農業振興地域制度とは│青地・白地の違いと農振除外の6要件を行政書士が解説

農地を売買したり、住宅や駐車場などに転用したりしようとするとき、農地法と並んで必ず確認しておくべき法律が「農業振興地域の整備に関する法律」、いわゆる農振法です。農地法が一筆ごとの農地の取引や転用を規制する法律であるのに対し、農振法は、農業を振興すべき地域を地図の上で線引きし、その中でも特に守るべき優良な農地を「農用地区域」として指定する、いわば土地利用のゾーニングを担う法律といえます。
この農用地区域に指定された農地、実務でいう「青地」は、原則として農業以外の用途に使うことができません。自分の土地だから自由に使えるはずだと思っていても、青地であれば家を建てることも、駐車場にすることも認められず、転用するにはまず農用地区域から外してもらう「農振除外」という手続きを経る必要があります。標識の意味を知らなかったと主張しても交通違反の切符を切られてしまうのと同じように、制度を知らなかったでは済まされないのが土地の規制の怖いところです。
しかも、農振除外は申し出ればいつでも認められるものではなく、法律に定められた6つの要件をすべて満たしたうえで、市町村による計画の変更と、都道府県の同意を得ることが必要となります。近年の法改正では、地域計画の達成への支障や、都道府県が定める農地の面積目標への影響も審査されるようになり、除外のハードルは一段と高くなっているのが実情です。
そこで本稿では、農地の取引や転用を考えている方に向けて、農業振興地域制度の目的と仕組み、青地と白地の違い、農用地区域内での規制、農振除外の6要件と手続きの流れ、そして都市計画法の市街化区域・市街化調整区域との関係までを、行政書士が詳しく解説します。
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農業振興地域制度の目的
農振法第1条は、制度の目的を次のように定めています。
自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域について、その地域の整備に関し必要な施策を計画的に推進するための措置を講ずることにより、農業の健全な発展を図るとともに、国土資源の合理的な利用に寄与することを目的とする。
(農振法第1条)
農業を取り巻く環境は、地形や気候といった自然的な条件、市場や物流といった経済的な条件、人口や都市化の進み具合といった社会的な条件によって大きく左右されます。こうした条件を総合的に考慮し、農業の振興を図るべき地域を明らかにしたうえで、その地域の整備に必要な施策を計画的に進めていくための仕組みが、農業振興地域制度です。
農振法が制定されたのは昭和44年のことで、高度経済成長に伴う都市への人口集中によって市街化が急速に進み、農地が無秩序に失われていくことが社会問題となっていた時代でした。それまで農地の利用規制は農地法が担ってきましたが、一筆ごとの許可制度だけでは地域全体として優良な農地を守りきれないことから、地域単位で農業上の土地利用を計画するゾーニングの仕組みとして、この制度が設けられています。
近年の法改正では、目的規定に「農業生産に必要な農用地等の確保」や「国民に対する食料の安定供給の確保」が明記され、食料安全保障の観点から農地を確保する役割がいっそう強く打ち出されました。国が定める基本指針や都道府県の基本方針には、農用地区域内で確保すべき農用地の面積目標が定められ、農林水産大臣は毎年、都道府県の面積目標の達成状況を公表することとされています。
農業振興地域制度は、国、都道府県、市町村がそれぞれの段階で計画を定める、三層の仕組みで成り立っています。
制度の仕組み
農業振興地域制度は、国、都道府県、市町村がそれぞれの段階で計画を定める、三層の仕組みで成り立っています。
| 行政官庁 | 権限 |
|---|---|
| 農林水産大臣 | 基本方針の策定 |
| 都道府県知事 | 整備基本方針の策定 農業振興地域の指定 |
| 市町村 | 整備計画の策定 農用地区域の指定 農用地区域内用途区分の指定 |
まず、農林水産大臣が、都道府県知事等の全国的連合組織と協議し、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴いて、「農用地等の確保等に関する基本指針」を定めます。都道府県知事は、農林水産大臣と協議してこの基本指針に基づく「農業振興地域整備基本方針」を定め、これに基づいて、農業の振興を図るべき地域を「農業振興地域」として指定します。
農業振興地域の指定を受けた市町村は、都道府県知事と協議して「農業振興地域整備計画」を定めます。この計画は、農業生産基盤の整備開発計画や農用地等の保全計画、農業近代化施設の整備計画などのいわゆるマスタープランと、農用地区域とその区域内の土地の用途区分を定める「農用地利用計画」とで構成されており、農地の転用にかかわってくるのは、主にこの農用地利用計画の部分です。
市町村は、おおむね5年ごとに基礎調査を行い、その結果や経済事情の変化などを踏まえて、整備計画の見直しを行うこととされています。農用地区域の範囲もこの見直しにあわせて変わることがあるため、以前は白地だった土地が青地に編入されたり、その逆が起きたりすることもあります。土地の扱いを確認する際は、古い情報に頼らず、必ず最新の農用地利用計画を市町村で確かめるようにしましょう。

白地と青地
農業振興地域の中で、農用地区域に含まれる土地を実務では「青地」、農用地区域に含まれない土地を「白地」と呼んでいます。これは、市町村の計画図で、農用地区域が青色で塗られていることに由来する呼び名で、法律上の正式な用語ではないものの、行政の窓口や不動産取引の現場でも広く使われています。
青地は、農業上の利用を確保すべき土地として、転用や開発が原則として禁止されています。青地の農地を転用できるのは、農用地利用計画で指定された用途、たとえば農業用施設用地として指定された土地に農業用の倉庫を建てるような場合に限られ、それ以外の目的で転用するには、農振除外の手続きを経たうえで、さらに農地法の転用許可を受ける必要があります。
これに対して白地は、農業振興地域の中にあっても、農振法による開発の規制は行われません。ただし、白地の農地であっても農地法の規制は及ぶため、転用するには農地法第4条又は第5条の許可を受ける必要があります。白地だから自由に転用できるというわけではなく、農地法上の農地区分によっては、許可が下りない場合もある点に注意が必要です。
整理すると、「農業振興地域の中か外か」「農業振興地域の中なら青地か白地か」「農地法上の農地区分は何か」という三つの段階で、転用の可否と必要な手続きが決まっていくイメージを持っておくと、制度の全体像がつかみやすくなるでしょう。
農用地区域(青地)に含める土地
市町村は、農用地利用計画を定める際、次のような土地を農用地区域に含めることとされています。
- 集団的農用地(10ha以上)
- 農業生産基盤整備事業の対象地
- 土地改良施設用地
- 農業用施設用地(2ha以上又は1・2に隣接するもの)
- その他農業振興を図るため必要な土地
このうち5つ目の項目は、令和5年に施行された改正農業経営基盤強化促進法で導入された「地域計画」と連動するものです。地域計画は、市町村が地域の農業者などの話し合いを踏まえて、将来の農地利用の姿を「目標地図」として示すもので、その達成に必要な土地を農用地区域に含めることで、地域の農地を一体として守る仕組みとなっています。
また、国の直轄事業や補助事業、融資事業による農業生産基盤整備事業は、原則として農用地区域を対象として行われます。つまり、ほ場整備や用排水路の改修といった公共投資が行われた農地は、その投資の効果を守るためにも農用地区域として保全されることになり、こうした農地ほど転用のハードルが高くなるといえます。
農用地区域の中の土地には、さらに「農業上の用途区分」が定められます。用途区分は、田・畑・樹園地などの「農地」、牛などを放牧する「採草放牧地」、木竹の生育と家畜の放牧に使う「混牧林地」、畜舎や温室、堆肥舎、農機具の収納庫などを建てるための「農業用施設用地」に分けられており、青地の土地は、この用途区分に従った使い方しか認められません。たとえば、青地の農地に農業用の倉庫を建てたい場合でも、まず用途区分を農業用施設用地に変更する手続きが必要となる点に注意しましょう。
農用地区域内での規制
農用地区域内の農地を転用できるのは、農用地利用計画で指定された用途に供する場合に限られます。それ以外の目的で転用する必要があると認められる場合は、農用地利用計画を変更して当該農地を農用地区域から除外したうえで、農地法の転用許可を得る必要があり、これがいわゆる「農振除外」の手続きです。
農振法第15条の2は、農用地区域内で開発行為を行う場合(宅地の造成や土石の採取、土地の形質の変更のほか、建築物その他の工作物の新築、改築、増築が含む)に、あらかじめ都道府県知事の許可を受けることを求めていますが、この許可は、次のいずれかに該当する場合には受けることができません。
- 開発行為によって、その土地を農用地等として利用することが困難となる場合
- 周辺の農用地等に土砂の流出や崩壊などの災害を発生させるおそれがある場合
- 周辺の用排水路などの農業用施設の利用に支障を及ぼすおそれがある場合
農用地区域には、農地だけでなく、将来農業上の利用を予定している山林や原野が含まれていることもあり、これらの土地も開発行為の規制を受けることになりますが、開発行為を行う土地が農地であって、農地法の転用許可を受けた場合には、改めて農振法の開発許可を受ける必要はありません。
また、砂利の採取のように一時的に農業以外に利用する場合や、農用地利用計画に沿って農業用施設を建設する場合には、農振除外までは必要とされず、開発行為の許可で足りる扱いとなっています。
開発許可の権限は都道府県知事にありますが、希望する市町村に権限が移譲されている例もあるため、申請先は市町村の担当部署に確認しておきましょう。
農振除外の6要件
農用地区域から土地を除外するには、農振法第13条第2項に定める次の6つの要件をすべて満たす必要があります。
- 農用地等以外の用途に供することが必要かつ適当であって、農用地区域以外に代替すべき土地がないこと
- 地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないこと
- 除外により、農用地の集団化や農作業の効率化その他土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと
- 効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農用地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないこと
- 除外により、農用地区域内の農道や用排水路などの土地改良施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないこと
- 農業生産基盤整備事業の完了した年度の翌年度から起算して8年を経過していること
最も厳しく審査されるのが、第1号の必要性と代替性です。除外を求める土地が事業や住宅の目的からみて必要最小限の面積であるか、除外後すぐに利用する緊急性があるか、農用地区域外の土地を検討したうえで選定できない明確な理由があるかといった点が、具体的な資料をもとに確認されます。自分が青地しか持っていないから、というだけでは代替性の説明として十分とはいえず、周辺の白地や農業振興地域外の土地を検討した経過を示すことが求められるのが一般的です。
第2号の地域計画への支障は、令和5年の法改正で新たに加わった要件です。地域計画の目標地図で、ある農業者が将来耕作することになっている農地を除外すれば、地域計画の達成に支障が生じることになるため、除外の申し出と並行して地域計画の変更が必要になる場合もあります。また、第3号から第5号までは、優良農地のまとまりの中央部を虫食いのように除外したり、担い手が利用している農地を除外したり、農道や水路の機能を損なったりするような計画を認めない趣旨の要件です。
第6号の8年要件は、ほ場整備などの公共事業が行われた農地について、事業の完了後8年間は除外を認めないとするものです。税金を投じて整備した農地をすぐに転用することは、公共投資の効果を損なうことになるため、事業の完了時期は市町村や土地改良区に必ず確認しておきましょう。
なお、土地改良法に基づく非農用地区域内の土地や、優良田園住宅建設計画に従って優良田園住宅の用に供される土地、地域整備法の計画の用途に供される土地、公益性が特に高いと認められる事業の用に供される土地は、そもそも農用地区域に含まれない土地として扱われ、上記の6要件とは別の枠組みで判断されます。
農振除外の手続きと期間
農振除外は、土地の所有者などが申請して許可を受ける手続きではなく、市町村が農業振興地域整備計画を変更する手続きです。そのため、除外を希望する方は、市町村に「除外の申出」を行い、市町村がその申出を踏まえて計画の変更案を作成するという流れになります。多くの市町村では、除外の申出を受け付ける時期を年に1回から数回に限っているため、受付時期を逃すと、次の受付まで半年から1年待つことにもなりかねません。
計画の変更にあたって、市町村は都道府県知事に協議し、同意を得る必要があります。都道府県知事が同意するには、前述の6要件をすべて満たしていることに加えて、都道府県が定める面積目標の達成に支障を及ぼすおそれがないことが基準とされています。面積目標の達成に支障を及ぼすおそれがある場合、市町村は、農用地区域への新たな農地の編入や荒廃農地の解消、農用地の造成などによって、影響を緩和する措置を講じる必要があり、除外は以前よりも慎重に判断されるようになりました。
農用地利用計画の変更案は、関係権利者の意向を反映させるため、公告したうえでおおむね30日間縦覧に供され、その後15日間の異議申出の期間が設けられます。異議申出がなければ、市町村は都道府県知事との協議を経て計画の変更を決定し、公告します。こうした手続きを経るため、除外の申出から計画変更の公告までには、一般に半年から1年程度の期間を見込んでおく必要があります。
農振除外は、除外そのものが目的ではなく、その後に農地法の転用許可を受けることが前提となっています。そのため、除外の手続きと並行して、転用許可の見込みについても転用許可権者と事前に調整を図ることとされています。除外が認められたとしても、農地法の許可が下りなければ土地を使うことはできませんから、除外の申出の段階から、農業委員会や開発許可の担当部署とも協議を重ね、全体の計画を固めておくことが大切です。
都市計画法との関係
農地の扱いを考えるうえでは、農振法と並んで、都市計画法の「市街化区域」と「市街化調整区域」の区分も重要になります。市街化区域は、すでに市街地を形成している区域と、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域で、用途地域が定められ、道路や下水道などの都市基盤の整備も重点的に進められています。市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とされ、原則として新たな開発や建築が制限されています。
市街化区域は、市街化を図るべき区域として位置付けられていることから、農業振興地域には含まれないこととされています。実際に、大阪府の農業振興地域整備審議会でも、市街化区域への編入が予定されている区域について、あらかじめ農業振興地域から除外する手続きがとられています。したがって、市街化区域内の農地が青地であることはなく、市街化区域内の農地の転用は、農業委員会への届出で足りることになります。
一方、市街化調整区域は、多くの場合、農業振興地域と重なっています。市街化調整区域の青地を転用しようとすれば、農振除外、農地法の転用許可、都市計画法の開発許可又は建築許可という三つの手続きをすべてクリアする必要があり、そのどれか一つでも認められなければ、土地を予定どおりに使うことはできません。市街化調整区域の白地であっても、農地法の許可と都市計画法の許可は必要となるため、手続きの難易度は決して低くありません。
このように、農地の転用では、農振法、農地法、都市計画法という三つの法律が、それぞれ別の観点から土地利用を規制しています。どの法律のどの規制がかかっているのかを最初に整理しておくことが、手続きをスムーズに進めるための出発点となります。
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青地かどうかを調べるには
手持ちの農地が青地か白地かを確認するには、農地が所在する市町村の農業振興地域制度の担当部署に問い合わせるのが確実です。多くの市町村では、窓口で地番を伝えれば農用地区域に含まれているかどうかを教えてもらえるほか、農用地区域内にあることを証明する「農用地区域証明」を発行している市町村もあります。
インターネットで手軽に調べたい場合は、農林水産省の「eMAFF農地ナビ」で、農地の所在地ごとに農用地区域に含まれているかどうかなどの情報を確認することができます。ただし、ナビの情報は更新の時期によっては最新の計画と異なる場合もあるため、取引や転用の判断にあたっては、必ず市町村で最新の情報を確認するようにしましょう。
不動産の売買で農地を取得しようとする場合は、契約の前に、その土地が青地か白地か、農地法上の農地区分は何か、市街化区域か市街化調整区域かを確認しておくことが欠かせません。青地の農地を宅地にするつもりで購入したものの、農振除外が認められず、何年も手つかずのまま固定資産税だけを払い続けることになったという話も珍しくありません。
まとめ
農業振興地域の青地については、農振除外という高いハードルを越えなければ転用できず、実務の感覚としては、除外はほぼ「ムリゲー」に近いと考えておいたほうがよいほどです。「自分の土地だから大丈夫だろう」という思い込みは禁物で、土地の規制は財産的な価値に直結するだけに、後から悔やむことのないよう、事前にしっかりと計画を立てて臨むことが重要です。
兵庫県や大阪府でも、都市部から少し離れた地域になると、農振法や農地法の規制にかかわる場面は少なくありません。農振除外の申出書類の作成には、代替地の検討経過や必要最小限の面積であることの説明、地域計画や周辺農地への影響の整理など、行政が納得できる資料をそろえることが求められ、慣れない方が独力で進めるのは容易ではありません。


