介護福祉士の資格を取得した後3年以上の実務経験を有する者であって、かつ、実習指導者を養成するために行う講習会であって厚生労働大臣が別に定める基準を満たすものとしてあらかじめ厚生労働大臣に届け出られたものを修了した者
- 実習における指導のマニュアルを整備するとともに、実習指導者を中核とした実習の指導の体制が確保されるよう、介護実習施設等における介護職員の人数に対する介護福祉士の人数の割合が3割以上であること
- 介護サービスの提供のためのマニュアル等が整備され、活用されていること
- 介護サービスの提供の過程に関する諸記録が適切に整備されていること
- 介護実習施設等における介護職員に対する教育、研修等が計画的に実施されていること
第1号養成施設 | 介護実習の総時間数に対する上記2の実習の時間数の割合が3分の1以上であること |
第2号養成施設 | 上記2の実習の時間数が150時間以上であること |
第3号養成施設 | 上記2の実習の時間数が150時間以上であること |
第一号養成施設の指定基準
- 入所の資格は、学校教育法の規定により大学に入学することができる者であることとするものであること
- 修業年限は、2年以上(夜間課程にあっては3年以上)であること
- 別表第四の人間と社会の領域に区分される教育内容を教授する専任教員のうち1人は、当該領域における一貫性及び統一性が確保された科目の編成、授業の運営等につき責任を有する者とし、5-1に該当する者であって専任教員課程修了者等であるもの、又は5-2若しくは5-3に該当する者を置くこと
第二号養成施設の指定基準
- 入所の資格は、学校教育法に基づく大学において社会福祉に関する科目を修めて卒業した者(当該科目を修めて同法に基づく専門職大学の前期課程を修了した者を含む)若しくは厚生労働省令で定める者又は学校教育法により大学に入学することができる者(社会福祉士短期養成施設等又は社会福祉士一般養成施設等が大学である場合において、当該大学が当該大学に入学させた者を含む)であって社会福祉士短期養成施設等若しくは社会福祉士一般養成施設等を卒業したものであることとするものであること
- 修業年限は、1年以上(夜間課程にあっては2年以上)であること
第三号養成施設の指定基準
- 入所の資格は、学校教育法の規定により大学に入学することができる者(施行規則第二十条第一号に掲げる学校その他の施設が大学である場合において、当該大学が当該大学に入学させた者を含む)であって学校その他の施設を卒業した者であることとするものであること
- 修業年限は1年以上(夜間課程にあっては2年以上)であること
指定申請に必要となる書類
指定申請は、都道府県に対して、以下の事項を記載した指定申請書に、実習施設等の設置者等から施設において実習を行うことを承諾する旨の承諾書を添付して提出することによって行います。
記載事項
- 設置者の氏名及び住所
- 名称及び主たる事務所の所在地(法人)
- 名称
- 位置
- 設置年月日
- 学則
- 長の氏名及び履歴
- 教員の氏名、履歴及び担当科目並びに専任又は兼任の別
- 校舎の各室の用途及び面積並びに建物の配置図及び平面図
- 教授用又は実習用の機械器具、模型及び図書の目録
- 介護実習施設等の種類、名称、所在地、設置者又は経営者の氏名(法人にあっては名称)及び設置又は開始の年月日並びに当該介護実習施設等における実習用設備の概要及び実習指導者の氏名
- 収支予算及び向こう2年間の財政計画
報告
指定を受けた後も、指定養成施設等の設置者には、毎学年度開始後2か月以内に、以下の事項を所在地を管轄する都道府県知事に報告する義務があります。
- 当該学年度の学年別生徒数
- 前学年度における教育実施状況の概要
- 前学年度における教員及び実習指導者の異動
- 前学年度の卒業者数
指定の取消し
都道府県知事は、指定養成施設等が(指定)基準に適合しなくなったと認めるとき、若しくはその設置者若しくは長が指示に従わないとき、又は指定取消しの申請があったときは、その指定を取り消すことができるものとされています。
指定養成施設等について、自ら都道府県知事の指定の取消しを受けようとする設置者は、次の事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければなりません。
- 指定の取消しを受けようとする理由
- 指定の取消しを受けようとする予定期日
- 在籍中の生徒があるときは、その措置
介護福祉士養成施設開校サポート
弊所では、兵庫大阪京都をはじめ関西全域にわたり、介護福祉士養成施設指定申請手続きの代行を承っております。面倒な書類作成や各種機関とのやり取りまで、しっかりとサポートいたします。下記の報酬は、市場価格を反映したものですが、弊所は「話しの分かる行政書士事務所」です。さまざまな事情をくんだ上での柔軟な対応には自信があります。介護福祉士養成施設の開校でお困りの際は、ぜひ弊所までお気軽にご相談ください。
介護福祉士養成施設新規指定申請 | 660,000円〜 |
業務報告届 | 55,000円 |
変更承認申請 | 165,000円〜 |
変更届 | 55,000円 |
指定取消申請 | 110,000円〜 |