農地転用に有利な第2種農地・第3種農地とは

農地を転用する場合又は農地を転用するため権利の移転等を行う場合には、原則として都道府県知事又は指定市町村の長の許可が必要ですが、転用が認められるか否かについては、最終的には農業委員会をはじめとする行政機関の判断に委ねられています。

そして農地には、農地としての優良性や周辺の土地利用状況等によって「農地区分」が設定されており、この区分が転用の許否を判断する重要な基準となっています。

そこで本稿では、農地区分のうち、農地転用が認められやすい区分である第2種農地・第3種農地について解説していきたいと思います。

農地区分

下表において、上に示している農地ほど農業上の重要性が高く、その転用が厳しく制限されています。逆にいえば、第2種農地・第3種農地については農業上の利用に支障が少ないという理由から、相対的に農地の転用が認められやすくなっています。

区分状況 許可の方針
農用地区域内農地市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地原則不許可
農業用施設等市町村が定める農用地利用計画において指定された用途のために転用する場合は例外的に許可
甲種農地市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地原則不許可
土地収用法の認定を受け、告示を行った事業等のために転用する場合は例外的に許可
第1種農地10ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地原則不許可
土地収用法対象事業等のために転用する場合は例外的に許可
第2種農地鉄道の駅が500m以内にある等、市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 農地以外の土地や第3種農地に立地困難な場合等に許可
第3種農地鉄道の駅が300m以内にある等、市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 原則許可

転用許可できない農地

次の農地については、原則として転用は認められていません。ただし、例外的に転用が認められるケースもあるため、窓口となる各市町村の農業委員会へ問い合わせてみることをお薦めします。

農用地区域内農地

農業振興地域に指定され、農地の中でも特に高い生産力があるものとして宅地や農業以外の用途に変えることを厳しく制限している農地です。

甲種農地

市街化調整区域内の農地で、特に良好な営農条件を備えている農地です。甲種農地と次の第1種農地では、農業に関連する事業の場合など、農業用施設・農業物加工や販売施設等の建築などは許可されることがあります。

第1種農地

約10ヘクタール以上に広がる集団的な農地であり、農業公共対象農地です。

転用許可できる農地

第2種農地

鉄道の駅が500m以内にあるなど、近い将来に市街地化が見込まれる農地であり、農家ではなく個人で耕しているような小集団の農地です。農地の未整備で生産力が低く、第3種農地に立地困難な場合には転用が許可されますが、転用目的が周辺にある他の土地でも実現可能であると判断される場合には転用の許可はなされません。

第3種農地

鉄道の駅が300m以内にあるなど、市街地化への見込みが著しい区域にある農地のことを指します。第3種農地の場合は原則として転用が許可されます。

第2種農地

第2種農地とは、市街化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地をいいます。より具体的には、鉄道の駅や市役所、県庁などから500m以内にある農地や、市街化区域から500m以内の距離にある規模が10ヘクタール未満の農地が該当します。

第2種農地については、基本的には転用することが可能です。ただし、必ず許可が下りるという保証はありません。最も重要なポイントは「代替性」の有無です。

農地の代替性

農地の代替性とは、申請地を周辺の他の土地に替えることにより、事業の目的を達することが出来る場合のことです。代替性がないことを立証できなければ、転用は認められません

そもそも農地の転用を厳しく規制しているのは、わが国の農業の基盤となる農地を保護するためであり、「替わりになる土地があるならわざわざ農地を使う必要はありませんよね?他の場所(雑種地)でやってよ。」というのが行政のスタンスです。

これを覆すためには、「これこれこういう理由で他の土地では事業を行うことができません。」といった事実を疎明する必要があります。

代替性の疎明

具体的には、まず添付書類として「候補地検討表」を詳細に作成し、他の土地では事業を行うことができない理由を明確にしていきます。

次に、申請地である農地でなければ都合が悪い理由や、緊急必要性などを、事業計画書や営農計画書に落とし込んで疎明します。

第3種農地

第3種農地は、市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい区域内にある農地で、政令で定めるものをいいます。より具体的には、以下のいずれかの要件に該当する場合に第3種農地と判断されることになります。

  1. 水道管、下水道管またはガス管のうち2種類以上が埋設されている道路の沿道の区域で、容易にこれらの施設の恩恵をうけることができ、さらに申請にかかる農地から500メートル以内に2つ以上の教育施設、医療施設その他の公共施設等が存在すること。
  2. 申請に掛かる農地等からおおむね300メートル以内に次に掲げる施設が存在すること
    • 鉄道の駅
    • 高速道路のインターチェンジ
    • 都道府県庁
    • 市役所、町役場、村役場
    • その他バスターミナルなど
    • これらに類する施設
  3. 市街地の程度までに宅地化が進んでいること
  4. 街区面積に占める40%以上の区画にあること
  5. 用途地域が定められていること

第2種農地とは異なり、既に市街化が進んでいる区域にある農地であり、農業上の利用の確保の必要性が低いことから、一部の例外を除き、原則として農地の転用は認められることとなっています。

しかし、そもそも第3種農地に該当する農地はあまり多くなく、第3種農地に該当するであろうことは、申請者において証明する必要があります。

なお、同時に複数の農地区分の要件を満たしている場合は、規制がゆるい方に区分されることになりますが、同時に甲種農地の要件を満たしている場合だけは、甲種農地に区分されます。

街区

街区とは、街路に囲まれた一区画をいい、この区画内における宅地面積の割合が40%以上の区画にあることも第3種農地の要件のひとつとなっています。この場合の宅地には、住宅などの建築物の敷地のほか、都市的な土地利用を行っている土地(運動場施設や駐車場など)は含まれますが、農業用施設用地や耕作放棄地は含まれません。

用途地域

用途地域とは、都市計画法で定められている地域地区のひとつです。住居地域、商業地域、工業地域などが設定されており、それぞれで土地の利用法や営業することが出来る業態等を定めています。要するに用途地域とは、おおまかな土地利用を定めて市街地を整理するための地域です。ゆえに、用途地域が設定されている土地は、市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい区域として第3種農地に該当することになります。

まとめ

転用したい農地が第3種農地に該当すれば、許可が下りる目処がたつので一安心です。ただし、同時に甲種農地の要件も満たす場合には甲種農地に区分されてしまい、途端に転用の道は閉ざされてしまいます。

また、第2種農地であれば、許可が下りる可能性がありながらも、代替性がないことを疎明することができずに、これまた転用の道が閉ざされてしまうこともよくあるお話しです。

農地をはじめとした開発系の許認可は、行政庁の裁量に委ねられる部分が大きく、また、法定外の書類や図面もバシバシと求められます。手間や労力は想像より重くのしかかり、頑張って書類を作成しても、結果として許可が下りず、徒労に終えてしまうケースも考えられます。

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