兵庫県三木市におけるヤード条例について

三木警察署外観
三木警察署外観

先日、兵庫県三木市において古物商許可申請を行ってまいりました。兵庫県民以外には地理的なことは伝わりにくいとは思いますが、弊所所在地である尼崎市からは実に片道1時間40分。電車にガタゴト揺られつつ小旅行を楽しんできました。これも何かの縁なのでしょうか。最近はいわゆる「播州」で仕事をさせていただく機会も増えました。

姫路城
国宝「白鷺城」こと姫路城
たつの市の風景
バスの車窓から眺める兵庫県たつの市の風景

それはさて置いて、色々な地域を訪れますと、ご当地特有の「洗礼」を受けることが多々あります。同じ申請であっても、地域や管轄、何なら担当者によっても、それぞれ求められる事項や対応が異なるのがもはやスタンダードです。郊外での仕事となると、最近は「農地法」とバッティングする機会なんかも増えてきました。農地に関する規制についても地域性が色濃く現れる領域だと思います。

農地転用許可制度の概要について

さて本題です。今回の申請にあたり出くわしたのが「ヤード条例」といわれる三木市独自の条例です。これを知らなければあわや申請は不受理。片道2時間弱、電車賃にして往復2000円強を無駄にしてしまうところでした。

本稿ではこの「ヤード条例」を紹介することを通じて、各地域による制度の違いと、事前準備の大切さについて綴っていきたいと思います。

ヤード条例とは

この条例は、市内のヤード及びその周辺における自動車の部品等に用いられる油による汚染並びに市内のヤードにおける不正に取得された自動車の部品等の保管等の状況に鑑み、特定車両特定部品等のヤード内保管等の適正化のための措置を講ずることにより、市民の生活環境の保全を図るとともに、市民の安全安心な生活の確保に資することを目的とする。

(三木市ヤード条例第1条)

目的

正式には「三木市におけるヤード内保管等の適正化に関する条例」といいます。上の条文に砕いた説明を入れると、「ヤード」の設置を規制することで、自動車等の窃盗を防犯するとともに、自動車を解体する際に飛散する「油」による汚染の防止を図ることが条例制定の目的です。

ヤードとは

特定車両特定部品等の保管又は分離の用に供する施設のうち、その外周の全部又は一部に板塀、垣、柵、壁、コンテナその他これらに類する工作物又は樹木が存する施設をいう。ただし、特定車両等の保管又は分離の用に供する施設については、特定車両等を国外に輸送するためにコンテナを使用する施設に限る。

(三木市ヤード条例第2条第1号)

こちらも砕いた説明が必要ですね。要するに「ヤード」とは、中古品のバイク、発電機、船外機、自動車部品等(特定車両特定部品等)の保管や分離(解体)を行う施設であって周囲を塀や外壁に囲まれているような施設のことです。

周りを囲ったら中で何するか分からないでしょ?

さらに分かりやすく伝えればこういうことです。

なお、この条例の規定は、道路運送車両法に規定する自動車分解整備事業者が分解整備に付随して行う特定車両特定部品等の保管については適用されません。

必要となる手続き

特定車両特定部品等のヤード内保管等を行おうとする者は、あらかじめ、一定の事項を市長に届け出なければならない。

(三木市ヤード条例第3条第1項)

市長に対する届出

ヤードにおいて先述した特定車両特定部品等を保管・解体する場合には、あらかじめ市長に届出を行う必要があります。届出をする事項は以下のとおりです。

  • 氏名又は名称及び住所
  • 代表者の氏名(法人)
  • ヤードの所在地、規模、設備その他の概要
  • 環境保全条例の規定により講ずる措置内容
  • その他規則で定める事項

事前協議

特定車両特定部品等のヤード内保管等を行おうとする者は、三木市環境保全条例第19条に基づく事前協議を終了した後でなければ、届出を行うことができない。

(三木市ヤード条例第3条第2項)

前述した届出は、市との事前協議を経た後でなければ行うことはできません。要するに次のような二段構えの手続きを求められています。

  1. 市との事前協議
  2. 市長に対する届出

変更届等

届出に係る事項に変更があったときは、その日から30日以内に、その旨を市長に届け出る必要があります。このほか、ヤード内保管等を休止し、若しくは廃止し、又は再開したときは、その日から30日以内に、規則で定めるところにより、その旨を市長に届け出なければなりません。

届出後の義務

ヤード内保管等を届け出た後にも、以下のような義務が課されています。

  • 油の地下浸透等の防止
  • 相手方の確認及び不正品の申告
  • 記録の作成等
  • 標識の掲示

土地所有者等の努力義務

土地の所有者及びヤードを設置している者は、ヤード内保管等を行おうとする者が、油の地下浸透等の防止措置を講ずる旨及び使用済自動車再資源化法、古物営業法その他の法令及び条例を遵守して行う旨を確認し、これらが確認できない場合には、土地を提供することのないよう努めなければなりません。

また、油の浸透や流出、法令等を遵守していないことを知ったときは、速やかにその旨を関係機関に通報するように努めなければならないとされています。

市長の権限

市長は、特定車両特定部品等のヤード内保管等を行う者に対し、以下のような措置を講ずることができます。

  • 勧告・命令・公表・報告徴収・立入検査
  • 警察署長等への援助要請

罰則

命令に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

(三木市ヤード条例第17条)

届出をせず、又は虚偽の届出をして特定車両特定部品等のヤード内保管等を行った者は、3月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

(三木市ヤード条例第18条)

届出をせず又は虚偽の届出をした者、必要な報告をせず又は虚偽の報告をした者、立入検査を拒み妨げ忌避し又は質問に対して答弁をせず若しくは虚偽の答弁をした者は、30万円以下の罰金に処する。

(三木市ヤード条例第19条)

法人の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、罰金刑を科する。

(三木市ヤード条例第20条)

標識の掲示の規定に違反した者は、5万円以下の過料に処する。

(三木市ヤード条例第21条)

まとめ

今回の申請においては見事にこの条例とバッティングしてしまいました。このように法令というものは、都道府県条例や市町村条例を含めてある程度網羅して調査する必要があります。慣れた手続きとみて甘くみると思わぬ落とし穴にはまりますし、逆に初めて申請を行う際にも見落としてしまうことは多いです。本稿は私自身の備忘録である側面が強いですが、皆さまに対する注意喚起でもあります。

何事にも事前準備は大切です。ハイ、結論。

最後に「播州」で味わった最高の一品を添付して〆させていただきます。

あ、三木市の皆さま。私は三木市も大好きですよ。いつでもお仕事お待ちしております^^
姫路の寿司屋にて
回っていません!

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