灌漑(かんがい)とは│農地と河川を結ぶ重要拠点について
農地転用や河川法上の許可を取得する際に頻出する語句に「灌漑」(かんがい)というものがあります。灌漑とは、河川や湖、地下水など、外部から農地へ人工的に水を供給するシステムのことを指します。
日本は山地が多く平野が少ない地形となっており、雨が降っても短期間で海に流れ出てしまうため、常に干ばつに備える必要があります。灌漑は、土壌を乾燥から防いで、農作物を生育するに適した環境を維持することをその目的としていますが、このほかにも作物を霜害から守ったり、土壌の圧密を防ぐといった機能も具備しています。
水田では、主に河川に取水口と堰(せき)を設け、取水した水を用水路を通じて水田まで引くことにより安定的な水の供給を行います。畑地では、ダムから吐水槽に貯めた水を、自然流下によってファームポンドと呼ばれる小規模な貯留施設に蓄え、それぞれの耕作地に用水を引き、スプリンクラーなどで給水することにより水を供給します。
農地において使用した水は、河川へ戻したり地下水として蓄えられることにより、海や下流域で再利用されます。このことからも灌漑は、水を自然に近い状態で循環させるためのリサイクルシステムとして、重要な役割を担っているといえます。
灌漑工事とは
灌漑工事とは、灌漑のための施設を建築したり、これに附随して河川や湖沼を開発する行為です。広義では、灌漑に付随する護岸工事をその範疇に含めることもあります。
建設業の業種区分で言えば、「土木一式工事」が該当します。このため、500万円を超える額の工事を請け負う際には、建設業許可を取得する必要があります。また、灌漑工事を施工する際にも、次のような手続きが必要となる場合があることにご注意ください。
河川法上の手続き
流水の占用の許可 | 河川の流水を占用しようとする場合 |
流水の占用の登録 | 許可を受けた水利使用のために取水した流水のみを利用する発電のために河川の流水を占用しようとする場合 |
土地の占用の許可 | 河川区域内の土地を占用しようとする場合 |
土石等の採取の許可 | 河川区域内の土地において土石を採取しようとする場合 |
工作物の新築等の許可 | 河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする場合 |
土地の掘削等の許可 | 河川区域内の土地において土地の掘削、盛土若しくは切土その他土地の形状を変更する行為又は竹木の栽植若しくは伐採をしようとする場合 |
竹木の流送等の許可 | 河川における竹木の流送又は舟若しくはいかだの通航をしようとする場合 |
河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為の許可 | 河川の流水の方向、清潔、流量、幅員又は深浅等について、河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為をしようとする場合 |
農地法その他の手続き
これらの手続きは重複することが多く、いずれも難解かつ煩雑な手続きになりますので、お困りの際は、弊所を含め河川法や農地法に詳しい行政書士に相談することをお薦めいたします。