居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護│障害者福祉訪問系サービスの指定申請について
障害者福祉サービスにおいては、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護の4つのサービスを、「訪問系サービス」として位置づけしています。
読んで字の如く、利用者の居宅を訪問してサービスを提供する形態であり、たとえば居宅介護(ホームヘルプ)は、日常生活を営む上で支障のある障害者等を対象に、安心して自宅で生活を送ることができるように提供される生活の基本サービスです。
本稿では、新たに障がい福祉事業の訪問系サービスの開業を目指す皆さまに向けて、居宅介護および重度訪問介護を中心に「訪問系サービス」の全体像と、障害者福祉サービス事業者として指定を受ける際に必要となる手続きについて詳しく解説していきたいと思います。
目 次
居宅介護とは
居宅介護とは、ホームヘルパーが、利用者の自宅を訪問して、入浴、排せつ、食事等の介護、調理、洗濯、掃除等の家事、生活等に関する相談や助言など、生活全般にわたる援助を行うサービスです。障害のある方の地域での生活を支えるために基本となるサービとされています。
なお、高齢者が利用する介護保険サービスにおける「居宅介護」とは、名称も内容も同じサービスになるので、これらを混同してしまわないように注意してください。
サービス内容
ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談・助言その他の生活全般にわたる援助を行います。
身体介護 | 障害者等につき、居宅において行う入浴、排せつ及び食事等の介護等 |
家事援助 | 障害者等につき、居宅において行う調理、洗濯及び掃除等の家事等 |
通院等介助 | 障害者等につき、通院等のための屋内外における移動等の介助、通院先での受診等の手続、移動等の介助 |
通院等乗降介助 | 障害者等につき、通院等のため、ヘルパー等が自らの運転する車両への乗車又は降車の介助と併せて行う、乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助又は通院先での受診等の手続、移動等の介助 |
対象となる利用者
居宅介護の利用者は、障害支援区分が区分1以上である者、またはこれに相当する支援の度合にある障害児です。
また、通院等介助(身体介護を伴う場合)を算定する場合には、障害支援区分が区分2以上に該当し、かつ、障害支援区分の認定調査項目のうち、次に掲げる状態(障害児にあっては、これに相当する支援の度合)のいずれか1つ以上に認定されていることが必要となります。
- 歩行「全面支援」
- 移乗「見守り」「部分支援」「全面支援」
- 移動「見守り」「部分支援」「全面支援」
- 排尿「部分支援」「全面支援」
- 排便「部分支援」「全面支援」
重度訪問介護とは
重度訪問介護とは、重度の肢体不自由または重度の知的障害もしくは精神障害があり常に介護を必要とする方に対して、ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護、調理、洗濯、掃除などの家事、生活等に関する相談や助言など、生活全般にわたる援助や外出時における移動中の介護を、比較的長時間にわたり総合的・継続的に提します。
サービス内容
重度訪問介護サービスは、生活全般について、上記の介護サービスを手厚く提供することで、常に介護が必要な重い障害がある方でも、在宅での生活が続けられるように支援します。
対象となる利用者
名称に「重度」を付しているとおり、障害の程度が重い方がサービス利用の対象となります。具体的には、障害支援区分が区分4以上に該当し、かつ、次のいずれかに該当する者が対象となります。
- 二肢以上に麻痺等があり、障害支援区分の認定調査項目のうち「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれも「支援が不要」以外と認定されていること
- 障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上であること
行動関連項目等
次の項目について、それぞれの程度に応じて0・1・2の3段階で点数化を行います。
- コミュニケーション
- 説明の理解
- 大声・奇声を出す
- 異食行動
- 多動・行動停止
- 不安定な行動
- 自らを傷つける行為
- 他人を傷つける行為
- 不適切な行為
- 突発的な行動
- 過食・反すう等
- てんかん発作の頻度(医師意見書による)
同行援護とは
同行援護とは、移動に著しい困難を有する視覚障害のある方が外出する際に同行し、移動に必要な情報の提供や移動の援護等、外出時に必要な援助を行うサービスです。
サービス内容
視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等の外出時に同行し、移動に必要な情報の提供や、移動の援護、排せつ、食事等の介護のほか、利用者が外出する際に必要な援助を適切かつ効果的に行います。
単に利用者が行きたいところに連れて行くだけではなく、外出先での情報提供や代読・代筆などの役割も担う、視覚障害のある方の社会参加や地域生活において無くてはならないサービスです。
対象となる利用者
「同行援護アセスメント調査票」の調査項目中、「移動障害」の点数が1点以上、かつ「視力障害」「視野障害」「夜盲」のいずれかが1点以上に該当する方が対象となります。
また、身体介護を伴う場合には、上記に加えて、さらに障害支援区分の区分2以上に該当し、かつ、障害支援区分の認定調査項目のうち、「歩行」が「全面的な支援が必要」又は「移乗」「移動」「排尿」「排便」がそれぞれ「支援が不要」以外に認定されていることが必要になります。
行動援護とは
行動援護とは、行動に著しい困難を有する知的障害や精神障害のある方が行動する際に生じ得る危険を回避するために、障害の特性を理解した専門のヘルパーが、必要な援護、外出時における移動中の介護、排せつ、食事等の介護のほか、行動する際に必要な援助を行うサービスです。
サービス内容
知的障害や精神障害により、自分一人で行動することが著しく困難であって常時介護を要する方の社会参加と地域生活を支援するために、外出時の危険回避、外出の前後の着替えや移動中の介護、排せつ及び食事等の介護、その他行動する際に必要な援助を行います。
なお、報酬請求は、実際に要した時間により算定されるのではなく、居宅介護等計画に基づいて行われるべき指定居宅介護等に要する時間により算定されます。
対象となる利用者
障害支援区分が区分2以上、かつ、障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上(障害児にあってはこれに相当する支援の度合)である者が対象となります。
指定基準について
訪問系サービス事業を運営する際は、以下の指定基準を満たした上で申請し、都道府県知事(一部の市町村については市町村長)により生活介護サービス事業者として指定を受ける必要があります。
- 法人であること
- 人員配置基準をみたすこと
- 設備要件をみたすこと
- 運営基準をみたすこと
なお、重度訪問介護については、居宅介護事業の指定要件を満たしていれば、重度訪問介護の人員と設備要件を満たしているものとみなされます。(みなし指定)
人員配置基準
指定を受けるために配置すべき人員の基準は、次の表のとおりです。なお、サービス提供責任者(以下、サ責)は、他の職務と兼務することが可能です。
職種 | 人数 | 要件 |
---|---|---|
管理者 | 専従常勤1名 | なし サービス提供責任者との兼務可 |
サービス提供責任者 | 訪問介護員の中から専ら指定訪問介護の職務に従事する常勤の者を事業の規模に応じて1名以上 | 資格要件あり |
従業者 | サ責含み常勤換算方法で2.5以上 | 資格要件あり |
居宅介護、重度訪問介護、同行援護又は行動援護の事業を併せて行う場合は、一の居宅介護事業所として置くべき従業者の員数で足ります。また、居宅介護と併せて移動支援事業を行う場合は、居宅介護事業所として置くべき従業者の員数で足ります。(移動支援事業の指定基準は、居宅介護の指定基準に準ずる。)
なお、既に介護保険法に基づく訪問介護事業の指定を受けている事業所については、新たに居宅介護・重度訪問介護用に人員基準を満たす必要はなく現状の人員で指定を受けることができます。
必要となる資格
資格 | サ責 | 従業者 |
---|---|---|
介護福祉士 | ○ | ○ |
居宅介護従業者養成研修課程(1級) 訪問介護員(1級) | ○ | ○ |
居宅介護従業者養成研修課程(2級) 訪問介護員(2級) | 3年以上従事した経験 | ○ |
介護職員基礎研修 | ○ | ○ |
行動援護従業者養成研修 | 行動援護のみ | 行動援護のみ |
サービス提供責任者
サ責は、次のいずれか低い方の基準以上、かつ、利用者の数40名ごとに1名以上の人員を配置します。
- サービス提供時間450時間ごとに1名以上
- 従業者の数10名ごとに1名以上
なお、行動援護のサ責の場合、知的障害者、精神障害者又は障害児の直接支援業務に5年以上従事した経験があることも必要になります。
★ポイント
サービス管理責任者(サビ管)ではなく、サービス提供責任者(サ責)であることに注意してください。
従業者
同行援護の従業者は、同行援護従業者養成研修(一般課程)を修了した者を除き、1年以上の視覚障害に関する実務経験を有することが必要です。
行動援護の従業者は、知的、精神障害者又は障害児の直接支援業務に2年以上従事した経験があることも要件となります。
設備基準
設備基準は次の表のとおりです。設備は原則とサービス事業所の用にのみ供するものである必要がありますが、利用者の支援に支障がなければ他の用途との兼用が可能です。
設備 | 要件 |
---|---|
事務室 | 従業員と備品が収容できる程度の広さであること 区画されていること |
受付・相談室 | 適切な空間の確保 個室が望ましいが仕切りも可能 |
衛生設備 | 洗面所の確保 石鹸・消毒液等設置 |
運営基準
サービス事業者には、厚生労働省令に定める運営に関する基準に従って、適正な事業の運営ができることが求められています。
★おもな運営基準
- 内容および手続きの説明および同意
- 契約支給量の報告等
- 心身の状況等の把握
- 指定障害福祉サービス事業者等との連携等
- 居宅介護計画の作成
- 介護等の総合的な提供
- 会計の区分
- 記録の整備
- 秘密保持等
通院等乗降介助について
通院等のための乗車又は降車の介助を行い、介護報酬を受ける場合には、同一営業所所在地において運送法上の事業許可(以下)を受けた上で、都道府県に対して通院等のための乗車又は降車の介助を行うための届出を行うことが必要とされています。
一般乗用旅客自動車運送事業 (福祉輸送) | いわゆる介護タクシー |
特定乗用旅客自動車運送事業 | 利用者などの特定の者に限定して一定区間を輸送する運送 |
自家用自動車有償運送事業 | 事業所にて職員等の自家用車を使用して有償で行う運送 |
福祉有償輸送登録 | 非営利法人が有償で行う車による移送サービス |
指定申請に必要となる書類
- 指定申請書
- 同一所在地で指定を受けている事業所等について
- 指定に係る記載事項
- 指定申請に係る添付書類一覧表
- 印鑑証明書
- 定款の写し
- 登記簿謄本
- 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
- 資格証明書の写し、実務経験証明書等
- 組織体制図
- 管理者・サービス提供責任者の経歴書
- サービス提供責任者の資格証明書の写し
- 事業所の写真(外観・内部)
- 事業所の平面図
- 事業所の案内地図
- 貸借契約書の写し(事業所が賃貸である場合)
- 運営規程
- 主たる対象者を特定する理由
- 事業計画書
- 収支予算書
- 苦情を処理するために講ずる措置の概要
- 資産の状況を証明する書類
- 決算書、資本金支払証明書、通帳写し等
- 損害保険加入を証明する書類
- 欠格事由に該当していない旨の誓約書
- 役員名簿
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
- 介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書
- 障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービス・地域生活支援事業開始届
- (介護予防)訪問介護事業の指定書の写し(介護保険の指定を受けている場合)
- 道路運送法上の許可書の写し(通院等乗降介助を実施する場合)
- 通院等乗降介助の実施を申し出る指定居宅介護事業所のサービス提供体制等確認票(通院等乗降介助を実施する場合)
- 運転従事者一覧表(通院等乗降介助を実施する場合)
サービス報酬について
居宅介護サービス費
重度訪問介護サービス費
同行援護サービス費
行動援護サービス費
まとめ
4つのサービスをまとめて紹介していきましたが、「訪問系サービス」ということもあり、複雑な障がい福祉事業の中では、割とイメージしやすいタイプであるように思います。
本稿で紹介した居宅介護をはじめとする障害者福祉は、現在は地域に密着したシステムに移行しており、サービス事業者に対する期待と需要は、いまだ高まり続けています。
一方で、コロナ禍を経て、訪問型のサービスの在り方自体にも変化が求められつつあります。いずれにせよ、訪問サービス事業が過渡期のさなかであることは間違いありません。まずはしっかりと周辺知識を蓄え、明確なビジョンと事業計画のもと、準備を進めるよう心がけましょう。
当事務所は福祉と手続きのエキスパートです。
弊所では、障がい福祉事業に関するさまざまな情報を発信するとともに、指定申請に関する手続きのサポートを行っています。代表は介護施設を運営していた実績を有する福祉の専門家であるとともに、現役のケアマネジャーという傾聴のスペシャリストでもあります。
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