市街化調整区域内の農地転用の実務│農地法5条許可と開発許可・建築許可を高槻市の事例で行政書士が解説

農地を駐車場や資材置場、事務所の敷地などに変えようとするとき、手続きが農地法の転用許可だけで終わることはまずありません。とくに市街化調整区域にある農地では、農地法の許可に加えて、都市計画法の開発許可や建築許可、土地改良区の地区除外、里道や水路の手続きなど、複数の手続きを並行して進めることが求められ、どの手続きがどの順番で必要になるのかを見極めるだけでも一苦労です。
市街化調整区域は、都市計画法によって市街化を抑制すべき区域と定められており、新たな開発や建築は原則として制限されています。そのうえ、農地法は優良な農地を守るために転用を厳しく制限しているため、市街化調整区域の農地転用は、二つの法律の規制が重なり合う、行政手続きの中でも特に難易度の高い分野といえるでしょう。
この複雑な手続きの全体像をできる限り具体的にイメージしていただくため、本稿では、弊所が大阪府高槻市で実際に携わった事例を下敷きに解説を進めます。事例は、営利法人が他人の所有する市街化調整区域内の農地を一時的に借り受け、仮設事務所を設置するというもので、農地法第5条の一時転用許可と、都市計画法第43条の建築許可の手続きを経ることになりました。
必要な許可の確認から、申請先の特定、事前相談で確認すべき事項、農地区分や一時転用のルール、実際に求められた書類、そして書類作成の苦労まで、行政書士が順を追って解説します。これから市街化調整区域の農地を活用しようとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
目 次
取得する許可の確認
何はともあれ、まずはどの許可が必要になるのかを確認することが出発点です。農地の取引や転用に関する許可は、農地法によって次の三つに分けられています。
| 許可の区分 | 対象となる行為 | 典型的な場面 |
|---|---|---|
| 3条許可 | 農地又は採草放牧地を、農地等のまま売買したり貸し借りしたりすること | 農家どうしで農地を売買する |
| 4条許可 | 自己が所有する農地を、農地以外のものにすること | 自分の農地に自宅や倉庫を建てる |
| 5条許可 | 農地又は採草放牧地を農地等以外のものにするため、売買や賃借をすること | 他人の農地を買って、又は借りて事業用地にする |
今回の事例は、他人が所有する農地を営利法人が一時的に借り受けて仮設事務所を設置するものでしたから、必要になるのは5条許可です。仮に、農地を農地のまま借りて耕作するのであれば3条許可、自己所有の農地に自己の事業用の仮設事務所を建てるのであれば4条許可が必要になります。誰の農地を、どのような権利で、何に使うのかによって、必要な許可の条文が変わる点を押さえておきましょう。
なお、市街化区域内の農地であれば、あらかじめ農業委員会に届け出ることで転用の許可は不要となります。許可が必要になるのは市街化区域以外の農地で、許可権者は都道府県知事又は農林水産大臣が指定する指定市町村の長です。4ヘクタールを超える農地を転用する場合は、許可にあたって農林水産大臣との協議も必要となるため、大規模な事業を計画する場合はスケジュールに余裕を持たせておくことが欠かせません。
大阪府内では、事務処理特例制度によって4ヘクタール以下の農地転用許可の権限が市町村に移譲されている例が多く、たとえば堺市では、農業委員会の総会での議決を経たうえで、事案に応じて大阪府農業会議の意見を聴いて許可する流れがとられています。許可を出すのが府なのか市なのかは市町村ごとに異なるため、手続きの流れとあわせて、事前に確認しておくことをおすすめします。
申請先の確認

必要な許可がわかったら、次は窓口となる申請先を特定します。許可権者が都道府県知事であっても市町村長であっても、農地転用の申請書は、転用しようとする農地が所在する市町村の農業委員会に提出するのが原則です。農業委員会の事務局は市役所や町村役場の中に置かれていることが多いものの、別の庁舎に入っている場合もあるため、所在地と担当部署はあらかじめ確認しておきましょう。
今回の事例では、農地が高槻市内にあったため、申請先は高槻市農業委員会でした。事務局は、高槻市役所と同じ高槻市総合センターの中にあります。
一方、市街化調整区域の開発許可や建築許可は、農業委員会ではなく、開発許可を所管する部署が担当します。高槻市は中核市であるため、開発許可や都市計画法第43条の建築許可の権限は高槻市が持っており、農地転用は農業委員会、開発許可や建築許可は市の開発担当部署というように、窓口が分かれることになりました。複数の窓口を行き来しながら手続きを進めることになるため、それぞれの担当者と連絡を取り合い、情報を共有しておくことが手続きを円滑に進める鍵となります。
農業委員会への申請は、毎月の締切日が決められていることが一般的で、締切日までに受け付けた案件が翌月の総会で審議される流れになっています。締切日を一日でも過ぎると審議が一か月遅れてしまうため、事業開始の希望時期から逆算して、申請のスケジュールを組み立てておくことが大切です。
事前相談
申請先を特定できたら、いよいよ事前相談です。事前の連絡なく突然窓口を訪れるのは避けましょう。担当者が不在の場合もありますし、相談内容によっては複数の部署の担当者が同席する必要があるため、電話で日時を予約してから出向くのが基本です。
窓口へ出向く際には、簡単な配置図や周辺地図、現況写真、土地の登記事項証明書、公図などを持参し、主に次のような事項を確認していきます。準備をしっかり整えておくことが、事前相談を実りあるものにするための第一歩です。
- 農用地区域内の農地(青地)かどうか
- 地域計画の区域内かどうか
- 農地区分と転用許可の見込み
- 一時転用として扱われるかどうか
- 開発許可・建築許可の要否
- その他の法令の規制や土地改良区の手続き
これらの確認事項は、どれか一つでも引っかかれば転用自体が難しくなるものばかりです。事前相談の段階で一つずつ確認を重ね、許可の見込みと必要な手続きの全体像をつかんでおくことが、後の手戻りを防ぐことにつながります。以下、それぞれの確認事項について詳しく見ていきましょう。
農用地と地域計画
農業振興地域の整備に関する法律に基づき、市町村が定める農業振興地域整備計画で「農用地区域」に指定された区域の農地を、実務では「青地」と呼んでいます。それ以外の農地は「白地」と呼ばれ、転用を考えるうえでは、まずこの青地か白地かの確認から始めることになります。
青地は、特に優良な農地として保全されているため、転用は原則として認められません。青地を転用するには、農用地区域からの除外(いわゆる農振除外)の手続きを経る必要がありますが、除外には厳しい要件があり、年に数回しか受け付けていない市町村も多いため、許可までに年単位の時間がかかることも珍しくありません。今回の事例の農地は農用地区域には含まれておらず、まずはひと安心というところでした。
あわせて確認しておきたいのが、令和5年施行の改正農業経営基盤強化促進法で導入された「地域計画」です。地域計画は、市町村が地域の農業者などの協議を踏まえて、将来の農地利用の姿を「目標地図」として示すもので、その区域内の農地を転用する場合には、地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められるときに限り許可できることとされています。
堺市では、申請地が地域計画の区域内にある場合、農業委員会事務局での事前相談が終わった後、農地法の許可申請までに地域計画の変更が必要であると案内されています。地域計画の変更には関係者への意見聴取や公告・縦覧の手続きが伴うため、転用の計画が固まったら、早い段階で市町村の農政担当部署にも確認しておくことが欠かせません。
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農地区分と転用許可の見込み
農用地区域外の農地であっても、すべてが自由に転用できるわけではありません。農地法は、優良な農地が虫食い状態に転用されることを防ぐため、営農条件や周辺の市街地化の状況に応じて農地を区分し、区分ごとに「立地基準」を定めています。
| 区分 | 状況 | 許可の方針 |
|---|---|---|
| 農用地区域内農地 | 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 | 原則不許可 農業用施設等市町村が定める農用地利用計画において指定された用途のために転用する場合は例外的に許可 |
| 甲種農地 | 市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地 | 原則不許可 土地収用法の認定を受け、告示を行った事業等のために転用する場合は例外的に許可 |
| 第1種農地 | 10ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地 | 原則不許可 土地収用法対象事業等のために転用する場合は例外的に許可 |
| 第2種農地 | 鉄道の駅が500m以内にある等、市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 | 農地以外の土地や第3種農地に立地困難な場合等に許可 |
| 第3種農地 | 鉄道の駅が300m以内にある等、市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 | 原則許可 |
表の上にある区分ほど、転用のハードルは高くなります。実務上、通常の転用が許可される見込みがあるのは第2種農地と第3種農地に限られ、それ以外の区分では、収用対象事業などの例外にあたらない限り許可は極めて困難です。また、第2種農地の場合は、周辺の他の土地では事業の目的を達成できないことを説明することが求められるため、なぜその農地でなければならないのかを示す「選定理由書」の内容が重要になります。
立地基準を満たしたとしても、それだけで許可が下りるわけではありません。農地法は、転用の確実性や周辺農地への被害防除措置の妥当性などを審査する「一般基準」も定めており、たとえば、事業に必要な資力や信用があること、転用の妨げとなる権利者の同意を得ていること、農地法以外の法令の許可を受ける見込みがあること、周辺農地の営農条件に支障を生じさせないことなどが審査されます。今回の事例の農地は第2種農地に該当しており、立地基準の面では許可の見込みがある案件でした。
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一時転用の取扱い
今回の事例のように、仮設事務所や工事用の資材置場など、一定期間だけ農地を農地以外に利用し、利用後に農地に戻すことを「一時転用」といいます。一時転用も転用の一種であるため、市街化調整区域内であれば、農地法第4条又は第5条の許可が必要です。
一時転用の許可期間は、事業に必要な最小限の期間に限られるのが一般的です。千葉市の案内では、農用地区域内での一時転用の許可期間は3年以内とされており、期間が満了した後は、農地を元の状態に戻すことが前提となります。そのため、申請の段階で、利用後に農地へ復元するための原状回復の計画を示すことが求められます。
注意したいのは、一時転用のために農地の所有権を取得することは認められていない点です。農地法第5条第2項第6号は、仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するために所有権を取得しようとする場合を、許可できない場合の一つとして定めています。今回の事例でも、営利法人は農地を買い取るのではなく、賃借して仮設事務所を設置する形をとっており、この点は計画の段階で整理しておく必要がありました。
一時転用は、利用後に農地へ戻すことを前提としているため、一定の要件のもとで、通常の転用では許可されにくい区分の農地でも例外的に許可される余地があるとされています。ただし、許可期間の満了後に原状回復がされないまま放置されると、違反転用として原状回復命令などの対象になりかねません。期間の延長が必要になった場合も、改めて許可の手続きが必要となるため、工期や利用期間には余裕を持たせて計画を立てておきましょう。
市街化調整区域と開発許可・建築許可
都市計画法は、都市計画区域を、すでに市街地を形成している区域やおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき「市街化区域」と、市街化を抑制すべき「市街化調整区域」とに分けています。市街化区域では用途地域に従って比較的自由に建築が認められる一方、市街化調整区域では、新たな開発や建築が原則として制限されています。
市街化調整区域で、建築物の建築を目的として土地の区画や形質を変更する「開発行為」を行う場合は、都市計画法第29条の開発許可が必要です。開発行為を伴わずに建築物を新築する場合でも、都市計画法第43条によって許可が必要とされており、いずれの場合も、法第34条などに定める立地基準に該当するものでなければ許可は受けられません。農地転用の許可申請にあたっても、これらの許可の見込みがあることが一般基準として審査されるため、開発許可や建築許可の手続きは、農地転用の手続きと同時に、又は先行して進めていくことになります。
もっとも、都市計画法第43条第1項ただし書は、都市計画事業や非常災害の応急措置として行う建築、通常の管理行為や軽易な行為などと並んで、「仮設建築物の新築」を建築許可が不要なものとして定めています。ただし、どのような建築物が仮設建築物にあたるかは、建築物の構造や使用期間、用途などを踏まえて許可権者が判断するものであり、事業者が仮設のつもりでいても、そのまま許可不要と扱われるとは限りません。
今回の事例でも、高槻市との事前相談の結果、仮設事務所の設置について都市計画法第43条の建築許可の手続きを経ることになりました。「仮設だから許可はいらないはずだ」と自己判断して工事を始めてしまうと、後から違反を指摘されて是正を求められるおそれもあります。仮設建築物を予定している場合こそ、開発担当部署に許可の要否をあらかじめ確認しておくことが重要です。
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その他の法令の規制と土地改良区の手続き
農地転用にあたっては、農地法や都市計画法のほかに、少なくとも下表のとおり、確認しておくべき法令が数多くあります。
- 建築基準法(接道義務、用途の制限など)
- 国土利用計画法(一定規模以上の土地取引の届出)
- 里道・水路の占用や用途廃止(国有財産・法定外公共物の管理)
- 砂防法、宅地造成及び特定盛土等規制法、文化財保護法など区域に応じた規制
転用予定地の中や周辺に、地図上は道路や水路として残っている「里道」や「水路」がある場合には、その占用許可や用途廃止の手続きが必要となることがあります。また、砂防指定地や埋蔵文化財包蔵地などに該当すると、それぞれの法令に基づく許可や届出が求められるため、事前相談の段階で、どのような区域の指定がかかっているかを一つずつ確認していくことになります。
あわせて確認しておきたいのが、土地改良区の手続きです。転用しようとする農地が土地改良区の地区内にある場合は、農地転用の許可申請に先立って、土地改良区に地区除外の申請を行い、意見書の交付を受けることが一般的です。地区除外にあたっては、決済金などの負担が生じることもあり、同じ市町村内に複数の土地改良区が存在することもあるため、管轄する土地改良区の所在とあわせて確認しておきましょう。
これらの規制は、一つの部署ですべてを把握しているとは限らず、確認のために複数の役所を回ることも珍しくありません。後述するとおり、今回の事例でも、砂防指定地の確認のためだけに、隣の市にある大阪府の土木事務所まで出向くことになりました。
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本事例で必要となった手続き
ここで、弊所が携わった事例の内容を整理しておきましょう。事前相談を通じて、次のような事実関係が確認できました。
- 取得するのは農地法5条許可
- 申請窓口は高槻市農業委員会事務局
- 農地は農用地区域外(白地)
- 農地区分は第2種農地
- 農地は市街化調整区域内
- 開発行為には該当しない
- 生産緑地ではない
- 目的は仮設建築物の新築
これらを総合的に勘案した結果、必要となる手続きは、農地法第5条の許可と都市計画法第43条の建築許可の二つであることが判明しました。開発行為に該当しなかったため、都市計画法第29条の開発許可は不要となり、建築許可の手続きで足りることになったのは、スケジュールの面でも大きな意味がありました。
手続きの順番としては、まず都市計画法第43条の建築許可の事前相談を行い、建築許可の見込みが立った段階で、農地法第5条の許可申請を進めるという流れをとりました。農地転用の許可は、他の法令の許可を受ける見込みがあることが審査の前提となるため、市街化調整区域の案件では、都市計画法の手続きを先に固めておくことが、結果的に全体の期間を短くすることにつながります。
このように、市街化調整区域の農地転用では、事前相談の段階で必要な手続きを正確に洗い出せるかどうかが、案件全体の成否を左右します。一つでも見落としがあれば、許可の直前になって追加の手続きが判明し、事業のスケジュールが大きく狂ってしまいかねません。
必要となる書類(高槻市)
下記は本事例において高槻市から求められた書類です。求められる書類は案件ごとに個別に判断されるため、すべてのケースにそのまま当てはまるものではありません。様式は高槻市や大阪府のホームページで公開されていますが、改正されることもあるため、申請の際には最新の様式を窓口で確認してください。
★都市計画法43条建築許可(事前相談)
- 事前相談書位置図(1/2500以上)
- 現況図 (1/500以上)
- 土地利用計画図(配置図)(1/500以上)
- 排水計画平面図 (1/500以上)
- 地籍図(法務局備付け地図)
- 固定資産評価証明書
- 土地家屋全部事項証明書
- 予定建築物の平面図・立面図 (1/100又は1/200 )
- 委任状
★都市計画法43条建築許可(本申請)
- 43条建築許可申請書
- 委任状
★農地法5条許可
- 農地法第5条許可申請書
- 印鑑登録証明書(譲渡人(設定人)のみ)
- 土地の全部事項証明書付近見取図(位置図)
- 地籍図(法務局備付け地図)
- 計画書(利用計画書・選定理由書)
- 計画図(雨水・排水計画図含む)
- 事業実施に必要な資力があることを証する書面
- 土地改良区意見書(土地改良区域内のみ)
- 農地法第18条第6項の規定による通知書または農地賃貸借解約合意書(小作地の場合のみ)
- 開発行為に該当しない旨の証明書(露天もので転用面積が実測500㎡以上になる場合)
- 法人の定款(当事者が法人の場合)
- 法人の履歴事項全部証明書(当事者が法人の場合)農地法5条農地転用届出書(正・副)
農地法の申請書類の中でも、特に手間がかかるのが計画書と計画図です。計画書では、なぜその農地を選んだのか、事業の内容と規模が転用面積に見合っているか、周辺の農地にどのような配慮をするのかを、審査する側が納得できるように説明することが求められます。第2種農地の案件では、周辺の他の土地では目的を達成できない理由を具体的に示す必要があり、ここが許可の可否を分けるポイントとなりました。
資力を証する書面も、見落とされがちな書類の一つです。農地転用の許可は、転用が確実に行われることを前提としているため、工事費や賃料を支払うだけの資金があることを、残高証明書や融資証明書などで示します。一時転用の場合は、利用後の原状回復にかかる費用も含めて資金計画を立てておくと、審査で説明を求められたときにも慌てずに済むでしょう。
事前相談書の作成で苦労した点
実際の書類作成の一端にも触れておきます。ここでは、本事例のスタートラインとなった都市計画法第43条の建築許可の事前相談書を例にとって説明します。

事前相談書には専門用語が数多く並んでおり、書き始める前から心が折れそうになります。「住所と氏名ならなんとかなりそうだ」と思われた方、実はそこにも落とし穴が潜んでいます。「開発行為等の区域の名称」の欄をよく見ると、「地名・地番はすべて記入」と書かれているのがおわかりいただけるでしょう。ここに記載するのは、登記簿に記載された「地番」であり、普段使っている「住所」とは表記が異なるため、素直に土地の登記事項証明書を取得して確認するのが確実です。

次に厄介なのが、「その他規制法令等」の欄です。用途地域であれば、自治体の公式サイトで公開されていることも多く比較的簡単に調べられますが、砂防指定地や急傾斜地崩壊危険区域、埋蔵文化財包蔵地などの指定は、それぞれ所管する部署が異なり、一か所ですべてを把握できることはまずありません。電話やFAXでの問い合わせに応じてもらえないことも多いため、場合によっては現場から離れた役所まで出向いて調べることになります。

実際に本事例では、砂防指定地に該当するかどうかを確認するためだけに、高槻市の隣の茨木市にある大阪府茨木土木事務所まで足を運びました。指定地ではないことを確認して、事前相談書というたった1枚の書類の、たった1か所の欄にようやく〇印を付けることができたのですが、ここまでに往復でおよそ3時間を要しています。あえて比較的簡素な事前相談書を例にとったのは、様式が決まっている書面でさえこれだけの手間がかかることを知っていただき、様式の定めのない計画書や、位置図、現況図、土地利用計画図、排水計画平面図などを整える労力の大きさを想像していただくためです。

まとめ
農地転用や開発許可の分野は、専門用語が多く、関係する法令も多岐にわたるため、調べるだけで膨大な時間を費やしてしまいがちです。そもそも農地転用の規制は、食料の安定供給を支える農地を守るためのものであり、許可権者は基本的に「できる限り転用を抑えたい」という立場で審査に臨みます。そのため、求められる書類や手続きは複雑になりやすく、協議を重ねて手順を踏んでも、結果として許可が下りないこともあり得ます。
とくに市街化調整区域の案件では、農業委員会と開発担当部署、土地改良区、里道や水路の管理者など、複数の窓口との調整を並行して進めることになり、どこか一つでも調整が遅れると、全体のスケジュールに影響が及びます。事業者の方が本業の傍らでこれらの手続きをすべて進めるのは、時間的にも精神的にも大きな負担となるでしょう。


